プロテインが酸っぱく感じられ、水を足すか迷ったときに読む記事。乳たんぱく質の緩衝作用と、ホエイ飲料の濃度・pH・口の渋さを調べた研究から、薄めれば必ず飲みやすくなるとは限らない理由を考える。酸っぱさと渋さを分けて記録し、同じ製品で水の量を比べる視点を示す。
シェーカーの目盛りより少し多く水を入れた。甘さはともかく、口に残る酸っぱいような、きゅっとするような感じまで薄くなるのだろうか。朝食のテーブルで、飲み終わる前にまた水を足したくなる。そんなとき、「濃いから酸っぱい」という説明だけでは、口の中で起きることを整理しきれない。
答えの芯は、薄めたときの飲み心地を濃度だけでは予測できない、である。ホエイたんぱく質を用いた飲料の実験では、濃度を上げると渋さが強くなる条件と、逆に弱くなる条件があった。関係を分けたのは、酸性度を表すpHなどの条件である。しかも、ここで直接評価されたのは酸っぱさそのものではなく、口がきゅっとする渋さだった。[13]
「女性のプロテインは酸っぱいほど固まる?酸性度と消化を混同しない飲み方の読み方」には凝集と消化の問いを譲る。また、胃が楽かという問いは「女性のプロテインは薄めて飲むと胃が楽?水の量と飲料の濃さを分けて研究で読む」の領域だ。この記事では、水を足す前後の味の判断に絞り、何を比べればよいかを考える。

水を足す相談は、酸っぱさと渋さを分けて始める
「酸っぱい」と書いた感想を、もう少し細かく言葉にしてみる。口に入れた瞬間の酸味が気になるのか、飲み込んだ後に口が引き締まる感じが残るのか。あるいは、粉っぽさやとろみを酸っぱさと一緒に表現しているのか。これは味覚の自己診断ではない。次に水の量を変えたとき、同じ感覚を比べるための準備である。
この区別が必要なのは、研究の測定対象が違うからだ。ホエイ飲料の官能評価を行ったKellyらは、たんぱく質濃度と渋さ、そして唾液との相互作用を調べた。一方、乳原料の配合を変えたチーズの実験では、酸度と酸っぱさが評価された。「味が変わった」という共通語だけで両者をつなぐと、渋さの結果を酸味の結果として読んでしまう。[13][1]
Kellyらの実験飲料には、ホエイたんぱく質の一種であるβラクトグロブリンが使われた。濃度は0.25〜13%、pHは2.6〜4.2の範囲であり、甘味料の条件も設定されていた。家庭で手に取るどの粉でも同じ反応になるという試験ではない。配合を管理した飲料で、濃度と口の渋さの関係を確かめた実験である。18〜39歳の女性が市販品を薄めたときの飲み心地へ、そのまま当てはめることはできない。[13]
この研究では対照として、たんぱく質溶液と同程度のpHにしたリン酸緩衝液も用いられた。酸性度が似ている液体を比較に含めたうえで、たんぱく質と唾液の相互作用も調べている。低いpHという共通点だけで、飲料全体の渋さを説明しようとした試験ではない。[13]
その範囲でも、「たんぱく質が多いほど渋い」という一直線の関係にはならなかった。pH3.5では濃度が0.25%から4%へ増すと渋さが有意に強まり、その後の4〜13%では一定だった。ところがpH2.6では、0.5〜10%の範囲で濃度が高いほど渋さが弱まった。酸性度の異なる飲料を、濃度だけで同じ列に並べられないのである。[13]
この結果は、水を足したら酸味が必ず強くなるという意味でもない。実験ではpHを設定して濃度を比較しており、完成した飲料に水を注ぎ足す操作とは条件が違う。家庭で水を足す場合の変化の向きや大きさを、この数値からそのまま計算することはできない。使えるのは、濃度だけから渋さを決めつけないという視点だ。[13]
シェーカーは濃さを調整する道具にはなる。だが、目盛りだけでは酸味と渋さを別々に表示してくれない。飲みやすさを探すときは、感想を「薄い・濃い」だけで終わらせず、どの感覚が残ったのかまで書いておく。そのほうが、次の調整で確かめたいことが明確になる。
初日の汗は、予約した人だけが持ち帰れる。
緩衝作用は、酸っぱさを消す能力ではない
緩衝作用とは、酸などが加わってもpHが変化しにくい性質である。食品の緩衝能を調べたMennah-Govelaらの実験は、卵やホエイたんぱく質を用いた分散液とゲルに塩酸を加え、加えるたびにpHを記録した。酸を加える前の値だけでなく、加えた後にどう動くかを測る研究だ。対象は食品モデルであり、18〜39歳の女性の酸味の感じ方を直接調べた実験ではない。[9]
