有酸素運動の脈だけで心拍出量は分かる?再呼吸法の数字を比べる前に読む測定条件

有酸素運動中の脈拍だけで、心臓が送る血液の量まで分かるのだろうか。再呼吸法で心拍出量を測った研究から、心拍数との違い、測定器同士の一致、姿勢や測定時点、繰り返しによる揺れを読み解く。運動の記録と検査結果を比べるときに確認したい条件を、若い成人を対象とした試験を中心に考える。

自転車を全力でこいだ直後、時計の脈拍を見て「今日は心臓がよく働いた」と思う。その表示から、流れた血液の量まで想像していないだろうか。若い男性の自転車試験では、心拍数が違っても心拍出量が同程度になる組み合わせが観察されている。男性の結果なので、18〜39歳の女性の心拍数と流量の対応を直接示すものではない。[15]

心拍出量とは、心臓から単位時間に送り出される血液の量である。心拍数と、一拍で送る量である一回拍出量を分けて読む必要がある。吐き出したガスを再び呼吸する再呼吸法は、脈の回数とは別の手掛かりからこの流れを評価する方法である。[15][19]

「有酸素運動と脈拍、一拍の血液量はどう増える?満たす時間と送り出す力を読む」には、送り出す仕組みの話を譲る。ここで確かめたいのは、再呼吸法で得た数字を、どの条件までそろえれば比較できるかだ。測定法の比較研究では、運動とともに増える方向がそろっていても、その増え方には方法による差があった。[19]

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脈の回数と、送り出す流量を分ける

健康な若い男性15人を対象に、短時間の全力自転車運動と、負荷を段階的に上げて疲労困憊に至る自転車試験を別の日に行った研究がある。実施順序は無作為に決められ、心拍出量は不活性ガスの再呼吸法で推定された。一回拍出量は、その測定を基に計算された値である。対象が男性のみのため、18〜39歳の女性に同じ差が生じるかは別に確かめる必要がある。[15]

短時間の試験の終わりと段階的試験のピークを比べると、心拍数は149±26拍/分と190±12拍/分であった。一方、心拍出量は18.2±3.3L/分と17.9±2.6L/分で、統計的な差は認められなかった。一回拍出量は127±37mLと94±15mLで、短時間の試験の方が大きかった。[15]

ここでの読みどころは、低い心拍数の側で、心拍出量まで低くなっていなかったことだ。同じ参加者でも、運動の組み立てと測定時点が違えば、心拍数と一回拍出量の組み合わせは変わる。脈拍の大小を血流量の大小へ、そのまま置き換えることはできない。[15]

ただし、これは短時間の全力試験と段階的な最大運動を比較した結果である。通勤の歩行、ヨガ、軽い自転車運動のどれが優れているかを決めた試験ではない。参加者も若い男性に限られる。時計の数字を見て運動を順位づけしたくなったときに、この研究は「何を比べた数字か」と問い直す材料になる。[15]

また、この試験で観察したのは、その運動中の血液循環の応答である。その場で多く送れたことと、続けた結果として体力が変わることは、別々に評価する必要がある。短い試験の終点の値を、長期的な心臓の成長率として読むのは飛躍である。[15]

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吐いた息から測っても、息の量そのものではない

再呼吸法による心拍出量の測定では、検査用のガスを含む呼吸を利用する。先ほどの研究では亜酸化窒素と六フッ化硫黄を用いており、呼吸の測定を介して心拍出量を推定している。普通に息を吐いた量だけを、心臓が送った血液の量として表示しているわけではない。[15]

この点で、息の勢いを自分で確かめることと、再呼吸法による検査は区別したい。呼吸を使う測定という共通点があっても、調べたい対象が血液の流れなのか、酸素摂取なのかで、結果の意味は違う。実際の運動研究でも、酸素摂取量と心拍出量は別の指標として測られ、両者の関係が比較されている。[19]

健康な50人、平均年齢52±16歳の比較研究では、胸部の電気的な性質を使う方法と不活性ガス再呼吸法を、安静時と自転車運動中に併用した。著者らは、前者が全身を流れる血液、後者が肺を流れる血液に由来する値である点を強調している。同じ単位の心拍出量でも、測定が依拠する流れは同じではない。平均年齢が中年期の集団であり、18〜39歳の女性でも同じ一致度になるかは、この比較だけでは判断できない。[2]

この研究で、運動中の両測定値の相関係数は0.83だった。数字同士はかなり連動していたが、著者らは互換的に扱うべきではないとしている。相関が高いとは、大きい人はもう一方でも大きい傾向があるということだ。どちらで測っても同じ値を受け取れる、という保証とは異なる。[2]

