インナーマッスルの模型は理解に役立つ?平面の絵と立体で学べることの違い

インナーマッスルの模型を回せば、体の奥の位置関係まで分かるのか。骨盤や喉頭などの解剖学教育の研究から、平面のイラストと立体模型の違いを読む。見やすさと学習成績、空間を思い描く力、テストの形式を分け、模型の理解を実際の動作の上達と取り違えない教材の選び方を考える。

正面の解剖図では見つけられた筋肉が、横からの図では見つからない。名前は同じなのに、手前と奥の関係がつながらない。インナーマッスルの位置を知ろうと図を並べたとき、いっそ模型を回したほうが早いのでは、と考える場面がある。

答えは、立体か平面かだけで理解の深さは決まらない、である。学生を対象に、骨盤の模型を画面上で操作する学習と静止画像の学習を比べた無作為化比較試験では、立体を操作した群が全般に優れる結果にはならず、静止画像を使うテストでは静止画像で学んだ群の成績が高かった。[1] 解剖学を学ぶ学生の結果を、18〜39歳の女性の自主学習にそのまま当てはめられるかは別に検討する必要がある。

ただし、立体の教材が役立つ場面もある。医学部初年次生の頭頸部の血管を扱った研究では、空間を思い描く力が低かった学生に学習後の改善がみられた。[13] 医学教育の中で得た改善が18〜39歳の女性の自主学習でも同じように起こるかは、この結果だけでは判断できない。 大切なのは、体の奥の位置関係を学びたいのか、運動を実行したいのかを先に分けることだ。既存記事「股関節を柔らかくする動画は見るだけで伝わる?実演の向きと自分の動作をつなぐ」には実演と動作の問いを譲り、ここでは模型と絵から位置関係を学ぶ問題を扱う。

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模型を回す前に、知りたい位置関係を決める

模型で何を確かめたいのだろう。「この名前の部分はどこか」と「手前の部分をよけると奥に何があるか」では、教材に求める仕事が違う。解剖学教育では、形と配置を頭の中で組み立てることが学習の課題となる。実際の患者の画像から立体の教材を作った予備的研究も、構造の形や位置関係、個人による違いを伝える補助教材としての可能性を医学部初年次生で検討している。[14] 18〜39歳の女性が日常的に使う教材でも同様に役立つかは、専門教育との違いを考慮して読む必要がある。

ここでいう空間能力とは、立体の物体を頭の中に描き、その向きなどを頭の中で操作する力である。医学部生を対象にした研究では、この力を解剖学的な断面の問題と幾何学的な立体の問題で調べている。[8] 医学部生の学習環境と異なる18〜39歳の女性の学びに、そのまま当てはめることはできない。 筋肉の名前を読み上げられることと、見る方向を変えても同じ場所を見つけられることは、教材を使う際には別の目標として置くとよい。

たとえば図を見て「この部分は手前なのか奥なのか」と迷うなら、その前後関係が確認できる教材を探す。「模型なら全部分かるはず」と期待するより、調べたい疑問を短い言葉にする。これは特定の学習効果を保証する手順ではなく、形や空間関係を学ぶという研究の課題を、日常の教材選びに置き換えた使い方である。[14]

立体教材にも種類がある。机に置いて手で持つ実物模型、画面で回せる模型、奥行きが立体的に見える映像は、どれも同じ経験ではない。骨盤を使った試験で学習に用いられたのは、コンピューター上で操作する立体模型と、その同じ模型の静止画像であった。実物の骨盤模型は、学習後のテストの形式として登場する。[1] この区別を外すと、「模型を触るとよい」という別の主張に変わってしまう。

また、ここで扱う研究は骨盤の骨、喉頭、手や眼、血管などを題材にした解剖学教育である。[1][3][12][13] インナーマッスルの模型を見た一般の運動初心者が、どれだけ動けるようになるかを直接示す数字としては使わない。体の構造を学ぶための参考と、運動の成果を約束する材料とでは役割が違う。模型の出来がよくても、それだけで動作の評価まで済ませたことにはならない。

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骨盤と喉頭の比較では、立体の優位は一様でない

骨盤の試験では、参加者を立体模型で学ぶ条件と静止画像で学ぶ条件へ無作為に割り付け、学習前に解剖学の知識と空間能力を調べた。学習後は実物模型、静止画像、操作できる模型という異なる形式の知識テストを行っている。[1] 教材を選ぶだけでなく、どの形式で理解を確かめるかまで組み込んだ比較である。

結果は、静止画像のテストで静止画像群が高得点となり、その差の検定値は p=0.043であった。他の知識テストでは有意な群間差を認めず、学習に必要と感じた精神的な努力にも群間差はなかった。[1] この検定値は、立体の模型が何点劣るかという効果量そのものではない。静止画像での学習を、立体より劣る選択肢として一律に扱う根拠にはならない結果だ。

