脂肪燃焼でお腹は熱くなる?皮膚の温度で使った脂肪を判定できるか研究で読む

運動後にお腹が熱いと、脂肪が燃えた印に思える。しかし皮膚温が変わらず脂肪の利用が増えた試験もある。呼吸から測る脂肪酸化と皮膚の温度の違いを、人の比較試験で確かめる。暑さや冷たさ、食後の熱産生を読み分け、手で触れた感覚を運動の採点に使わないための見方を紹介する。

運動着を脱ぐ前、お腹に手を当てたらいつもより温かい。今日は脂肪をたくさん使ったのだろうか。反対に、歩いたのにお腹が冷たい日は、運動が足りなかったのだろうか。

答えの芯は、皮膚の温度だけでは脂肪の利用量を判定できない、である。男性12人、女性6人が暑い環境で走った比較試験には、脂肪酸化、つまり脂肪を燃料として利用する働きが増えても、皮膚温や体の内部の温度に差が出なかった例がある。男女を合わせた結果を18〜39歳の女性にそのまま当てはめることはできない。[3]

熱さを感じたこと自体は、その日の体験として残してよい。ただし、それを脂肪の使用量に換算する段階には飛躍がある。立川駅の改札から家まで歩いた日の採点を、帰宅後のお腹の手触りに任せなくてよい。研究で別々に測っているものを、日常でも分けてみよう。[1][3]

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温度計と呼吸の測定は、別の問いに答える

皮膚温は体の表面の温度である。脂肪酸化は燃料の利用を扱う指標で、人の試験では呼吸のガス交換を使った間接熱量測定で調べられている。たとえば、過体重または肥満があり、普段運動をしない男性24人(平均年齢40.2歳)を対象とした無作為化三重盲検クロスオーバー試験では、皮膚温、温熱感覚、呼吸から調べた脂肪酸化を、それぞれ測定項目として扱っている。18〜39歳の女性に同じ反応が出るかは、この男性の試験だけでは判断できない。[2]

ここでいう温熱感覚は、本人が感じる暑さや温かさのことだ。触れて熱い、本人も暑い、測定した皮膚温が高い、脂肪の利用量が多い。日常ではひと続きに語りたくなるが、研究では同じ欄に入らない。その区別を崩すと、体感から代謝の数字まで一足飛びになってしまう。[2][3]

食後の研究でも区別は同じである。食事誘発性熱産生とは、食後にエネルギー消費が増えることを指す。健康な成人を対象とした試験では、その消費の増加と、脂肪の利用と、褐色脂肪組織のある領域の皮膚温を別々に調べている。褐色脂肪組織は、寒冷刺激などに応じて脂肪酸を使い熱を生む働きを持つ組織だが、その働きへの関心と、お腹を触って分かることは分ける必要がある。[1]

同じサイトの「脂肪燃焼は運動前のたんぱく質でも変わる?糖の補給と燃料の違いを研究で読む」は補給の違いを扱う記事である。そちらに食べるものの比較を譲り、ここでは温度という目印の使い方を考える。暑い場所での運動全体の消費を問うのとも違い、今回の問いは「皮膚を触れば使った脂肪が分かるか」だ。

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脂肪の利用が増えても、肌の温度は変わらなかった

この問いに直接役立つのが、男性12人、女性6人を対象とした、無作為化二重盲検クロスオーバー試験である。クロスオーバーとは、同じ参加者が条件を変えて両方の試験を受ける方法だ。男女を合わせた結果なので、18〜39歳の女性だけの効果を示すものではない。この試験ではブラックカラント抽出物と比較用の偽薬を、順序を変えて摂取した。[3]

抽出物の摂取は1日600mgで7日間。その後、気温34°C、相対湿度40%の環境で、最大酸素摂取量の65%に相当する強度のランニングを60分行った。最大酸素摂取量は、その人が運動中に取り込める酸素量の上限を表す指標であり、この試験は各人の体力に対して強度を設定している。[3]

抽出物の条件では、偽薬に比べて脂肪酸化が毎分0.12g多かった。差の95%信頼区間は毎分0.10〜0.15gである。一方、皮膚温、直腸温、体温、心拍数には条件間の有意差がなかった。直腸温は、体の内部の温度を調べるための測定である。脂肪の利用には差があり、温度の指標には差がなかったという組み合わせだ。[3]

これは、抽出物を生活に取り入れる提案ではない。重要なのは、「脂肪を多く使ったなら肌もさらに熱くなるはず」という推測が、この条件では成り立たなかったことにある。少なくとも、熱くなった実感が増えないと脂肪の利用は増えていない、とは判定できない。[3]

また、この試験の参加者は平均年齢27歳で、運動は空腹状態のランニングだった。仕事帰りの散歩や室内のヨガと同じ運動ではない。差の数字を自分のレッスンにそのまま移すことはできないが、温度と燃料利用を別に見る必要があるという判断には役立つ。[3]

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食後の熱と、脂肪を使う量も一致しない

運動中だけの特殊な話かというと、食後にも似たずれがある。健康な成人を対象とした、ボイセンベリー飲料の予備的な無作為化二重盲検クロスオーバー試験では、参加した22人のうち19人を解析した。飲料にはアントシアニン61.0mgが含まれ、比較用飲料とそれぞれ4週間ずつ摂取した。[1]

