トランス脂肪と体重増加の関係は、研究によって答えがそろわない。人の体重・腹囲を追った研究には、明確な関連を認めなかった結果もある。動物の研究、血中脂質を調べた試験、反すう動物由来の脂肪の観察を分けて読み、体重増加の可能性と健康上の懸念を混同せず、食卓で考えたいことを整理する。
食品のトランス脂肪の含有情報を探すとき、気になるのは健康への影響か、それともお腹の脂肪か。人の体格を調べた研究には、血液中のトランス脂肪酸と、その後の体格指数の変化との明確な関連を認めなかった例がある。体格指数は体重と身長から体格を見る指標で、この研究は6,243人を最長10年追っている。[5]
一方、体重増加を扱ったレビューは、摂取が多いと体重が少し余分に増える可能性を指摘している。ただし根拠は限られ、人の疫学研究と霊長類のモデルを合わせた評価である。「悪い脂だから必ず太る」という短い説明より、論文の答えには幅がある。[15]
健康への懸念を軽く扱うことと、減量効果を大きく見積もることは、どちらも避けたい。成人の臨床試験を集めた系統的レビューでは、トランス脂肪酸の由来を問わず、とくに血中脂質への悪影響が示されている。体重だけで判断せず、何を測った研究なのかに目を向ける。[14]

トランス脂肪は、由来も測り方も一通りではない
トランス脂肪酸には、反すう動物の胃の中での反応に由来するものと、植物油の水素添加によって工業的に作られるものがある。成人の心臓や代謝に関わる指標を扱った系統的レビューは、この由来を分けて臨床試験を検討した。同じ呼び名でも、どの脂肪酸を、どの量で、何と比べたかを読む必要がある。[14]
食事に含まれる脂肪酸を調べる方法にも違いがある。食事質問票で普段食べるものを尋ねる研究もあれば、血液や脂肪組織に含まれる脂肪酸の割合を測る研究もある。脂肪組織を調べた研究では、体内で作られない脂肪酸の割合を、習慣的な摂取の手がかりとして用いている。食べた記憶だけに頼らず、体に残る成分から確かめる工夫である。[1]
ただし、血液中の割合と食事の摂取量を同じ数字として扱うことはできない。血液を測る研究は血液の成分と体格の関係を、食事質問票を使う研究は推定した摂取量との関係を見ている。実際、血漿のリン脂質という脂肪を含む成分を測った研究では、トランス脂肪酸と開始時の体格指数にも、その後の変化にも明確な関連を認めなかった。[5]
脂肪組織の研究も、総量に相当する区分だけでなく、バクセン酸やルーメン酸などを個別に調べている。脂肪組織中の総トランス18:1脂肪酸の中央値は男性で1.52%、女性で1.47%だった。中央90%の範囲は男性で0.98〜2.19%、女性で1.01〜2.19%と報告されている。男女とも一定の幅がある集団で、各成分とその後の体格変化を検討した結果である。[1]
初日の汗は、予約した人だけが持ち帰れる。
人のお腹を追うと、増えるという結果ばかりではない
デンマークのコホートから選ばれた50〜64歳の男女996人では、脂肪組織の脂肪酸を調べ、5年後の体重と腹囲の変化を追っている。コホートとは、対象者の状態や生活を調べ、その後の経過を追う研究である。トランス脂肪酸の複数の区分について解析したが、体重にも腹囲にも有意な関連は見られなかった。[1]
この研究の利点は、「何を食べたと思うか」という回答に加え、脂肪組織の測定値から問いに近づいた点にある。その測り方でも関連が見つからなかったことは、体重が増えるという説明を慎重にする材料になる。体重と腹囲だけでなく、結果に影響しうるほかの要因も開始時に把握している。解析には曲線状の関係も検討する方法を用い、摂取の指標と体格変化の対応を調べた。[1]
別の研究では、開始時に心血管疾患の既往がない45〜84歳を対象に、血液の脂肪酸と体格の関係を解析した。生活行動や他の脂肪酸などを考慮しても、トランス脂肪酸と体格指数の変化との明確な関連は確認されなかった。脂肪組織を用いた研究と測定法や対象が違っても、明瞭な体重増加の関係が見つからない例がある。[5]
さらに、反すう動物の乳製品や肉に由来するトランス脂肪酸を調べたデンマークの研究では、50〜64歳の男女30,851人を5年追跡した。摂取量と体重変化には弱い逆の関連があり、腹囲との実質的な関連は認められないと結論づけている。多く摂るほどお腹が増える、という一方向の図には収まらない。[4]
