膝をついて輪を一往復すると、先に熱いのは腹より二の腕の裏側であることが多い。14人の5回では三頭筋の首位が別の器具で、55人の8週では肘の伸展で厚みが増えた。活動の割合と、8週後に超音波で測る厚みは単位が違い、熱さをその日の筋肥大とは読まない。
キッチンの床に輪が転がっている。膝をつき、前へ出して戻したのは一往復だけなのに、腹より先に熱いのは腕の裏側だ。「腹筋ローラーは二の腕も鍛えられるのか」と、輪を置いたまま考える。熱い場所を、今日鍛えられた場所だと確定したくなる夜である。
その確定は、時計が違う。運動の最中に筋肉が出す電気的な活動と、何週かあとに超音波で測る厚みは、別の記録である。14人が市販の腹用器具を5回ずつ行った比較では、上腕三頭筋の活動が最も高かったのはスライド式の器具とトルソトラックで、アブローラーと呼ばれる器具が最上位に入ったのは腹直筋の上下だった[4]。この14人の比較を18〜39歳の女性にそのまま当てはめるには、対象と器具の違いを考える必要がある。厚みが増えた記録の方は、輪ではなく、未経験の若い女性が8週間、肘を伸ばす練習をしたときの上腕である[2]。
肩の支えと腹直筋を分ける読みは「腹筋ローラーは腕にしか効かない?肩の支えと腹直筋の活動を分けて読む」に譲る。胸を主目的にする読みは「腹筋ローラーは胸の筋肉にも効く?腕を前へ伸ばす負担と胸トレの役割を読む」に置く。腕の脂肪が落ちるか、ローラーを押す前の準備にするかは「二の腕痩せのローラーは筋トレ前にも使う?肘を伸ばす力と可動域を分けて読む」の側である。ここでは活動の高さと、8週後の厚みだけを並べる。

熱さの正体は、3種類の数字に分かれる
腕の裏側の熱さと、論文が残す数字は別の出来事である。残るのは、皮膚の上の電極が拾う活動か、超音波が測る厚みか、である。活動にも単位が二つある。一つは、最大限に力を入れた等尺性の収縮を100%としたときの割合で、%MVICと書く[5]。条件間の活動の差を統合する際には、標準化平均差も使われる[1]。最大筋収縮に対する割合とは別の指標だ[5]。
標準化平均差は、ばらつきの何個分か、という差の大きさである。86研究、1783人を束ねたメタ分析では、不安定な用具を足すと上腕三頭筋の活動が標準化平均差0.45(95%信頼区間0.25から0.66)上がった[1]。対象は下肢・上肢・体幹の運動を行った参加者で、18〜39歳の女性に同じ大きさの差をそのまま当てはめることはできない。これは一回の課題中の電気の差であり、8週後に腕が何センチ太くなったかではない。
厚みの百分率は、さらに別である。未経験の若い女性55人の両腕を条件に割り付け、肘の伸展を8週続けた試験では、上腕の長さの60%の地点で、負荷を上げた条件が0.40cm、21.4%増えた[2]。21.4%は、始める前の厚みに対する変化であって、最大筋力に対する活動の72%ではない。同じ「パーセント」でも、分子が違う。
家の輪で腕が熱い夜に、この3つを一つの「効いた」へ畳むと、5回の順位と、8週の超音波が同じ出来事に見える。見えないように、先に単位を分ける。
初日の汗は、予約した人だけが持ち帰れる。
5回の順位で、三頭筋の首位は輪の名前ではなかった
参加者14人に、市販の腹用器具7種と、クランチ、膝を曲げたシットアップを、各種5回ずつ行わせた試験がある。順序は入れ替え、繰り返し測定である。18〜39歳の女性にそのまま当てはめるより、まずこの参加者と器具の組み合わせで得た結果として読む。電極は腹直筋の上部と下部、外腹斜筋、内腹斜筋、大胸筋、上腕三頭筋、広背筋、腰の脊柱起立筋、大腿直筋に乗り、最大の筋収縮で正規化された[4]。
腹直筋の上下が最も高かったのは、スライド式、トルソトラック、クランチ、そしてアブローラーと呼ばれる器具である。外腹斜筋と内腹斜筋の首位は、スライド式、トルソトラック、クランチ、膝を曲げたシットアップで、アブローラーはこの斜筋の列には入っていない。大胸筋と上腕三頭筋と広背筋が最も高かったのは、スライド式とトルソトラックだけである[4]。
