画面越しの運動指導は、対面と同じ結果を出せるのか。対面の組だけ体力が伸びたピラティスの試験、ジムから自宅に移った高齢者の脂肪の落ち方、家の運動を最後まで続けた人の割合、半年で消えた体重の差までを論文で確かめ、画面越しの教室を続けるための条件をたどる。
画面の向こうで指導者が手本を見せ、自分の部屋の床で同じ形をなぞる。通う手間はなく、終われば数歩で台所に戻れる。この形の運動を調べた試験を並べてみると、結果は思ったほどそろわない。
新型コロナの後遺症で疲れが抜けない成人を、オンラインのマットピラティス、対面のマットピラティス、運動をしない組に分けた試験がある。12週間のあと、疲れと持久力が良くなったのは対面の組だけで、画面越しの組にはその変化が出なかった。[18]
逆の向きに見える結果もある。ジムで指導を受けながら筋トレをしていた肥満の高齢者のうち、ロックダウンで自宅の運動に切り替えるしかなかった人たちは、ジムに残った人より多くの脂肪を落とした。しかもその自宅の運動には、指導者の監督が付いていなかった。[3]
二つの結果は、互いを打ち消すものとは限らない。測ったのが疲れと持久力なのか脂肪なのか。食事の指導が並んで走っていたか。組を偶然で分けたのか、外の事情で分かれたのか。その違いをほどいていくと、「画面越しで続くか」という問いは、「何を続け、何で結果を測るか」という問いに近づいていく。[3][18]
同じピラティスでも、対面の組だけ体力が伸びた
ピラティスの試験に参加したのは、疲れを主な症状とするコロナの後遺症と診断された49人で、平均年齢は52歳だった。無作為に三つの組に分け、オンラインと対面の二つの組は、マットピラティスを週3回、12週間続けた。もう一つの組は運動をしていない。[18]
試験では、疲れの程度、日常の動作に使う体の力、体格、体組成、血糖や脂質などの代謝の指標を、運動の前と後で測った。運動のあと、全体の疲れ、体の疲れ、心の疲れがそろって軽くなり、体幹の筋力、腕の筋持久力、有酸素の運動能力が上がったのは、対面の組だけだった。伸びた項目は、疲れの軽さ、筋力、持久力と、体を動かす力に関わるものに集まっている。[18]
体重の側は、どの組でも動かなかった。体脂肪量、筋肉量、体脂肪率、体重、BMI、腹囲、腰回りのいずれにも変化は見られず、血糖、HbA1c、中性脂肪、コレステロール、血圧にも有意な変化はなかった。週3回の運動を3か月続けても、体の数字のほうは三つの組で同じ顔をしていたことになる。[18]
この結果から、画面越しのピラティスに意味がないと決めるのは早い。一つの組は16人前後と小さく、対象はコロナの後遺症で疲れを抱えた人に限られる。言えるのは、同じ種目・同じ回数・同じ期間にそろえても、画面越しと対面で結果が同じになるとは限らなかった、という一点だ。[18]
読んだ分のカロリーは、石の上で返せる。
ジムから自宅へ移った高齢者は、脂肪を多く落とした
もう一つの試験は、肥満のある60〜89歳の30人を対象にした。もともとは、ジムで高い強度の筋トレと衝撃を伴う運動を、指導者の監督のもとで行いながら、食事で減量する12週間の試験の一部だった。途中でコロナのロックダウンが起き、13人(43%)が自宅の運動に移った。[3]
自宅に移った人には、自分の体重を負荷にする筋トレと有酸素の運動が処方され、減量のための食事の指導はそのまま続いた。12週間のあと、体重は両方の組で有意に減り、ジムの組で平均4.4 kg、自宅の組で平均6.2 kg落ちていた。脂肪量の減りは自宅の組のほうが大きく、効果の大きさは「大きい」と評価された。一方で、体の動く力の指標が良くなったのは、ジムの組だけである。[3]
この比べ方には注意が要る。自宅に移る人はロックダウンという外の事情で決まり、無作為に分けた組ではない。人数も13人と17人である。自宅の組が脂肪を多く落とした理由を、この試験の数字だけで「自宅のほうが効く」と読み替えることはできない。[3]
