間食の餅はつく回数で伸びが決まる?粒の残り方と網目を分けて食感を読む

間食の餅を選ぶとき、よくついた餅ほど伸びると思っていないだろうか。でんぷんの鎖を変えた実験、配合を変えた食品研究、運動中の補給試験から、硬さ・まとまり・飲み込みやすさの違いを読む。つく回数を食感や消化の目安にする前に、比べる条件と研究で確かめた範囲を整理する。

餅を箸で持ち上げる。長く伸びるものと、粒の気配を残して切れるものがある。間食に食べるなら、どちらが好みだろうか。「よくついてあるから」という説明を聞くと、その回数だけで食感を説明できそうな気もする。

つく回数だけでは、餅の伸びを判断できない。でんぷんの構造を変えた食品実験では、硬さが下がってもまとまりやすさは変わらない結果が得られている。食感は、軟らかいか硬いかという物差しだけでは収まらない。[18]

ここで考えるのは、粒の残り方と、でんぷんがつくる構造をどう分けて見るかである。既存記事「糖質制限のわらび餅は名前で選べる?原料と加工で変わるでんぷんの消化を読む」には原料と消化の話を譲る。こちらでは、餅のつき方からどこまで食感を判断できるかを考える。

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つく回数と伸びを、同じ目盛りにしない

「よくついた餅」という言葉には、作業の説明と食べた感想が重なっている。作業としての回数を知りたいのか、粒を感じない滑らかさが欲しいのか、持ち上げたときの伸びを楽しみたいのか。まず、自分が確かめたいことを言葉にしておきたい。食べ比べの目的を先に決めるのである。

粒が目に見えるかどうかは、食卓で記録しやすい。一方、でんぷん内部の構造は、見た目だけで読み切れるものではない。餅製造の副産物を粉にし、酵素で加工した研究では、でんぷんの鎖の長さの分布と分子量を調べ、その変化を加熱・冷却時の性質と結び付けている。食品の表面を眺めるのとは、調べている階層が違う。[18]

この研究の加工は、杵でつく作業ではない。酵素によってでんぷんの鎖を組み替える処理である。その結果を「同じ回数だけつけば同じ構造になる」という家庭の手順に置き換えることはできない。つく回数の答えを探す際にも、処理の名前と実際に変えた条件を一致させる必要がある。[18]

たとえば、粒を感じる餅と滑らかな餅を食べ比べたとする。「滑らかな方が好きだ」は、その人の感想として成立する。しかし「粒がなくなるほどでんぷんの網目が強くなった」と説明するには、内部構造や力を加えた際の応答を調べる別の作業が要る。構造を扱う食品研究は、そうした測定を伴っている。[17][18]

回数という札は分かりやすい。だが、札の読みやすさと、説明の正確さは別である。買う場面では製法の言葉を参考にしつつ、好みの判断は「粒感」「硬さ」「引いたときの伸び」など、実際に感じたい性質に分けておく。それなら、回数の多さを品質の順位にせずに選べる。

疑問の続きは、体で確かめるのがいちばん早い。

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でんぷんの網目は、何を測って読むのか

「網目」という表現を聞くと、細かく編まれた布のようなものを想像しやすい。ここでは、でんぷんの鎖の組織化や、ほかの成分との関わりを考えるための言葉として使う。酵素加工の研究では、鎖の長さや分子量の変化が、加熱と冷却を繰り返した際の粘弾性的な挙動に寄与した可能性が示されている。[18]

粘弾性とは、流れるような性質と、変形から戻ろうとする性質の両面を扱う見方である。この研究でも、でんぷんの鎖を変えた試料について、加熱・冷却中にどう振る舞うかを調べている。箸で引いた長さを測ることと同じ試験ではない。[18]

酵素処理によって、短い鎖が減り、中くらいの長さの鎖が増えた。重量平均分子量、つまり分子の重さを大きい分子の寄与も含めて平均した値は、元の試料の8.78×10の7乗から、処理後には2.48〜4.86×10の7乗へ下がった。構造の変化は、単に粒を細かくしたという説明では表せない。[18]

さらに、同じ研究の食感測定では硬さが下がる一方、凝集性は変わらなかった。凝集性は、試料のまとまりを評価する指標である。「軟らかくなったなら、まとまりも弱くなったはず」という予想は、この実験の結果とは一致しない。[18]

この組み合わせが、餅を選ぶ際の大事な手掛かりになる。硬さ、まとまり、伸びをひとまとめに「もちもち」と呼んでしまうと、何が好きだったのかが曖昧になる。硬さが変わっても別の性質は維持される例がある以上、食感を説明する言葉も分けた方が、研究と食卓をつなぎやすい。[18]

