ダイエットの筋トレと有酸素運動の比率は遺伝子で選べる?予測の数字を読み直す

筋トレと有酸素運動をどの比率にするか、ダイエットの予定表を遺伝子検査で埋められるのか。脂肪の減少、脚の筋力、運動能力を調べた研究を比較し、関連が見つかることと自分に合う割合が分かることの距離を読む。説明率の大きな予測モデルや少人数の結果をどう受け止め、実際の運動を見直すかも考える。

運動用の靴を玄関に出したまま、今週の予定表を開く。筋トレを先に予約するか、歩く時間を増やすか。「遺伝子に合った運動」と聞くと、その迷いまで検査で解けそうに見える。体質から予定が決まるなら迷わずに済みそうだが、知りたいのは遺伝子の名前ではなく、自分の限られた時間をどこに使うかである。

答えの芯は、遺伝子と運動後の変化に関連は見つかっているが、それだけでダイエットに適した筋トレと有酸素運動の比率までは決められない、ということだ。脂肪量を調べた研究と、脚で押す力を予測した研究では、予測している結果そのものが違う。[6][7][16]

既存記事「ダイエットの遺伝子検査で食事を選べる?体質の予測と減量の比較試験を読む」には食事の選択を譲る。また、「筋トレと有酸素運動で免疫は若返る?細胞の種類と遺伝子の変化を分けて読む」が扱う免疫の変化もそちらに譲る。ここで考えるのは運動の配分である。体重を減らすことを全員の目的にせず、脂肪量、筋力、運動能力のどれを確かめたいのかから、研究の数字を読み直していく。[6][7][19]

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遺伝子と関連することと、運動の配分を選べること

有酸素運動を続けた後、ある遺伝子型の人で脂肪が多く減った。これは配分を考える手掛かりに見える。ただし、その人が筋トレをした場合と比べた結果でなければ、有酸素運動を選ぶほうがよいとは決められない。若い女性を調べた脂肪減少の研究は、有酸素運動の前後を調べたものであり、筋トレとの配分比較とは区別して読む必要がある。[7]

ここでいう遺伝子型とは、研究で区別した遺伝的な違いの組み合わせを指す。運動研究では、その違いごとに筋力や体脂肪の変化を比べている。筋トレを受けた集団の中で差を探す研究なら、分かるのはその条件での変化との関連である。別の種目に置き換えるべきかまで答えるには、比べる相手が必要になる。[5][6]

配分という問いには、さらに運動の量や組み合わせが入る。同じ時間を使って筋トレを多くする案と、有酸素運動を多くする案を用意し、遺伝子に合わせて選ぶほうが目的にかなうかを比べる必要がある。特定の運動後に遺伝子型の差があったという報告だけでは、その比較を済ませたことにはならない。[6][7][19]

遺伝子を使った個別化の研究が無意味なのではない。何を選ぶための情報なのかを狭く読むのである。筋力の伸びを予測する情報を、脂肪を減らす時間配分の答えに移すと、研究が調べた目的から離れる。検査結果の説明を読むときも、結論の動詞より先に「何が変わったか」を探したい。[6][16]

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有酸素運動で脂肪が減る型は見つかったが、人数に注目する

運動習慣のない若いポーランド人女性を対象に、有酸素運動後の脂肪減少と遺伝的な違いを調べた研究がある。対象は標準体重の女性126人、平均年齢は21.4歳で、運動期間は12週間だった。肥満のある人の治療試験とは対象が異なる。[7]

研究では、脂肪の利用に関わるACSL1という遺伝子の特定の違いと、脂肪減少との関連が見つかった。CC型122人の脂肪量の変化は−3.8%、CT型4人では−31.4%だった。大きな差だが、後者の数字は少人数の結果である。[7]

この割合は、体重が同じ割合で減ったという意味ではない。研究で比較したのは脂肪量の減少であり、体脂肪率がその数だけ下がったという意味でもない。割合だけを抜き出して「この型なら大幅に痩せる」と読むと、測定したものも対象者も置き去りになる。[7]

同じ研究には競技者を対象にした横断的な比較もある。横断研究とは、ある時点の特徴を比べる調査である。男性競技者では特定の型と低いBMIとの関連が見つかったが、これはその型の男性を運動させて減量効果を確認した結果ではない。男性競技者の関連が18〜39歳の女性にも当てはまるかは、この横断比較からは判断できない。運動前後の女性の結果と、ある時点の男性の比較は、同じ意味の再確認として束ねられない。[7]

