有酸素運動と無酸素運動は血中酸素で分かる?動脈と静脈の差が示すものを読む

有酸素運動と無酸素運動の違いを、血中酸素の値だけで見分けられるだろうか。動脈と静脈の酸素の差、心臓が送る血液量、運動中の酸素摂取量を分けて考える。糖尿病患者の比較研究とトレーニング試験、インターバル運動のレビューから、数字が示す働きと判定に使う際の限界を読む。

短い全力運動でも、酸素を使う能力は鍛えられるのか。インターバル運動のレビューは、その能力の改善を扱っている。[20] 「酸素が十分なら有酸素、足りなくなったら無酸素」と考えると分かりやすそうだ。だが、運動を評価する研究では、血液中の酸素だけでなく、心臓が送り出す血液量と体が酸素を取り出す働きを組み合わせている。[2]

動脈と静脈の酸素の差は、血液が体を通る間に取り出された酸素を考える指標である。その差を知ることと、有酸素運動・無酸素運動の境界を決めることは同じ作業ではない。運動の検査では、酸素の運搬と利用を一続きの過程として評価する必要がある。[2][5]

既存記事「心肺機能と血流は多いほどよい?送り出す量と酸素の取り出しが逆転する比較」には血流の多少の比較を譲る。また、「有酸素運動と無酸素運動」には運動の組み合わせの話を譲る。ここで問うのは、酸素に関する数字を、運動の種類を切り替えるスイッチとして読んでよいか、である。

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動脈と静脈の差は、何を測っているのか

血液が運ぶ酸素を考えるとき、出発側の動脈と、体を通った後の静脈を区別する。両者の酸素含量の差が動静脈酸素較差である。酸素含量は血液に含まれる酸素の量を表す。単に「血中酸素」と呼ぶと、この出発と帰りの区別が見えなくなる。酸素輸送のレビューは、心拍出量と動静脈酸素較差を、運動中に調節される要素として扱っている。[2]

酸素抽出とは、運ばれてきた酸素を組織が取り出す働きのことである。運ぶ側を見ているのか、取り出す側を見ているのか。それだけでも数字の意味は変わる。運動時の酸素輸送には、血液の酸素運搬能力、心臓の働き、末梢での利用が関わるため、血中の値を単独で読むより、それらの関係を確かめるほうが問題に近づく。[2][20]

ここでいう末梢とは、心臓から離れた筋肉などの側である。運動中に筋肉が酸素を使うまでには、空気から酸素を取り込み、血液で運び、組織に渡し、細胞の中で利用する過程が連なる。短時間の高強度インターバルトレーニングを扱ったレビューは、この連続を酸素カスケードとして説明している。最大酸素摂取量は、その連続した仕組み全体の機能上の限界を表す指標である。[20]

このため、動静脈酸素較差は「酸素があるかないか」という札ではない。血液を通してどれだけ取り出したかを考える手がかりだ。運動を終えた人の記録を見るなら、まず欄の名前を確かめたい。「酸素」という同じ言葉が入っていても、酸素含量の差、酸素摂取量、心拍出量は、それぞれ違う働きを表している。[2]

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心拍数が上がっただけでは、酸素の利用は分からない

心拍出量は、心臓が送り出す血液の量であり、心拍数と、拍動ごとに送り出す血液量である一回拍出量の積で決まる。最大酸素摂取量は主として最大心拍出量に制約されると考えられているが、末梢での酸素利用も関与する。心臓の送り出しを扱ったレビューは、この留保も含めて説明している。[6]

駅まで急いだとき、脈が速ければ心臓の仕事を意識しやすい。だが、脈の速さだけから、送り出す量も、筋肉が酸素を取り出す量も読み切ることはできない。心拍出量には一回拍出量が関わり、酸素利用にはさらに末梢の働きが加わるからである。数字が増えた欄だけを見て「酸素をうまく使えた」と結論するのは早い。[2][6]

持久的なトレーニングによって最大心拍出量が増える場合も、一回拍出量などの変化も関わる。レビューでは、トレーニング後の最大心拍数はむしろ低下する傾向があるとされる。心臓へ血液が流れる時間や心臓自身の酸素需要も関わるため、速い拍動がそのまま優れた能力という並びにはならない。持久的に鍛錬したアスリートの心臓の特徴も扱うレビューなので、18〜39歳の女性個人の心拍数の目標をそのまま決める材料にはならない。[6]

ただし、これは「脈が低ければよい」という新しい採点表を作る話でもない。研究が扱うのは、最大の運動時にどこが酸素輸送を制約するかという問いである。仕事帰りの歩行で記録した心拍数と、検査で測る最大心拍出量は分けて読む必要がある。日常の記録には場面を、研究の結果には測った条件を添えると、同じ言葉による取り違えを避けやすい。[6]

