防風通聖散の無作為化試験7本を合わせたメタ分析で、対照よりBMIが平均0.52多く下がったが、腹囲には有意な差がなかった。内臓脂肪を測って比べた試験の有無、生薬の処方を広く集めたメタ分析との開き、比べる相手の選び方、安全性の記録を確かめ、医師や薬剤師に相談するときの材料をそろえる。
「お腹の脂肪に効く漢方」。薬局の棚でも電車の中吊りでも、この文句の隣に並びやすい名前が、防風通聖散(ぼうふうつうしょうさん)だ。
では、論文はお腹について何と答えたのか。肥満のある人を対象にした無作為化比較試験7本、679人を合わせたメタ分析では、防風通聖散を飲んだ群は対照の群よりBMIが平均0.52下がった。ところが腹囲には、有意な差が出なかった。[4] 文句が約束する「お腹」こそ、試験が差を見つけられなかった場所である。
漢方薬は、飲み始めるのも、やめるのも、量を変えるのも、医師か薬剤師に相談して決める薬である。ここに並べる数字は、その相談の場へ持っていく材料として読んでほしい。
防風通聖散は、どんな処方として調べられてきたか
2022年のメタ分析は、防風通聖散を「肥満のある患者に用いられる日本の伝統的な漢方の処方」と位置づけ、中国ではFang-Feng-Tong-Sheng-Sanの名で知られると書いている。[4] 基礎の研究では、肥満の病態を改善する可能性が示されてきた。一方で、肥満のある人で実際にBMIが下がるのかは、まだ分かっていなかった。それを確かめることが、このメタ分析の目的だった。[4]
漢方や中国の伝統医学では、同じ「肥満」でも、体質や症状の型を見立ててから処方を選ぶ。この見立ては論文では「パターンの識別(pattern identification)」と呼ばれ、見立てに合った処方が減量を効果的にし、有害事象を減らすと考えられてきた。[2]
見立ての一例が、日本の漢方で薬を選ぶうえで最も大事な考え方の一つとされる「水毒」で、体の水分が多すぎたり偏ったりした状態を指す。[13] 漢方外来の受診者229人の体組成を調べた研究では、女性のうち、水がはねるような音のする型の群は水毒のない群より体重が軽く、むくみの型の群は重かった。見立ては、体重の多い少ないとは別の物差しで人を分けている。[13]
防風通聖散の試験の結果が一人ひとりにどこまで当てはまるかは、『漢方ダイエットは効くのか 防風通聖散の試験と「私にも効く」の距離を読む』が扱っている。この記事は、BMIと腹囲の数字の食い違いと、試験が何と比べたかに絞る。
初日の汗は、予約した人だけが持ち帰れる。
7本の試験を合わせた答えは、BMIの小さな差だった
防風通聖散のメタ分析の検索は、2021年6月15日に、欧米の医学データベースに加えて、日本語、中国語、韓国語のデータベースまで広げて行われた。[4] 選ばれたのは無作為化比較試験7本、参加者679人で、防風通聖散の群が351人、対照の群が328人である。主な評価項目は、BMIの変化と決められていた。[4]
結果は、防風通聖散の群で、対照よりBMIが平均0.52kg/m²低かった。95%信頼区間は−0.86から−0.18で、幅の中に0を含んでいない。[4] 信頼区間とは、本当の差がおよそこの範囲にあると見込める幅のことだ。
BMIは体重を身長の2乗で割った値なので、差を体重に直すには、身長(m)の2乗を掛ければよい。身長160cmの人に当てはめて計算すると、0.52の差はおよそ1.3kgにあたる。これが、7本を合わせた平均の大きさである。
ほかの指標はどうだったか。腹囲、血糖や脂質の値、血圧には、対照との有意な差がなかった。[4] 解析の仕方を変えてもBMIの結果は揺るがなかったが、試験ごとの結果のばらつき(異質性)はかなり大きかった。[4] ばらつきが大きいということは、平均の周りに、もっと大きく下がった試験も、ほとんど差のなかった試験も混ざりうるということだ。防風通聖散の群に重い有害事象は見られず、著者らは、BMIを安全に、無理なく改善する「可能性のある利益」を示したと結論している。[4] 言い切りではなく「可能性」という言葉が選ばれている点に、目を留めておきたい。
題の問いの内臓脂肪については、この記事で集めた防風通聖散の論文の中に、CTなどの画像で内臓脂肪の量を測り、飲まない群と比べた結果は見当たらない。7本の試験が答えたのはBMIの差までで、お腹の脂肪に効くという文句は、試験の答えの一歩先を歩いている。
