ダイエットでは食事が何割かと考える前に、料理中の活動をどう数えるか。調理の消費量を測った研究と家事時間の調査から、立つ時間、手を動かす時間、待つ時間の違いを読む。家事を軽く見ず、運動と同一視もしないために、メッツの意味と記録の仕方、研究の数字を自宅に当てはめる際の注意点を整理する。
夕飯を作り、流しを片づけて、ようやく椅子に座る。「今日は運動していない」と記録しようとして、少し手が止まる。冷蔵庫とコンロの間を行き来した時間は、どこへ入れればよいのだろう。
答えの芯は、食事作りも身体活動として扱えるが、台所にいた時間をそのまま一定強度の運動時間にはしない、ということだ。若年から中年の成人を対象にした実測研究では、料理や食事関連作業、洗濯、軽い掃除、水やりは1.8〜2.3メッツの範囲にあった。これは料理だけの単一の値ではなく、複数の活動をまとめた範囲である。[16]
「ダイエットは食事が何割、運動が何割」という配分表より、まず夕飯作りの中身を見たい。既存記事「ダイエットの食事は自分で作るとおいしい?調理への参加と食べる量を研究で読む」には調理参加と食べる側の問いを譲り、ここでは作る間の動きの数え方に絞る。立つ姿勢と脂肪を使う割合の違いも別の問いであり、消費量の数字から一足飛びに答えを出さない。

食事作りの実測値は、どんな場面の数字か
手掛かりとなるのは、中国の22〜58歳の成人30人を対象に、家事と高齢者の世話に伴うエネルギー消費を調べた研究である。参加者は男性14人、女性16人で、実験室で15種類の活動を行った。各活動の測定時間は8分、活動間の休憩は4分だった。携帯型の間接熱量計で酸素摂取量を測り、活動の強さに換算している。男性と中年層も含むため、この集団の測定値を18〜39歳の女性個人へそのまま当てはめることはできない。[16]
間接熱量計とは、この研究では呼吸から取り込む酸素の量を測り、体のエネルギー使用を評価する装置である。単に「料理は大変そうだから、このくらい」と割り当てた値ではない。研究者は実際の酸素摂取量を使って、料理、食事関連作業、洗濯などの活動を比較した。[16]
その結果が1.8〜2.3メッツという範囲である。一方、掃く、歩く、食料品や箱を平地や階段で運ぶ活動は3.0〜5.5メッツの範囲だった。同じ家庭内の仕事でも、活動の種類が変われば測定値は変わる。「家事」という大きな箱の中には、強さの異なる仕事が入っている。[16]
ここで料理の数字を読む順序が大切になる。まず対象者、次に実験室という場所、そして測定した活動を確認する。そのうえで自宅の夕飯作りを思い浮かべる。狭い台所で切る作業を続ける日と、買い物の荷物を運び込んでから調理する日を、同じひと仕事として扱う必要はない。荷物運びを料理の実測値に押し込めると、研究が分けた違いを自分で消してしまう。[16]
逆方向の読み違いもある。掃除や運搬の高い側の数字を見て、献立を考えている時間までその強度だったとする読み方だ。研究の範囲は活動の違いを表しており、家事を担当した人への一律の点数ではない。手間がかかったことと、測定上のエネルギー消費が大きいことは、分けて記録したほうが仕事の内容も伝わる。[16]
例えば、台所にいた間に何をしたかを「切る・混ぜる・運ぶ・待つ」と言葉にしてみる。これは新しい消費カロリー計算法ではない。研究の活動名と生活の作業を照らし合わせるための整理である。数字を付ける前に動作を分けるだけで、「調理」という言葉に荷物運びも待ち時間も全部含めたのか、後から読み返せるようになる。
実験の時間にも目を向けたい。活動ごとに休憩を挟んで測る設計と、途中で電話に出たり、鍋の様子を見たりしながら進む夕飯作りは、時間の並び方が違う。測定された8分の活動を、そのまま台所にいた全時間へ広げる前に、途中に何が挟まったかを確かめる必要がある。[16]
例えば、皿を洗ってから炊き上がりを待ち、その間に座って献立を見直したとする。記録に「料理」とだけ残すと、手を動かした工程と座っていた工程を区別できない。「洗う」「待つ」と残せば、少なくとも同じ動作が続いたと誤解することは避けられる。研究が活動を分けて測った意義は、家庭でも作業を区別して読むところに生かせる。[16]
初日の汗は、予約した人だけが持ち帰れる。
メッツは料理の点数でも、減量の予告でもない
メッツは活動の強さを表す指標である。この家事の研究では、活動時の酸素摂取量を、体重1kg当たり毎分3.5mLという基準で割って標準メッツを求めた。したがって、表にある数字は測定した活動の酸素使用を基準化したものだ。料理をした人の努力や、献立の栄養価を採点しているわけではない。[16]
