運動しても肩こりが残るのはなぜ?力みと僧帽筋が休む時間のずれを考える

運動を続けているのに肩こりが残るとき、運動不足と決めつける前に何を見るか。看護師の勤務中の筋活動、管楽器奏者の運動試験、肩のリハビリ研究から、僧帽筋が休む時間と痛みが一致しない理由を読む。運動量を増やす判断と、日常の力みや症状を記録する判断を分けて考える。

運動着を片づけたあと、夕食の皿を洗いながら肩の重さに気づく。体は動かしたのに、首の付け根にはいつものつらさが残っている。「運動しているのに肩こりが残るなら、もっと頑張るべきなのか」。そう考える前に、運動をした時間と、肩の筋肉が休んだ時間を分けてみたい。

答えの芯は、体を動かす量、肩の筋肉の活動、痛みの感じ方は同じ成績ではないということだ。看護師の勤務を比べた研究では、僧帽筋が休む時間に違いがあっても、首の痛みは同程度だった。肩周りの筋活動が変われば、こりも同じ割合で減る、という単純な対応ではなかったのである。[1]

一方、管楽器奏者を対象とした運動試験では、安静時の僧帽筋の活動低下と首の痛みの減少がともに見られた。運動が役立つ可能性はあるが、力を抜く時間と痛みの変化は別々に確かめたい。自分を運動不足と採点するより、何が変わり、何が残ったのかを確かめる方が研究の結果に沿っている。[7][1]

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運動した量と肩が休んだ量は別に見る

肩こりという言葉で、首の付け根の重さ、肩を動かしたときの痛み、押したときのつらさをまとめて話すことがある。しかし、研究が測るのはそれぞれ別の項目だ。首の痛みを尋ねた看護師の研究、肩の痛みと生活上の支障を調べた試験、手術後の回復を調べた試験を、そのまま同じ肩こりの成績表にはできない。[1][2][3]

ここで中心にするのは、日常で体を動かしていても、肩のつらさが残るときの見方である。種目全般の選び方は既存の「肩こり対策の科学 第2回 肩こり筋トレの本命は首と肩、試験で分かった選び方」に譲る。また、気分の問題は「運動してもストレスが残るのはなぜ?反すうと気分の変化を分けて研究で読む」で扱っている。ここでは筋肉が働く時間と休む時間を入り口にする。

筋肉内で働く場所が移る話は「首こりの僧帽筋は同じ場所で疲れる?筋肉内で移る活動と休み方を研究で読む」に譲る。「首のストレッチは肩を下げて行う?首の角度と僧帽筋の変化を分けて読む」が扱う伸ばし方や、「背中の筋トレは引き終わりに肩をすくめる?僧帽筋と広背筋の分担を研究で読む」が扱う動作の終点とも問いが異なる。ここで確かめるのは、運動をしているという事実と、肩のつらさが残るという事実をどう両立して読むかだ。

看護師の研究で扱われた僧帽筋は、首から肩、背中にかけての筋肉である。筋電図という、筋肉が活動するときの電気的な信号を記録する方法で、勤務中の活動や休息を調べた。本人が「今日は動いた」と感じたかどうかだけでなく、実際の筋肉の働きも見た点に意味がある。[1]

運動の予定表には、レッスンへの参加や歩いた時間を書ける。そこに「夕方、画面を見ていたときの肩の感じ」を別に書いてもよい。これはこりを診断する検査ではなく、違う種類の情報を混ぜないためのメモだ。研究でも身体的な負担と自覚的な負担は一致しておらず、予定表の達成だけから肩の状態を決めるのは早い。運動できた日と肩が楽だった日を、別々の欄に残すところから始めればよい。どちらも消さずに置いておく。[1]

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看護師の勤務では休息時間と痛みがそろわなかった

スイスの看護師20人を対象とした観察研究では、昼の勤務と夜の勤務の身体的な負担を比較した。安静時から仕事中に増えた心拍数は夜が27拍、昼が34拍で、腕の動きを表す測定値も夜の方が小さかった。つまり、この集団では夜の勤務の方が身体活動は少なかった。看護という仕事での比較なので、18〜39歳の女性全般の日常にそのまま当てはめられるかは、仕事や生活の条件を照らして考える必要がある。[1]

僧帽筋が休んでいた時間は、夜には勤務時間の13%、昼には7%だった。筋電図の活動の中央値も夜の方が低く、筋肉を休める機会が多いという結果だった。それでも首の痛みと仕事中の精神的な状態は、昼夜で同程度だった。自覚する負担も似ていた。[1]

この結果から読めるのは、身体的な負担が小さい夜の勤務でも、首の痛みは昼と同程度だったという点である。「肩の筋肉が休めば痛みはなくなる」という説明だけでは、この観察を説明しきれない。ただし、休息が無意味だったと証明した研究でもない。勤務条件を無作為に割り当てた治療試験ではなく、実際の勤務の違いを比較した研究だからだ。[1]

