腕の組み方の心理は拒絶か。見た目より先に、本人の注意と触覚がずれる

腕を組むと拒絶されたように感じる場面から入り、実験が記録した本人の側の変化を読む。自己接触はストレスと集中の両方で現れ、外の対象への評価を極端にする。触覚の順序、痛みの報告、梁の上の歩行距離、体幹回旋の角度も、組む姿勢でどう変わるかを分ける。

会議で意見を伝えた直後、向かいの人が腕を組んだ。反対なのか、考え込んでいるのか。返事を待つあいだ、胸の前の腕だけが気になる。ところが、資料の数字を読み直す自分も、いつの間にか同じ形になっていた。

腕を組む姿勢だけで、拒絶していると判断することはできない。あごに触れる、手を組み合わせる、腕を組むといった自己接触は、感情的なストレスのときにも、集中を要する作業のときにも現れる、と整理されている。その自己接触は自分への注意を強め、外の対象への評価を極端にする。本人は、その影響を十分には正確に分かっていない。[17]

組むと、本人の感覚と動きにも別の変化が出る。交差した腕では、触れた時間の順序が主観的に逆転することがあり、左の頭頂葉と前頭葉のつながり方も変わる。[2][10] 痛みの報告は、腕を組んだだけでは下がらない。[15] 細い梁の上では、組むと歩いた距離が落ちやすい。[7][14] 見た目が作る物語と、実験が記録した変化は、同じ姿勢の別の層である。上の腕が左右どちらか、遺伝で決まるかには入らない。そこは既存記事「腕組みと指組みで右脳左脳は分かる?組み方の左右差と遺伝の研究を読む」の論点である。

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拒絶に見える形は、ストレスのときだけ現れるのか

腕を組んだ相手を見て、防御だと決めつける読みは、日常では速い。速い読みの不便は、同じ形が別の事情でも出ることにある。自己接触の研究は、腕を組むことを単独のジェスチャーとして切り出さず、あごに触れること、手を組み合わせることと並べて扱っている。[17]

その整理では、自己接触は感情的なストレスのもとで現れる。同時に、集中と焦点を要する作業をしているときにも現れる、とされてきた。著者らは、原因の側を調べた仕事と対比して、自分たちが実験したのは自己接触の結果の側だと書いている。[17] ストレスが原因候補の一つであることと、集中する作業中にも同じ種類の動きが出ることは、両立する。

会議で腕を組んだ人を、拒絶の一点に回収すると、この二つ目の事情が消える。資料の数字を追って無言になっている人と、話を打ち切りたい人は、肩から先の輪郭だけでは分離できない。自己接触が現れる状況についての整理と、自己接触の結果を調べた実験は区別して読む。[17] 会議中の沈黙を、相手の性格の診断書にしない。

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自己接触は、外の評価を極端にする

クロンロッドとアッカーマンは、自己接触の結果を四つの実験で調べた。指示されて触れた場合も、自発的に触れた場合も、自分への注意が強まり、評価する対象への態度がより極端になった。[17] 対象は外の物事や出来事であり、腕の形そのものの良し悪しではない。

極端さは、対象への評価が端へ寄る度合いを指す。[17] 講義のあと、夜のスマホで何かを評価するとき、腕を組んだまま書いた一言が尖って見えることがある。尖りの原因を対象の事実だけに求める前に、自分へ向いた注意が混ざっていないかを疑う余地がある。

最後の実験では、人は自己接触が自己への注意や態度の極端さに与える影響を、十分には正確に理解していなかった。[17] この研究が気持ちのずれとして示しているのは、動かしている本人が、自分の判断への影響を読み違えうる、という点だ。

著者らは、このありふれた行動が、さまざまな判断に付随的に影響しうると結んでいる。[17] 評価するつもりで始めた動作でなくても、自己接触は評価の端への寄りを強めうる。実験が比べたのはその注意と評価であり、生活全体の対人関係を組み替えた試験ではない。

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抱擁では、交差の様式より時間が先に効く

腕の交差は、胸の前で自分を閉じる形だけではない。抱き合うとき、互いの腕がどう交差するかも交差である。睡眠との関係は「ハグで眠りやすくなる?触れている安心感と寝つくまでの時間を研究で確かめる」、感染と症状の強さは「ハグで免疫力は上がる?風邪の実験から感染と症状の強さを分けて読み解く」、乳児の心拍は「親子のハグで赤ちゃんは落ち着く?抱く強さと心拍の変化を実験から読み解く」に譲る。ここでは、大人同士の抱擁で、腕の交差様式と抱く時間のどちらが評価に効くかだけを見る。

一つ目の実験では、参加者が実験協力者を1秒、5秒、または10秒抱き、交差の様式は二種類だった。触れ方を、心地よい、覚醒的、制御できている、の三つで評価し、気分の自己評価は直後、3分後、6分後に取った。[8] 結果として、心地よさ、覚醒、制御のどれでも、交差の様式より時間が重要だった。1秒の抱擁は、5秒と10秒より、心地よさと制御できている感覚の評価が低かった。直後の心地よさの自己評価も、1秒は5秒と10秒を下回った。[8]

