りんごの減量研究で見えた違い 丸ごとの果実・ジュース・抽出物と炎症や体脂肪

りんごを食べると痩せるのか。減量指導を伴う果物の試験と、体重が変わらず炎症の指標が下がった試験を照らし合わせる。丸ごとの果実、ジュース、乾燥りんご、抽出物では何を測り、どんな違いが出たのか。量の数字を推奨に写さず、食卓での選び方と研究結果の受け取り方を考える。

買い物かごのりんごと、飲料売り場のりんごジュース。研究でも、果実と加工した食品は別々に調べられている。買い物かごに入れる果実、コップに注ぐジュース、成分を取り出した錠剤。どれもりんごの名を持つが、試験で確かめた食べ方や、変化した指標まで同じとは限らない。[4][13][16]

減量を考えていると、検査の数字が良くなったという話を、体脂肪も落ちたという話として受け取りたくなる。しかし丸ごとのりんごを使った無作為化比較試験では、炎症に関わる血液の指標が低下しても、身体計測値には効果が見られなかった。食べ物の働きを体重だけで採点することも、別の指標の改善を減量へ翻訳することも、研究の答えを狭めてしまう。[9]

りんごを特別扱いする前に、何を食べた人と何を食べた人を比べたのかを置いてみる。果物を使った食事の試験、飲料同士の比較、抽出物と偽薬の比較では、それぞれ判断できる範囲が違う。台所で手に取るものを、その研究の条件へ丁寧に対応させたい。[4][13][16]

果物で減った体重は、りんごだけの成績か

Conceição de Oliveiraらの無作為化試験は、ブラジルで募集した女性のうち、過体重で血中コレステロールが高い、喫煙しない30〜50歳の49人を割り付けた研究である。比べたのは、りんご、洋なし、オート麦のクッキーだった。参加者は補助食品を1日3回食べ、食事全体についても栄養士から減量を目指す指導を受けた。12週間後、果物群の体重減少は1.22kgで、95%信頼区間は0.44〜1.85kgだった。オート麦群は0.88kgの減少だったが、こちらの変化は統計的に有意ではなく、群間の差は有意と報告されている。ここでまず押さえたいのは、1.22kgが果物群として示された値であり、りんごだけを食べた全員の平均として紹介できる数字ではないことだ。また、同じ人が好きな食事にりんごを足したときの結果とも異なる。食品を受け取るだけでなく、食事全体への指導とともに取り組んだ人の変化である。[4]

この試験では果物群で血糖の低下も大きかったが、血糖とインスリンの比は開始時から終了時まで有意に変化しなかった。インスリンは血糖の調節に関わるホルモンで、血糖との比も評価に使われた。菓子を果物に替える場合と、食事を変えず果物を上乗せする場合は、区別して考える。両群への減量指導を含む比較の中で、果物群に変化があったという結果である。[4]

栄養士が示した食事の構成は、エネルギーの55%を炭水化物、15%をたんぱく質、30%を脂肪から取るものだった。月に1kgの減量を目指す指導があり、補助食品を食べる回数は、1日計6回の食事のうち3回に位置づけられていた。果物の提供だけで完結する介入より、食事全体の構成と食べる機会が具体的に定められている。報告では血中の中性脂肪、総コレステロール、申告された果物の摂取量の変化から、食事への取り組みは良好と評価された。オート麦群の果物摂取は治療期間を通じて少なかった。[4]

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丸ごとの果実で、炎症と体重の答えが分かれた

Liddleらは過体重・肥満の成人46人を、丸ごとのりんごを食べる群と避ける群へ無作為に分けた。44人が完了した6週間の試験で、りんご群は普段の食事の一部として、ガラ種の果実を1日3個、可食部で約200g食べた。小さな果実の個数と、家で買うりんごの個数をそのまま対応させないためにも、重さを併記して読む意味がある。結果は、対照群に比べて血中の炎症指標であるC反応性たんぱくが17.0%、炎症に関わる物質のIL-6が12.4%低下した。一方、身体計測値や、ほかの心血管疾患のリスク指標には効果が見られなかった。著者らも、体重減少を伴わずに炎症を和らげる可能性という結論にしている。体重の差が出なかったことは、測定した別の変化まで消す理由にはならないし、炎症の変化は、りんごが減量に成功した証明にもならない。[9]

