ダイエット中のチーズは製法も確認、酸と酵素で変わるカルシウムと固さの読み方

ダイエット中のチーズ選びで、酸と酵素による固め方から何が分かるのか。カルシウムの居場所、酸性度による網目の変化、原料への添加を食品加工の研究で読む。モッツァレラの漬け汁とは問いを分け、固さや溶け方だけで栄養量を決めず、製法の説明と成分表示をどう使い分けるかを考える。

サラダにのせるチーズを切ると、包丁にまとわりつくものと、形を保つものがある。やわらかいものと、形のしっかりしたもの。どちらも乳から作るのだから、カルシウムも似たようなものだろうか。ダイエット中の補食として選ぶなら、脂質の欄に加えて、固め方も気になるところだ。

答えの芯は、酸と酵素という製法の名前だけでは、食べるチーズのカルシウム量は決まらない、である。酸性度はカルシウムの状態とたんぱく質のつながりを変える一方、添加するカルシウムの形や原料の調整も結果を変える。固さはその結果の一部であり、栄養量の物差しそのものではない。[1][8][14][15]

既存記事「間食のモッツァレラチーズは漬け汁で変わる?塩分とカルシウムの行き先を読む」には保存液の話を譲る。ここで追うのは、保存する前の乳をどう固めるかという問いである。ここで用いるのは乳やチーズを対象とする食品加工の実験とレビューであり、人に食べてもらって健康への影響を調べた研究ではない。18〜39歳の女性のカルシウム吸収や減量効果に、そのまま当てはめることはできない。研究が測った加工中の変化と完成品の成分を、棚で比べるための知識にする。[1][3][8]

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酸と酵素は、別々の箱にきれいに分かれるか

チーズの構造を考えるときの主役は、乳たんぱく質のカゼインである。カゼインが集まった粒はカゼインミセルと呼ばれ、加工の条件によって集まり方や水との関わりが変わる。プロセスチーズに関するレビューでも、構造を作る中心としてカゼインが扱われている。白い固形物という外見の下には、たんぱく質とカルシウム、水の関係がある。[1]

レンネットは、乳を固めるために用いる酵素である。酸による凝固とレンネットによる凝固は区別されるが、研究には「酸・レンネットチーズ」という両方を使う製法も登場する。高温殺菌したヤギ乳を使った実験では、まさにその製法でカルシウム化合物の違いを比べている。酸か酵素かを選ぶだけの二択で、すべての製品を分類しようとすると、この組み合わせが抜け落ちる。[8]

固まる道筋を比べた食品実験もある。カゼインミセルを濃縮した原料を水で戻し、カゼイン量をそろえて酸とレンネットへの反応を調べた研究では、ろ過で作った原料は、対照の低温加熱脱脂粉乳よりレンネットで固まる時間が短く、ゲルの強さが大きかった。ゲルとは、水を含みながら固体のように形を保つ構造である。同じように酵素を使っても、出発する原料によって固まり方は変わった。[3]

この研究では酸による凝固も比較している。酸性・アルカリ性の程度を表す指標がpHであり、ろ過した原料はpHが5を超える段階で固まり始めたのに対し、対照では4.7〜4.9だった。カゼイン量をそろえた原料でも、固まり始める酸性度には差があった。ホエイたんぱく質の量や、加熱に伴ってできたたんぱく質の集合体など、原料の履歴も関わるという結果である。[3]

つまり「酵素で固めたから硬い」「酸で固めたから必ずやわらかい」という棚の読み方は粗すぎる。研究で比較されたのは、加工条件をそろえたり変えたりした原料の性質である。その違いは製造を理解する助けになるが、食べる商品の栄養量を直接示す値ではない。製法の言葉から分かるのは入口であり、完成品の中身はさらに確かめる必要がある。[3][8]

さらに、この原料比較では、低温でろ過したものと温かい条件でろ過したものにも違いがあった。カゼイン量が同程度でも、低温でろ過した原料のほうがレンネットで固まる時間は長かった。酸を加える過程で見られる構造の変化も同じではなかった。原料の濃さという目立つ条件をそろえても、ろ過の温度という履歴が残る。日常で目にする「乳たんぱく質を使用」という説明も、それだけで一定の食感や凝固の性質を約束する言葉ではない。[3]

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酸性になると、カルシウムと網目はどう動くか

カルシウムは、チーズの中でただ均等に散らばっているだけの成分ではない。酸性度が変わると、たんぱく質と関わるカルシウムの状態も変わる。牛乳から作るハルーミ型チーズの実験では、pHを6.53から5.33へ下げる過程で、コロイド状リン酸カルシウムという、粒子の状態で存在するリン酸カルシウムが溶け、たんぱく質の網目が弱くなったと説明されている。[6]

