下半身太りのたんぱく質は追加するほどよい?食事と運動の上乗せ効果を読む

下半身太りが気になり、食事のたんぱく質を増やそうと考えたとき、脚の脂肪が減ることと筋肉を保つことは同じではない。高たんぱく食のメタ分析、女性の筋力トレーニング試験、脚の除脂肪量を測った研究を比較し、全身の変化を脚の効果に置き換えない読み方と、日々の食事や運動を見直す順序を考える。

夕食の皿にたんぱく質のおかずを足す前に、「これで脚の何を変えたいのか」と問い直してみる。そこで確かめたいのは、何を増やすかより先に、何が変わることを期待しているかだ。脚の脂肪を減らしたいのか、運動をしながら筋肉を保ちたいのか。その答えで、研究の読む場所が変わる。

高たんぱく食には、通常量のたんぱく質をとる食事と比べて全身の脂肪量を減らし、除脂肪体重を増やす平均的な効果が報告されている。しかし、その数字は脚だけの脂肪が落ちたという数字ではない。全身の体組成を調べたメタ分析を、下半身専用の食事法に読み替えることはできない。[14]

また、閉経後の女性を対象にした試験では、筋力トレーニングに高たんぱく食を足しても、トレーニングだけの場合より体組成や筋力に有意な追加効果は見られなかった。18〜39歳の女性への追加効果は、この閉経後女性の結果だけでは判断できない。食事を整える意味と、増やすほど上乗せされるかという問いは分けたい。[19] 体重の減らし方そのものは既存記事「体脂肪を落とすペースは元の量でも違う?同じ減量幅と筋肉の減少を研究で読む」に譲り、ここでは食事で脚の何を守り、何を変えようとしているのかに絞る。

既存記事「下半身太りは脂肪細胞が増えたから?数と大きさだけで決められない理由を研究で読む」には脂肪細胞の数と大きさの問いを、「女性の下半身太りは脂肪の受容体で違う?分解の反応と脚の見た目を分けて読む」には脂肪の受容体の問いを譲る。ここで比較するのは、たんぱく質を追加した食事と、運動を組み合わせたときの結果である。

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全身の脂肪が減ることと、脚が細くなることは別の結果だ

体の変化を読むとき、体重、脂肪量、除脂肪量、筋力という言葉をひとまとめにしないことが出発点になる。研究では、脂肪を除いた体の重さを表す指標と、骨格筋の量を表す指標を使い分けている。脚の除脂肪量を測る試験にも、全身の骨格筋量を測る試験にも、それぞれ別の測定項目がある。両者を同じ「脚の筋肉」という結果に置き換えない読み方が必要だ。[1][19]

たとえば、たんぱく質を増やした食事で全身の脂肪量が少なくなったとする。そのとき知りたいのが脚の脂肪なら、全身という測定範囲を飛び越えないことだ。一方、脚の除脂肪量の増加と、脚の脂肪の減少は区別する。実際、若い男性の小規模試験では脚の除脂肪量に群間差が出たが、脂肪量には変化がなかった。18〜39歳の女性で同じ変化が起こるかは別に検証する必要がある。[1]

この区別は、食事を評価する物差しにも関わる。パンツの履き心地が気になる人にとって、全身の筋肉量の数字は、そのまま服の感想を代弁しない。研究の測定項目は体組成であり、手持ちのパンツの採点ではない。食事の選択に研究を使うなら、まず「全身か脚か」「脂肪か脂肪以外か」をそろえ、その後に自分の目的と照らす順番がよい。

「下半身太り」という日常語で検索しても、論文では測定した部位や指標に即して結果が示される。ここで扱う食事の研究が支えるのは、全身の脂肪量や筋肉に関する判断である。脚を狙って食品を選ぶ根拠としてではなく、運動と食事の組み合わせを考える根拠として使うのが妥当だ。[14][19]

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高たんぱく食の平均差は、どれくらいだったか

高たんぱく食の全体像を見るうえでは、無作為化比較試験を集めた系統的レビューとメタ分析が参考になる。これは複数の試験を探して整理し、結果を統合する研究である。高たんぱく食の中でも糖質や脂質の構成が異なる食事を比較した研究では、系統的レビューとメタ分析の対象に計83報が選ばれた。[14]

通常量のたんぱく質をとる食事と比較すると、高たんぱく食での脂肪量の平均差は−0.64kg、95%信頼区間は−0.98〜−0.29kgだった。除脂肪体重の平均差は+0.34kg、95%信頼区間は+0.11〜+0.57kgである。信頼区間は、平均差の推定に幅があることも一緒に示している。この結果から読めるのは、脂肪量と除脂肪体重の平均的な差であり、全員が同じ重さだけ変化するという約束ではない。[14]

