かかとや足の裏の痛み(足底腱膜炎)は体重とどう関係するのか。BMIとの結びつきの多くは痛みが出たあとの比較から来ている。立ち仕事との弱い証拠、2年で体重が増えた人の足の圧、減量手術を待つ人で脂肪の量が足の痛みを予測した研究から、痩せるまで治療を待たなくてよい材料を読む。
「体重があるぶん、足の裏に負担がかかるから」。朝の一歩目でかかとに鋭い痛みが走ると人に話すと、たいていこの説明が返ってくる。靴の売り場でも、職場の休憩室でも、筋の通った話として受け取られている。重い荷物を載せた台が脚からきしむように、体重が足の裏を押しつぶす、という絵である。
論文を読むと、この絵は半分しか当たっていない。かかとの痛みとBMIの結びつきは、たしかに多くの研究で確かめられている[8]。ところが、肥満の手術を待つ、体格の非常に大きい人たちの足の痛みを追った研究では、半年後の痛みの増え方を予測したのは体の脂肪の量で、筋肉や骨など脂肪以外の量でも、BMIでもなかった[5]。脂肪の1kgも筋肉の1kgも、体重計の上では同じ1kgだ。少なくともその人たちの足にとっては、同じではなかったらしい。
この記事では、足の裏とかかとの痛み、とくに足底腱膜炎と体重の関係を、メタ分析、痛みのある人とない人を比べた研究、2年の追跡、大きく痩せた人の記録の順にたどる。膝の痛みと減量は「膝が痛い人の減量はどれだけ効くか 変形性膝関節症の痛みと動く力を分けて考える」に、股関節は「股関節の痛みは減量で軽くなるか 膝の常識と食い違う比較試験が示したこと」に譲る。足の痛みの診断と治療は医師の仕事で、ここで扱うのは、体重がどこまで関わるかという一点に限る。

かかとの痛みの多くは、足の裏の腱膜から
足底腱膜炎は、足の裏に張る足底腱膜という組織にかかわる痛みである。2011年の家庭医向けの総説は、足底腱膜炎を成人のかかとの痛みのよくある原因とし、自然に治まっていくことの多い病気と位置づけている[11]。年に100万人を超える人がかかり、その3分の2が家庭医を受診するという[11]。別の研究は、一般の人の10%がかかる病気だと書いている[2]。
典型的なのは、朝の最初の数歩や、長く座ったあとの立ち上がりで出るかかとの痛みと、かかとの内側の足の裏を押したときの鋭い痛みだ[11]。診断は主に問診と診察で行い、最初の診断で画像検査が要ることはまれだとされる[11]。体をあまり動かさない人にも、よく運動する人にも起こり、肥満、足が内側に倒れ込みすぎること(回内)、走りすぎ、長時間の立ち仕事が、なりやすさの要因に挙げられている[11]。
軽く見られがちな痛みだが、暮らしへの響き方は小さくない。かかとの痛みのある成人50人と、年齢・性別・BMIをそろえた痛みのない25人を比べた研究では、痛みのある人は、健康に関わる生活の質のうち体の側面の点数で大きく下回った[17]。差がとくに大きいのは、体の働き、体を使う役割、体の痛みの項目である[17]。一方で、心の側面の点数には差がなかった[17]。年齢、性別、BMI、変形性関節症の影響を差し引いても、生活の質の低さは残った[17]。
初日の汗は、予約した人だけが持ち帰れる。
BMIとの結びつきは、どこまで確かか
足底腱膜炎の危険因子を集めた2016年の系統的レビューとメタ分析がある[8]。51本の研究が104の変数を調べており、内訳は前向きの研究が1本、症例対照研究が46本、横断研究が4本だった[8]。まとめて計算できたのは12の変数で、その中で臨床的な因子として有意だったのは、BMIが高いことだけだった[8]。BMIが27を超える場合のオッズ比は3.7(95%信頼区間2.93〜5.62)で、この結びつきは、運動選手でない人の集団で最も強かった[8]。
ここで研究の型に目を向けたい。症例対照研究とは、すでに病気のある人とない人を集めて、その特徴を比べる方法だ。痛みが出たあとに体重を測っているので、太っていたから痛くなったのか、痛くて動けなくなって太ったのかは、この形の研究だけでは見分けにくい。51本のうち、時間を追って調べた前向きの研究は1本しかない[8]。
個別の研究も同じ向きを示す。慢性のかかとの痛みのある80人と、年齢を2歳の幅で、性別をそろえた80人を比べた研究では、平均のBMIは29.8と27.5で、痛みのある群が高かった[9]。複数の要因を同時に調べると、痛みのある人はBMI30以上の肥満である見込みが2.9倍(95%信頼区間1.4〜6.1)、足が内側に倒れ込む姿勢である見込みが3.7倍(1.6〜8.7)だった[9]。
よく体を動かす人に限ったメタ分析でも、体格の要因は残った[12]。16本の研究を調べ、11の危険因子をまとめて計算した結果、足底腱膜炎のある人は、ない人よりBMIが平均2.13高く、体重が平均4.52kg重かった[12]。足首を下に伸ばせる角度が平均7.04度大きいことも、危険因子として挙がっている[12]。ただし、含まれた観察研究の定義や盲検化がそろっていないため、証拠の水準は3とされた[12]。運動の習慣がある人でも、体格の要因は消えていなかったことになる。

重さだけでは、説明がつかない