自宅に移った8人への聞き取りでは、通わずに済むこと、自分で責任を持って続けること、意欲、医療者からの支え、決まった流れの大切さなどが語られた。画面越しの面談で支えを受けることにも前向きだった。反対に、器具が足りないこと、デジタルの支えが足りないこと、監督がないことを難しさとして挙げた人もいた。著者らは、自宅の運動は食事による減量を支える可能性があるとしつつ、体の動く力への効果はさらに調べる必要があるとまとめている。[3]
ピラティスの試験と並べると、ひとつの共通点が見えてくる。持久力や体の動く力の指標が伸びたのは、どちらの試験でも、指導者と同じ部屋で動いた側だった。脂肪の減り方はそろわなかったが、ジムの試験では減量のための食事の指導が並んでいた。ピラティスの試験が比べたのは、運動の形と、運動をするかしないかである。[3][18]
家の運動を最後まで続けた人は、どれくらいいたか
「続くか」を数字で見るには、試験が何を「続いた」と数えたかを先に見たい。ガーナで2型糖尿病のある成人87人を、自宅で行う12週間の身体活動のプログラムと、通常の糖尿病の診療だけの組に分けた試験がある。参加者はコルレブ教育病院に通う患者から選ばれ、プログラムはその土地の文化に合わせて作られた。運動の回数は全部で36回である。[20]

写真: Shixart1985 / CC BY 2.0 / Wikimedia Commons
プログラムに割り付けられた44人のうち、36回をすべて終えたのは32人で、割合にすると72.7%である。残りのうち11人は、全体の80%の回をこなした。生活の質を測る質問票では、8つの側面のうち体の働きと活力の2つが、通常の診療の組より良くなった。試験の期間に有害な出来事は報告されていない。著者らは、このプログラムは実行でき、安全だったとしながら、大規模な試験で確かめる必要があると書いている。[20]
閉経後の女性を対象にした別の試験では、器具を使わない自宅のインターバル運動を週3回、8週間行った。参加したのは、運動の習慣がなく過体重か肥満のある30人で、平均年齢は56.7歳、平均BMIは30.5だった。運動だけの組と、運動に地中海式の食事を足した組は、どちらも運動しない組に比べて体重、BMI、腹囲が減った。内臓脂肪の指標には組の間の差がなく、レプチンとアディポネクチンはどの組でも変わらなかった。運動に食事を足した組では、80%の人が食事の指導を十分に守れていた。[15]
この二つは、人数が少なく、期間も8〜12週間と短い。それでも、家の運動の続き方を「終えた回数の割合」で示した例として読める。逆に言えば、試験に参加する人は、そもそも運動を始めようと決めて名乗り出た人である。72.7%という割合を、画面越しの教室に申し込んだ人すべての見込みとして受け取らないほうがよい。[15][20]
数字で読む画面越しと自宅の運動
順に16人、15人、18人:コロナの後遺症で疲れがある成人49人を分けた、オンラインのピラティスの組、対面のピラティスの組、運動しない組の人数。[18]
−3.1 kg:自宅の運動に移った高齢者の組が、ジムに残った組より多く減らした脂肪量の差の平均。95%信頼区間は−6.0〜−0.3 kgで、組は無作為ではなく外の事情で分かれた。[3]
11人(25%):自宅の身体活動のプログラムに割り付けられた44人のうち、36回すべては終えなかったが80%の回をこなした人の数。[20]
順に85%、96%:器具を使わない自宅のインターバル運動の試験で、運動だけの組と、運動に地中海式の食事を足した組の、運動の実施の割合。[15]
35%未満:音声アシスタントで運動を届けた試験の論文が、背景で挙げた従来の運動プログラムへの順守の水準。この試験の結果ではない。[6]
読んだ分のカロリーは、石の上で返せる。
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