腕立てで腹筋はつく?計算しながら支える姿勢と続けられる時間を分けて読む

腕立てで腹筋はつくのか気になり、計算しながら姿勢を保つ練習を考えた人へ。認知課題を運動の合間に挟む試験、プランク中の注意と苦痛の研究を読み、回数・持続時間・姿勢の違いを整理する。同時にできることの多さを腹筋の強さと決めつけず、日々の記録で何を比べるかを考える。

腕立ての途中で暗算を始めたら、答えと姿勢のどちらを確かめればよいのだろう。床に手をつき、買い物の合計を思い浮かべる。答えを探しているうちに、お腹の位置が気になってくる。計算もできて姿勢も保てたら、腹筋がよく働いている証拠になるのだろうか。

ここで先に分けたいのは、頭を使う課題を足すことと、腹筋が育つことだ。身体運動と認知課題を組み合わせた無作為化試験では、動く種目の成績には改善があったが、静止する種目では対照群との差がなかった。計算を加えれば腹筋への効果も増える、と一続きには考えられない。[3]

プランクをしながら逆向きに数える課題を使った別の試験でも、注意の向け方で苦痛の感じ方には違いがあった一方、耐えられる程度には群間差がなかった。「考え事で気が紛れる」「長く支えられる」「姿勢が保てる」は、同じ成績表の欄ではない。[5]

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計算できることを腹筋の合格証にしない

「腕立てで腹筋はつく」という検索には、お腹を支える感覚を確かめたい場合と、筋肉の量が増えるかを知りたい場合が混ざる。ここで扱うのは、頭を使う課題と運動を組み合わせたときの成績である。運動の反復回数や保持時間を調べた試験の結果を、そのまま腹筋の大きさの変化に置き換えることはできない。[3]

同時に別の作業を行う条件を、ここでは二重課題と呼ぶ。研究例には、歩きながらその場で話を組み立てるものがある。女性7人を含む健康な若い成人15人を対象にした実験では、話す課題の追加が歩き方を変えた。男女を含む歩行の実験であり、18〜39歳の女性の腕立てにそのまま当てはめるには、対象と動作の両方に隔たりがある。身体運動をしながら言葉を扱うとき、運動と発話の両方を見る必要がある。[7]

ただし、歩行の実験は腕立ての姿勢を測った実験ではない。歩き方が変わったという結果から、暗算すると必ず腰が落ちる、腹筋の筋活動が低下する、といった具体的な結論を引くのは飛躍だ。身体課題も頭の課題も何だったかをそろえて、使える範囲を考える必要がある。[7]

たとえば腕立てをしながら答えを口に出せたとしても、計算の正確さしか確かめていないなら、姿勢の評価は別に残る。反対に、外から見た姿勢が同じでも、計算を途中でやめていたなら同時作業の成績は変わっている。「両方できた」を判断したいなら、両方の記録が要る。歩きながら話す研究で歩行と発話を別々に評価した設計は、この区別の参考になる。[7]

既存記事「腕立てで腹筋を支える時は吐き続ける?息の止まり方と姿勢の保ち方を考える」が扱う呼吸の問いはそちらに譲り、ここでは頭の課題をどの時点に入れるか、何を成功と呼ぶかを考える。呼吸法の選び方まで一緒に変えると、自分の練習でも比較したい問いがぼやけてしまう。

計算を間違えた日を、腹筋が弱い日と呼ぶ必要はない。逆に、暗算が滑らかだった日を腹筋が育った日と呼ぶ必要もない。研究で評価したものは、課題に応じた運動成績や認知課題の成績である。それぞれの変化として読んだほうが、練習の記録も具体的になる。[3][7]

疑問の続きは、体で確かめるのがいちばん早い。

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運動の合間に頭を使う試験は、同時の暗算とは違う

身体と認知の両方を練習する方法を調べた無作為化試験は、合計29人を対象にした別々の実験から成る。18〜39歳の女性にそのまま当てはめられるかは、この小規模な試験だけでは判断できない。認知課題を組み込む群と対照群に分け、練習前後の運動成績を比べた。研究者が使ったのは、記憶を更新する課題や、反応を抑える課題などだ。単に好きなことを考えながら運動する条件ではない。[3]

記憶の更新とは、覚えている内容を新しい情報に合わせて入れ替える作業である。反応の抑制は、反応したくなる場面でそれを止める作業だ。この試験では、そうした課題を身体運動と組み合わせる練習を、週3回、4週間行った。日常の「ながら運動」という言葉よりも、課題と配置が具体的に決まっている。[3]

最初の実験では、限界より手前で終える運動の後に、3分間の認知課題を置いた。認知課題の負荷が高い群と低い群を比較している。もう一方では、認知課題または休憩の後に運動する構成が使われた。運動中に計算を続ける方法とは、課題を行う順番が異なる。[3]

