入浴で体臭はどれくらい変わる?脇を洗った直後と翌日の臭いを比べて読む

入浴後は気にならなくても、翌日には戻る脇の臭い。男性の脇を左右で比較した洗浄試験から、直後の臭いの低下と持続時間を読み分ける。足の臭い成分を測る試験、湿疹のある人の入浴頻度試験、洗っても臭いが続いた症例を通じ、洗う回数だけで判断しないための視点を整理する。

風呂上がりには気にならなかったのに、翌朝、服に腕を通した瞬間に、また脇の臭いが気になる。昨夜の洗い方が足りなかったのか。それとも、入浴の効果は朝までしか続かないのか。

脇を洗うことによる臭いの変化は研究されている。ただし、洗った直後の臭いが弱まることと、翌日まで同じ状態が続くことは別の結果だ。健康な男性の左右の脇を比べた試験では、毛の処理方法によって石けん洗浄直後の臭いの低下が異なった。18〜39歳の女性に同じ低下率や持続時間をそのまま当てはめることはできず、直後と翌日の結果も分けて読む必要がある。[1]

ここで扱うのは、入浴のうち主に「洗う」部分と、その後いつ評価するかである。運動を続けると汗の臭いが変わるかという問いは、既存記事「運動習慣で汗の臭いは変わる?汗の量と皮膚の菌を分けて読む体臭研究の現在地」に譲る。食べ物による体臭の変化は「汗をかくと食べた物の臭いが出る?にんにくと体臭、脇の評価がずれる理由を読む」に譲る。今回は、洗ったその場の変化をどう読み、翌日気になったときにどう考えるかに絞る。

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入浴の効果を、温まることと洗うことに分ける

湯船に入った後のさっぱりした感覚と、他人が評価した臭いの強さは、同じ測定ではない。脇の比較試験で調べたのは、毛を処理したうえで標準的な石けん洗浄を行ったときの臭いだ。湯につかる時間や、湯温を変えて体臭を比べた試験として読むことはできない。入浴で体臭がどれくらい変わるかを考える際は、何を変えた研究なのかを先に押さえたい。[1]

この試験では、健康な白人男性30人、年齢18〜48歳を対象とし、左右の脇に異なる処置を割り当てた。はさみで毛を短くする、かみそりでそる、ワックスで除毛する、処理しないという条件から、各参加者で異なる処置を比較した。同じ人の脇同士で比較する無作為化比較試験である。18〜39歳の女性での効果を直接確かめた設計ではない。[1]

臭いを評価したのは、訓練された評価者だ。本人が風呂上がりに感じた清潔感を尋ねた調査ではない。自分の感想には生活上の意味があるが、研究の臭いスコアに置き換えることはできない。読者が知りたい「自分では気にならない」と、試験が測った「評価者による臭いの強さ」をいったん別々に置くと、結果を大げさに受け取りにくくなる。[1]

生活に当てはめるなら、まず関心のある場面を決めるとよい。洗った直後に落ち着くかを知りたいのか、仕事から帰る頃までの状態を知りたいのか。前者を測った結果だけで後者の答えを出すと、研究にも入浴にも余分な期待を背負わせる。風呂上がりの脱衣所と、翌日の帰宅時は、観察の時点が違う。

また、脇の研究を体全体の臭いへ広げると、部位の違いも抜け落ちる。足の臭いを調べた臨床試験では、脇の評価とは別に、足から出る脂肪酸という物質を機器で測っている。体臭という大きな言葉の中に、測る場所も測り方も異なる研究が入っているのである。[3]

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洗浄直後の低下率は、何と比べた数字なのか

男性の脇の試験では、はさみで毛を短くしてから洗った条件の臭いは、基準時から27.2%低下した。しかし、毛を処理せず石けんで洗うだけの条件と比べると、直後の臭いを抑える効果に有意な上乗せはなかった。低下率だけを見て「短くすれば洗うだけより効く」と読むのは誤りだ。[1]

ここでの基準時は、比較のための石けん洗浄から24時間後である。数字は、その時点の臭いと処置後の臭いを比べた値だ。処置した側が下がったかという問いと、洗浄だけの側より下がったかという問いが並んでいる。この区別を省くと、どちらの側にも共通する洗浄の変化まで、毛を切った効果に数えてしまう。[1]

かみそりでそってから洗った場合の低下率は57.3%、ワックスで除毛してから洗った場合は75.3%だった。この直後の変化は、石けん洗浄だけより有意に大きかった。したがって、この男性集団では、特定の除毛と洗浄を組み合わせることで、洗浄直後の臭いの低下を大きくできたという結果である。[1]

