有酸素運動・無酸素運動後の乳酸の行き先は?直接酸化と肝臓の糖合成を追う

運動を終えて息が落ち着いた後、乳酸はどこへ行くのか。直接酸化されて使われる経路と、肝臓で糖を作る材料になる経路を研究から読む。血中乳酸の低下と疲労回復を分け、小規模な飲料試験の結果や対象の違いも確かめながら、有酸素運動と無酸素運動の後の休息を考える。

最後のスクワットを終え、椅子に腰かけると息が落ち着く。「さっきの運動で出た乳酸も、もう消えただろうか」。運動後の体を、使い終わったごみを片づける場所として想像していないだろうか。

乳酸の行き先には、燃料として使われる道がある。運動時の乳酸を扱ったレビューでは、持続的な激しい運動の後に蓄積した乳酸の大部分は直接酸化によって取り除かれ、筋肉の呼吸速度が低下すると、肝臓で糖を合成する材料になると整理されている。乳酸は燃料にも糖の材料にもなる。[20]

ただし、血中乳酸が下がることと、次の運動で力を出せることは同じ評価ではない。呼吸の見た目だけで乳酸の行方を決めず、「何に使われるか」と「何をもって回復とするか」を分けて考えたい。[14][20] 種目の大きな分類は既存記事「有酸素運動と無酸素運動」に譲る。運動中の境目は既存記事「有酸素運動と無酸素運動の違いは息で分かる?乳酸の境目との一致を研究で読む」に譲り、ここでは運動を止めた後の使い道を追う。

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乳酸は無酸素運動だけの置き土産ではない

有酸素運動と無酸素運動という名前から、別々の燃料装置が交代するように思えるかもしれない。人を対象とする自転車運動の生理と栄養の研究を扱うレビューでは、運動中に使うエネルギーの受け渡し役であるアデノシン三リン酸の再合成には、ホスファゲン系、解糖系、酸化的リン酸化、脂肪酸の分解が関わり、それぞれの寄与は運動の強度と持続時間に応じて変わると説明している。18〜39歳の女性の日常的な運動で各経路が占める割合は、この自転車運動の整理から直接決められない。[15]

ここで解糖系とは糖を分解してエネルギーを得る経路、酸化的リン酸化とは細胞内のミトコンドリアでエネルギーを作る過程である。種目の名前を聞いただけで、その最中にどの経路がどれだけ働くかを固定する読み方は、この整理に合わない。ゆっくり長く続ける場面と、短く強く力を出す場面では、各経路の分担を考える必要がある。[15]

乳酸に関するレビューも、乳酸の生成は運動強度に応じて異なり、生成場所は筋肉だけに限らないとしている。「無酸素運動をした人だけに乳酸が残る」という仕分けでは、体内での生成と利用を捉えきれない。[20] 運動の名札よりも、実際にどの程度の負荷を、どれくらい続けたのかが研究を読む際の入口になる。[15]

乳酸が生じること自体を、運動の失敗とも考えなくてよい。乳酸の生成はエネルギー代謝と密接に結びついている。さらに乳酸脱水素酵素が触媒する反応は、水素イオンを使って乳酸を作り、進行する代謝性の酸性化を遅らせると同レビューは述べている。「乳酸という名前に酸があるから、生成するほど体が一方的に酸っぱくなる」という単純な図ではない。[20]

これは、つらさを無視して運動を続ける根拠にはならない。代謝の反応を説明する話と、その日の運動を続けるかどうかの判断は別である。少なくとも、乳酸が作られたという事実だけから、体内に不要物がたまっていると決める必要はない。[20]

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休んでいる間にも、酸化して使われる

乳酸が「取り除かれる」と聞くと、体の外へ排出される場面を想像しやすい。しかしレビューが挙げている主要な行き先は直接酸化である。ここでは、乳酸を代謝の中で燃料として使う経路を指す。持続的で激しい運動の後にたまった乳酸の大部分がこの経路で取り除かれる、というのがレビューの整理だ。[20]

したがって、血液の値が低下したという結果を読むときは、数値が減ったことと、物質が無価値だったことを結びつけない方がよい。燃料として使えるものも、使われれば測定される量は変わる。「減るなら悪いものだった」という読み方では、乳酸の酸化を説明できない。[20]

椅子に腰かけている姿と、細胞の代謝は別の風景である。運動という目に見える動作が終わった後にも、乳酸には利用される経路がある。[20] 休息を「何も起きない空白」と考えるより、運動中に生じた物質の使われ方が変わる時間として見ると、乳酸の行方を理解しやすい。

