ランニング後の水風呂で脈が遅くなるのは、冷たさのせいなのか、水が体を押す圧のせいなのか。深い水の中での走、時点ごとに分かれる冷水の回復、温水との対比から、浅い浴槽と深い浴槽を同じ効果として扱わない読み方を示す。立川の夜の浴槽でも、水面の位置だけで決めない。
立川駅北口を渡った夜、靴を脱いで浴槽を見る。昨日の水はくるぶしで止まっていた。今日は肩まで沈めるつもりで栓を閉める。どちらも、走り終えたあとの水風呂だ。脈は、走っている最中より静かになる。
その静けさを、冷たさの成果だと決めるのは早い。深い水の中で30分走った比較では、酸素の使用はきついトレッドミル走に近く、心拍は普通の練習に近かった。著者らは、このずれを体の冷却で説明する余地と、水に浸かることで静脈の血液が心臓へ戻りやすくなる余地の、両方を残している。[1]
回復の試験が回しているのは、浅い浴槽と深い浴槽の段差ではない。固定されているのは水温と分数で、比べ相手は座って休むこと、温水、マッサージである。大会の完走日とその後の予定は「ランニング初心者が大会を目標にするなら、完走の日とその後の予定を分けて考える」に譲る。胸までと脚だけの冷却を水圧で読み分ける論点は「疲労回復の水風呂は胸まで浸かる?脚だけの冷却と水圧の働きを研究で読む」に譲る。

遅くなる脈は、冷たさの証書ではない
浴槽から上がったあと、腕時計の心拍だけを見て「よく冷えた」と書く人は多い。計測器は正直でも、正直な数字が指している原因は一つとは限らない。深い水の走は、その取り違えを数字で見せている。
対象は競走のランナー8人である。うち6人は、深い水の中で走るやり方をそれまで練習していなかった。30分、きついと感じる速さで連続して走り、同じ30分のトレッドミル(きついペースと普通の練習ペース)および屋外の普通の練習ペースと比べた。屋外走の酸素摂取の数値は結果の中心には置かれていない。示された対比はトレッドミルとのあいだである。[1]
最後の回の深い水の走で、酸素摂取は最大の73%だった。きついトレッドミルは78%で、深い水との有意差はなかった。普通の練習のトレッドミルは62%で、深い水の方が有意に高かった。呼吸交換比、自覚的な努力、脚の痛みも、同じ向きの結果だった。肺と脚の感覚は、きつい練習の側にいる。[1]
心拍は逆を向いた。深い水の走の心拍は普通の練習と同程度で、きついトレッドミルより有意に低かった。酸素はきつい日、脈は普通の日。同じ30分が、計測器のあいだで喧嘩している。著者らは、このずれの説明として冷却と、浸水による静脈還流の増加を並べ、どちらとも断定していない。[1]
静脈還流とは、静脈を通って血液が心臓へ戻ることである。水が体の外から押すと、その戻りが変わるかもしれない、という仮説だ。この試験は、冷たい水と温かい水を同じ深さで並べてはいない。深さだけを変えて、圧だけを残した条件も置いていない。だから脈の低下は、冷たさの勝ち点にも、水圧の勝ち点にも、単独ではならない。[1]
家の浴槽に置き換えるとき、もう一つ境界がある。この試験は、走り終えたあとに湯船へ入る手続きではない。水の中で走っている最中の強さを見ている。それでも、浸水が深い状態ですら、心拍は原因を一つに絞れなかった。くるぶしまでの水と肩までの水を、同じ「冷えた証拠」として脈だけで採点するのは、試験が保留した区別を、家庭の側で先に閉じることになる。[1]
水面が脛で止まる夜と、鎖骨の下まで来る夜とでは、水が触れている範囲が違う。範囲が違えば、体の外から押す入り方も同じ形とは言いにくい。ただし、その段差を走ったあとの回復の差として測った比較は、ここで使う試験には並んでいない。深い水の走が残したのは、圧と冷却を分けないままでは脈が読まれない、という注意である。[1]
疑問の続きは、体で確かめるのがいちばん早い。
回復試験が回すダイヤルは、深さより水温と時刻だ
