女性のプロテインを選ぶとき、栄養表示の合計が合わないだけで品質を判断してよいのか。海外の食品で表示値と実測値を比較した研究から、丸めと許容幅の違い、栄養素ごとに評価する必要性を読む。小数点の細かさや人気に頼らず、購入前に表示のどこを確かめ、何を問い合わせるかを整理する。
プロテインの袋と電卓を食卓に並べる。目立つたんぱく質の数字は読めた。ところが、ほかの欄まで足してみると、思ったように合わない。人気の商品でも、電卓には人気が伝わらない。
その不一致だけで、表示が正しいとも、間違いとも決めない方がよい。食品を実際に分析して表示と比べた研究では、差の大きさだけでなく、どの栄養素をどう評価するかによって適合する製品の割合が変わっている。[5] まず分けたいのは、書かれた数字を足す作業と、中身を測って表示を確かめる作業だ。
既存記事「女性のプロテインは表示だけで安全が分かる?重金属の測定値と飲む量を読む」には安全性の論点を譲る。また「プロテインの表示は小数点以下も比べる?分析の精度から端数の順位を考える」が扱う端数による順位付けとも分け、ここでは同じ袋の数字同士が合わないときの確認を考える。海外の一般食品の結果を、そのまま国内の女性向けプロテインの成績にはしない。

表示の計算と、中身の検査は別の問いである
袋に印刷された値を表示値、検査室で食品を分析して得た値を実測値と呼ぶことにする。カンボジア、インドネシア、セネガルの市販の乳幼児向け補完食を調べた研究では、この両者を栄養素ごとに照合した。[1] 対象は乳幼児向け食品であり、18〜39歳の女性向けプロテインの表示精度にそのまま当てはめることはできない。計算機で確かめられるのは表示された数字の関係であり、この調査が確かめたのは食品と表示の関係である。
たとえば、袋の中でどの欄を足したのか、どの数値と一致すると思ったのかを、言葉で残してみる。「全体に合わない」という感想を、「この欄とこの欄を足した結果が、この欄と違う」という問いに変える作業だ。これは検査の代わりではない。販売元に説明を求める際に、見ている箇所を共有するための準備である。
端数を整理して数値を示すことを、ここでは丸めと呼ぶ。ただし、不一致を見つけるたびに「丸めだから問題ない」と片付けるのも早い。表示値と実測値の差を判定する研究は、許容幅という別の物差しを使っている。[1][5] 数字をどう表すかという話と、測った中身との差をどこまで認めるかという話を、ひとまとめにしないことが出発点になる。
同じ数値を眺めていても、尋ねる相手によって質問は変わる。自分には「比較する量はそろっているか」、販売元には「この表示の計算関係はどう説明されるか」、検査結果には「何を測り、どの条件で照合したか」を尋ねたい。すべてを電卓だけで答えようとすると、表示の読み違いまで品質の問題に見えてしまう。
初日の汗は、予約した人だけが持ち帰れる。
許容幅を変えると、同じ製品の判定も変わった
オーストラリア市場の研究は、異なる食品70製品について350試料を分析した調査である。各栄養成分の実測値と表示値に有意な食い違いがあり、成分別の平均的なずれは−13%から+61%の範囲と報告された。[5] 対象は人ではなく市販食品であり、18〜39歳の女性が使う国内のプロテインにも同じずれがあるかは、この調査から判断できない。
ここで興味深いのは、大きな数字だけではない。研究者が、各栄養成分の差を一律に±20%まで認める条件を当てはめると、全項目が適合する製品は16%だった。一方、栄養成分に応じて上側と下側を別に判定する条件では51%になった。[5] 同じ食品を調べても、判定の組み立てによって答えが変わったのである。
さらに、消費者にとって重要でないほど少量の差を適合として扱うと、それぞれ27%と70%へ上がった。[5] 小さな差をどこまで拾うかが、製品全体の合否に関わっている。細かく調べる姿勢と、あらゆる小差を同じ重みで扱う姿勢は区別したい。
ただし、この研究の±20%を、日本のプロテインならどれでも当てはまる基準として使うことはできない。これは海外市場の食品を、研究者が設定した条件で評価した結果である。[5] 買った袋の不一致を見て、その幅以内だから合格、と自分で検収を終えない方がよい。逆に、その幅を超えたという計算だけで国内制度への違反を断定することも避けたい。
