冷える夕方に甘いおやつを選ぶと、体は温まるのか。砂糖とでんぷんを比べたヒト試験から、甘さそのものと食後のエネルギー消費の違いを整理する。測定する時間、消化されにくいでんぷん、血糖の反応も読み分け、研究の数字をそのまま手足の温かさやお菓子の順位に置き換えない選び方を考える。
休憩室でお菓子の袋を開ける夕方、指先はまだ冷たい。「甘いものを食べれば、冷えた体も温まるだろうか」。空腹を満たしたい気持ちと、指先を温めたい気持ちが、同じ袋に入っている。
砂糖とでんぷんでは、食後に増えるエネルギー消費が違う場合がある。健康でやせた男性を対象とした比較試験では、砂糖のほうがでんぷんより食後の消費増加が大きかった。甘さの強さだけでは、その増加を説明できない。甘味を変えた別の無作為化試験では、食後全体の熱産生に有意な差はなかった。これらは男性の試験であり、18〜39歳の女性に同じ反応が起こるかは別に確かめる必要がある。[13][3]
したがって「冷え性改善には、より甘いおやつを」という選び方は勧められない。ここで扱うのは、糖の種類による食後の代謝の違いである。[13][3] たんぱく質を増やすかという問いは、既存記事「冷え性改善にたんぱく質を増やす?食後に作る熱と手足の温度を研究で読む」に譲り、今回は甘さと炭水化物の中身を確かめる。
局所の加温は「冷え性改善で片手を温めると反対も温まる?局所の熱と血流の違いを研究で読む」、鉄の状態は「冷え性改善の栄養素は鉄も確認する?食後の温かさと寒い場所で作る熱を分けて読む」で扱っている。ここでは、同じ炭水化物でも成分によって食後の反応が違うかに問いを絞る。

食後の熱は、お菓子の甘さだけで決まらない
食事誘発性熱産生とは、食べた後に安静時より増えるエネルギー消費を指す。食前の消費を基準にして、食後の増加を時間に沿って捉える考え方だ。糖の比較試験では、呼吸の測定からエネルギー消費を推定する間接熱量測定が使われている。味の感想を尋ねる検査とは、測っているものが異なる。[3][13]
「甘いほど熱が出る」という説明には、口で感じる甘さと、摂取した糖を体内で処理するときの反応が重なっている。しかし、甘く感じる条件を変える試験と、糖の種類を変える試験は別の問いに答える。砂糖をでんぷんに置き換えると、味だけでなく体内に入る炭水化物の組成も変わる。比較の結果を味だけの手柄にはできない。[3][13]
砂糖は論文ではショ糖とも呼ばれる。ほかにブドウ糖、果糖、消化されやすいでんぷんなどが比較されている。これらを同じ「糖質」として一括りにすると、違いを見落とす。一方、名前が異なるからといって、日常のお菓子にそのまま熱産生の順位を付けることもできない。研究では糖を水に混ぜたり、同じエネルギー量の昼食に組み込んだりして、比較条件を整えているからだ。[13][3]
読みたいのは、好きなお菓子を正当化する数字でも、食べるのをためらわせる数字でもない。同じ条件で何を替えると、どの指標が動いたかである。糖の種類で消費が変わるという知見は、甘さの強さだけで食品を選ばないために使える。[13][3]
初日の汗は、予約した人だけが持ち帰れる。
砂糖とでんぷんを比べたら、消費量は違った
健康でやせた男性10人を対象とする比較試験では、果糖、ブドウ糖、砂糖、消化されやすいトウモロコシでんぷんを、それぞれ75gずつ水400mLに混ぜて摂取した。研究者は食後6時間にわたり、全身の熱産生と、糖や脂肪をエネルギー源として利用する様子を調べた。[13]
食前を上回ったエネルギー消費の合計は、砂糖で141±17kJ、でんぷんで108±24kJ、ブドウ糖で94±20kJだった。砂糖は、でんぷんおよびブドウ糖に比べて有意に大きい値を示した。果糖は130±24kJで、砂糖と同程度だったが、ブドウ糖との差は統計学的な有意差には届かなかった。平均値の近さと、有意差の有無は分けて読む。[13]
この結果は「炭水化物なら食後の反応は同じ」という考えを修正する。ただし、参加したのは健康でやせた男性であり、水に混ぜた糖を摂った後の比較である。18〜39歳の女性がいつもの休憩にお菓子を食べる場面へ、そのまま当てはめることはできない。手に取りやすい焼き菓子や和菓子を並べた試験として読むのも不適切だ。[13]
数字の単位にも注目したい。ここで示すkJはエネルギー量であり、指先の温度を表すものではない。砂糖の消費増加が大きかったという結果から、どれほど手が温かく感じられるかという数字は導けない。研究の答えは、まず食後のエネルギー消費の比較として受け取るのが正確である。[13]