研究者らは、骨の模型のような題材では、位置関係を処理するために能動的な操作をさほど必要とせず、立体操作の付加価値が生じにくい可能性を挙げている。[1] したがって、ここから「すべての筋肉も絵で十分」とは進めない。部位の複雑さを考える必要がある。骨盤の骨で得た比較結果を、入り組んだ別の構造へそのまま移すこともできない。

喉頭を題材にした無作為化比較試験では、若手医師40人が、コンピューターの立体模型または平面画像を補助に学習した。解剖学テストの平均点と標準偏差は立体群が15.7±2.0、平面群が15.5±2.3で、群間差は有意ではなかった。p=0.7222である。[3] 若手医師には専門知識の蓄積があり、18〜39歳の女性一般にも同じ結果になるかは別の問いである。 数字を並べると、立体群の平均が少し上だから効果が確実、と読むのは無理がある。

一方、この試験では立体模型の明瞭さ、使いやすさ、好みに関する評価に違いがみられ、参加者は立体模型を好んだ。[3] 「好きな教材」と「点数が上がる教材」は同じ質問ではない。模型を回すのが楽しいことまで否定する必要はないが、その楽しさをそのまま学習成績の差へ変換することもできない。画面の中の模型はよく回る。理解が進んだかは、別に確かめる必要がある。

リアルな絵より、何を問われるかが結果を変える

細部まで本物に近い模型なら、簡略化した模型より学びやすいのか。この問いを調べた骨盤の研究では、詳しい形状と質感の陰影を持つ模型と、形状と陰影を簡略化した模型に参加者を無作為に割り付けた。学習後の解剖学知識に有意な群間差はなく、認知負荷、つまり学習に伴う頭の負担と、動機づけにも群間差はなかった。[4] この解剖学学習の参加者の結果を、18〜39歳の女性の教材選びへ直接移すことには慎重さが必要だ。

この研究では空間能力とテスト成績の関連も調べ、全体で相関係数 r=0.26であった。詳しい模型を使う条件では r=0.29だったが、条件間で関連の強さが異なると確定できる結果ではなかった。[4] 詳細な模型ほど空間能力への依存が強まるかもしれない、という示唆と、「空間が苦手な人はリアルな模型を避けるべきだ」という決め付けは分けて読む必要がある。

平面の画像でも、画質と成績の関係は課題によって異なる。手と眼の教材の鮮明さや一貫性を操作した研究では、良い画像の効果は眼より手の学習で大きかった。しかし手でみられた利点も、学習直後の短い記述式の問題に限られ、選択式の問題や、再学習の機会を設けた後には同じ利点が認められなかった。[12] 解剖学を学ぶ参加者の結果であり、18〜39歳の女性の自主学習でも同じ傾向となるかは確かめる必要がある。 教材の見栄えだけでは、部位と問題形式の違いを説明しきれない。

この研究は、最初に学び、翌日に教材を学び直し、その後に最終テストを行う構成であった。[12] 最初に理解を確かめる場面と、読み直した後で確かめる場面を区別している。「最初のひと目で分かりやすかったか」だけを聞く教材の感想では、この違いは捉えにくい。購入前の見本画像の印象と、学習後に答えられる内容とを、同じものとして扱わないほうがよい。

日常の使い方に直すなら、模型を閉じた後に何を説明したいかを考える。正面の図で名前を指すのか、別方向から見た位置を説明するのか、手前と奥の関係を言葉にするのか。これは教材選びの問いの立て方であり、テストの形式によって結果が変わった研究を踏まえた整理である。[1][12] 細密な陰影に予算をかける前に、答えたい問いに合う図があるかを見る余地がある。

画像研究では、手の短い記述式問題での画質による差が p=0.018、選択式では p=0.109、追加の学習機会の後では p=0.643だった。[12] 同じ部位を学んでも、回答を自分で書く場合と、並んだ選択肢から選ぶ場合で、検出された差が違ったことになる。数字を教材の広告のように使うなら、最もよかった比較だけを切り出すこともできてしまう。読む側は、いつ、何を答えるテストだったのかまで戻って確認したい。

骨盤の試験でも、操作できる模型を使うテストでは、学習条件より空間能力が成績に関係するように見え、相関係数は r=0.18、p=0.049であった。[1] テストに模型を使えば、知識に加えて空間能力も結果に関わるのである。模型の操作を含む問いで迷ったときに、それを直ちに「名前も位置も何も理解していない」と受け取る必要はない。何に答えられて、どの形式で迷ったかを分けて振り返る材料になる。

数字で読む模型と空間の学習

40人:喉頭の立体模型と平面画像を比較した若手医師の人数である。[3]

15.7点と15.5点:同試験の立体群と平面群の平均点で、有意な差はなかった。[3]

p=0.043:骨盤の静止画像テストで、静止画像による学習群が高かった比較の検定値である。[1]

39人:頭頸部の血管の立体教材を使った、医学部初年次生の研究の参加人数である。[13]

r=0.26:詳しい模型と簡略な模型を比べた骨盤の研究での、空間能力とテスト成績の相関である。[4]

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宮川涼 Founder

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