少量成分の扱いについて、この調査では具体的な境目も設けていた。栄養成分では100g当たり1g未満、エネルギーでは100g当たり10kJ未満の差などを適合と数え直している。[5] ここで見るべきなのは、その境目を家庭の袋へ借りてくることではない。割合の差だけで判定する場合と、実際の量として小さい差を別扱いする場合で、製品評価が動くという構造である。
割合で示されたずれを見るときには、何を分母にした割合かも確認したい。表示の値が小さい成分の差と、袋の主な栄養成分の差を、同じ見た目の割合だけで並べると、食べる量の違いが見えなくなる。この研究が小差を除いた条件でも評価したことは、表示の比較で量の視点を失わないための手がかりになる。[5] 大きな割合が目に入ったら、どの成分についての数値かへ戻るのである。
また、古い調査結果は、その時点の市場を調べた記録として読む必要がある。オーストラリアの研究は2006年の報告である。[5] 現在の棚に並ぶ製品が同じ割合で適合するという予測には使わず、表示を評価するときにどんな条件が必要かを知る材料にしたい。研究の年と自分が購入する袋の日付を混ぜないことも、数字の読み方の一部になる。
数字の意味を保つには、主語を落とさないことだ。「食品表示はずれる」だけなら、どの製品にも同じ程度の差があるように聞こえる。正確には、この調査で扱った食品について、成分によって異なるずれが見つかり、判定条件で製品の適合割合が変化した、である。[5] 不安の大きさを数字に合わせる前に、数字の対象を確かめたい。
ずれがあった研究と、表示が役立った研究を並べる
乳幼児向け補完食の調査では、対象は43製品だった。評価した栄養素のうち、いずれかの表示値が欠けていた製品は38製品、88.4%であり、調べた9栄養素すべてで研究に用いた許容条件を満たす製品はなかった。[1] ここには、値がずれる問題だけでなく、そもそも比較する表示がそろわない問題も含まれる。
一方、炭水化物・たんぱく質・総脂質という主要栄養素の表示では、評価できた42製品中23製品、54.8%が許容条件に適合した。[1] 「全栄養素で合格した製品がない」と「主要栄養素の表示がすべて不正確」は同じではない。製品全体の判定を、たんぱく質だけの不一致率に読み替えると、研究が答えた範囲を外れる。
この区別は、プロテインの袋を読むときにも確認の視点として使える。気になるのはたんぱく質の欄なのか、別の栄養素なのか、表示の欠落なのか。問い合わせでは、困っている項目を絞った方が話が通じる。ただし、この補完食の割合から、国内のプロテインにも同じ頻度で問題があるとは推定しない。対象と食品の用途が違うためだ。[1]
反対側の結果もある。スペインで、よく消費される加工食品1173品の糖類について表示と実測を比較した調査では、研究に用いた欧州の許容条件への適合性が高いと評価され、糖類を減らす取り組みに表示値を使う妥当性が支持された。[4] 対象は加工食品の糖類であり、18〜39歳の女性が選ぶプロテインのたんぱく質表示へ結果をそのまま移せない。表示の有用性は、調べた食品と成分に即して評価したい。
先に挙げた乳幼児向け補完食の調査では、鉄の含有をうたう表示と実際の鉄の量も比較された。43製品のうち19製品に鉄の含有についての表示があり、そのうち26.3%では鉄の表示値が不正確で、多くは表示より実測の鉄が少なかった。[1] これは鉄についての結果であり、同じ割合をたんぱく質へ移すことはできない。それでも、袋の表で成分を強調することと、その成分の量が検査で確かめられることを分ける例にはなる。
このスペインの研究も、プロテインのたんぱく質の正確さを保証するものではない。調べた成分は糖類である。[4] それでも、ずれの目立った研究だけを拾って表示全般を疑う見方への歯止めになる。食品、成分、比較の条件をそろえて読むと、不一致を過小評価する必要も、表示を丸ごと捨てる必要もなくなる。
数字で読む表示値と実測値の比較
70製品・350試料:オーストラリアの食品表示を分析した調査の規模である。[5]
16%と51%:同じ調査で、一律の許容幅と上下を分けた条件による製品適合割合である。[5]
27%と70%:小さな差の扱いを変えた際の、それぞれの製品適合割合である。[5]
43製品:複数国の乳幼児向け補完食を調べた数であり、成人向け粉末の標本ではない。[1]
1173品:スペインで糖類の表示と実測を比べた加工食品の数である。[4]
初日の汗は、予約した人だけが持ち帰れる。
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