ダイエット中のウイスキーは食欲を抑える?飲むための食事抜きを考える

ダイエット中にウイスキーで食欲を抑えようとする前に、糖質の表示、食べたい感覚、実際の食事量を分けて考える。飲酒に合わせて食事を減らす行動の調査や、食欲と飲酒欲求を扱う試験を読み、夕食を抜かずに晩酌との付き合い方を見直す視点を示す。体型への不安を一杯の選び方だけで解決しないための記事である。

まな板には切る前の野菜があるのに、夕食より先にウイスキーのグラスを出す。「糖質が少なそうだから」「これで食欲が落ち着けば」と考えて、用意するはずだった食事を後回しにする。この記事で立ち止まりたいのは、その順番である。

ここで検討する研究からは、ウイスキーを食欲抑制の道具として勧められない。食欲に関係する仕組みが飲酒にも関わることと、飲めば食事量を適切に減らせることは別である。食欲と飲酒を扱う系統的レビューが検討しているのは、主に薬によって飲酒行動が変わる可能性であり、酒を使って食欲を抑える方法ではない。[17]

むしろ確認したいのは、飲酒に合わせて食事を削っていないかである。英国の成人飲酒者の調査では、酒に関連して食事や行動を調整する人がいた。体重管理のためという説明だけでは捉えられず、飲むための金銭的な動機も関係していた。[3] グラスの中身を選ぶ話から、夕食を残す理由へ視線を移してみたい。

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糖質の表示と、夕食を抜く判断はつなげない

「糖質ゼロなら食べたい気持ちも抑えられる」という期待には、間に飛び越えた問いがある。飲み物の成分を確かめること、飲んだ後の感覚を確かめること、実際に食べた内容を確かめることは、それぞれ違う作業だ。ここではウイスキーの成分値や銘柄の比較から、食欲への効果を推定しない。

食事と飲酒の問題行動を扱うレビューでは、酒のエネルギーを埋め合わせたり、酔いを強めたりする目的で、飲酒前の食事を制限する行動が論じられている。[19] 「飲み物を替えたから大丈夫」という納得のあとに、さらに夕食まで減らす。その組み合わせになっていないかを確認することが、この問いでは大切になる。

たとえば、料理を作る前から「今夜は飲むから主食はやめよう」と決めたとする。その晩に食事が少なかったとしても、それだけで酒の食欲抑制作用を示したことにはならない。自分で食事を用意しないと決めた行動と、体に起きた食欲の変化が混ざっているからだ。研究を読むときも、日々の記録でも、この区別を残しておきたい。[19]

飲酒後の空腹感と摂取量の関係は、既存記事「食欲を抑えきれないのはお酒も関係する?飲酒後の空腹感と食べる量を分けて読む」に譲る。また、「寝る前のお酒とむくみ、尿が増えた夜と翌朝のホルモン反応をどう読み分ける?」は水分の話である。ここで扱うのは、ウイスキーを選ぶときの期待が、食事を抜く理由になっていないかという問いだ。

成分表示を見るなら、その確認で何を決めたいのかを言葉にするとよい。「商品を比較したい」と「今夜の夕食を省きたい」では判断の対象が違う。表示を読む習慣自体をやめる必要はない。ただし、表示から食事制限の許可までを一息に導かない。食事を酒のための調整弁にする行動は、研究でも独立した問題として扱われている。[3][19]

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飲むための調整は、若者だけの話ではない

Goodwinらの研究は、飲酒経験のある英国の成人117人、年齢18〜76歳を対象とした横断調査である。横断調査とは、ある時点で回答を集めて、行動や背景の関連を調べる研究だ。参加者の64%が、酒に関連した補償行動を少なくとも何らかの形で報告した。幅広い年齢の成人をまとめた結果であり、18〜39歳の女性に同じ割合や関連の強さをそのまま当てはめることはできない。[3]

ここでいう補償行動は、飲酒に合わせて食事などを調整する行動を指す。ただし、64%全員が夕食を抜いたと読むのは誤りだ。研究が数えたのは質問尺度に含まれる行動のいずれかであり、特定の食事抜きだけの割合ではない。数字が大きく見えるときほど、何をまとめて数えたのかを見たい。[3]

年齢が若いほど行動の尺度得点が高い関連があり、その関係の大きさを示す指標はf²=0.20だった。一方、体格指数であるBMIとは関連しなかった。[3] 体の大きさを見ただけで、飲酒のために無理な食事調整をしているかどうかは判断できない、という読み方になる。痩せている人だけ、あるいは体重を気にする人だけの問題として眺めないほうがよい。

