甘草の抽出物や甘草フラボノイド油で体脂肪は減るのか。臨床試験をまとめた体重差、効果が出なかった試験、水分の変化と血圧・カリウムへの影響を読み分ける。漢方薬などを使う人が医師・薬剤師に確かめたい重なりや、妊娠中の注意まで、減量への期待と安全性を同じ紙面で確かめる。
研究者たちは、標準体重の若い男女15人に、甘草の製剤を毎日とってもらった。期間は2か月。体脂肪だけでなく、体の水分も測ったところ、体脂肪の割合は下がった一方、細胞の外にある水分の割合は増え、身長と体重から求める体格指数であるBMIは変わらなかった。[2]
「脂肪が減る」という結果だけを拾うと、手軽な減量素材に見える。ところが、同じ試験の水分やホルモンの数字まで読むと、話は少し複雑になる。[2] 甘草を摂取した臨床試験のメタ分析でも、体重の小さな減少と、血圧の上昇が同時に報告されている。[12]
甘草、リコリス、甘草フラボノイド油。名前が似ていても、研究で用いられた形は違う。減ったものが脂肪なのか体重なのか、どんな人にどんな製剤を使ったのかを分けて読むと、期待を置ける範囲が見えてくる。[8][12][14]

甘草という名前だけでは、試験の中身は決まらない
甘草の根やその抽出物に含まれる成分として、グリチルリチンがある。食品原料としての甘草を扱った安全性レビューでは、この成分の薬理作用と毒性が検討されている。グリチルリチン類は、コルチゾールというホルモンを不活性化する酵素の働きを抑え、持続的に多く曝露されると、水分や塩分の調節に関わるホルモンの作用が過剰なときに似た影響を起こしうると整理されている。[13]
一方、甘草フラボノイド油は、甘草由来の脂に溶けやすいポリフェノールを中鎖脂肪酸の油に含ませた素材である。英語名を略してLFOと書かれる。軽い運動中の代謝を測った研究も、膝の変形性関節症でリハビリを受ける人の体組成を調べた試験も、この油を用いていた。[8][10]
根の抽出物を何gとったかという記述と、甘草フラボノイド油を何mgとったかという記述を、そのまま同じ量のものとして比べることはできない。安全性レビューは、グリチルリチンの体内での利用され方が甘草として摂取したときには低くなり、明確な用量と作用の関係を決めることが難しい点にも触れている。重さの単位がそろっても、中身までそろったことにはならない。[8][13]
安全性レビューは、こうした水分や塩分の調節に関わる影響について、甘草やグリチルリチンの摂取をやめると元に戻ると報告している。作用の仕組みを知ることは、飲み続ける理由を探すためだけでなく、不調があった際に摂取状況を医療者へ伝えるためにも役立つ。[13]
初日の汗は、予約した人だけが持ち帰れる。
体重の平均差は小さく、血圧は反対向きに動いた
全体像を示すのが、臨床試験を集めて統計的にまとめた2018年の系統的レビュー・メタ分析である。定量的な統合には26試験、計985人が含まれた。甘草を摂取した場合の体重の平均差は、比較条件に対して−0.433kgだった。推定の幅を表す95%信頼区間は−0.683〜−0.183kgで、統計的には有意な減少である。[12]
この数字には、効果があるかという問いと、どの程度かという問いを分ける意味がある。統計的な差は見られた。しかし平均の大きさは、何kgも大きく落ちるという印象とは離れている。BMIの平均差も−0.150kg/m²で、95%信頼区間は−0.241〜−0.058kg/m²だった。論文の「減少」という言葉を読むときには、その横に大きさを置きたい。[12]
同じ分析で、拡張期血圧、いわゆる下の血圧は平均1.737mmHg上昇した。95%信頼区間は0.835〜2.621mmHgである。著者らは、甘草による高ナトリウム血症との関連を挙げ、高血圧の患者は摂取を避けるべきだと結論している。体重の結果だけを紹介し、安全性の結果を別扱いにすると、この論文の読み方が変わってしまう。[12]
なお、この血圧の平均値は、個人がその範囲に必ず収まるという意味ではない。後で見る用量を変えた試験では、血圧上昇や低カリウム血症のために参加を中止した人もいた。平均の小さな変化と、個人に生じた有害な反応は、それぞれ確かめる対象である。[12][16]

