ソイプロテインは女性に危険?イソフラボンの試験は誰に何を測ったか、男女のホルモンを読む

ソイプロテインは女性に危険か。閉経後の女性の40試験では、エストロゲンの4つの指標に有意な影響はなかった。一方、閉経前の女性6人の試験では生理の前半が延びた。鍛えた男性10人の予備的な試験、乳がんの観察研究と動物の研究も、研究の型と対象で分けて読む。

ジムの帰りのドラッグストアで、プロテインの棚の前に立つ。ホエイの隣にソイの袋がある。「女性ホルモンに似た成分」という言葉を、どこかで聞いた覚えがある。とりすぎると危ないのか。同じ棚の前で、男の友人は「ソイは男に良くないらしい」と言っていた。

閉経後の女性で、大豆のイソフラボンを3か月以上とる試験を40本集めた2025年のメタ分析では、子宮内膜の厚さ、膣の細胞の成熟の度合い、卵胞刺激ホルモン、エストラジオールという4つの物差しのどれにも、統計的に有意な影響はなかった[8]。参加者は3,285人で、イソフラボンの量の中央値は1日75mg、期間の中央値は24週である[8]。

ただし、この記事の読者に多い、生理の周期が規則的な閉経前の女性で生理とホルモンを測った試験は、この記事で読んだ資料の中では1994年の6人の試験1本だった[1]。そこでは、ソイプロテイン60g(イソフラボン45mgを含む)を毎日1か月とると、生理の前半の期間が長くなる、または生理が遅れた[1]。男性のホルモンを測ったのは、鍛えた男性10人の予備的な試験で、大豆のプレッツェルの後の血中のテストステロンは、小麦のプレッツェルの後より低かった[10]。この記事で読んだ研究の中に、20〜40代の運動する女性がソイプロテインを続けて飲み、体への害を調べた試験はない。だから「危険」とも「まったく安全」とも、若い女性については言い切れない。

ソイプロテインと女性のホルモンの関係を血中の濃度の側から読んだ記事は、同じサイトの「女性のソイプロテインでホルモンは変わる?大豆の成分と血中濃度を読み解く」に譲る。ここでは、「危険かどうか」を、研究が誰に何を測ったかで分けて読む。

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「女性ホルモンに似た成分」とは、どういう意味か

大豆からとれる食品は、イソフラボンという成分をとくに多く含む[15]。イソフラボンは、エストロゲンが結びつく受け手(受容体)に結びつくことができるが、人の体でどこまでエストロゲンのように働くかははっきりしていない、と2025年の総説は書く[15]。植物のエストロゲンという呼び名が、大豆の食品をとると乳がんの女性の経過を悪くするのではないかという心配を生んだ、とも書いている[15]。

似ているが、同じではない。1994年の論文の著者らは、イソフラボンを、エストロゲンとして働く面と、その働きを抑える面の両方を持つ成分だと考えた[1]。先の40試験のメタ分析の著者らは、この統合の結果は、イソフラボンがおそらくエストロゲン受容体の働きを選んで調節する物質として振る舞い、臨床の上ではホルモンのエストロゲンとは違うことを支持すると書いている[8]。

もう一つ、話をややこしくする事実がある。イソフラボンの一つであるダイゼインは、腸の中で細菌の酵素によってエクオールという物質に変わり、エクオールはイソフラボン由来の物質の中でいちばん強いエストロゲンの働きを持つ[3]。調べられた動物はすべてエクオールを作るのに、人で作れるのは、集団によって3分の1から2分の1だけだという[3]。作れるのは、エクオールを作る菌を腸に持つ人だと考えられている[3]。

同じ量の大豆をとっても、体の中で起きることは、人によって同じとは限らない。友人と同じ袋を飲んで、結果が違っても、おかしくはない。

腸の中でのイソフラボンの行方は、同じサイトの「間食の納豆は誰でも同じ成分を吸収する?腸内で変わるイソフラボンの行方を読む」に譲る。

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閉経後の40試験では、4つの物差しは動かなかった

いちばん大きな数字から見る。2025年のメタ分析は、2024年8月までの文献から、閉経後の女性でイソフラボンを3か月以上とる群と、イソフラボンを含まない対照の群を比べたランダム化比較試験を集めた[8]。40試験、52の比較、3,285人である[8]。

結果は、子宮内膜の厚さの差が−0.22mm(95%信頼区間−0.45〜0.01)、膣の細胞の成熟の指標が2.31(−2.14〜6.75)、卵胞刺激ホルモンが−0.02IU/L(−2.39〜2.35)、エストラジオールが1.61pmol/L(−1.17〜4.38)で、どれも有意ではなかった[8]。証拠の確かさは、すべての項目で高いから中くらいと評価された[8]。著者らは、いまの証拠からは、閉経後の女性で、イソフラボンはこの4つの物差しの上でエストロゲンの働きを示さないとしている[8]。

ところが、同じ2025年の別のメタ分析は、少し違う答えを出した[9]。閉経後の女性の47研究、2,657人を集めたこの解析では、イソフラボンは膣の乾きを減らし、膣の成熟の値を上げ、エストラジオールを有意に上げていた(標準化平均差0.247、95%信頼区間0.059〜0.435)[9]。肌の粗さやしわの面積の改善も見られた[9]。

