女性の腹筋は鍛えると筋線維の向きも変わる?筋束の長さと厚さを読み分ける

女性の腹筋の形が気になっても、厚さの変化を筋線維の向きの変化と同じには扱えない。腹直筋の解剖研究、健康な成人の収縮中の測定、産後女性の運動研究から、筋束の長さ・厚さ・左右の間隔を区別する。鏡の印象や画像の数字から何を判断できるのか、研究の対象と測定場面を確かめながら読む。

マットで仰向けになり、お腹を固めた時と引き込んだ時を比べる。同じ日の同じ体でも、力の入れ方で測った厚さは違う。男性9人、女性9人の健康な成人を調べた実験で確認された結果だ。18〜39歳の女性にそのまま当てはめるには、男女を合わせた結果である点を考える必要がある。動作中の厚さと、練習を重ねた後の構造の変化は、別の問いである。[13]

女性の腹筋を鍛えると筋線維の向きも変わるのか。ここで読む研究から、その変化を断定することはできない。腹直筋の筋束の長さを調べた解剖研究、収縮中の厚さを比べた実験、産後の左右の腹直筋の間隔を調べた運動研究は、それぞれ違うものを測っている。どれかの数字が動いても、残りが同じ方向に動いた証明にはならない。[8][13][15]

「女性の腹筋の横線は鍛えると増える?腱の区切りと筋肉の厚さを研究で読み解く」が扱う表面の区切りの問いは、その記事に譲る。ここでは、長さ・厚さ・向きという測定の違いから、女性の腹筋の形について言える範囲を考える。鏡に見える輪郭を、すぐに筋肉内部の設計図へ翻訳しないための読み方である。[8][13]

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腹筋の「形」を、どの測定で確かめるのか

腹直筋は、解剖研究で筋の長さ、筋束の長さ、羽状角、筋の質量などを別々に測られている筋肉である。筋束は筋線維のまとまりを指し、羽状角はその走行の傾きを表す指標である。長さを知ること、傾きを知ること、筋肉がどれだけあるかを知ることを、研究者は同じ作業にしていない。[8]

これに対し、健康な成人の実験では超音波画像で腹直筋などの厚さを測り、表面筋電図で筋活動も調べている。厚さは画像上の寸法、筋活動は筋肉が働く際の電気的な活動の指標であり、両者を並べることで動作の違いを検討している。画像で厚く見えたという情報だけで、内部の筋束が長くなったと読んではいけない。[13]

産後女性の研究で使う左右の腹直筋の間隔も、別の寸法である。腹直筋離開に対する運動のメタ分析が主に評価したのは、この間隔がどれだけ変化したかだった。筋肉そのものの厚さや筋束の長さに置き換えると、研究が答えた問いを変えてしまう。[15]

たとえば「腹筋の形が変わった」という投稿に画像が添えられていたら、まず何を線で結んで測ったかを見る。筋肉の表から裏までなのか、左右の筋肉の間なのか、内部の走行に沿った長さなのか。どれも画像に引ける線だが、同じ情報ではない。厚さの研究と間隔の研究を同じ変化量として比較することはできない。[8][13][15]

自分の目標を言葉にする時にも、この区別は役に立つ。「腹筋を変えたい」の中に、見た目の希望と動作の希望が混ざっていてもよい。ただし、筋束の方向まで変えたいという希望には、その方向を測った結果が必要になる。厚さの数字を代役にしないことが、研究を読む入口である。[8][13]

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筋束の長さは、腹筋全体の見た目の長さではない

腹直筋の構造を具体的に調べた研究として、遺体を用いた解剖研究がある。対象は5体で、腹直筋、腰方形筋、脊柱起立筋の各部について、筋腱の長さ、筋の長さ、筋束の長さ、筋節の長さ、羽状角、質量を測定した。さらに、その測定から最適筋束長と生理学的断面積を計算している。遺体の構造を測った結果であり、18〜39歳の女性が運動した時の変化へそのまま当てはめることはできない。[8]

最適筋束長とは、筋が最大の力を発揮する時の筋束長を指す。この研究で腹直筋の平均最適筋束長は28.3cm、標準偏差は4.2cmだった。研究対象となった筋の中では、腹直筋が最も長い筋束を持っていた。これは筋の力発揮能力を推定するための解剖学的な情報であり、腹筋運動で伸ばすべき目標値ではない。[8]

比較された脊柱起立筋の各部では、平均最適筋束長が6.4cmから14.2cmの範囲だった。体幹という同じ地域の筋肉でも、構造を同一視できないことが分かる。背中のある筋肉で得た長さの変化を、そのまま腹直筋へ移して読むのは慎重であるべきだ。[8]