ただし、57.3%という数字は「洗うだけより57.3%優れる」という意味ではない。もともとの臭いからの低下率であり、比較相手との差そのものを表す数字ではない。75.3%も同様だ。数字の隣に「基準時から」と書くかどうかで、読み手の頭の中には違う効果ができあがる。[1]

この結果を、女性全員に同じ処理を勧める根拠にもできない。試験の対象は限定された男性集団であり、人数も30人である。論文の結論では、男性の日常的な衛生行動における洗浄と臭い低減の効率を、かみそり処理が高めうるとしている。毛を残す選択が不潔だという価値判断を、この比較から付け足す必要はない。[1]

ワックス条件の数字が大きいからといって、日常の方法を数字順に並べるのも早い。研究はワックスに伴う不快感にも触れている。臭いの評価と、本人にとってその方法が受け入れられるかは別の判断になる。そもそも、ここで試されたのは処理と石けん洗浄の組み合わせだ。除毛だけの成績として紹介するのも、研究の条件を変えてしまう。[1]

翌日の臭いを、菌の戻る時計にしない

同じ脇の試験では、処置と洗浄の直後だけでなく、12時間後、24時間後にも臭いを評価した。さらに、その後の日の石けん洗浄の直後と24時間後にも評価している。研究者自身が、洗った瞬間の成績と、その後の成績を区別して確かめている。[1]

かみそり処理後24時間については、改善が持続したとする説明とともに、P値0.0682が示されている。一方、初日の洗浄直後のかみそり・ワックス条件の比較ではP値0.0001未満だった。翌日まで明確に優位だったと言い切るより、直後の差の方がはっきりした結果で、持続については慎重に読むのが妥当だ。[1]

この試験では、翌日の持続について示されたP値と、各日の洗浄直後の比較で示されたP値を、別の結果として扱う必要がある。この試験の翌日の結果を「ほぼ全員に効く」「朝まで保証される」と翻訳することはできない。統計の数字に、生活上の約束を代筆させないことが大切だ。[1]

また、最初にかみそり処理をした側は、その後も含む各日の洗浄直後に、洗浄だけの側よりよい結果を示した。これは、あとから洗い直したときの効果を考えるうえで興味深い。ただし、「洗うたびに差が出る」と「洗わずにずっと差が続く」は異なる。日ごとの洗浄直後の評価を、途切れのない持続効果にまとめないようにしたい。[1]

臭いが戻る時刻を、そのまま皮膚の菌が元に戻った時刻と呼ぶのも避けたい。この試験の時間経過の指標は臭いスコアであり、足の研究で測ったのも臭いに関わる脂肪酸である。臭いの強さや成分量から、菌の種類や数が同じ速度で元に戻ったと読み替えることはできない。洗浄の話に「菌のリセット」という便利な言葉を置くと、異なる測定が混ざってしまう。[1][3]

たとえば、朝は気にならず、夕方に気になったという観察があったとする。そこから言えるのは、自分が気にした時間帯が違ったということまでだ。菌が戻った時刻を決めたり、昨夜の入浴が失敗だったと採点したりする必要はない。研究を生活に使うときは、測ったものの名前を変えずに持ち帰る方が役に立つ。

もうひとつ確認したいのは、最初の処置と、その後の洗浄の関係だ。試験では、かみそり処理を最初に行った後、続く日にも石けんで洗って評価している。ここから日常へ持ち帰る問いは、毛を処理したら洗わなくてよくなるかではなく、同じ洗浄をしたときの直後の成績が変わるか、となる。処置後に洗浄を重ねた条件を、何もしないまま過ごした条件へ置き換えないことが必要だ。[1]

研究の結果を誰かに伝えるなら、「そると臭いが減る」だけで文章を終えず、「健康な男性で、石けんで洗った直後の比較だった」と添えたい。対象と時点を付けるだけで、自分にも同じ数値が当てはまるという期待から距離を置ける。脇の臭いを気にする女性がこの研究を読むときにも、試験の参加者と自分の違いを残しておける表現になる。[1]

数字で読む洗浄と臭いの比較

30人:健康な男性の左右の脇で、毛の処理と石けん洗浄を比較した人数である。[1]

57.3%:かみそり処理と洗浄後の、基準時からの臭い低下率である。[1]

75.3%:ワックス処理と洗浄後の、基準時からの臭い低下率である。[1]

24時間:かみそり処理後の持続を評価した時点で、対応するP値は0.0682だった。[1]

6人:足の臭い成分を機器で調べた試験の健康な参加者数である。[3]

438人:入浴頻度と湿疹症状を比較した無作為化試験の参加者数であり、体臭試験の人数ではない。[9]

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宮川涼 Founder

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