二つの解析は、試験の集め方が同じではない。先の解析は、3か月以上の試験で、イソフラボンを含まない対照と比べたものに絞っている[8]。いまの時点で言えるのは、閉経後の女性で、エストロゲンの物差しが大きく動くという結果はそろっていないが、小さな変化があるかどうかは、解析によって答えが割れている、ということである。

閉経後の女性の性の機能を調べた13試験、1,325人の2026年のメタ分析は、偽薬やホルモンの補充と比べた1日40〜160mgのイソフラボンで膣の乾きなどの改善を見て、イソフラボンは泌尿器と性の症状に対して安全で、ほどほどに効くように見えると結論した[7]。ただし、試験どうしのばらつきはとても大きかった[7]。

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生理が延びた、閉経前の6人の試験

閉経前の女性の話に戻る。1994年の試験は、排卵のある規則的な周期の、閉経前の女性6人を対象にした[1]。毎日ソイプロテイン60g(イソフラボン45mgを含む)を1か月とると、生理の前半の期間(卵胞期)が長くなる、または生理が遅れ、その変化は有意だった[1]。周期の真ん中で急に増える黄体形成ホルモンと卵胞刺激ホルモンの山は、有意に抑えられた[1]。血中のエストラジオールは卵胞期に上がり、コレステロールは9.6%下がった[1]。

面白いのは、著者らの受け止め方である。著者らは、似た反応が、乳がんの危険の高い女性での予防の試験に使われていた抗エストロゲンの薬でも起こると書き、ソイプロテインへの反応は乳がんの危険因子の点で有益になりうると考えた[1]。日本と中国の女性で乳がんが少なく、それが大豆の多い食事と相関することの説明の一部になるかもしれない、とも書く[1]。

生理が遅れたという同じ事実が、1994年の論文では「有益かもしれない変化」として書かれている。生理を気にしながら運動している人には、まず「周期が変わった」という事実のほうが気になるだろう。どちらにしても、6人、1か月、1994年の試験である。この1本から、20代の運動する女性みんなに同じことが起きるとは言えない。

粉を飲んだ試験と、錠剤を飲んだ試験

「ソイプロテイン」と「イソフラボン」は、試験の中で同じ形で与えられているわけではない。

粉の試験から見る。オランダで行われた2004年の二重盲検のランダム化比較試験は、60〜75歳の健康な閉経後の女性202人に、イソフラボン99mgを含むソイプロテイン25.6g、または牛乳のたんぱく質を、粉で毎日12か月とってもらった[4]。解析に入った175人で、認知の働き、骨密度、血中の脂質は、二つの群で有意に違わなかった[4]。著者らは、60歳以降に始めた場合に、ソイプロテインがこれらを良くするという仮説は支持されないと結論している[4]。この試験では、良くなるという結果も出なかった。

錠剤の試験もある。イタリアの3つの大学の医療機関で行われた2007年の試験は、骨密度が低めの閉経後の女性389人に、イソフラボンの一つのゲニステイン54mg(198人)か偽薬(191人)を、毎日24か月とってもらった[6]。錠剤にはどちらもカルシウムとビタミンDが入っていた[6]。ゲニステインの群では腰の骨と太ももの骨の付け根の骨密度が増え、偽薬の群では減り、子宮内膜の厚さは偽薬と変わらなかった[6]。一方で、胃腸の副作用はゲニステインの群に多く(19%と8%)、研究をやめた人も多かった[6]。著者らは、骨折を測っていないこと、副作用を調べる力が限られていることを、限界として挙げている[6]。

2006年のアメリカ心臓協会の科学的な助言は、もっと慎重な書き方をした[2]。乳がん、子宮内膜のがん、前立腺のがんを防ぐ、または治すためのイソフラボンの効果と安全性は確立しておらず、臨床試験の証拠は乏しく、害がありうるという点で注意を促す内容だとして、食品や錠剤の形でイソフラボンのサプリを使うことは勧めないとした[2]。一方で、多くの大豆の製品は、多価不飽和脂肪、食物繊維、ビタミン、ミネラルが多く、飽和脂肪が少ないので、心臓と血管と全身の健康に役立つはずだとも書いている[2]。

粉の中のイソフラボンの量が作り方でどう変わるかは、同じサイトの「ソイプロテインのイソフラボン含有量は何で変わる?洗浄・分離と測定値を読む」に譲る。

数字で読むソイとイソフラボン

  • 40試験・3,285人: 閉経後の女性でエストロゲンの4つの物差しを調べ、どれも有意な影響がなかったメタ分析の規模[8]。
  • 1日75mg・24週: そのメタ分析での、イソフラボンの量と期間の中央値[8]。
  • 6人・1か月: 閉経前の女性で、ソイプロテイン60gにより生理の前半が延びた、または遅れた試験[1]。
  • 19%と8%: ゲニステイン54mgの錠剤と偽薬で、胃腸の副作用が出た人の割合[6]。
  • 3分の1から2分の1: 腸でエクオールを作れる人の割合。集団によって違う[3]。

疑問の続きは、体で確かめるのがいちばん早い。

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宮川涼 Founder

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