酸素の取り出しが違っても、運動の名前は決まらない

無症状の2型糖尿病患者53人を調べた横断研究では、運動能力が低い群と保たれた群で、安静時の心拍出量に有意な差はなく、運動時の増え方も同程度だった。一方、運動能力が低い群では、運動中の酸素抽出の増加が30.7%小さかった。心臓の送り出しが似ていても、酸素を取り出す応答には違いがあったのである。患者の比較なので、18〜39歳の健康な女性に同じ差をそのまま当てはめることはできない。[15]

高強度運動時の酸素抽出は、運動能力が低い群で12.5±2.8 mL/dL、保たれた群で15.3±3.9 mL/dLだった。対象は同じ2型糖尿病患者で、血液の体積当たりの酸素量として比べた値である。18〜39歳の健康な女性の基準値には使えない。この比較が示すのは、同じ疾患を持つ人たちの運動能力と酸素抽出応答との関連だ。「この値より下は無酸素運動」という区切りとして提示された数字ではない。[15]

研究の型も大切だ。この研究は、ある時点で患者を比較した横断研究であり、酸素抽出の小ささだけが運動能力低下の原因だと決めることはできない。心臓の変形の指標である左室長軸方向ストレインの応答にも違いがあった。末梢か心臓かのどちらかだけを選ぶより、両方の応答と運動能力が関連した結果として読むのが適切である。[15]

たとえば検査結果に「酸素抽出が低い」と書かれていたとする。それは、その人が行った運動を一律に無酸素と呼び替える指示ではない。何をどの負荷で測り、どの群と比較したのかが先に来る。この研究の患者の値を、健康な若い女性の階段やヨガの判定基準に移すこともできない。対象は2型糖尿病患者であり、比較の目的は運動能力の違いを調べることだった。[15]

数字の単位を残す意味もここにある。12.5という数字だけを覚えても、割合なのか血液当たりの量なのかが消えると、別の測定値との比較になってしまう。研究の記録を読む際は、酸素抽出という項目名、mL/dLという単位、高強度運動時という条件をひとまとまりにしておきたい。[15]

酸素を運ぶ血液の側にも、見るべき要素がある。酸素輸送を扱ったレビューは、総ヘモグロビン量を構造的な要因、心拍出量や血行動態を機能的な要因として整理する。ヘモグロビンは血液中で酸素の運搬を担う成分である。送り出すポンプだけを調べても、運搬の仕組み全体を見たことにはならない。運搬能力と循環の応答を合わせて考える視点である。[2]

このレビューが取り上げるのは、非鍛錬者と持久的に鍛錬した人の違い、性差、個人差などだ。総ヘモグロビン量と最大酸素摂取量との関連も扱われている。男女の鍛錬状態や性差を扱うレビューであり、18〜39歳の女性個人に平均的な特徴をそのまま当てはめることはできない。関連がある指標を知ることと、その指標から運動の種類を判定することは別である。持久力の高い人の体の特徴を、自分の運動が有酸素か無酸素かを判断する物差しに置き換えないようにしたい。[2]

糖尿病患者の比較研究に戻ると、測定は安静時だけでなく、低強度と高強度の運動時にも行われた。安静時の値が似ていたという話と、負荷を加えたときの応答が似ていたという話は区別される。何もしていないときの記録だけでは、動いたときの増やし方まで代表できない。研究が負荷を変えて測るのは、体の応答を場面ごとに捉えるためでもある。[15]

日常のメモにも、この区別を持ち帰れる。「今日は息が上がった」という一文のそばに、階段だったか、平地だったか、止まった後だったかを残す。同じ動作をしたつもりでも、記録の場面が違えば比較したいものがずれる。そのメモから酸素抽出量を計算することはできないが、比較している場面をそろえる助けにはなる。運動中の酸素輸送を考える際にも、心拍出量と動静脈酸素較差は区別して扱われる。[2]

数字で読む酸素抽出の比較

53人:無症状の2型糖尿病患者を調べた横断研究の対象人数である。[15]

30.7%:運動能力が低い群で、酸素抽出の増加が小さかった程度である。[15]

12.5対15.3 mL/dL:同研究の高強度運動時の酸素抽出の群平均であり、運動の分類基準ではない。[15]

24週間:中強度持久運動と高強度インターバル運動を比べた、別の糖尿病患者の試験期間である。[18]

19人:その試験で24週間を完了した人数であり、最初の割り付け人数とは異なる。[18]

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宮川涼 Founder

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