筋トレの胸はインクラインを毎回上げる?角度の階段と上部の成長を分けて読む

胸の筋トレでインクラインの角度を少しずつ上げれば、上部への効果も増すのか。角度を比較した筋活動の実験と、継続後の筋厚を調べた試験から考える。動作途中の差と全体の差、水平ベンチとの重量や速度の違い、先に行った運動の疲労を分け、次回の設定を記録する視点を示す。

背もたれの留め具を、前回より上の穴に差す。それだけで胸の練習も一段進んだ気がするが、角度の目盛りは成長の目盛りだろうか。胸の上部を狙うインクラインでも、毎回角度を上げる進め方を支持する結果は、ここで扱う研究からは得られない。角度比較の実験では、上部の筋活動に差が出る時間帯と、動作全体では差が出ない結果が同時にある。[3]

続けたあとの筋厚を比べた試験では、傾斜したベンチが水平より大きな変化を示した測定部位もある。ただし差が出たのは調べた場所の一部で、押す力の改善には群間差がなかった。上部を狙う選択肢として使うことと、毎回さらに起こすことは、別の判断である。[2]

既存記事「大胸筋のインクライン筋トレで顎は上げる?ベンチの傾きと首を分けて確かめる」には首の向きの問いを譲る。また「大胸筋の筋トレ、女性もベンチを傾ける?角度で変わる胸と肩の働きを研究で読む」に対し、ここでは角度を順に増やす進め方が必要か、活動と成長を往復して考える。

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角度の目盛りを、効果の順位にしない

インクラインを選ぶときには、胸のどこを使いたいかに加え、何を成果として比べるかを決めたい。動作中の筋活動、後日の筋厚、押す力は、研究でも別々に測られている。胸の上部で活動が高かったという結果だけでは、将来の厚さまで決まらない。継続試験でも、筋厚と筋力の結果は同じ並びにならなかった。[2][3]

角度を直接比較した実験は、筋力トレーニング経験のある健康な男性14人を対象にした。水平の0°、上向きの30°と45°、下向きの−15°で、バーベルを使うベンチプレスを行った研究である。各条件では最大挙上重量の65%を用い、6回をひとまとまりとして実施した。最大挙上重量とは、その種目で1回持ち上げられる最大の重さである。対象は男性の経験者であり、18〜39歳の女性にも同じ活動の差が出るかは、この実験だけでは判断できない。[3]

この比較は、傾斜を毎週増やす人を追いかけた研究ではない。同じ実験で異なる角度を比べ、選ばれた筋肉が動作中にどう活動したかを調べている。そのため、ここから読み取れるのは設定による活動の違いであり、角度を順に上げる練習計画の優劣ではない。[3]

背もたれの穴は順番に並んでいる。けれども、その並びがそのまま筋肉の成長順になるわけではない。角度の目盛りを見て次へ進むより、上部の活動を見たいのか、胸全体を押す練習を続けたいのかを言葉にしておく。水平でも上部と下部の活動を得られるという実験結果は、傾斜をつけない日にも意味を残している。[3]

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上部の活動は、動作の途中で差が出た

この実験で使った表面筋電図は、皮膚上から筋肉の電気的な活動を記録する測定である。研究者は重りを下ろす局面と押し上げる局面を分け、さらに各局面を時間で区切って比較した。押し上げる動作を丸ごと見るか、その途中だけを見るかで、上部についての答えが変わった。[3]

押し上げる局面全体では、大胸筋上部の活動にベンチ角度による差は認められなかった。一方、その局面の26〜50%に当たる時間帯では、30°と45°の活動が水平および−15°より高かった。したがって「傾けても変わらない」とだけ書くのも、「傾けるほど上部が働く」とだけ書くのも、実験の片側を落としてしまう。[3]

途中の時間帯の値は、最大随意等尺性収縮を基準に、30°で122.5%、45°で124%、水平で98.2%、−15°で96.1%だった。最大随意等尺性収縮とは、動きを止めて自分の意思で最大の力を出す基準となる測定である。これらはその基準に対する筋電図の値であり、筋肉が何%成長するかを表す数字ではない。[3]

とくに30°と45°の値が並んでいるところで、後者の数字が少し大きいから勝ち、と順位をつけたくなる。しかし研究で示された比較は、両方の傾斜条件が水平などより高い時間帯を持ったというものだ。数字の大小だけを拾い、より高い角度ほど優れると読み替えることはできない。[3]

日常の練習に置き換えるなら、押す途中で上部を強く使った感触があっても、それを全反復の代表にしないという読み方になる。逆に、全体の平均だけを見て、途中の違いを無意味にする必要もない。どの時間の結果なのかを添えると、「効いた」という短い言葉に詰め込まれた内容をほどける。[3]