結果は、食後の脂肪酸化は有意に増加したが、食事誘発性熱産生と褐色脂肪組織領域の皮膚温には有意な変化がなかった。つまり、食後に使う燃料の側に変化が見られても、食後のエネルギー消費の増加や、測った皮膚の温度が同じように変化したわけではない。[1]

「脂肪を多く使う」と「エネルギーを多く消費する」も同義ではないことが、この結果から分かる。脂肪酸化だけを聞いて、体が普段より大量の熱を出したと読み替えるのは早い。食後に温かく感じたかどうかを確かめるより、研究がどの指標で差を見つけたかを確認するほうが、結果の意味に近づける。[1]

この試験は予備的な小規模試験であり、著者らも脂肪酸化を主要な評価項目とした追加研究を求めている。飲料を飲めば誰でも同じ反応が得られるという段階ではない。まして、飲んだ後のお腹の温かさを効果判定に使う試験でもない。日常の飲み物を選ぶ話と、温度から分かる範囲を調べる話は切り離して読もう。[1]

一緒に変わった研究は、どう受け止めるか

温度と代謝が同じ方向へ動く研究もある。健康な人に甘草由来のフラボノイド油を摂取させた無作為化比較試験では、600mgの単回摂取後、やや涼しい空調室で測った体幹部の皮膚温が上がった。また、自転車運動中には酸素消費量が増え、呼吸交換比が低下した。[4]

呼吸交換比は、吐いた二酸化炭素と取り込んだ酸素の比である。この試験では、その変化などから軽い運動中の脂肪酸化を高める可能性が示された。ただし、体表の温度は安静条件、呼吸の測定は運動条件で調べている。「温度が上がる現象」と「燃料利用が変わる現象」が同じ論文にあることと、両者が日常で常に対応することは違う。[4]

この違いは小さくない。ある成分を摂取した後に複数の変化が起きても、そのうち片方だけを取り出して、もう片方の代用の測定にできるとは限らない。お腹を温める行為に置き換えても同じ代謝変化が起きる、という結論にもならない。試験が行ったのは成分摂取の比較であり、お腹を温める方法の比較ではないからだ。[4]

対照的な結果を並べると読みやすい。甘草由来成分では体幹の皮膚温と運動時の代謝に変化があり、ブラックカラント抽出物では脂肪酸化が増えても温度に差がなかった。両方を残して読むと、「温かさと代謝が関連する場面はあるが、温かさを共通の計器にはできない」という範囲が見えてくる。[3][4]

体の内部が冷えた場合はどうだろう。暑さに慣れていない、トレーニングを積んだ自転車競技者11人の比較試験では、暑い環境での自転車運動中に、冷たい糖質飲料と温かい糖質飲料を飲む条件を比べた。冷たい側は平均4.0°C、温かい側は平均35.8°Cで、どちらも同じ濃度のブドウ糖飲料だった。競技者を対象にした結果を、18〜39歳の女性の日常の運動にそのまま当てはめることはできない。[6]

運動は気温約36°Cの環境で行い、一定の負荷で100分間こいだ後、タイムトライアルを実施した。冷たい飲料の条件では、一定負荷の運動中の心拍数と直腸温が低かった。一方、皮膚温、脂肪酸化、糖質酸化に条件間の有意差はなく、タイムトライアルの成績にも差がなかった。[6]

ここでは、体の内部の温度の差さえ、脂肪利用の差と同じ意味にはならなかった。肌の温度だけを疑って、代わりに体内温度を測れば燃焼量が分かる、と単純に置き換えることもできない。温度への反応と燃料の利用は、比較試験の中でそれぞれ確かめる必要がある。この試験の結果は、冷たい飲料を避ける理由ではなく、飲料による冷却と代謝の変化を同じ効果として数えないための材料になる。[6]

ランニングの抽出物試験と合わせると、違いがさらに明瞭になる。片方では温度に差がなく脂肪酸化に差があり、もう片方では直腸温に差があって脂肪酸化に差がなかった。どちらも一定時間の運動中を調べているが、対象、飲食物、運動の種類は異なる。同じ人が同じ条件で両方を試した結果としてつなげず、それぞれが温度による判定の難しさを示す例として読むのが適切だ。[3][6]

数字で読む温度と脂肪酸化のずれ

18人:暑い環境で走る抽出物試験の参加者で、男性12人、女性6人だった。[3]

毎分0.12g:同試験の脂肪酸化の条件間差。95%信頼区間は毎分0.10〜0.15gで、皮膚温には有意差がなかった。[3]

19人:食後の代謝を比較した飲料試験の解析人数。脂肪酸化は増えたが、食後の消費増加には有意な変化がなかった。[1]

600mg:甘草由来成分の単回摂取量。体幹皮膚温は安静時、呼吸の指標は運動時に調べられた。[4]

24人:ジヒドロカプシエイトの運動試験に参加した、過体重または肥満の男性。脂肪酸化にも皮膚温にも条件間の有意差はなかった。[2]

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宮川涼 Founder

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