ダイエット中のハンバーグやロールキャベツで気になる、塩と肉だねの粘りの関係を読む。ひき肉の加工実験をもとに、たんぱく質の結び付き、保水性、焼いた後の重さと食感の違いを整理し、減塩しても硬さや肉汁が同じとは限らない理由と、家庭で配合を見直す際の着眼点を考える。
夕飯の肉だねを混ぜていると、ばらばらだったひき肉がまとまり、指やへらに付く感触が変わる。ダイエット中だから塩を控えたい。でも、塩を減らすとハンバーグが崩れるのか、肉汁まで減るのか。その疑問は、味の濃さだけでは片付かない。
答えの芯は、塩が肉の結び付きや水分を保つ性質にも関わることだ。ただし、塩を多くすれば必ずジューシーになる、長く練れば減らした塩を補える、とは決められない。牛ひき肉の加工実験では、減塩による食感の変化と加熱時の流出は、加える結着成分によって違う動きを示した。[5]
ここで読むのは、食べた人の体重の変化ではなく、肉だねの配合と仕上がりの関係である。「ツナ缶と魚肉ソーセージは同じたんぱく源?添加リンと水分を保つ加工の違い」には加工食品の比較を譲り、こちらは自宅で肉だねを作る時の、まとまり・水分・食感を分けて考える。

塩は味だけでなく肉だねの性質に関わる
まず、保水性とは、水分を保持する性質のことである。ひき肉の加工研究では、保水性と並んで、加熱でどれだけ重さが失われたか、どれだけ硬くなったかなどが調べられる。水牛とヤギのひき肉を使った実験では、塩とピロリン酸塩を用いる処理によって、保水性や乳化性が高まり、加熱による損失が減った。乳化性は、この研究で評価された、水と脂を混じった状態に保つ性質だ。[12]
この実験の添加量は、塩が2.5%、ピロリン酸塩が1%である。対象は温かい状態の水牛・ヤギのひき肉で、冷却や凍結の条件も比較している。普段スーパーで買う合いびき肉に、そのまま当てはめる配合ではない。それでも、塩を味付けだけの材料と見ると見落とす、加工上の役割を示している。[12]
ヤギ肉では、冷えた肉より温かい肉に塩を加えた方が、乳化性や塩に溶けるたんぱく質の抽出で優れていた。抽出とは、肉の中のたんぱく質が取り出されることだ。塩の存在と肉の状態によって、利用できるたんぱく質の状態も変わる。塩を入れたかどうかだけでなく、どんな肉をどんな条件で扱ったかが結果に関わるのである。[12]
肉の結び付きを調べた豚肉のモデル実験もある。ここでは、たんぱく質の結合に関わる酵素を使い、塩・リン酸塩・加工時の温度と時間の影響を比較した。酵素に塩とリン酸塩を組み合わせると結着性が大きく高まり、特に塩2〜4%、リン酸塩0.2%の条件で食感の指標が上がった。これは塩だけの働きを切り出した結果ではなく、成分を組み合わせた結果である。[11]
したがって、家庭で感じる粘りを、肉だねのまとまりを見る手掛かりにすることと、研究で測った結着性と同じ数値だと考えることは分けたい。へらに付く感触だけで、焼いた後の水分量まで判定しようとすると、見る範囲を広げすぎる。研究では結着性、硬さ、弾力、加熱損失をそれぞれ別の項目として調べている。[5][11]
「塩で粘るのか」という入口には、塩は肉だねの構造に関わる、と答えられる。一方で「何回練ればよいか」という台所の手順を決めるには、回数を比べた実験が必要になる。ここで取り上げる配合実験の数字は、練る回数の目標値へ置き換えず、塩を変えた時に食感も確認する理由として使いたい。[5][12]
初日の汗は、予約した人だけが持ち帰れる。
肉汁が少ないことと、硬くないことは別である
牛ひき肉の減塩実験では、塩を0.5%、1%、2%にした結着成分なしの対照群と、減塩した肉に各種の結着成分を加えた群を合わせて17条件が比較された。対象は加熱した牛ひき肉であり、人が食べて体脂肪が変わるかを調べた試験ではない。測定項目には加熱損失、含水量、脂肪、たんぱく質、食感などが含まれた。[5]
注目したいのは、食感と加熱損失が一緒には動かなかった点だ。微生物由来のトランスグルタミナーゼという酵素や、別の結着成分は、減塩による食感の悪化を防ぐ効果を示した。一方、その酵素を使うと加熱損失は高くなった。まとまりを補う処理が、そのまま流出を減らす処理になるとは限らなかったのである。[5]