覚醒の自己評価は、抱擁の数分後より、直後のほうが高かった。[8] 1秒は、様式を二種類にしても、5秒と10秒の側に届かない。形の工夫より、短すぎることが先に評価を下げる。

二つ目は、キャンパスで人に声をかけ、抱擁を共有してもらい、腕の交差様式を結果として記録した観察である。身長差、性別、相手への情緒的な近さの自己評価を、様式の予測要因の候補として残した。結果の文が結んだのは性別で、男性同士の組は、女性同士の組とは異なる様式を示した。[8] 近さと身長差は候補として記録された。結果として書かれた関連は、性別の組み合わせのほうである。二者の抱擁であり、一人が胸の前で腕を組む場面とは配置が違う。

組んだ腕は、触れた順序を入れ替える

見た目の物語から、本人の触覚へ移る。北澤の総説は、1秒より短い範囲で起きる時間の錯覚から、心的現在がどう作られるかを検討している。色のファイ現象、皮膚上を跳ねる兎の錯覚、フラッシュラグ効果に続けて、腕を交差したときと、跳躍性の眼球運動のときに、主観的な時間順序が逆転する現象を取り上げた。[2]

総説の提案では、心的現在は事後的に構成される。運動と空間位置のように、大脳皮質の複数の領域にまたがる情報を組み合わせる。さらに、古典的な時間量子の理論と神経生理、心理学の知見をもとに、約100ミリ秒の周期を一つから数個束ねて現在が作られる、とも示唆している。一つの周期は、脳のアルファ波の周期に相当する。複数の錯覚を通した提案であり、一回の実験の平均ではない。[2]

時間順序判断とは、左右の手に続けて触れたとき、どちらが先だったかを答える手続きを指す。腕を交差すると、この答えが入れ替わって感じられることがある、と総説は現象として確認している。[2] 拒絶の気持ちが時計を狂わせる話ではなく、身体の配置が触覚の時刻の割り当てを変える話である。

同じ現象を、脳の領域のつながりから見た研究がある。触覚刺激を交差した腕に与えると、主観的な時間順序の逆転が起きる。著者らの先行の仕事では、感覚刺激がなくても腕を交差するだけで左の後頭頂皮質の活動が変わり、とくに左の頭頂間溝の活動は、交差手の錯覚の程度と正の関連を示した。[10] 今回の解析は、その頭頂間溝が他の皮質とどう結び付くかを、腕を交差した条件と交差していない条件で比べている。

結合の相手は、デフォルトモードネットワークと呼ばれる、ぼんやりしたときに連動しやすい領域群と重なった。同時に、前頭頭頂の制御ネットワークとも結合していた。この制御ネットワークに含まれる右の中前頭回および下前頭回は、腕を交差した条件のほうが、交差していない条件より結合が強かった。[10] 著者らは、腕の交差中には状態に依存した結合があり、左の頭頂間溝は腕の位置を空間と時間で更新する際に重要な役割を果たしうる、と述べている。

後頭頂皮質は、頭のてっぺんに近い外側の皮質を指す。機能的結合とは、領域の活動がどれだけ連動するか、という指標だ。組む姿勢は、左の頭頂間溝を中心にした結合の状態を変える。[10] 会議で組んだ腕は、相手への掲示板である前に、自分の脳が腕の位置を更新している最中の姿勢でもある。

数字で読む腕を組んだとき

自己接触の実験は四本。指示しても自発でも、自己への注意と、外の対象への評価の極端さが増した。[17]

抱擁は1秒、5秒、10秒。心地よさ、覚醒、制御のどれも、交差の様式より時間が重要で、1秒は5秒と10秒より心地よさと制御の評価が低かった。[8]

心的現在の提案では、約100ミリ秒の周期を一つから数個束ねる。[2]

高齢者20人、69±4歳。幅6、8、10センチ、高さ2センチ、長さ4メートルの梁を、腕は自由、交差、腰に手、の三条件で歩いた。18〜39歳の女性への適用は、年齢の違いを考えて判断する必要がある。[14]

若い成人との比較では、高齢者の歩行距離は14パーセント短く、認知課題の誤りは12倍だった。これは年齢の対比であり、腕組みだけの効果量ではない。若い成人と高齢者の比較なので、18〜39歳の女性に同じ差が出ると扱うことはできない。[7]

選手24人の座位体幹回旋。右はバー保持58.0±12.9度に対し腕組み49.2±10.1度、左は55.9±12.3度に対し47.5±9.6度。いずれも組むほうが小さく、差の検定は0.01を下回った。競技選手の測定値を18〜39歳の女性一般の目安にはできない。[4]

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宮川涼 Founder

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