評価時には、20分間の認知課題を行う前後で、限界までの運動を測った。練習後、認知課題を組み込んだ群は対照群より動的な運動の成績がよかった。一方、静的な運動では差がなかった。動的とは動作を繰り返す条件、静的とは姿勢を保持する条件である。[3]

ここで目を留めたいのは、よくなった成績と、同じだった成績が並んでいることだ。腕立てなどで繰り返せる動作の成績がよかった結果は、プランクで支え続ける成績までよくなったことを意味しない。「体幹にも頭を使えば何でも伸びる」という売り文句には、この静的運動の結果が収まりにくい。[3]

さらに、主観的な運動のきつさと精神的疲労には、群や測定時点による差がなかった。この試験では、成績の改善に、きつさや精神的疲労の群間差は伴わなかった。楽に感じなかったから成果なし、長くできたから必ず楽になった、とどちら向きにも決めない読み方が必要だ。[3]

対象は小規模であり、ここから普段の腕立てに足す計算の難しさや、個人に合う練習量を決めることはできない。むしろ参考になるのは、運動と頭の課題の順番を明確にし、反復する種目と止まる種目を分けて評価した点である。台所の暗算と研究の課題を同じ箱に入れないことが、結果を日常へ持ち帰る出発点になる。[3]

数える注意と、支え続ける成績を分ける

プランクの最中に頭の課題を行った研究もある。日常的に運動する成人55人を、身体感覚に注意を向ける群と、逆向きに数えて身体感覚から注意を離す群に無作為に分け、前腕で支えるプランクと壁にもたれる保持課題を行わせた。こちらは運動中の注意の置き方そのものを比べている。18〜39歳の女性にそのまま当てはめられるかは、日常的に運動する成人の結果として慎重に考える必要がある。[5]

身体感覚に注意を向ける群は、マインドフルな注意を用いた。ここでは、運動中の感覚に向き合う注意の使い方である。対する群は、数えるという頭の作業に注意を向けた。スマートフォンを眺めて何となく気を逸らす場面とは、作業の内容が違う。[5]

プランクでは、身体感覚に注意を向けた群のほうが苦痛の強さが低かった。一方、苦痛への耐性、主観的な運動のきつさ、基本的な感情状態には群間差がなかった。この比較では、気を逸らす課題の優位性は示されなかった。苦痛の強さと、耐性やきつさの結果は分かれた。[5]

この比較から、自分の感覚へ注意を向けることを「つらさを我慢する技術」と解釈するのも違う。少なくとも群間差があったのはプランク中の苦痛の強さなどであり、苦痛への耐性ではなかった。感覚の捉え方を調べる話と、限界を押し広げる話を混ぜないほうがよい。[5]

自宅では、数えながら耐えたという体験が強く印象に残りやすい。だが感想を記録するなら、「気が紛れた」と「長く続いた」は別の欄にしておくと読み返しやすい。この試験が苦痛の強さ、耐性、運動のきつさを分けて測ったように、自分の言葉も分けておく。時計の記録だけでは、体験の違いまでは残らない。[5]

注意の試験で使った身体課題が、プランクだけではなかった点も見逃せない。壁にもたれて姿勢を保持する課題でも比較したが、苦痛の強さが低かったのはプランクだけだった。注意の使い方が同じでも、結果は保持課題によって異なった。プランクでの体験を腕立ての上下動へ移すときにも、身体課題が変わったことを残して考えたい。[5]

また、認知課題を組み込む練習の試験では、練習したもの以外の新しい運動や認知課題への波及も調べられた。認知課題の成績は、認知課題を組み込む群がよいか、群間で差がないかのいずれかだった。身体の成績だけを見て「頭の作業は犠牲になった」と決めることも、反対にすべての認知機能が向上したと読むこともできない。測った課題に近い範囲での波及として受け取る結果だ。[3]

これらを合わせると、どの身体課題にどの注意の使い方を組み合わせたかが、結果の読み方を決める。計算という名前が同じでも、運動中に逆向きに数える条件と、運動の合間に記憶を更新する条件は分けて扱いたい。[3][5]

数字で読む頭の課題と運動

29人:身体運動に認知課題を組み込む無作為化試験の、別々の実験を合わせた人数である。[3]

週3回・4週間:同試験の練習頻度と期間であり、自宅の腕立てに一律に勧める量ではない。[3]

20分間:同試験の評価時に、運動の前後比較に用いた認知課題の長さである。[3]

55人:運動中の注意の向け方を比較した成人の人数である。苦痛への耐性には群間差がなかった。[5]

15人:歩きながら即興で話す実験の対象人数であり、腕立て中の計算を測った人数ではない。[7]

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宮川涼 Founder

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