その変化に伴って、弾性的な性質を示す指標が下がり、溶けたときに流れる程度と、分離して出る油が増えた。さらに酸性度を変えた条件では、カルシウム含量が89.4%減り、水を保持する性質は16.7%増えた。この数字は、その実験で作ったハルーミ型チーズの結果である。市販の酸で固めたチーズが一律に同じ割合のカルシウムを失う、という意味ではない。[6]

面白いのは、酸性にするほど際限なくやわらかくなるわけでもない点だ。同じ研究ではpHが4.69を下回ると、水となじみにくい部分同士の相互作用や水素結合が強まり、ゲルの強さが増し、溶けたときの流れと油の放出は減った。変化は一直線ではなかった。酸味の強そうな見た目から固さや溶け方まで予想するのは、途中の曲がり角を省略することになる。[6]

別の実験は、レンネットで作った乳の凝固物を切った後、たんぱく質同士の結びつきを追っている。温度と酸性度を変えた条件で60分間観察すると、酸性にすることで水に溶けたイオン状カルシウムが利用されやすくなり、カルシウムを介する結びつきの相対的な割合が増えた。酸性度は結びつきの種類を、温度はそれが形成される速さを変えていた。[15]

酸でカルシウムが溶けるという話と、カルシウムを介する結びつきが増えるという話は、反対に聞こえるかもしれない。しかし前者はチーズの成分や物性を、後者は凝固物の中の結びつきの内訳を見ている。「溶けているカルシウム」「製品に含まれるカルシウム」「網目の結びつき」は同じ測定項目ではない。何を測ったかを保ったまま読むと、酸はカルシウムをただ消してしまう操作ではなく、状態と関わり方を変える操作だと理解できる。[6][15]

足すカルシウムの形でも、出来上がりは変わる

ヤギ乳の酸・レンネットチーズを作った研究では、塩化物、グルコン酸塩、乳酸塩、炭酸塩という異なる形のカルシウムが比べられた。原料乳に加えた量は、乳100g当たりカルシウムとして0、5、10、15、20mgである。これは製造条件の設定であり、人がその量を補給する試験ではない。どの形を使っても、完成したチーズのカルシウムとリンは有意に増えた。[8]

一方、出来上がるチーズの量は同じ方向には動かなかった。乳100g当たり20mgをグルコン酸塩として加えると歩留まりは4.04%増え、乳酸塩では2.3%減った。歩留まりは、原料からどれだけ製品ができるかを表す指標である。最も高いカルシウム含量になったのは、同量を乳酸塩で加えた条件だった。「よく固まってたくさんできた」と「カルシウムが多い」は同じ順位にならない。[8]

食感にも違いが現れた。カルシウムを多くした条件で硬さが増え、炭酸塩はまとまりやすさを最も大きくした一方、外観と形状の評価は低く、ざらつきや粉っぽい味もわずかに感じられた。総合的な好ましさは塩化カルシウムを使ったチーズが最も高かった。成分の増加、製造のしやすさ、食べたときの評価は、それぞれ別の結果なのである。[8]

クエン酸カルシウムを使った別のヤギ乳チーズの研究では、添加によって乳とチーズのpHが上がり、完成品のカルシウム量も増えた。春の乳では100g当たり120.83mgから147.45mgへ、秋の乳では130.66mgから151.21mgへ変わった。季節によって出発点が違い、添加後も値は同一にならなかった。製法名の内側に、原料の違いと調整の違いが重なっている。[14]

また、春と秋のヤギ乳を比べた研究では、添加しない対照のチーズでも、秋のほうが歩留まりは6.85%高かった。秋の乳は固形分が多く、季節は原料の質と製品の出来方に関わっていた。同じ製造法の名前の内側にも、出発材料の違いがあるという例だ。これは季節で買うチーズを指定する助言ではない。製法だけで成分を予言するには、原料に由来する違いも残るという読み方である。加工条件と原料条件をそろえた比較なのかまで見ると、数字の意味が変わる。[14]

こちらでは添加によって硬さが増したが、官能評価、つまり人が食べて行う評価には有意な影響がなかった。先の研究の炭酸塩では食感や味の違いが評価に現れたため、味の評価は添加の有無だけでは決まらず、加える化合物にも左右された。化合物と製造条件を分けて読む必要がある。日常の選び方に移すなら、成分を確かめることと、好みの食感を探すことを別々に行うのがよい。[8][14]

数字で読むチーズの凝固とカルシウム

pHが5超と4.7〜4.9:カゼイン量をそろえた原料と対照で異なった酸凝固の開始条件。[3]

89.4%減:酸性度を変えたハルーミ型チーズ実験でのカルシウム含量の変化。[6]

4.04%増と2.3%減:同量のカルシウムでも、化合物によって逆方向になった歩留まり。[8]

120.83から147.45mg/100g:春のヤギ乳で作ったチーズへのクエン酸カルシウム添加による変化。[14]

60分:切断後の凝固物で、たんぱく質同士の結びつきを追った時間。[15]

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宮川涼 Founder

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