かごの中に複数のりんごが入っている、赤い皮の果実を写した写真。
かごの中に複数のりんごが入っている、赤い皮の果実を写した写真。
写真: George Chernilevsky / Public domain / Wikimedia Commons

この試験の食事環境には、日常へ持ち帰るときに見落としたくない条件もある。参加者は開始前にポリフェノールと食物繊維が多い食品・飲料を避け、試験期間にもそれらの摂取を制限していた。ポリフェノールはりんごに含まれる生理活性成分の一群で、果実は食物繊維も含む。その両方を含む食品を制限した環境で、りんごを食べるかどうかを比べたのである。普段からほかの果物や野菜も食べる生活に、同じ変化の大きさが当てはまるかは別の問いになる。検査結果の記事を読んだときは、「りんごの成分に注目した研究だった」と「家庭でも同じ割合で改善する」を離して考えたい。台所で再現するために周囲の食品を制限する必要も、この結果からは導けない。研究者は血中の値だけでなく、血液から取り出した免疫細胞を培養し、そこから分泌される炎症関連物質も調べた。刺激を加えない条件ではIL-6とIL-17の分泌も減っていた。人が食べた後の変化を、細胞の反応まで測って捉えようとした研究である。食品を減らして試験に近づけるより、その結果が得られた条件を知って期待を調整する方が、日常の選択につながる。[9]

ジュースで動いたのは、腹囲より体脂肪率だった

Barthらの無作為化比較試験では、喫煙せず糖尿病のない、BMIが27以上の男性68人を調べた。BMIは身長と体重から表す体格指数である。濁りのある、ポリフェノールを多く含むりんごジュースを1日750mL飲む群と、同じエネルギー量の対照飲料を飲む群を4週間比べたところ、体脂肪率の変化はジュース群で−1.0±1.3、対照群で−0.2±0.9であり、群間に有意な差があった。体脂肪率の変化なので、体重が1.0kg減ったという意味にはならない。しかも血中脂質、BMI、腹囲などには有意な効果がなかった。体脂肪率が下がった結果と、腹囲が変わらなかった結果は、同じ研究の中に並んでいる。果汁だから必ず体重が増えると決めつけることも、この試験で減量法として認定されたと受け取ることも、測った項目から離れてしまう。[13]

この研究では遺伝的な違いも調べ、IL-6に関わる遺伝子の型と体脂肪の変化との相互作用を報告した。特定の型で変化が検出され、ほかの型では検出されなかったという内容であり、著者らは個人の遺伝的背景が関わる最初の手がかりの可能性として扱っている。ただし、家庭で遺伝子の型を調べて飲料を選ぶ方法の有効性までは検証していない。より身近な判断材料は、比べた相手が水でなく、同じエネルギー量の飲料だったという点だ。いつもの飲み物から替える場面と、飲み物を足す場面を一緒にすると、この比較の意味が薄れる。使われた飲料のポリフェノール量は1日802.5mgで、対照飲料も同じ750mLだった。開始時と終了時に血液の脂質、炎症に関わる物質、身体計測値を調べている。ジュースを飲んだ群で腹囲やBMIに差がなくても、体脂肪率には差があったという複数の測定結果を残しておきたい。[13]

数字で読むりんごの試験

1.22kg:食事指導も受けた果物群で、12週間後に報告された体重減少である。[4]

44人:丸ごとのガラ種のりんごを食べる試験を完了した成人の数である。[9]

750mL:濁りのあるジュースと同じエネルギー量の飲料を比べた試験の1日量であり、推奨量を示す値ではない。[13]

71人:りんごなどから取り出したポリフェノールをカプセルで調べた試験の対象者数である。[7]

23人:便秘のある過体重の成人を対象とする、りんご由来ポリフェノールの試験で解析された人数である。[16]

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宮川涼 Founder

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