ただし、この結果の対象は酵素加工した餅由来の粉のゲルである。ゲルは、ここでは形を保つ試料を指す。家庭でついた餅全般の評価ではなく、材料と処理を決めた食品開発の実験として読むべきだ。人を対象にした摂食試験とは異なり、18〜39歳の女性が食べたときの感覚や体内の反応へ、そのまま当てはめることはできない。そこで見つかった性質を、すぐに店頭の餅の優劣に変換しない。[18]

酵素加工の研究は、冷凍した後の状態も調べている。加工条件の異なる試料のうち、ある試料では凍結・解凍に対する安定性が改善し、離水は元の試料の9.35%に対して4.65%だった。離水とは、試料から水が分かれて出る現象である。軟らかさの測定とは別に、水をどの程度保つかを評価した結果だ。[18]

別の加工条件の試料では、貯蔵弾性率の回復が109%を超えた。貯蔵弾性率は、変形に対して弾性的に応答する性質を評価する指標である。ここでの回復率は、加熱と冷却を繰り返す試験での値であり、餅を引っ張った長さが同じ割合で増えたという意味ではない。[18]

しかも、離水が改善した試料と、回復率が高かった試料は同じ加工条件ではない。好ましい結果を全部つなぎ合わせて「この加工なら何でも改善する」と読むのも早計だ。食品研究を選び方に役立てるには、結果の数字に付いていた試料の条件を外さないことが大切になる。[18]

家庭で思い出すなら、食べた直後の印象だけでなく、どんな状態で食べたかを一緒に書いておくとよい。温めて皿へ移した場面なのか、保存後に食べた場面なのか。こうしたメモで内部構造を証明できるわけではないが、次に自分の好みを確かめる際の条件は整理できる。

配合を変えた餅では、食感と消化を別々に測る

もう一つの食品実験では、米ぬか油を細かい油滴として分散させた乳化物に、ブドウ種子由来の成分を含ませている。乳化とは、油を細かな粒として分散させる加工である。さらに、グリアジンとペクチンを使ってその状態を安定させ、餅への添加を調べた。つく力ではなく、配合を変えた試験だ。[17]

この研究では、油滴の周囲に密な粒子の層が見られ、成分間の相互作用も調べられている。餅に加えた際には官能的な品質、つまり人が感じる品質が改善し、でんぷんとの包接複合体も検出された。包接複合体とは、成分を取り込んだ構造のことだ。食感を考える際、でんぷんだけを孤立させて見ない例となる。[17]

同時に行った試験管内の消化実験では、速く消化されるでんぷんの割合が70.35%から55.03%へ減り、消化されにくいレジスタントスターチの割合は4.22%から14.39%へ増えた。食品内の構造と消化の関係を、実験条件を定めて調べた結果である。対象は配合を変えた食品であり、18〜39歳の女性が食べた後の消化や血糖に、そのまま当てはめられる結果ではない。[17]

ここで重要なのは、食感の評価と消化の評価を別々に行っている点だ。「おいしく感じたから消化されにくい」「伸びたから血糖が上がりやすい」と、口の中の感想からもう片方を推定したわけではない。異なる測定を重ねたことで、それぞれの変化を述べられている。[17]

予測された血糖指数も94.61から84.73へ下がった。ただし、これは試験管内の消化に基づく予測値であり、人が食べた後の血糖を直接測った結果としては扱わない。配合の研究から、市販の餅や自家製の餅に同じ数値を割り当てることもできない。[17]

間食を選ぶ場面では、「伸びる餅」と「消化の性質を測定した餅」を同じ分類にしないのがよい。製法の説明を読んだら、何を加え、何を比べ、何を測った話なのかに戻る。健康によさそうな響きだけで、自分の好みを脇へ置く必要はない。

たとえば、この乳化物の研究を読んで家庭の餅に油を加えるとしても、研究と同じものを再現したとは言えない。研究では油滴を安定させる成分や、ブドウ種子由来の成分を組み合わせている。「油入り」という共通点だけでは、構造や消化の結果まで共有できない。配合名を短く言い換えるほど、実験条件との距離に気を付けたい。[17]

数字で読む餅の構造と比較条件

70.35%から55.03%へ。特殊な乳化物を加えた餅の、試験管内で速く消化されるでんぷんの割合である。[17]

4.22%から14.39%へ。同じ食品実験でのレジスタントスターチの割合である。[17]

4.65%と9.35%。酵素加工した一部のゲル試料と元の粉の試料を比較した、離水の値である。[18]

399人中63人。食品による気道閉塞で搬送された人の観察研究で、餅が原因だった人数である。[14]

0.93、95%信頼区間0.41〜2.11。同じ観察研究で、背景を調整した餅関連の気道閉塞の30日生存に対するオッズ比である。[14]

疑問の続きは、体で確かめるのがいちばん早い。

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宮川涼 Founder

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