ただし「大部分」という表現を、誰でも同じ速さで同じ割合を処理するという意味に広げてはいけない。ここで説明されているのは持続的な激しい運動後の代謝であり、通勤の階段、常温のヨガ、短い筋トレの後に、そのまま同じ量を割り当てる話ではない。[20] 生活の動作は理解の入口になるが、研究条件の代わりにはならない。

また、「呼吸が戻った後」という日常の言葉と、研究でいう筋肉の呼吸速度は同じ測定ではない。レビューは筋肉の呼吸速度の低下と乳酸の利用先を論じている。[20] 口や胸の動きが静かになった瞬間を、乳酸が使われ終わった時刻として記録することはできない。見た目の息の落ち着きを、代謝の終了ベルにしない読み方が必要だ。

肝臓で糖を作る材料にもなる

乳酸の使い道は直接酸化だけではない。乳酸を扱うレビューでは、筋肉の呼吸速度が低下すると乳酸は肝臓での糖合成に適した材料になると述べている。糖を新たに作る過程を糖新生と呼ぶ。乳酸は、燃料として使われるだけでなく、糖を作る側にも回り得る物質なのだ。[20]

ここで押さえたいのは、運動後の行き先がひとつではない点である。「休んだら乳酸が消える」という言い方は、行き先の違いを隠してしまう。酸化による利用と肝臓での糖合成は、同じ使い道ではない。[20] 乳酸を消しゴムで消える汚れのように考えるより、代謝の中で別の役割を担う材料として見る方が、この説明に近い。

一方で、乳酸が糖の材料になることを理由に、運動後の食事を抜くという結論は出ない。このレビューが示す代謝経路は、食事を減らす方法の試験ではない。[20] 体内で糖を作れるという仕組みの説明と、個人が何を食べるべきかという献立の判断を、直接つなげないことが大切である。

同じ理由で、「乳酸をたくさん作れば、その後に使える糖が増えるから得だ」と運動を強める読み方も避けたい。乳酸の生成と利用の仕組みを知ることは、乳酸を最大化する目標を持つこととは違う。乳酸の生成量は運動強度によって変わるが、その量だけで運動の良し悪しを採点する根拠にはならない。[20]

仕事帰りに運動した日、帰宅してから「乳酸がまだ残っている気がする」と感じることがあるかもしれない。その感覚を、直接酸化が遅れている、あるいは糖新生が止まっていると翻訳するのは早い。乳酸の経路についての知識は、主観的な感覚から体内の量を逆算する計算式ではない。[20] 研究では、実際に血中乳酸を測る評価と、筋肉の痛みや力の評価を分けている。[14]

研究の言葉を日常へ持ち帰るなら、「なくなったか」より「どの経路で使われるか」と問い直すとよい。直接酸化は乳酸を利用する道であり、肝臓での糖合成は乳酸を材料にする道である。同じ乳酸について述べていても、運動後の代謝を説明する動詞は違う。[20] この区別を置くだけで、休息を乳酸の排出待ちとして捉える必要がなくなる。

もうひとつ、場所の区別も必要だ。血中乳酸は血液で測った指標であり、レビューが述べる乳酸の働きは骨格筋、心臓、脳、腎臓、肝臓に及ぶ。[20] 血液の数字の低下を見たとき、それを体のすべての場所で同じ変化が起きたという説明に置き換えない。測定した場所と、仕組みを論じる場所を分けるのは、運動後の検査を読む際にも役立つ視点である。

たとえば「この方法で乳酸が減った」という話を聞いたら、減った理由まで実験で確かめたのかを考えたい。チコリの試験は、人の運動時間と血中乳酸を測るだけでなく、別に培養筋細胞で乳酸関連酵素を調べている。[8] 人での数値の変化だけから酸化の仕組みを断定するのではなく、異なる実験を組み合わせて可能性を探っている点が読みどころになる。

数字で読む乳酸と回復の試験

32人:未訓練の大学生を対象に、チコリを使った飲料を比べた予備的な無作為化クロスオーバー試験の参加者数である。[8]

7日間:同試験でそれぞれの飲料を摂取した期間であり、日常の食事一般に当てはめる期間ではない。[8]

男性14.5%、女性10.6%:同試験で報告された運動後の血中乳酸の低下である。[8]

12人:チェリージュースとスポーツ飲料を比較した、余暇に自転車運動を行う人の試験規模である。[14]

24時間:同試験で、運動直後に変化した筋力と低頻度疲労が基準の状態に戻った測定時点である。全員の回復の期限を定めた数字ではない。[14]

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宮川涼 Founder

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