人数が少ないから関連を捨てる必要はない。一方で、差が大きいから自分にも同じことが起きると期待するのも早い。標準体重の若い女性の結果を、年齢や体格が異なる読者の目標に変える理由にはならない。自分の身体に下げるべき数字を新しく作るための研究ではないのである。[7]

対照的な結果もある。運動習慣のない男女69人を対象にした比較試験では、12週間の歩行・走行を行う群53人と対照群16人を比較した。男女を合わせた結果なので、18〜39歳の女性だけで同じ差が出るかは別に確かめる必要がある。運動群の脂肪量は−1.3kg、対照群は−0.3kgで、群間の差は統計的に有意だった。[16]

ところが、この試験で調べたPPARγ2のPro12Alaという遺伝的な違いは、運動による減量の個人差を説明しなかった。反応した人と反応しなかった人の分布にも、遺伝子型による差は認められなかった。有酸素運動で変化が起きることと、その変化を特定の遺伝子で振り分けられることは、別々に確かめる必要がある。[16]

筋トレの予測が大きく当たるように見える数字

脚で押す力を予測する研究では、運動習慣の少ない成人193人が12週間の筋トレを行った。研究者は筋力、筋肉の量や厚さを測り、遺伝的な情報とトレーニング後の変化との関係を調べた。成人全体を扱うモデルであり、18〜39歳の女性にそのまま当てはめた予測の確かさは別に検証する必要がある。[6]

遺伝的な指標を組み合わせたモデルでは、筋力の変化のばらつきの40.4%を説明した。さらに身体の特徴に関する指標を加えたモデルでは、説明率が75.4%になった。説明率は、この集団の人ごとの変化の違いをモデルがどれだけ表せたかという数字であり、個人の将来がその確率で的中するという数字ではない。[6]

したがって「75.4%の説明率」を「自分に合う運動が75.4%の確率で分かる」と言い換えることはできない。そもそも予測した結果はレッグプレスの筋力変化である。レッグプレスは脚で負荷を押す運動であり、食事と運動を組み合わせた生活で脂肪がどれだけ減るかとは、結果の種類が違う。[6]

この研究では、筋力の変化が−55.83%から151.20%まで幅広かった。これは個人差を調べる意義を示すが、その幅をそのまま遺伝子の強さの順位表にすることはできない。モデル自体が、遺伝的情報に身体の特徴を加えて構成されているからである。[6]

もう少し日常に引き寄せると、階段を上る脚の力を伸ばしたい人と、脂肪量の変化を知りたい人では、必要な予測が異なる。予定表を決める前に目的を言葉にするのは精神論ではない。どの研究の結果を判断材料にできるかを選ぶための作業である。[6][7]

予測モデルの作り方にも目を向けたい。この研究では、広く遺伝的な違いを調べる分析から筋力変化に関連する候補を探し、そのうち7つの指標を取り入れたモデルを構築した。その組み合わせによる点数と筋力変化には正の相関があった。正の相関とは、点数が高い人ほど筋力変化も大きい傾向があったということで、点数を上げる行動をすれば筋力が増えるという意味ではない。[6]

身体の特徴を加えると説明率が上がった点も読み落としたくない。遺伝子だけで未来の運動成果が決まるという説明より、実際の身体に関する情報を合わせて考える研究だったと読むほうが正確である。検査票の点数だけで予定を固定する前に、その予測が何を入力し、何を出力しているかを確認する余地がある。[6]

有酸素運動の比較試験では、Pro/Pro型の脂肪量変化が平均−1.3kg、Pro/Ala型が−1.1kgだった。それぞれの型の中では運動前後の変化が見られたが、遺伝子型によって変化が違うとする相互作用は認められなかった。「ある型で変化が有意だった」という文章だけを拾うと、型を比べた結論を読み違える。[16]

夕方の予定表に戻れば、この違いは実用的だ。検査の説明が「この型でも運動後に変化した」と示しているのか、「この型なら別の運動より結果がよい」と示しているのかを分けられる。前者だけなら、別の種目を減らす根拠として使うには距離がある。運動の選択に必要な比較が本当に含まれているかを見るのである。[16][19]

数字で読む運動反応の遺伝子研究

126人:若い標準体重女性の有酸素運動と脂肪減少を調べた集団である。[7]

4人:脂肪量−31.4%が報告されたCT型の人数である。[7]

−1.3kgと−0.3kg:別の比較試験での運動群と対照群の脂肪量変化であり、遺伝子型の比較ではない。[16]

40.4%:脚の筋力変化について、遺伝的指標を組み合わせたモデルの説明率である。[6]

75.4%:同じ研究で身体の特徴も加えたモデルの説明率であり、個人への的中率ではない。[6]

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宮川涼 Founder

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