運動が嫌いな人は昔の失敗をどう覚える?鮮明な記憶と今の自信を分けて考える

運動が嫌いで、昔の体育や休み時間の失敗を今も鮮明に思い出す。その記憶は現在の運動能力をそのまま示すのか。大人の回想調査、記憶を呼び起こす介入試験、嫌な経験との距離を扱う研究から、記憶の鮮明さ、自信、実際の行動の違いと、過去を否定せず今の条件を確かめる視点を読む。

体験レッスンの持ち物をそろえていると、体育館でボールを落とした場面が浮かぶ。床の色まで覚えているのに、昨日の昼食は少し怪しい。そんな記憶を前にすると、「また同じ失敗をする」と考えるのも無理はない。

ただし、昔の場面を思い出せることと、今の条件で動けるかは別の問いである。成人の休み時間の回想調査では、けがや孤立の記憶が現在の心理的な指標と関連していた。一方、運動の記憶を呼び起こすだけでは、その後の身体活動が増えなかった無作為化比較試験もある。記憶を自信や行動へ直結させず、その間を分けて読む必要がある。[1][3]

始める種目の選び方は、既存記事「運動が嫌いでストレスなら慣れた種目から?動きへの不安と始め方を研究で読む」に譲る。ここでは、昔の失敗をどのように覚えているか、そしてその思い出を今の自分の判定材料にするとき何に気をつけるかに絞る。

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昔の休み時間は、大人になっても残っている

学校で体を動かした経験は、授業だけではない。休み時間に輪へ入れなかったこと、遊びの途中でけがをしたこと、天気の悪い校庭で過ごしたことも含まれる。成人が最悪の休み時間を振り返った研究では、否定的な記憶として孤立、身体的なけが、被害を受けた経験、天候などの状況が挙がった。[1]

この研究は、19〜77歳の433人を対象にした混合研究法の調査である。自由な記述を分類する質的な分析と、現在の指標との関連を調べる分析を組み合わせている。参加者は女性が52%、白人が72%で、大学教育を受けた人が46%だった。18〜39歳の女性にそのまま当てはめることはできず、日本の学校経験を代表する集団でもないが、「運動が苦手」という短い言葉の中に異なる経験が含まれると考える手掛かりになる。[1]

孤立の記憶は自己申告の孤立の指標と、けがの記憶は運動の自己効力感と、それぞれ有意に関連していた。自己効力感とは、ここでは運動を自分にできると見込む感覚のことだ。全員に同じ種類の記憶が残り、同じ形で自信に関係するという結果ではない。[1]

だから、運動嫌いの理由を聞くときも、「走るのが遅かったから」で話を閉じなくてよい。たとえば、速さを比べられるのが嫌だったのか、仲間に入る場面が嫌だったのか、けがの後の動きが怖かったのか。これは自分を診断する質問ではなく、次に確認したい条件を言葉にするための例である。嫌だった対象を、運動全体という大きな箱から取り出してみる。

ただし、この調査は過去の経験を割り当てて追跡した実験ではない。昔のけがが今の自信を下げた、と因果関係を決めることはできない。記憶と現在の指標が結びついていたことは、過去を無視しない理由になるが、その記憶だけで現在の状態を説明し切る理由にはならない。[1]

回想の分類で気をつけたいのは、「最悪の記憶」を尋ねた調査だという点だ。楽しかった休み時間も含めた学校生活の総点検ではない。否定的な経験の内訳を知るための設計だから、その結果を「学校で体を動かす経験はすべて悪い」と読むことも、「大人の運動嫌いはすべて学校のせいだ」と読むことも適切ではない。[1]

また、記述を読み取って分類する方法は、本人がどんな場面をつらいと語るかを知るのに向いている。一方、それは現在の体力を測る検査とは役割が異なる。参加者の年齢の幅が広いことも、同じ年齢の人を長期間追い続けたこととは違う。調査の人数だけでなく、誰に何を尋ねた結果なのかまで見ると、自分に引き寄せられる部分がはっきりする。[1]

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体育の記憶と「運動全体」は同じ広さではない

英国の中等学校で体育を経験した男子20人に、最後の授業参加から2年後に話を聞いた質的研究がある。参加時の年齢は16〜18歳で、半構造化面接という、質問の軸を持ちつつ本人の語りを聞く方法が使われた。対象が英国の男子であるため、18〜39歳の女性の体育の記憶への適用は別に確かめる必要がある。思い出の大きな枠組みはスポーツであり、ほとんどの語りが何らかの競技をする経験だった。[15]