数字の符号も見落としたくない。脂肪量は少ない側、除脂肪体重は多い側に差が出ている。単に「体重が落ちた」と書くより、この組み合わせを読むほうが、筋肉を保ちながら体組成を考えたい人の問いに近い。ただし、除脂肪体重の増加分をすべて脚の筋肉と呼んだり、脂肪の減少分をすべて太ももの脂肪と呼んだりはできない。[14]

さらに、同じ高たんぱく食でも、糖質と脂質の構成によって結果は異なっていた。分析では、高たんぱく・中程度の糖質・高脂質という構成が、体重や脂肪量など複数の指標で上位に位置した。これは食事の構成全体を比較した結果であり、食卓にたんぱく質だけを追加すればその順位を再現できるという話ではない。[14]

この論点は既存記事「高たんぱく食の種類で痩せ方は違うのか 糖質・脂質と続け方から比較を読む」に譲る。本記事で持ち帰りたいのは、食品の名前より比較の中身である。「いつもの食事と何を入れ替えたのか」「運動は同じだったのか」を見ずに、たんぱく質という見出しだけを買い物の基準にしないことだ。

女性の試験では、食事の追加より運動の有無を見たい

閉経後の健康な女性55人が参加した12週間の無作為化比較試験では、運動と高たんぱく食の組み合わせ、運動のみ、高たんぱく食のみ、対照という群を比べた。平均年齢は58.2歳で、運動を行う群は週3回の筋力トレーニングに取り組んだ。18〜39歳の女性に同じ追加効果の結果を当てはめるには、対象年齢と閉経の有無の違いを考慮する必要がある。食事と運動の役割を分けて考えられる設計である。[19]

骨格筋量の変化は、運動と高たんぱく食を組み合わせた群で+1.4±0.9kg、運動のみの群で+1.2±1.3kgだった。両群とも増加したが、両者の間で体組成や筋力のいずれの項目にも有意な差は認められなかった。並んだ数字の片方が大きいというだけで、「追加すると優れている」とは判定できない。[19]

脂肪量が有意に減ったのは運動のみの群で、変化は−2.4±2.9kgだった。高たんぱく食のみでは体組成に影響が見られなかった。この試験の結果は、「たんぱく質を増やすだけで、運動の代わりになる」という期待を支持しない。一方で、食事を整える必要がないという結論でもない。試したのは特定の条件で追加したときの差である。[19]

40〜53歳の過体重女性54人を無作為に割り付け、44人が完了した別の試験では、週3回、8週間の筋力トレーニングと高たんぱく食を組み合わせた群で、運動をしない対照群に比べて脂肪量の減少や骨格筋量・筋力の改善が見られた。ただし、こちらは運動と食事を組み合わせた結果であり、改善をたんぱく質だけに分配することはできない。18〜39歳の女性に同じ改善幅を当てはめる根拠にはならない。[6]

結果が違って見えるときは、比較相手を確かめたい。運動をしない群との差があることと、すでに運動する群への追加効果があることは別である。仕事帰りに運動を始めるか迷っている場面と、運動を続けながら食事をさらに変える場面では、役立つ比較も異なる。[6][19]

食事の追加効果を判断するには、群の中で変わった結果と、群どうしを比べた結果も分ける必要がある。運動と高たんぱく食の群で筋肉量が増えていても、運動のみの群にも増加があり、群間差がなければ、追加した食事の優位性をそこから決められない。閉経後女性の試験は、まさにこの読み分けが必要な結果である。[19]

筋肉量の増加幅の隣にある「±」も、参加者の結果にばらつきがあることを示す。運動と高たんぱく食で+1.4±0.9kg、運動のみで+1.2±1.3kgという数字は、自分が必ずその中央に着地する予定表ではない。食事を変えた直後に、体重計の表示からどちらの群に近いかを判定しようとする必要はない。[19]

また、過体重女性の試験には、高たんぱく食と運動にオメガ3を加えた群と、偽の補助食品を加えた群があった。オメガ3の追加は一部の生化学的な指標を変えたものの、骨格筋量や運動能力には追加改善をもたらさなかった。食事と運動を組み合わせることへの評価と、その組み合わせにさらに補助成分を足す評価は別々に扱うべき結果である。[6]

夕方の買い物で迷ったときにも、「何かを足した」という事実だけを成果としないでおきたい。食事の変更を考える目的は、研究の群名に近づくことではない。自分が続けている運動と、知りたい体の変化の関係を整理することである。

数字で読むたんぱく質と体組成

83報:高たんぱく食の栄養構成を調べた系統的レビューとメタ分析の対象。[14]

−0.64kg:通常量のたんぱく質の食事に対する、全身の脂肪量の平均差。95%信頼区間は−0.98〜−0.29kg。[14]

+0.34kg:同じ分析での除脂肪体重の平均差。95%信頼区間は+0.11〜+0.57kg。[14]

55人・12週間:閉経後女性の食事と筋力トレーニングを比べた試験の規模と期間。[19]

+14.2%と+7.0%:若い男性の試験における脚の除脂肪量の増加率。脂肪量には変化がなかった。[1]

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宮川涼 Founder

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