検査結果の紙に見慣れた単位が並ぶと、数字だけを切り取ってしまいやすい。しかし、呼吸から推定した値と、胸部の電気的な信号から求めた値では、比較の前に測定法を確認したい。「血液の量」という名前をそろえただけでは、同じ物差しになったことにはならないのである。[2]

方法を替えると、運動中の増え方も変わる

男性12人が負荷を増やして自転車をこいだ比較研究では、採血を伴う方法、再呼吸法、胸部の電気的な性質を使う方法、脈波の形を利用する方法を同時に調べた。通常の酸素環境と低酸素環境の双方で比較しており、単に別の日の別人を比べた研究ではない。男性だけの比較なので、18〜39歳の女性での方法間の差をそのまま予測することはできない。[19]

どの方法でも、運動強度が上がるにつれて心拍出量は増えた。しかし、酸素摂取量の増加に対して心拍出量がどれだけ増えるかという関係の傾きは、方法間で最大50%異なった。増えたという結論が一致していても、増加量には測定法による差が残った。[19]

通常の酸素環境で、その傾きは再呼吸法で3.9±0.2、採血を伴う方法で4.9±0.3、胸部の電気的な性質を使う方法で6.0±0.4だった。いずれも酸素摂取量が1L/分増えることに対する心拍出量の増加で、示されたばらつきは標準誤差である。この数字をそのまま個人の正常範囲として使ってはいけない。[19]

著者らは再呼吸法で低めの値になった理由として、検査用ガスが再び肺循環へ戻る影響の可能性を挙げている。ただし、これは測定値の差を説明する可能性であり、ガスの影響だけで全ての違いが決まるという断定ではない。方法の特徴を含めて結果を読む必要がある。[19]

一方、健康な50人を調べた先の研究では、運動中の方法間の平均差は0.38±1.31L/分で、統計的な差はなかった。片方では傾きの差が見え、もう片方では平均の差が有意ではない。測定値の平均が近いかを問うことと、負荷への反応の傾きがそろうかを問うことは、同じ検証ではない。[2][19]

研究を選び取って「再呼吸法は正確だ」「方法同士は一致しない」のどちらかだけを残すのは惜しい。測定した人、負荷、比べた指標を一緒に読むと、両方の結果を受け止められる。日常の記録で測定器を替えた場合も、新旧の数字をつないで、体力の変化だけを語ることには慎重でありたい。[2][19]

測定器の比較には、平均差を読む場面と、個々の値の散らばりを読む場面がある。健康な成人の比較研究で、安静時の方法間の平均差は0.002±0.98L/分だった。差の平均はほぼゼロでも、その周囲にばらつきがある。全員の差がほぼゼロだった、と読み替えると、この情報の半分を落としてしまう。[2]

また、同じ研究の相関係数は、安静時には0.40、運動中には0.83だった。相関を語るときは、運動中の数字だけを検査全体の性能として引用しない方がよい。安静を測ったのか、運動を測ったのかという条件が、測定法の評価にも付いて回るからである。検査結果を受け取る際には、どの状態で評価された測定なのかを確認する視点が持てる。[2]

人同士を比べる際には、体格をどう扱ったかも論点になる。再呼吸法を用いた研究のうち1400人を調べた部分では、体格指数が高い人で心拍出量と一回拍出量が大きかった一方、体表面積で補正すると、その傾向は逆転した。体表面積とは体の表面の広さを表す指標であり、体の大きさを考慮した比較に使われている。[7]

この結果は、大きい数字を持つ人ほど心臓が優れている、という順位表を作れないことを示す。血液の流量そのものを知りたい比較と、体の大きさを考慮した値を知りたい比較では、問いが違う。同僚の検査値を聞いて自分の値を採点する前に、対象と単位、それに補正の有無まで確かめたい。数字の見た目は同じでも、補正の有無で比較の意味も変わる。[7]

数字で読む心拍出量の測定

15人の男性の試験では、心拍数149対190拍/分でも心拍出量は同程度だった。順に短時間全力試験と段階的試験の値である。[15]

健康な50人の測定比較では、運動中の方法間の相関係数は0.83だった。互換性を保証する数字ではない。[2]

男性12人の同時測定では、酸素摂取量と心拍出量の関係の傾きが、方法間で最大50%異なった。[19]

健康な60人の再呼吸法測定では、50Wでの典型誤差は0.8L/分だった。繰り返した際の揺れを表す指標である。[6]

若い成人34人の最大値を調べる試験では、一定負荷方式と段階的方式の平均は17.1対16.8L/分だった。[8]

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宮川涼 Founder

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