また、この研究では実測メッツと従来の推定値に0.3〜2.2メッツの差があり、多くの実測値は推定値より低かった。研究者は、推定値を測定値へ更新し、異なる活動をまとめた項目を分けることが、家事や介護の活動強度を正確に示すうえで役立つと結論している。[16]
ここから生活に持ち帰りたいのは「家事は思ったほど役立たない」という評価ではない。表の数字にも、測った値と推定した値があるという読み方だ。小数点が付いていても、家庭の台所を直接測った値かどうかは、数字の細かさからは分からない。自分の作業に近いかを見る前に細かなカロリーへ換算すると、元の不確かさが見えにくくなる。[16]
高齢の日本人女性143人を調べた横断研究でも、歩く活動と、移動を伴わない活動を区別している。この研究では料理を移動を伴わない低強度活動の例、家の掃除を移動を伴わない中高強度活動の例として扱った。低強度の区分は1.6〜2.9メッツ、中高強度は3メッツ以上だった。料理も身体活動に含めることと、歩行などと同じ区分に入れることは別なのである。高齢女性の活動分類を用いた研究なので、18〜39歳の女性の体力や活動の効果をそのまま判断する材料にはできない。[17]
ただし、この分類を若い読者の体力判定には使わない。対象は地域で暮らす高齢女性であり、若年から中年の成人を測った家事研究とは対象も目的も違う。それでも両者を並べると、活動を「した・しない」だけで分けず、何を、どの強さで行ったのかを見る理由が分かる。[16][17]
食事と運動の担当割合を決めたいときにも、この区別が役立つ。料理は食べる準備であり、同時に体を動かす場面にもなる。だからといって、食事作りを運動欄にも入れれば、体重への寄与を割合で配分するには、別の検証が必要だ。調理の活動強度を調べた結果を、食事管理と運動の効果の配分へ読み替えないことが肝心だ。[16]
調理の数字は、作業をまとめるほど読みづらくなる
家事の実測研究で注目したいのは、料理だけの値を取り出して家庭へ配ることより、異なる活動をまとめた項目を分けようとした点である。研究者は、既存の活動表で推定値が使われていた活動や、複数の活動が同じ項目に入っていたものなどを測った。測定値への更新と項目の分離が、活動強度の正確さを高めるという結論だった。[16]
例えば、夕飯の準備を始める前に食料品を運び、その後に台所で切る、混ぜるという工程へ進んだとする。「食事作り」としてはつながった仕事でも、研究では運搬と料理を分けている。食事が完成するまでという目的の区切りと、体が何をしたかという活動の区切りは違う。日記には前者が便利でも、活動表を参照するときには後者が必要になる。[16]
また、料理、食事関連作業、洗濯、軽い掃除、水やりが同じ範囲に入ったという結果は、これらがすべて同じ動作だったという意味ではない。1.8〜2.3メッツという幅は複数の活動にまたがる結果である。その端の値を選んで「自分の料理はこの強度」と固定するより、まずどの活動群の話かを確かめるほうがよい。[16]
比較の単位もそろえたい。研究で活動を測った時間は各8分で、間には4分の休憩があった。夕飯の支度を始めてから終えるまでの記録には、調理以外の作業や中断も入りうる。開始と終了の時刻だけが分かる記録と、特定の活動中を測定した値を組み合わせるなら、中断も同じ活動として数えていないかを見直す必要がある。[16]
これは料理の途中で時計を何度も止めるよう求める話ではない。家事の記録にどこまで精密さが必要かは、目的で決めてよい。暮らしを振り返りたいなら「荷物を運んでから夕飯を作った」でも中身は伝わる。消費量を計算したいなら、どの作業にどの値を当てたかという追加の判断が生じる。短い記録を細かな数字に変えたときほど、計算に含めた仮定を忘れないようにしたい。
家事時間の調査と活動強度の測定を並べると、この区別がはっきりする。時間利用研究では食後の片づけや衣類の手入れも家事に含めた。一方、実測研究では活動を分けて酸素摂取量を測っている。両方に「家事」とあっても、調べた単位が違う。表の見出しだけを合わせず、何を数えた数字なのかまで読むことが、自宅の記録への橋渡しになる。[16][18]
数字で読む食事作りと家事の活動
家事の実測研究は22〜58歳の成人30人が対象で、実験室で活動を測定した。[16] 料理・食事関連作業・洗濯・軽い掃除・水やりは1.8〜2.3メッツの範囲だった。[16] 掃く・歩く・食料品や箱を運ぶ活動は3.0〜5.5メッツの範囲にあった。[16] 実測値と推定値の差は0.3〜2.2メッツで、多くは実測値が低かった。[16] 高齢の日本人女性143人の横断研究では、料理を移動を伴わない低強度活動の例に挙げた。[17]
初日の汗は、予約した人だけが持ち帰れる。
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