この実験では、たんぱく質濃度が高く、表面積が小さい条件ほど緩衝能が高かった。予測モデルには、濃度や比表面積に加え、アスパラギン酸とグルタミン酸の含有量が使われた。水分の多さだけでなく、食品の組成や形状を含めてpHの動きが検討されている。飲料の色の濃さを見れば分かるような性質ではない。[9]
ここで押さえたいのは、「今のpH」と「酸を加えたときの変わりにくさ」は別の情報だということだ。この研究で緩衝能を知るために行われたのは、酸を順に加えて変化を追う測定だった。出発点のpHだけを見る方法では、研究が捉えようとした変化の経過を比べられない。[9]
緩衝能が高いから酸っぱくない、とも言い換えられない。この実験の目的は消化を考えるための測定法と予測モデルの開発であり、飲み物の好みを順位づけすることではなかった。対して、ホエイ飲料の渋さの研究は、pHと緩衝能に加えて唾液の流れや口内の凝集を考慮している。化学的な変化への抵抗と、人が感じる飲み心地の間には、別に確かめる段階がある。[9][13]
家庭の場面なら、「水を多くしたから緩衝作用が強くなった」「酸味が残るから緩衝作用が弱い」と書かず、まず実際の感想を残せばよい。酸っぱさが軽くなったのか、口に残る渋さが変わったのか。そこを飛ばして専門用語を当てはめると、せっかくの比較が説明のつかないものになる。
また、胃の酸を扱う実験を、飲む瞬間の酸っぱさの説明に直結させるのも避けたい。食品モデルへ酸を加える試験は、飲む前の味の評価とは目的も操作も異なる。同じ「酸」という言葉が出てきても、どの場所で何を測ったのかを確認する必要がある。[9][13]
同じpHでも、乳たんぱく質の条件はそろわない
たんぱく質の量が同じなら、緩衝作用も同じなのだろうか。乳たんぱく質の一部を脱ミネラル処理した原料に置き換えた食品実験が、この問いの手掛かりになる。Meletharayilらは、たんぱく質濃度を4.0%、全固形分を12.0%にそろえ、原料の割合を変えた酸性ゲルを比較した。対象は乳原料から作ったゲルで、18〜39歳の女性が飲むプロテインの味へ直接当てはめるには、飲料での評価が必要だ。[12]
脱ミネラル処理した原料の割合が高い試料では緩衝能が低く、その分を補うように酸性化に使う成分の量が調整された。研究者らは、この低下を原料の調製中に緩衝に関わるミネラルが減ったことと結びつけている。たんぱく質の表示量がそろっていても、原料の状態やミネラルの条件まで同じとは限らないのである。[12]
別のギリシャ風ヨーグルトの製造実験では、たんぱく質濃度を9%に強化した原料をpH4.6まで発酵させた。通常の乳たんぱく質濃縮物と、二酸化炭素処理したものでは緩衝の性質が異なり、後者を用いた試料で発酵時間が短かった。同じ到達pHを目指しても、そこへ至る経過は原料によって違った。これは食品製造の実験であり、18〜39歳の女性の飲みやすさを評価した結果ではない。[2]
酸性ゲルの実験では、原料の置き換えは緩衝能以外の性質にも関わった。脱ミネラル処理した原料由来のたんぱく質の割合が0%から60%へ増えると、pH4.5で測ったゲルの貯蔵弾性率は約300Paから約420Paへ上がった。貯蔵弾性率は、ここではゲルの弾性的な性質を表す測定値である。水を保持する能力も高まり、内部の孔は小さくなった。[12]
つまり、この実験では緩衝能が低くなることと、ゲルの弾性的な性質や保水性が高まることが同時に観察された。「酸性度の変化に抵抗する性質」と「形や水分を保つ性質」は、同じものの別名ではない。飲料でも、とろみの感想をそのまま緩衝能の評価に置き換えるのではなく、まず別の項目として扱うのが筋である。[12]
これらは飲むプロテインの希釈試験ではない。乳たんぱく質が入っていることと、同じ酸性化の経過を示すことは別だと理解するための食品実験だ。別製品へ替えた日と水を増やした日を一緒にしてしまうと、原料の違いと水の量の違いが重なり、何を比べた感想なのかが見えにくくなる。[12][2]
数字で読む濃度と緩衝作用
pH3.5:ホエイ飲料の官能評価で、濃度増加に伴う渋さの増加が観察された条件である。[13]
4〜13%:同じpH3.5の実験で、濃度を上げても渋さが一定だったたんぱく質濃度の範囲だ。[13]
pH2.6:0.5〜10%の範囲で濃度が高いほど渋さが弱まった条件であり、薄め方の推奨値ではない。[13]
4.0%:原料の割合を変えた酸性ゲルの実験で、そろえられたたんぱく質濃度だ。[12]
pH4.6:ギリシャ風ヨーグルトの製造実験で目標にされた発酵の到達点である。[2]
初日の汗は、予約した人だけが持ち帰れる。
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