また、この試験で砂糖や果糖は、初期の脂肪利用をでんぷんやブドウ糖より強く抑えていた。熱産生が大きい条件でも、初期の脂肪利用は抑えられていた。「消費が増えたから脂肪も多く使った」と続けると、研究の結果とは違う話になる。[13]

甘味だけを付けても、食後全体の熱は増えなかった
甘さそのものを検討する手掛かりが、健康な男性24人を対象とした無作為化試験である。標準化した朝食の後、参加者は条件の異なる昼食を食べた。軟らかい白いチーズに、マルトデキストリンとアスパルテーム、砂糖、またはマルトデキストリンだけを加えた食事で、それぞれ900kcalにそろえられていた。対象が男性のため、18〜39歳の女性にも同じ結果になるかは、この比較だけでは判断できない。[3]
マルトデキストリンは、この試験で砂糖と比較された炭水化物である。アスパルテームを加えた条件を設けることで、甘味のある場合と、甘味を付けない場合も比べている。食後のエネルギー消費は5時間追跡された。夕方のおやつより大きな食事であることも、結果を読む際に忘れたくない。[3]
食後30〜60分と90〜120分の測定では、砂糖の食事で、ほかの条件よりエネルギー消費が有意に高かった。一方、マルトデキストリンだけの場合と、それにアスパルテームで甘味を付けた場合には有意な差がなかった。さらに、食前の消費を上回る部分を合計した熱産生では、昼食間の有意差はなかった。[3]
初期の時間帯の差と、食後全体の合計は分けて評価する必要がある。研究者は、甘味の違いが熱産生に大きな影響を与えるとは考えにくく、初期の差には摂取した成分の違いが関わると解釈した。少なくとも、舌が甘いと感じれば同じだけ熱が出る、という単純な説明にはならない。[3]
先ほどの砂糖とでんぷんの試験と、こちらの結果を無理に一致させる必要はない。糖を水で摂る比較と、チーズを含む同じエネルギー量の食事を比べる試験では、実験食も測定時間も異なる。砂糖で差が出た条件と、全体では有意差が出なかった条件を並べることが、おやつを万能な温め役にしない読み方につながる。[13][3]
研究を束ねても、糖の名前だけでは決められない
ヒト試験をまとめたレビューでは、果糖を含むカロリーのある甘味料と、ブドウ糖による同じエネルギー量の食事が比較された。食後の熱産生を扱う9研究のうち、6研究は果糖を含む条件で有意に高く、2研究は有意ではない増加、1研究は差がないという結果だった。ここでも、研究ごとに結果が分かれた。[2]
レビューは、果糖の代謝ではブドウ糖よりエネルギー利用の効率が低いことを、食後の消費増加を説明する要素として挙げている。ただし、これは果糖を含む食品を増やす推奨量ではない。糖の代謝の特徴を説明した結果を、寒い日に買うおやつの処方へ変えることはできない。[2]
同じレビューは、甘味料を多く含む食事を続けた後の基礎代謝も検討している。基礎代謝とは、食後の上乗せとは区別して扱う、安静時の体のエネルギー消費である。短期間の比較では変化しない報告が多い一方、長めの試験では低下の報告もあり、長期の影響には、より大きく管理された研究が必要とされた。一食の反応だけで、日々の代謝が上がり続けるとは考えないほうがよい。[2]
レビューでさらに区別されているのは、一食を比べる試験と、食事を続けた後に調べる試験である。果糖を含む甘味料が多い食事を続けた後の食後のエネルギー消費については、検討された3研究で有意な差が報告されなかった。一食で差が出やすかったという結果を、食べ続ければ差が積み重なるという説明に変えることはできない。[2]
また、食べる量を増やした条件で一日の消費が増えたとしても、糖の種類による差とは分ける必要がある。このレビューで取り上げた過剰摂取の比較では、果糖、砂糖、ブドウ糖のいずれでも一日の消費は増えたが、糖の間には差がなかった。食べた後の消費という数字には、何を食べたかに加え、どれだけ食べた条件なのかが含まれている。温まりたいから量を足す、という選択の根拠にはしない。[2]
数字で読む甘さと食後の熱
男性10人、各75gの糖を比較:日常のお菓子を自由に食べた研究ではない。[13]
食後6時間で砂糖141±17kJ、でんぷん108±24kJ:食前より増えた消費の合計である。[13]
男性24人、各900kcalの昼食:甘味を変えても、食後全体の熱産生に有意差はなかった。[3]
レビューの9研究中6研究:果糖を含む条件で熱産生が有意に高かったが、結果は一様ではない。[2]
男性15人、でんぷん50gの比較:消化されにくいでんぷんでは、食後5時間の熱産生が低かった。[4]
初日の汗は、予約した人だけが持ち帰れる。
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