別の結着成分やアルギン酸塩を使った配合では、対照群より加熱損失が低くなった。つまり、同じ「減塩した牛ひき肉」でも、何で補うかによって食感と損失の組み合わせは変わった。焼き上がりの断面が締まっていることと、肉汁が流れにくいことを、同じ評価として扱えない理由だ。[5]
また、硬さと噛み応えも区別されている。低脂肪の牛肉パティを調べた研究では、高脂肪の対照より噛み応えは増えたが、硬さと弾力には変化がなかった。「よく噛む感じがするから硬くなった」と一言で片付けると、研究が分けている食感の違いを取り落とす。[14]
夕方の台所なら、まず「崩れやすさが気になる」のか、「口の中で乾く感じが気になる」のかを言葉にしてみるとよい。これは診断ではなく、次に同じ料理を作る時の観察項目を決める作業だ。崩れにくさを直したい日に、肉汁の量だけを見ても答えがずれる。論文が複数の指標を並べるのは、仕上がりに別々の面があるからである。[5][14]
フライパンに残った液体の量を、そのまま失われた脂肪の量と読むのも避けたい。低脂肪パティの実験では、調理歩留まり、脂肪の保持、加熱後の水分、縮みを個別に評価していた。歩留まりは、調理後にどれだけ製品が残ったかを見る指標だ。重さが残ったという結果を、脂質が多く残ったという結果へ読み替えることはできない。[14]
減塩を補う工夫は、配合全体で評価する
脂肪を減らした肉だねなら、塩の話に加えて、水やたんぱく質をどう組み合わせたかも大切になる。牛肉パティの実験では、脂肪10〜11%の肉に、水10%、塩0.5%、乳清たんぱく濃縮物1〜4%を組み合わせ、高脂肪の対照と比べている。乳清たんぱく濃縮物とは、乳由来のたんぱく質を濃縮した材料である。[14]
脂肪を22%から11%に下げた条件では、加熱後の歩留まりと脂肪保持がよくなり、水分が増え、縮みが小さくなった。低脂肪という語から乾いた仕上がりだけを想像しがちだが、この配合実験では、その予想どおりの変化ばかりではなかった。材料を減らしたという情報だけで、出来上がりの性質は決まらない。[14]
低脂肪の肉に水10%を加えると、加熱後の水分と弾力は増えたが、それ以外の調理特性は変わらなかった。水を入れれば、入れた分が全部そのまま仕上がりを改善する、という単純な図ではない。何が増えて、何が変わらなかったのかを分けるところに、この比較の意味がある。[14]
さらに乳清たんぱく濃縮物を増やすと、歩留まりは上がり、縮みは小さくなった。添加量4%では、歩留まりは高脂肪対照の125%、縮みは対照の49%だった。前者は対照を基準にした比較値であり、「生の肉が焼くと125%の重さになった」という意味ではない。官能評価でも、この配合は少ない添加量より、ジューシーさと総合的な受け入れやすさで好まれた。[14]
減塩の別の工夫として、チアの粘質物を使った伝統的なひき肉料理の実験がある。塩を15%または30%減らし、粘質物を2%または4%加えて比較した。全般には柔らかく、付着しやすい食感になったが、加熱損失など一部の加工特性には有意な影響がなかった。塩15%減・粘質物2%の条件が、見た目、ジューシーさ、総合評価で好まれた。[2]
この結果は、粘りが増すこと、加熱で減る重さが小さくなること、食べて好まれることが別の評価だと教える。粘質物を多くした条件では、味や塩味の評価が下がった。補う材料にも、多ければ多いほどよいという関係はなかった。研究の配合は、家庭の肉だねに何かを足す号令ではなく、少なくした成分と補った成分を一緒に見る例なのである。[2]
数字で読む塩と肉だねの実験
塩0.5%、1%、2%:牛ひき肉の減塩・結着成分実験で設定された対照条件であり、家庭向けの推奨量ではない。[5]
水10%:低脂肪牛肉パティで加えた割合。加熱後の水分と弾力は増えた。[14]
乳清たんぱく濃縮物4%:歩留まりが高脂肪対照の125%、縮みが対照の49%となった条件だ。[14]
塩15%減・チア粘質物2%:伝統的なひき肉料理で、見た目やジューシーさなどが好まれた配合である。[2]
塩4%:加熱済みカニ肉の実験では、より低い塩の条件より保水性が低かった。[7]
初日の汗は、予約した人だけが持ち帰れる。
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