ピオグリタゾンと体重増加 内臓脂肪の量は変わらず、割合は下がった試験

ピオグリタゾンで体重が増えても、血糖や脂肪の分布は別の方向に動くことがある。糖尿病や肥満の人を調べた試験から、皮下脂肪、内臓脂肪、肝臓の脂肪、水分を分けて確かめる。内臓脂肪が変わらなかった結果も、むくみの危険も取り上げ、体重の数字だけで薬の良し悪しを決めない見方を探る。

内臓脂肪が減ったという報告と、変わらなかったという報告がある。同じピオグリタゾンを調べた研究でも、脂肪をどこで、どの指標として測るかによって、答えは単純には重ならない。[9][17]

薬を飲み始めてから服がきつくなったのに、診察では血糖の改善を告げられる。そんなとき、「治療は進んでいるのか、太って困っているのか」と戸惑っても不思議はない。実際、体重と皮下脂肪が増える一方で、血糖の指標が下がった無作為化試験がある。体重増加という困りごとと、治療の指標の改善が同時に起こりうる薬である。[9]

増えた重さを全部「悪い脂肪」と呼ぶのも、全部「心配のない水分」と呼ぶのも早い。脂肪量が増えて水分は変わらなかった試験も、むくみの危険が高まった統合解析もある。ピオグリタゾンの話では、体重、脂肪の部位、水分を別々に読むことが出発点になる。[11][12]

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血糖が下がることと、体重が減ることは別の結果だ

ピオグリタゾンはチアゾリジン薬に含まれる。糖尿病の人で、インスリンに対する組織の反応、つまりインスリン感受性を改善する一方、体重が増えることがある。薬の群を扱ったレビューは、内臓側から皮下側への脂肪分布の変化と、肝臓や末梢組織のインスリン感受性の改善との関連を説明している。ここでいう脂肪分布は、全身の脂肪量だけでなく、どこに脂肪があるかという見方である。[4]

ただし、その説明を「余分な脂肪が消える薬」と読み替えると、実測結果から離れる。2型糖尿病の男女48人を対象にした二重盲検の無作為化比較試験では、ピオグリタゾン45 mg/日またはプラセボを24週間使い、体の組成と代謝を調べた。[9]

この試験の体重変化は、薬の群でプラス3.9±3.1 kg、プラセボ群でマイナス0.8±3.4 kgだった。一方、血糖の指標であるHbA1cの低下幅は、それぞれ0.96±1.1%と0.11±0.8%だった。体重が増えた側で血糖の指標は改善していたのである。数値は群の平均と、個人間のばらつきを表す標準偏差である。[9]

同じ試験では、安静にしているときの代謝量、食後に増える熱産生、主観的な空腹感にも目を向けたが、薬による変化は測定されなかった。体重が増えたことから、すぐ「代謝が落ちた」「食欲が強くなった」と説明することは、この結果からはできない。原因を想像で埋めるより、実際に増えた脂肪の部位を見るほうが確かである。[9]

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皮下脂肪は増えたが、内臓脂肪の答えはそろわない

先ほどの糖尿病の試験では、体幹、腕、脚の皮下脂肪が増えた。皮下脂肪は皮膚の下の脂肪を指し、内臓脂肪とは区別して画像で測られている。内臓脂肪については、薬の群にもプラセボ群にも有意な変化がなかった。画像で確認された変化は、皮下脂肪の増加だった。[9]

別の無作為化比較試験では、糖尿病ではない肥満の健康な女性41人に、ピオグリタゾン30 mg/日またはプラセボを16週間投与した。研究者は脂肪の量だけでなく、腹部と大腿部の皮下脂肪組織を採り、新しい脂肪細胞が作られる様子も調べている。体の重さより一段細かい、脂肪組織そのものへの問いだった。[17]

薬の群では、腹部の脂肪全体に占める内臓脂肪の割合が、プラセボ群に比べ有意に低下し、インスリン感受性の指標も改善した。大腿部での新しい脂肪細胞の形成の群間差は3.3±1.6%で有意だった。腹部皮下組織では2.0±2.1%の差で、有意には至っていない。採取した組織の部位によって、結果が異なっていた。[17]

この試験の内臓脂肪の指標は、腹部脂肪全体に占める割合だった。糖尿病の試験が測った内臓脂肪の量とは、評価の物差しが異なる。対象も、糖尿病の男女と、糖尿病ではない肥満の女性で違っている。内臓脂肪への結果を比べる際は、対象と指標をそろえて読む必要がある。[9][17]