また、13%という数字は、目指すべき休息割合ではない。特定の看護師の勤務中に測られた値であり、机仕事やレッスンにそのまま移せる目標値ではないのである。数字の役目は、昼夜で筋肉の休み方に差があったことを示すことであって、自分の肩に休憩率のノルマを課すことではない。[1]

研究で夜の身体活動が少なかったことを、「夜なら肩に良い」という勤務の勧めに読み替えることもできない。昼夜で違った測定値と、違わなかった症状が同じ研究にある点こそが重要だ。どちらか片方だけを拾えば、休めば解決するという話にも、休んでも仕方がないという話にも見えてしまう。実際の結果は、その中間にとどまっている。[1]

忙しさが違った日を振り返るなら、「動いた量は少なかったのに、肩は同じようにつらかった」という記録にも意味がある。体の動きが少ない日を、自動的に楽な日と呼ぶ必要はない。この研究では本人の負担感まで測ったからこそ、測定値だけでは見えないずれが残った。[1]

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運動で安静時の筋活動が変わった例もある

管楽器を演奏する大学生を対象にした無作為化比較試験では、首や顎周りの動きと筋肉を対象とする運動プログラムを行った。運動群は女性14人、男性15人、介入を受けない比較群は女性11人、男性9人であった。実施期間は12週間だった。男女を含む演奏専攻の大学生の結果を、18〜39歳の女性全般にそのまま当てはめるには、演奏習慣や運動内容の違いがある。[7]

運動群では、頭の姿勢を表す角度や首を前後に動かせる範囲が変わり、首の痛みと安静時の僧帽筋の活動が低下した。直近の月の痛みの有病割合も減った。運動を行った後、動いていないときの筋肉の働き方にも変化が見られた点は、今回の問いに近い。[7]

ただし、演奏を学ぶ大学生の結果である。通勤や家事、パソコン作業が中心の人を同じ条件で調べた試験ではない。また、首や顎周りを対象とする運動であり、今回の結果が支えるのは、その対象に合わせて組んだ運動の変化である。対象者と運動の内容をセットで読む必要がある。[7]

さらに、痛みと安静時の筋活動がともに下がったことは、筋活動の低下だけが痛みを減らした証拠ではない。プログラムの前後で複数の項目が変化しているからだ。看護師の研究では筋休息と痛みがそろわず、奏者の試験では同じ方向へ変わった。両方を並べると、僧帽筋の活動は手掛かりにはなるが、痛み全体の代わりにはならないと分かる。[7][1]

運動直後の楽さと長く続く変化を分ける

慢性的な首の痛みがあり、仕事中の身体的な負担が高い労働者78人を対象とした無作為化比較試験では、有酸素運動、組み合わせた運動、教育を受ける比較群を設けた。各群は26人で、運動前と直後、さらに運動後20分に評価した。調べたのは短時間での反応である。慢性的な首の痛みと仕事上の負担がある集団なので、18〜39歳の女性全般にそのまま当てはめられるかは、症状と作業条件による。[8]

有酸素運動群は背もたれのある自転車で中程度の運動を30分行った。組み合わせ群は有酸素運動15分と、首や上肢のゴムバンドを使った抵抗運動15分であった。比較群は人間工学と運動について30分の教育を受けた。[8]

運動をした両群では比較群より首の痛みの感じ方が低下し、組み合わせ群では全身的な痛みの感じ方や疲労にも低下が見られた。有酸素運動群では、押されたときに痛みを感じ始める境目を表す圧痛閾値の反応が、より一貫していた。測る対象が違えば、良くなり方の現れ方も違ったのである。[8]

この試験では運動群だけでなく、教育を受ける比較群も置かれていた。運動した人の前後だけを見るのではなく、別の対応を受けた人との違いも評価している。ただし、比べた運動は特定の組み合わせであり、自転車の時間と首周りの抵抗運動の配分も異なる。「長く動くほどよい」という量の比較ではない点も押さえたい。[8]

レッスンの帰りには軽いが、仕事の終わりにはまた重い。そんな経験を振り返るときも、その場の変化と、その後の日常での変化を同じものとして扱わない方がよい。この試験は即時の反応を支えるが、長期の肩こり解消を保証する結果にはならない。楽だった瞬間をなかったことにせず、続いた時間まで分けて見るための研究である。[8]

数字で読む肩の活動と痛み

看護師20人:昼夜の勤務で、僧帽筋の活動と首の痛みを比較した観察研究である。[1]

勤務時間の13%と7%:夜と昼の僧帽筋の休息時間。首の痛みには同じ違いが見られなかった。[1]

12週間:管楽器奏者の首や顎周りを対象とした運動試験の期間である。[7]

労働者78人:慢性的な首の痛みがある人の、運動直後の反応を比較した試験である。[8]

術後6か月と12か月:握る運動を追加した試験では、肩の一部の筋力の群間差が前者で見られ、後者では消失した。[3]

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宮川涼 Founder

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