体重が足の裏を押すという力学の説明には、裏づけもある。後の節で見る2年の追跡では、体重の変化が足の中ほどの圧の変化と結びつき、その圧を通して痛みに響いている可能性が示された[6]。よく体を動かす人のメタ分析も、BMIと体重、そしてそれらが足の裏の衝撃を受け止める組織にかける負荷に目を向けることを、予防と治療の出発点に挙げている[12]。一方で、足の形や足首の動きを測った値は、通説ほどの差を示していない。2016年のメタ分析は、骨と軟部組織の異常には一貫した証拠がある一方で、足と足首の働きを臨床的・力学的に測った値については、通説を支える証拠が足りないと書いている[8]。足の親指の付け根の関節の反り具合にも、有意な差は見つからなかった[8]。
80人ずつを比べた研究でも、仕事の中で座る、立つ、でこぼこの地面を歩く、しゃがむ、登る、持ち上げるといった時間には、痛みのある群とない群で差がなかった[9]。ふくらはぎの持久力にも差はなく、足首を上に反らせる角度はむしろ痛みのある群で大きかった[9]。硬いふくらはぎを犯人と決めていた人には、少し肩透かしの結果だろう。著者らは、足首の反りの小ささ、ふくらはぎの持久力、仕事での脚への負担は、かかとの痛みに関わっていないかもしれないとしている[9]。
働く人の立ち仕事を調べた系統的レビューは、条件に合う研究を4本しか見つけられず、そのすべてが偏りの危険が高いか不明と評価された[16]。歩く・立つといった体重のかかる作業との結びつきを示す研究はあったものの、作業の測り方はばらばらで、因果を確かめるには質の低い証拠にとどまった[16]。危険が高いと特定できた職業は、エンジンの組み立て工場の仕事だけだった[16]。
そこで目を引くのが、肥満の手術を待つ人を追った研究である[5]。足の痛みがあり、手術を待っている45人(女性38人)を集め、手術を受けた29人と、順番待ちの16人を6か月追った[5]。開始時の平均BMIは、手術の群が44.8、待機の群が47.9だった[5]。手術の群は平均24.3kg減り、待機の群は1.2kg増えた[5]。複数の要因をそろえた分析で、手術は6か月後の足の痛みの点数が32.6点下がることと結びついた[5]。そして、開始時の脂肪量の指数が高いことは、6か月後の痛みの点数を1.5点(95%信頼区間0.2〜2.8)押し上げる方向に結びつき、脂肪以外の量の指数やBMIは痛みの変化を予測しなかった[5]。
著者らは、この人たちの足の痛みは、力学的な要因より代謝的な要因を介しているのかもしれないと考えている[5]。重さが足を押すというより、体の脂肪の量そのものが痛みと結びついている、という読み方だ。ただし、対象は手術を控えた非常に体格の大きい人たちで、30〜50代の過体重の人にそのまま当てはまるかは分からない。人数も45人と小さい。
体重が増えた2年で、足の中ほどに起きたこと
体重と足の痛みが時間の順にどう動くかを追った研究は少ない。その1つが、51人(女性33人、男性18人、平均52.6歳)を2年追ったコホート研究だ[6]。開始時と2年後に、足の痛みと生活への支障を尋ねる質問票に答えてもらい、体重、BMI、歩いているときの足の裏の圧を測った[6]。
平均の体重は80.3kgから82.3kgへ増えた[6]。個人の変化は−16.1kgから+12.7kgまで幅があった[6]。2年の間に圧の最大値が上がった場所は、かかとだけだった[6]。年齢、性別、接地の時間をそろえると、体重の変化は足の中ほど(中足部)の圧の変化と、機能の制限の変化に結びついていた[6]。かかとの圧の変化も、足の中ほどの圧の変化も、機能の制限と痛みの強さの変化に結びついた[6]。経路を分けて調べた分析は、体重の増加が足の機能の制限と痛みの強さに及ぼす影響は、足の中ほどの圧の増加を通っているかもしれないと示した[6]。著者らは、足の中ほどが、圧による痛みに最も弱い場所かもしれないとまとめている[6]。
ここでは力学の経路が見えている。先の手術前の研究の代謝的な読み方と矛盾するというより、別の人たちの別の時期を見ていると考えたほうがよい。2年追ったのは平均80kg前後の人たちで、手術を待つ人たちとは体格がだいぶ違う。
かかとの骨にできるとげとのつながりを示した研究もある。足底腱膜炎の患者73人(平均53.8歳、女性53人)を調べた研究では、BMIが高いほど、また年齢が高いほど骨のとげは大きく(相関係数0.324と0.274)、とげが大きいほど痛みと日常の動作の点数が悪かった[2]。BMIは、スポーツやレクリエーションでの機能の点数の低さとも結びついていた(相関係数−0.251)[2]。この患者たちの点数で最も低かったのは、生活の質の項目である[2]。メタ分析でも、足底腱膜炎のある人にはかかとの骨の下のとげが見られやすかった[8]。
数字で読む足の痛みと体重
3.7:BMIが27を超える人の足底腱膜炎のオッズ比。51本の研究のメタ分析で、臨床的な因子として有意だったのはこれだけだった。[8]
2.13:よく体を動かす人で、足底腱膜炎のある人のBMIが平均で高かった値。体重では4.52kg。[12]
2.9倍:慢性のかかとの痛みのある人が、BMI30以上の肥満である見込み。年齢と性別をそろえた80人ずつの比較。[9]
80.3kgから82.3kg:2年の追跡での平均体重。圧の最大値が上がったのは、かかとだけだった。[6]
90%:肥満の手術を受けた足底腱膜炎の人のうち、症状が解消した人の割合。比べる群はない。[3]
初日の汗は、予約した人だけが持ち帰れる。
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