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増えた重さが脂肪か水分かは、体重だけでは決まらない

非アルコール性脂肪肝炎の人を対象にした二重盲検の無作為化試験では、体脂肪と体内水分の測定を完了した35人を解析した。ピオグリタゾン群21人、プラセボ群14人を6か月追い、体脂肪の測定と水分量の測定を組み合わせている。脂肪肝炎とは、ここでは研究の対象となった肝臓の病気である。[11]

薬の群では、体重が93.6 kgから96.1 kgへ、全身の脂肪量が32.9 kgから35.4 kgへ増えた。体内の総水分量には有意な変化がなく、筋肉の水分状態や細胞外の水分も変わらなかった。著者らは、この集団の体重増加は水分貯留より脂肪組織の増加によるものと結論している。[11]

一方、むくみは別の研究で確かめられている。2型糖尿病の15,332人、26試験をまとめたメタ分析では、チアゾリジン薬によるむくみのオッズ比は2.26、95%信頼区間は2.02〜2.53だった。ピオグリタゾンに限った推定値は2.42、95%信頼区間は1.90〜3.08である。統合したのは、むくみという有害事象が生じる見込みの比較である。[12]

オッズ比は、ある出来事が起きる見込みを、起きない見込みとの比を使って比較した数値である。「むくむ人が何%いたか」という発生割合と同じ数値にはならない。水分を詳しく測った試験で平均値が変わらなくても、別の集団でむくみが増える結果とは両立する。全身の平均的な水分変化と、個人に現れる有害事象は、問いの立て方が違うからだ。[11][12]

むくみの発生割合を扱ったレビューでは、チアゾリジン薬の試験で約3.0〜7.5%、プラセボや他の飲み薬で1.0〜2.5%という幅が示された。インスリンとピオグリタゾンを併用した試験では15.3%、対応するインスリン単独群では7.0%だった。対象や併用薬が違えば、読者が目にする発生割合も違ってくる。併用薬の情報も、むくみを評価する際の重要な条件となる。[6]

水分の試験では、水の希釈を利用する測定や体に電気を流して調べる測定に加え、脂肪を評価する検査も用いていた。重さが増えたという事実から脂肪か水分かを当てるのでなく、異なる測定を重ねて中身を確かめたのである。体脂肪だけでなく、筋肉の水分状態や細胞外の水分にも目を向けた点に、この研究の問いの細かさがある。[11]

数字で読むピオグリタゾンの研究

+3.9±3.1 kg:糖尿病の24週間の試験での薬群の体重変化。プラセボ群は−0.8±3.4 kgだった。[9]

32.9 kgから35.4 kg:脂肪肝炎の試験で薬群の全身脂肪量が増えた範囲。総水分量には有意な変化がなかった。[11]

2.42:ピオグリタゾンによるむくみのオッズ比。95%信頼区間は1.90〜3.08だった。[12]

−2.59 kg:量を管理する食事を組み合わせたピオグリタゾン群の平均体重変化。通常の食事指導との組み合わせでは+2.15 kgだった。[15]

+4.9 kgと−0.2 kg:24週間の生活支援の試験での通常群と集中的支援群の平均体重変化。後者の減少自体は有意ではなかった。[8]

食事と運動を組み合わせた比較では何が変わったか

薬と生活の取り組みを比較した研究もある。糖尿病がなく、肥満とインスリン抵抗性のある成人37人を、ピオグリタゾン群と食事・運動群に無作為に分け、19週間調べた。インスリン抵抗性とは、インスリンに対する組織の反応が低下した状態を指す。主に問われたのは、血液中で脂質を運ぶ粒子の特徴だった。[7]

食事・運動群だけで、中性脂肪は40±11 mg/dL、総コレステロールは29±4 mg/dL、LDLコレステロールは20±4 mg/dL低下した。いずれも統計的に有意だった。薬と食事・運動の両方でインスリン感受性は改善したが、血液中の脂質濃度については異なる結果が出ている。[7]

一方、LDLの粒子数を見ると、両群に変化があった。LDLはコレステロールなどを運ぶ粒子の一種で、この試験はその濃度だけでなく、大きさごとの粒子数も測った。総LDL粒子数の減少は、食事・運動群で227±40 nmol/L、薬群で149±21 nmol/Lだった。小さなLDL粒子も、それぞれ242±58 nmol/L、226±36 nmol/L減っている。大きなLDL粒子の濃度は両方の群で増えた。[7]

LDL粒子の種類ごとの変化と、インスリン感受性の変化に関連が見られたのは、食事・運動群だけだった。同じ「インスリン感受性の改善」を目指す介入でも、血液中の脂質と結びつく経路には違いが示唆された。食事と運動を扱う研究には、体重以外の測定を通して、生活の取り組みの特徴を知る役割もある。[7]

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宮川涼 Founder

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