体脂肪の割合が下がっても、体重の答えは別にある
冒頭の研究では、男性7人と女性8人が、甘草の製剤を1日3.5g摂取した。体脂肪は皮下脂肪の厚さと、体に微弱な電気を流して推定する生体電気インピーダンス法で評価された。男性の体脂肪の割合は12.0%から10.8%へ、女性は24.9%から22.1%へ下がった。一方でBMIは変わらず、細胞外水分の割合は増えていた。[2]
測った脂肪は体重に対する割合であり、水分も同時に変化していた。男性の細胞外水分は総体水分に対する割合で41.8%から47.0%へ、女性は48.2%から49.4%へ増え、どちらも有意な変化だった。対象の年齢は男性22〜26歳、女性21〜26歳で、全員が標準体重。研究期間中の摂取エネルギーは同じだったと報告されている。[2]
ホルモンの測定では、血漿レニン活性とアルドステロンが抑えられた。体脂肪率、細胞外水分、ホルモン、BMIを一緒に測った研究なのである。体脂肪が何kg落ちたかや、過体重の中年層でも同じ変化が起こるかは、この少人数の結果とは別の問いになる。[2]
より最近の根の抽出物の試験は、多嚢胞性卵巣症候群という卵巣機能に関わる病気があり、過体重または肥満の女性66人を対象にした。無作為に群を分け、本人にも評価側にもどちらの群かを伏せる二重盲検の方法で、甘草抽出物か偽薬を8週間比較している。両群とも低エネルギー食を併用し、抽出物は1日1.5gだった。[1]
終了時の群間比較では、体重、BMI、体脂肪などに有意差があり、血糖や血中脂質の指標にも改善が報告された。ただし、ここで確認できる結果には体重差が何kgだったかという大きさや、その信頼区間は示されていない。病気のある女性に食事療法と組み合わせた結果として読むのが適切で、甘草だけを普段の暮らしに足した効果とは区別される。著者らも確認のための追加研究を求めている。[1]
PCOSの試験では各群33人で、空腹時血糖、インスリン、総コレステロール、中性脂肪、LDL・HDLコレステロールを測った。さらにインスリン抵抗性と、インスリンを分泌するβ細胞の機能の指標も計算している。開始時の値、年齢、体重の変化、身体活動の変化を調整した解析でも、低エネルギー食への甘草の追加は偽薬より各指標の改善に有効と報告された。体組成だけを調べた試験に比べ、糖や脂質の代謝まで評価した設計だった。[1]
同じ体脂肪という言葉でも、前者は標準体重の若者、後者は特定の病気を持つ過体重・肥満の女性である。体格も治療の背景も違う。自分に近い対象かどうかを見ずに、良い結果の数字だけを足し合わせることは避けたい。[1][2]
甘草フラボノイド油には、差が出なかった試験もある
2011年の論文は、甘草フラボノイド油を異なる条件で調べた試験を報告している。片方は過体重または肥満の男女22人が普段の食事と身体活動を続ける試験、もう片方は運動をしている男性が、必要エネルギーを25%上回る追加食をとる試験だった。いずれも素材と偽薬を無作為・二重盲検で8週間比較した。測定項目には体格のほか、酸化ストレス、インスリン感受性、血中脂質などが含まれていた。[14]
どちらの試験でも、測定した項目に統計的に有意な群間差はなかった。追加食の試験では、素材をとった群で脂肪の増加やコレステロール、LDLコレステロール、中性脂肪の上昇が抑えられる傾向があったものの、開始時からの変化率で見ても有意差はない。著者らは、調べた対象では全体として効果が小さいと評価した。食べ過ぎの影響を打ち消す素材として期待するには、結果は弱い。[14]
数字で読む甘草の減量と安全性
26試験・985人:代謝の変化をまとめたメタ分析の規模である。[12]
−0.433kg:統合された体重の平均差。95%信頼区間は−0.683〜−0.183kgだった。[12]
+1.737mmHg:同じ分析で見られた拡張期血圧の平均差である。[12]
22人・8週間:普段の生活に甘草フラボノイド油を追加した試験では、有意な群間差が出なかった。[14]
16週間:膝の変形性関節症でリハビリを受ける人の、筋肉量などを評価した試験の期間である。[10]
初日の汗は、予約した人だけが持ち帰れる。
1
2