体重と腹囲で、解析結果のそろい方にも違いがあった。腹囲については、摂取量をそのまま使うか、摂取エネルギーを考慮するかで結果が変わった。解析の仕方による違いも含めて、著者は腹囲との関係を強く主張していない。体重との逆の関連は、絶対的な摂取量でもエネルギーを考慮した摂取量でも有意だった。[4]
この反すう動物由来の研究では、摂取量と体重変化との弱い逆の関連は、1日1.2g超、エネルギー比では0.4%超の範囲で横ばいになった。著者らは開始時の性別、年齢、体格指数、腹囲によって関係が変わるかも検討している。[4]
食卓に戻して考えるなら、同じ食品の中にある特定の成分だけを取り出し、食品全体への評価に置き換えないことが肝心だ。動物由来と工業由来を比較した系統的レビューも、食品全体の組成への配慮を求めている。由来の名前だけで選択を完了させず、どの指標をどう比較した結果なのかまで確認する。[14]
動物の脂肪蓄積を、そのまま人の減量幅にしない
体重増加に焦点を当てたレビューは、人の疫学研究と霊長類のモデルから、摂取の増加が小さな追加の体重増加につながる可能性を述べている。霊長類の長期研究では、トランス脂肪酸はシス型の一価不飽和脂肪酸より脂肪蓄積を起こしやすい可能性があった。ただし、違いを十分に説明する仕組みのデータは不十分と評価されている。[15]
ここで押さえたいのは、動物モデルの役割である。人が長い期間にわたって何を食べたかを調べる研究と、条件をそろえて脂肪の種類を変える研究は、同じ問いを別の角度から支える。比較相手はシス型の一価不飽和脂肪酸であり、単に脂肪の量を増やす問いよりも、脂肪の種類による代謝の違いに焦点がある。[15]
代謝を広く扱ったレビューも、一部の研究で内臓脂肪、体重、インスリン抵抗性の増加を報告している。インスリン抵抗性とは、血糖調整に関わるインスリンの働きが弱まりやすい状態である。このレビューが扱う細胞には、肝臓の細胞、脂肪細胞、免疫に関わるマクロファージ、血管内側の細胞が含まれる。血液中の脂質だけでなく、複数の組織の働きを視野に入れた検討だ。[13]
個人差に注目した観察もある。成人4,292人のコホートでは、肥満との関連が研究される遺伝子の変異を調べ、食事質問票によるトランス脂肪酸摂取量と合わせて解析した。遺伝的なリスク得点が高い人で、摂取量が多いほど体格指数や腹囲の変化が大きいという関連が見られた。[3]
参加者の43.2%は男性で、平均年齢は男性42.6歳、女性40.4歳だった。調べた肥満関連遺伝子の変異は3種類で、それらをまとめた遺伝的なリスク得点も解析に使った。同時に検討した添加糖の摂取区分では、遺伝的なリスクを持つ人の腹囲や体格指数の変化に差は認められなかった。トランス脂肪酸と添加糖で、結果の現れ方が異なっている。[3]
血液を使った6,243人の研究では、開始時の空腹時血漿を分析している。体格との関連を調べる際には、人口統計的な特徴、健康に関わる行動、ほかの脂肪酸を段階的に考慮した。オメガ6脂肪酸と開始時の体格指数には、一部の要因だけを考慮した解析で正の関連があったが、十分に調整した解析では消えている。トランス脂肪酸に明確な関連がなかったという結果も、こうした複数の脂肪酸と生活背景を含む解析から得られたものだ。[5]
数字で読む、対象と終点の違い
996人・5年:50〜64歳の男女で脂肪組織を測定。体重・腹囲の変化と有意な関連なし。[1]
6,243人・最長10年:血漿リン脂質中のトランス脂肪酸と体格指数の変化に明確な関連なし。[5]
1.2g/日超:反すう動物由来の摂取と体重変化の弱い逆の関連が横ばいになった範囲。[4]
53人・4週間:日本人の試験で、血中脂質に群間の有意差なし。[2]
15.7g/日・16週間:過体重の閉経後女性の試験では、低密度リポたんぱくコレステロールなどが上昇。[12]
初日の汗は、予約した人だけが持ち帰れる。
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