上部の差を探すために動作を区切ることには、全体の平均では見えない特徴を拾う意味がある。その一方で、途中の高い値だけを取り出せば、反復の残りの時間が視界から消える。短い動画で押す途中だけを見る場面と、最初から終わりまで見る場面を想像すると、この違いをつかみやすい。研究の結果を読む際にも、切り取った区間と全体のどちらの話かを先に確かめたい。[3]

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胸の下側の活動は、上部と違う動きをした

「筋トレ 胸 下」と検索する人には、傾斜をつけても下部の活動は測定されている、と先に伝えたい。先ほどの比較では、押し上げる局面全体の大胸筋下部の活動は、−15°、水平、30°が45°より高かった。傾斜の有無だけで分けると、30°と45°の間にあった違いが見えなくなる。[3]

下部の値は、同じ基準に対して水平で100.1%、30°で86.6%、45°で71.9%、−15°で100.4%だった。ただし、この並びは下部の筋活動についての結果である。上部の成長や胸全体の見た目について、同じ順位をつける表ではない。測った場所と測ったものの両方を残して読む必要がある。[3]

この研究は前肩に当たる三角筋前部や、腕の裏の上腕三頭筋も測定対象にしている。しかし、胸上部の途中の活動が高いことだけから、前肩との分担が望ましい割合になったとは決められない。少なくとも上部と下部は同じ変化をしておらず、胸というひとまとまりの言葉だけでは角度の違いを言い尽くせない。[3]

肩に使った感覚がある日は、それをそのまま胸の練習の失敗と呼ばず、設定を確認するきっかけにしたい。記録には、どこに感触があったかと、どの角度で何を行ったかを別に残す。感覚は自分の練習を振り返る言葉になるが、筋電図の値を測ったことにはならない。実験で測られた活動と、練習中の感触を同じ尺度にしないことが出発点になる。[3]

続けたあとの厚さと、押す力は別々だった

筋肉の厚さについては、トレーニング未経験の若い男性47人を無作為に群分けした試験がある。水平ベンチの群、インクラインの群、両方を組み合わせる群に分け、群間のセット数をそろえて週1回、8週間続けた。練習前後に大胸筋の筋厚、等尺性筋力、筋電図を測っている。等尺性筋力は、動きを止めた状態で出す力である。18〜39歳の女性に同じ筋厚や筋力の変化が生じるかは、この男性対象の試験とは分けて確かめる必要がある。[2]

筋厚の変化に群間差が出たのは、測定した3か所のうち1か所だった。第2肋間に当たる位置では、インクライン群の変化が水平群より平均0.62cm大きく、95%信頼区間は0.23〜1.0cmだった。組み合わせ群との差は平均0.50cmで、95%信頼区間は0.14〜0.86cmだった。信頼区間は推定した群間差の不確かさを示す幅である。[2]

これは、インクラインを胸の特定部位の厚さを考える選択肢にする根拠になる。一方、胸のどこも同じだけ厚くなったとか、全員がその差を得たという意味ではない。平均の群間差を、自分の次の練習で増える量として受け取らないことが大切だ。測定位置を消して「胸が大きくなった」とだけ言うと、部位による違いを失ってしまう。[2]

水平で測った等尺性筋力は約10kg、傾斜で測った筋力は約11kg増加したが、その変化に群間差はなかった。筋電図の変化に群間差があった場所も、調べた4か所のうち1か所だった。筋厚で違いが出たことと、押す力で明確な群の優劣がつかなかったことを一緒に持つと、インクラインの役割を大きくも小さくもしすぎずに済む。[2]

継続試験の対象が未経験の男性だったことも、設定を選ぶ際の前提に残したい。経験を積んだ女性の練習に、そのまま同じ筋厚の差を予告する数字ではない。それでも、上部の活動を測る実験から継続後の厚さへ目を移す手がかりにはなる。異なる対象の研究を重ねるときは、結論の向きだけをそろえず、誰がどの条件で行ったのかも一緒に並べる。[2][3]

数字で読むインクラインの比較

14人の経験者による比較実験。異なる角度の筋活動を調べた結果である。[3]

30°と45°。上部の活動が水平などより高かったのは、押し上げ局面の特定の時間帯だった。[3]

47人を無作為に群分け。未経験男性の継続試験であり、経験者の急性実験とは対象も設計も異なる。[2]

週1回、8週間。筋厚の比較は、この練習条件で得られた結果である。[2]

0.62cm。特定の測定位置の筋厚変化について、インクライン群と水平群の平均差を示す。[2]

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宮川涼 Founder

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