その中には、試合をすること、技術として競技を学ぶこと、競技を越えた学びという異なる主題があった。研究者は、体育で学んだことが単に参加したという結果だけに収まらないと論じている。記憶される体育には、動作とともに、授業を形づくる文化や学び方も含まれていたのである。[15]

ここから、成人女性の運動嫌いの仕組みを決めることはできない。対象は英国の男子で、面接研究である。それでも、昔の体育を振り返る際に「自分は何を運動と呼んでいるか」を問い直す視点は得られる。研究の参加者が語った競技の経験と、今選ぼうとしている活動は、内容を照らし合わせて区別する必要がある。[15]

たとえば「人前で球技をするのが嫌だ」と「静かな場所で体を動かすのが嫌だ」は、文章として別の内容だ。前者が確かでも、後者まで既に確かめたことにはならない。ここで無理に「本当は運動が好きなのだ」と言い換える必要もない。嫌だった経験はそのままにして、まだ試していない条件を未判定にしておく、という整理である。

この区別は、昔の自分の成績を良く書き換える作業ではない。「あの場面では困った」という記述を、「どの場所でも、どんな動きでも困る」という予測へ広げていないかを見る作業だ。体育の記憶を扱う研究が示したのは、特定の授業経験についての語りである。そこから本人の将来の全活動を採点することまではできない。[15]

仮に、昔の失敗を思い出したとき最初に浮かぶのが、動作そのものより周囲の視線だとする。その場合、予約前に知りたいのは、技術の難しさだけでなく、どんな説明を受け、どのように参加するかかもしれない。反対に、特定の動きで困った経験なら、その動きをする内容かどうかが質問になる。どちらも「向いていない」で終えるより、問い合わせる項目を具体的にできる。

鮮明さ、具体性、自信は別々に確かめる

「よく覚えている」と言うとき、場面が映像のように浮かぶこともあれば、いつどこで何をしたかを具体的に話せることもある。嫌な自分の経験を扱った実験では、感情の強さ、記憶の鮮明さ、再体験がそれぞれ評価された。一方、自伝的記憶の別の実験では、特定の出来事として取り出せるかという具体性が検討されている。自分自身の経験についての記憶でも、研究で測る側面は同じではない。[13][5]

非臨床の大学生を対象にした実験では、気分の快・不快を操作しても、自伝的記憶の具体性には群間差がなかった。別の実験で身体運動を用いて覚醒の高低を変えると、低覚醒の状態で、出来事を大まかにまとめた記憶の割合が増えた。覚醒とはここでは、気分が良いか悪いかとは別の、心身の活性の側面を指す。大学生での結果を18〜39歳の女性全体へ広げるには、対象の違いを検討する必要がある。[5]

この結果は「嫌な気分なら記憶が必ず曖昧になる」という単純な説明に合わない。また、運動で覚醒を操作した実験だからといって、嫌な体育の記憶を消す方法が見つけた実験でもない。測ったのは記憶の具体性であり、運動の自信や参加を直接改善したかという問いとは違う。[5]

読者の場面に戻せば、「体育はいつも失敗だった」という言葉と、「跳び箱の順番で止まってしまった」という言葉は、記述する範囲が違う。後者に言い換えれば自信が必ず上がる、と約束することはできない。ただ、何の出来事を今の判断に使っているかは、こちらの方が話し合いやすい。

さらに、鮮明さを能力の証明にしないことも大事な区別だ。休み時間の調査で関連が示されたのは、回想された経験と現在の指標である。嫌な記憶についての実験で扱われたのは、感情や再体験などである。どちらも、鮮明に思い出した成人に今の運動技能を実技試験で判定した結果とは別である。[1][13]

研究を読むときも同じ整理が役立つ。「記憶が変わった」とだけ聞いたら、鮮明さが下がったのか、出来事を具体的に話せるようになったのか、思い出す回数が変わったのかを分ける。記憶の具体性を調べた実験と、再体験を調べた実験は、そのまま互いの答えにはならない。今ほしいのが運動に参加する自信なら、その自信を測った研究かどうかをさらに確認する。[5][13]

数字で読む運動と記憶の研究

433人:最悪の休み時間の記憶を尋ねた成人調査の参加者数。年齢は19〜77歳だった。[1]

20人:体育の記憶を面接で聞いた英国の男子の人数。授業への最後の参加から2年後の調査だった。[15]

451人と340人:高齢者の記憶想起試験の初回と7日後の回答者数。両時点の人数は異なる。[3]

d=0.25:食事摂取を調整する意図について、関連する記憶を思い出す効果を統合した値。実際の運動量の効果ではない。[2]

109人:嫌な経験と時間・場所の文脈を扱った実験の対象者数。特別な課題の平均的な優越性は認められなかった。[13]

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宮川涼 Founder

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