冷水浸漬の回復を、68研究で時点ごとにまとめたメタ分析がある。浸漬のあと1時間未満、1〜6時間、24時間、48時間、72時間、96時間以上で、成績の差を見ている。短いところでは、持久の回復が1時間の時点で改善方向だった(p=0.01)。同じ早い時間帯で、スプリントは1時間で低下方向(p=0.03)、ジャンプは6時間で低下方向(p=0.04)だった。[7]
長いところの向きはまた違う。ジャンプは24時間と96時間で改善方向(p<0.01〜0.02)、筋力は24時間で改善方向(p<0.01)だった。筋の損傷の目印であるクレアチンキナーゼは24〜72時間で低下方向(p<0.01〜0.04)、筋肉痛の感じは1〜72時間で改善方向(p<0.01〜0.02)、回復したという感覚は72時間で改善方向(p<0.01)だった。冷水は、すべての能力を同じ時刻に同じ向きへ動かす手続きではない。[7]
環境と、前にした運動も条件に入る。持久の回復が改善したのは、前の運動が暑い条件のときで(p<0.01)、温和な条件では有意ではなかった(p=0.06)。涼しいから温和な条件で行った持久運動のあとでは、筋力の回復が改善方向だった(p=0.04)。レジスタンストレーニングのあとでは、スプリントの回復が改善方向だった(p=0.04)。著者らの結論は、持久の早い回復と、筋力・パワーのより遅い回復に利益がありうるが、それは前の運動の性質に依存する、というものである。[7]
別の総説は、冷却の主な利益を運動後1時間未満に置く。暑い環境での持久運動のあとの疲労耐性と、レジスタンストレーニングのあとの最大筋力である。早い時間にはスプリント後のスプリントを悪くし、持久運動の直後に神経と筋を下げうる。24〜72時間の持久と筋力では一回の冷却の利益は概して見られず、スプリントのあと24〜48時間にはいくらかの利益がありうる、とも書く。[14]
68研究のメタ分析が24時間後の筋力とジャンプを改善方向とまとめ、別の総説が24〜72時間の持久・筋力では利益は概して見られなかったと書く。この食い違いは、どちらかを捨てる材料ではない。同じ「翌日の水風呂」でも、前の運動、測る能力、暑さ、時点の幅が変わると結論が揃わない、という読み方が残る。どちらの整理も、浅い浴槽と深い浴槽の段差を結果の原因にはしていない。[7][14]
個別の試験が固定したのも、深さの段差ではなく温度と時間である。15℃で8分、10℃で10分、11.2℃前後で15分、それに冷水とマッサージと安静の比較。いずれも水面を脛・腰・胸と階段にしてはいない。[2][4][9][15]
温水を「全身」と数える線は、別の総説の採用条件に出てくる。運動後の温熱をまとめた系統的レビューは、少なくとも胸骨の高さまで浸かる温水、またはサウナを、全身の温熱として採っていた。これは深い方が浅いより回復するという結果ではない。研究者が「全身の湯」と呼ぶための入場門である。家の浴槽で水面が胸を越えたかどうかは、その門をくぐったかどうかに近く、門の内外で走力がどれだけ違ったかの測定ではない。[6]
数字で読むランニング後の水風呂
深い水の走の酸素摂取は最大の73%。きついトレッドミルは78%で有意差がなく、普通の練習は62%で深い水の方が高かった。[1]
同じ30分で、深い水の心拍は普通の練習と同程度、きついトレッドミルより有意に低かった。[1]
冷水浸漬のメタ分析は68研究。持久の回復は1時間で改善方向(p=0.01)、スプリントは1時間で低下方向(p=0.03)だった。[7]
ラグビー練習後の全身冷水は15℃で8分。24時間後の疲労困憊までの時間は対照485±72秒、冷水518±77秒で、差は有意ではなかった(P=0.107、d=0.45)。[2]
5週間、高強度インターバルのあとに11.2℃±0.2℃で15分の冷水を足しても、条件の主効果は見られなかった(p≥0.098)。[4]
運動後に40℃の湯へ40分、6日。安静時の直腸温は平均0.27℃下がり、33℃環境の5kmは4.9%短縮した。18℃環境の成績は変わらなかった。[19]
疑問の続きは、体で確かめるのがいちばん早い。
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