とくに強く一貫して関連したのは、飲酒に関する金銭的な動機だった。回帰分析での係数はβ=0.48であり、ほかの要因を調整した解析でも関連が残った。[3] これは「節約したら食事を抜くようになる」と原因を確定する値ではない。食事と酒をどう配分するかには、体型以外の事情も入り込むという結果である。

帰宅前の買い物で、食材を減らして酒を残す。外食で食事の注文をためらい、飲む分の予算を確保する。こうした場面を自分の生活と照らし合わせることはできる。ただし、これらは調査対象者全員の実際の行動を再現したものではない。自分の選択理由を探すための例である。「食欲がなかった」で片づける前に、買わなかったのか、食べるつもりがなかったのかを分けてみたい。

この調査は飲酒者全体を代表する全国調査ではなく、行動が始まる順序も確定しない。[3] それでも、「学生の飲み会の話だから自分には関係ない」と切り離さない材料にはなる。酒の種類を変える前に、食事を減らしてまで飲む必要を感じているのかを問う。その問いなら、年齢や体型に関係なく自分の言葉で答えられる。

食べたい気持ちが弱くても、食事量は別に測る

食欲を調べる研究には、気持ちを尋ねるものと、食べた量を測るものがある。両方を測っても、結果が同じ方向に動くとは限らない。それを具体的に示すのが、食べ物への反応を変えるスマートフォン課題のランダム化比較試験である。[8]

この試験はウイスキーの実験ではない。参加者156人を対象に、本人が減らしたい食べ物から遠ざかり、増やしたい食べ物には近づく操作をする課題を、2週間で6回行った。比較対象は、どの刺激にも同じ頻度で近づいたり遠ざかったりする課題だった。[8] 無作為に条件を分けることで、課題の違いによる変化を検討した研究である。個人の食事目標に合わせた課題の結果であり、18〜39歳の女性の晩酌にそのまま当てはめる根拠にはならない。[8]

減らしたい食べ物への欲求の強さは、対照条件より低下した。推定係数は−0.19、95%の最高密度区間は−0.31〜−0.05だった。最高密度区間とは、統計モデルで推定値の不確かさを表す区間であり、体重や食事の重量ではない。[8] 小数の値を、そのまま何割減や何グラム減に読み替えないことが大切だ。

一方、欲求が起こる頻度への効果はなく、実際の食事摂取量に解釈可能な介入効果は認められなかった。介入後の欲求低下も追跡時には維持されなかった。[8] 食べたい感じが弱まるという結果があっても、食事量が減る、長く続く、体重が変わる、という結論までは自動で付いてこないのである。

変化がいつまで続いたかも見逃せない。この試験で減らしたい食べ物への欲求の強さが低下したのは、介入終了後の4日間であり、4週間後の追跡では元に戻っていた。[8] 帰宅して食べたいと思わなかった晩の感覚から、翌週も同じだろうと見積もるのは早い。短い変化と持続する変化を分けることは、食欲への効果をうたう情報を読む際の確認点にもなる。

また、この試験では増やしたい食べ物に対する介入効果は、どの評価項目でもみられなかった。[8] 減らしたいものへの欲求を弱めることと、食事全体を整えることも同じではない。夕食の菓子を欲しくなくなったとして、それだけで主食やおかずを用意できたことにはならない。ウイスキーを選ぶ場面でも、「何を減らせたか」だけに目を向けず、夕食として何を食卓に置くつもりだったかを思い出してみたい。

晩酌の記録にも、この測り分けを借りられる。「食欲が落ち着いた」と書いた日に、何を食べたかも別に残す。反対に、食事が少なかった日に、その理由が空腹感なのか、食材を買わなかったことなのかを分ける。これは飲酒を用いた自己実験の提案ではない。もともとある生活の中で、感覚と行動を同じ欄に押し込めないための整理である。[8][19]

数字で読む食欲と飲酒の研究

成人117人、18〜76歳:飲酒に関する補償行動を調べた英国の横断調査の対象である。[3]

64%:補償行動のいずれかを報告した割合であり、夕食を抜いた人だけの割合ではない。[3]

156人、2週間に6回:食べ物への接近と回避を練習した比較試験の規模と課題回数である。[8]

−0.19:その試験で減らしたい食べ物への欲求の強さにみられた推定係数で、食事量の減少率ではない。[8]

80人:ブドウ糖と飲酒欲求の関係を調べた試験の対象者数であり、参加者はアルコール使用障害の患者だった。[12]

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宮川涼 Founder

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