防風通聖散を使った2つの試験は、何と何を比べたか
メタ分析の外にも、防風通聖散を使った試験がある。2本とも、比べた中身に注意がいる。
1つは、肥満のある高血圧の患者107人を対象にした多施設の試験だ。参加者はくじで、ふつうの治療の群と、そこに防風通聖散を足す群に分けられた。どちらの群でも、血圧の薬で診察室の血圧を目標まで下げることを目指している。[7] 主な評価項目は、24時間の血圧の動きの24週後までの変化で、日中の収縮期血圧の揺れ(変動性)が、防風通聖散を足した群で下がった。開始時からの変化は対照の群で1.0±3.3%、足した群で−1.0±3.3%で、差は有意だった。[7]
この試験は、どちらの群に入ったかを参加者も医師も知っている非盲検の設計である。[7] 結論に書かれているのは血圧の揺れで、体重や脂肪の量の変化は主な結果として示されていない。防風通聖散が血圧の面で何かを変えた可能性を示した試験として読むのが、筋の通った受け取り方だろう。
もう1つは韓国の試験で、BMIが25を超え、腹囲が85cmを超える人に、8週間、防風通聖散を飲んでもらった。そのうえで、乳酸菌などの生きた菌(プロバイオティクス)のカプセルを足す群と、偽のカプセルを足す群に、くじで分けて二重盲検で比べた。[12] 体重と腹囲は両方の群で有意に減ったが、体組成や代謝の指標には、群のあいだの差がなかった。[12]
ここで「防風通聖散で体重が減った」と読むのは早い。この試験では、全員が防風通聖散を飲んでいる。防風通聖散を飲まない群がないので、減った分のうち、どれだけが防風通聖散によるもので、どれだけが試験に参加したこと自体や時間の経過によるものかは、分けられない。試験が確かめようとしたのは菌を足す意味で、相関の分析では、体重の変化とエンドトキシン(細菌に由来する毒素)の値とのあいだに正の相関が見られた(r=0.441)。腸のラクトバチルス・プランタルムという菌の量も、体重の変化と正の相関を示した(r=0.425)。[12] どれも菌と体重の関係を探った数字で、防風通聖散の効き目を測ったものではない。
生薬の処方を広く集めると、なぜ数字が大きくなるのか
防風通聖散だけでなく、東アジアの生薬の処方を広く集めたメタ分析もある。体質の見立てに基づいて処方した無作為化比較試験に絞った2022年の分析は、8つのデータベースを2021年8月31日まで検索し、16本、1052人の試験を選んだ。[2] 処方を飲んだ群は対照の群より、体重が平均4.10kg(95%信頼区間−5.14〜−3.06)、BMIが1.53(同−1.88〜−1.19)多く下がり、有意な有害事象は見られなかった。主な評価項目についての証拠の質は「中程度」と判定されている。[2]

写真: Hanabishi / CC BY-SA 3.0 / Wikimedia Commons
BMIどうしで比べると、防風通聖散の0.52に対して1.53で、3倍ほどの開きがある。[2][4] この開きを、そのまま「見立てて選べばよく効く」と読むのは早い。処方も、対象も、比べた相手も違うので、開きの理由は一つに決められない。16本のうち、偽薬と比べた試験は2本(128人)、西洋の薬と比べた試験が2本(161人)で、残る12本(763人)はふつうのケアとの比較だった。[2] ふつうのケアと比べる試験では、処方を飲む群は、飲むこと自体への期待も背負っている。著者らも、盲検化(誰がどちらの群か分からなくする工夫)に偏りの危険が高い試験や、見立ての診断が標準化されていない試験が含まれていることを、限界に挙げている。[2]
数字で読む防風通聖散
- 0.52:7本の試験を合わせたメタ分析で、防風通聖散の群のBMIが対照より下がった平均。95%信頼区間は−0.86〜−0.18。[4]
- 679人:そのメタ分析に入った参加者。防風通聖散の群351人、対照の群328人。[4]
- 1.53と4.10kg:見立てに基づく生薬の処方16本を合わせたときの、BMIと体重の差。16本のうち12本はふつうのケアとの比較だった。[2]
- 107人と24週:防風通聖散を血圧の治療に足した試験の人数と期間。主な評価は血圧の揺れだった。[7]
- 8週間:全員が防風通聖散を飲み、菌を足すかどうかで比べた韓国の試験の期間。[12]
初日の汗は、予約した人だけが持ち帰れる。
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