「最も高い」は、その比較の中の首位であって、他の器具の活動がゼロという意味ではない。アブローラーに三頭筋の電極が乗っていなかった、とも読めない。乗っていた。首位の名前が、腹直筋の文と三頭筋の文で違った、というだけである[4]。
腰の脊柱起立筋が最も高かったのは別の器具で、大腿直筋が最も高かったのは膝を曲げたシットアップと、ひねる型、揺する型の器具だった。著者らは、スライド式とトルソトラックが、腹と上肢を活動させつつ、腰と大腿直筋(股関節を曲げる働き)を相対的に抑えた、と結んでいる。大腿直筋が高い器具は、腰痛のある人には問題になりうる、とも書いている[4]。家の輪の一往復を、この14人の首位と同一視する前に、器具の名前が違うことを残す。
斜めに転がして脇腹を読む問いは「腹筋ローラーは斜めへ転がすと違う?脇腹の活動と衝撃の向きを分ける」に譲る。腹の上下の感覚は「腹筋ローラーは上の腹筋だけに効く?下腹の手応えと上下の筋活動を読み分ける」に置く。この節の材料は、三頭筋の首位がどの名前だったか、である。
パワーホイールのロールアウトは、腹と広背筋の側が高い
床を転がす輪に近い器具を、別の試験がパワーホイールと呼んでいる。健康な男女21人、年齢は23歳から43歳。従来のクランチや膝を曲げたシットアップと、ストラップで吊る膝上げ、30度傾けたリバースクランチ、パワーホイールのパイク、ニーアップ、ロールアウトなどを比べた。表面筋電図を、最大随意収縮で正規化し、一元配置の繰り返し測定で差を見ている[3]。男女を含む23〜43歳の比較なので、18〜39歳の女性だけの活動順位としては扱えない。
電極が乗ったのは、腹直筋の上下、外腹斜筋、内腹斜筋、大腿直筋、広背筋、腰の脊柱起立筋である。腹直筋の上下と内腹斜筋と広背筋が最も高かった群には、パワーホイールのパイク、ニーアップ、ロールアウトが入り、吊った膝上げと、30度のリバースクランチも同じ群にある。外腹斜筋の首位は、パワーホイールの3動作と、吊った膝上げだった[3]。
大腿直筋が最も高かったのは、パワーホイールのパイクとニーアップ、30度のリバースクランチ、膝を曲げたシットアップである。ロールアウトは、腹と広背筋の最上位の文には入り、大腿直筋の最上位の文には入っていない。腰の脊柱起立筋は、種目のあいだで低く、似ていた。著者らは、腹だけでなく余分な筋もよく活動させた、と書き、大腿直筋が高い動作は腰痛のある一部の人には問題になりうる、としている[3]。
この21人の記録は、その場の活動の順位である。電極は腹、広背筋、大腿直筋、腰に向く。三頭筋の首位は、前の14人の比較が別に示している[4]。
数字で読む活動と厚み
- 不安定な面を足した運動。86研究、1783人。三頭筋の活動は標準化平均差0.45(95%信頼区間0.25から0.66)。腹直筋は0.51(0.37から0.66)。一回の電気的活動の差である[1]。
- 未経験の若い女性55人、両腕を割り付け、肘の伸展を週3、3セット、8から12回、8週。上腕60%地点の厚みは、負荷を上げると0.40cm(21.4%)、同じ負荷で0.22cm(11.3%)、運動なしで0.02cm(1.3%)[2]。
- 健康な男女21人、23歳から43歳。パワーホイールのロールアウトは、腹直筋の上下、内腹斜筋、広背筋が最も高い群。大腿直筋の高い動作はパイクとニーアップである[3]。
- 参加者14人、各種5回。三頭筋、大胸筋、広背筋が最も高かったのはスライド式とトルソトラック。アブローラーが最上位に入ったのは腹直筋の上下である[4]。
- 男性10人、女性12人。スライド式は4種のうち腹筋の活動が最大で、大腿直筋は最小。性別による成績の差はなかった[5]。
- 体を動かす習慣のある14人。スイスボールのロールで三頭筋72.5%(標準偏差32.4)、外側広筋83.6%(標準偏差44.2)。腹直筋が最も高かったのはブリッジの61.3%(標準偏差28.5)[6]。
初日の汗は、予約した人だけが持ち帰れる。
1
2