研究でいう生理学的断面積は、筋の体積を最適筋束長で割って求めた値である。腹直筋の平均は2.6cm²、標準偏差は0.9cm²だった。腹直筋の長さの数字と、この断面積の数字は、計算の上でも関係している一方、互いの代わりにはならない。長いという特徴と、断面の大きさという特徴を分けて扱う理由がここにある。[8]

この解剖研究は、運動する前と後の女性を追った試験ではない。したがって、平均最適筋束長を自分のお腹に当てはめて、短いから鍛え方が悪いと判断する使い方は合わない。研究が示すのは測定された筋の構造であり、練習による変化量や個人の合否ではない。[8]

中央線の車内で見かけたトレーニング動画に「縦長の腹筋へ」と書いてあっても、その言葉だけでは筋束長を指しているのか分からない。研究の長さは、測定と定義を伴う長さである。日常語の「縦長」と、最適筋束長の数値を結び付けるには、その間を埋める検証が要る。[8]

力の入れ方だけでも、測った厚さは異なる

健康な成人18人を対象とした無作為化クロスオーバー研究は、日常の疑問に近い手がかりになる。男性9人、女性9人が参加し、お腹全体を固めるブレーシングと、お腹を引き込むホローイングを順序を無作為にして行った。条件の間には1週間の間隔を置き、静的な姿勢と仰向けで足先を動かす課題を調べている。18〜39歳の女性へ応用する際も、これは女性だけの結果ではなく男女混合の比較だと押さえたい。[13]

腹直筋の厚さは、ブレーシング中が10.07±1.55mm、ホローイング中が9.22±1.46mmで、前者が有意に厚かった。一方、内腹斜筋と腹横筋はホローイング中のほうが厚かった。腹横筋はホローイング中が4.08±1.23mm、ブレーシング中が2.41±0.80mmと報告された。同じ人でも、どの筋肉をどの課題で測るかによって比較の方向が違う。[13]

だからといって「腹直筋を育てるなら常に固める方法が優秀」とは結論できない。これは課題中の厚さと活動を比較した研究であり、長期に練習して安静時の筋量がどれだけ増えたかを競った試験ではない。動作中の寸法の違いを、将来の筋肥大の順位に読み替えるのは飛躍である。[13]

筋電図の結果も、厚さの結果と単純には重ならなかった。静的な課題では、腹直筋、外腹斜筋、内腹斜筋の活動はホローイング中のほうが高かった。一方、動的な課題では方法間の有意差がなかった。著者らは、課題の要求が高くなると安定化の戦略が近づく、課題に依存した調節として捉えている。[13]

ここで大事なのは、「厚いほうが常に活動も高い」という読み方が、この実験の結果を整理しきれないことだ。厚さと活動は異なる測定であり、静止と動作でも比較は変わる。レッスン中に強く働いた感じがあっても、それだけを筋束の向きが変わった証拠にはできない。[13]

この実験には女性が含まれるが、男女を合わせた結果を女性固有の変化率として示すのも適切ではない。女性向けの記事だからこそ、「女性も参加した成人の実験」と「女性だけで確かめた結果」を区別したい。参加者の性別は、結論を自分へ移す際に見る条件の一つである。[13]

数値の後ろに付く「±」にも目を向けたい。成人の実験で示された腹直筋の厚さは、平均だけでなく標準偏差も伴っている。平均値を知ることと、参加者全員がその寸法だったと考えることは違う。自分がその平均より厚いか薄いかという比較を始める前に、研究が個人の基準値を作るためのものだったかを確かめたい。[13]

解剖研究の28.3±4.2cmも同様である。平均の周りにばらつきがあるという情報を含み、全員に共通する固定の設計図を示してはいない。しかも、こちらは解剖による最適筋束長で、成人の実験は課題中の超音波による厚さである。単位をそろえても、測定の意味まではそろわない。[8][13]

比較に使える数字を探す時は、測定項目、対象、測定した場面を一続きで読もう。腹筋という名前が同じでも、その条件が替われば答えている疑問も替わる。画像を見て練習の成果を急いで決めたくなる日ほど、厚さの差を構造全体の変化へ広げずに扱いたい。[8][13]

数字で読む腹筋の寸法

5体:腹直筋などの筋構造を測定した解剖研究の対象数である。[8]

28.3±4.2cm:同研究の腹直筋の最適筋束長。練習後の増加量ではない。[8]

18人:ブレーシングとホローイングを比較した健康な成人。女性は9人だった。[13]

10.07mmと9.22mm:上記実験における方法別の腹直筋の平均厚さである。[13]

−8.05mm:産後女性の運動研究を統合した、左右の腹直筋の間隔の群間差である。[15]

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宮川涼 Founder

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