ダイエット中の運動前の食事選びで、乳由来と豆由来のたんぱく質をどう比べるか。健康な若い男女の比較試験を軸に、血中アミノ酸の増え方、胃から送り出される指標、満腹感を区別する。植物性という分類や加工の違いから、食後の待ち時間や運動のしやすさを決めつけない選び方を考える。
運動着をかばんに詰めたあと、食品の表示にある「乳由来」と「豆由来」を見比べる。「植物性なら軽そうだ」と思うが、その軽さは、胃から出る速さだろうか。それとも食べたあとの気分だろうか。
答えの芯は、乳由来か豆由来かという分類だけでは、運動前に待つ時間は決められない、である。健康な若い男女がえんどう豆由来と乳由来のたんぱく質を食べ比べた試験では、血中の必須アミノ酸の反応に差があっても、胃排出の指標と満腹感には食事による差が認められなかった。[4]
既存記事「ダイエットの魚は肉より消化しやすい?筋トレの日のたんぱく源を選ぶ視点」には魚と肉の比較を譲る。ここで考えるのは、植物性と動物性を比べた数字を、運動前の食事選びのどこまでに使えるか、という問いだ。

胃から出る速さと、血中に現れる速さは違う
胃排出とは、胃の内容物がその先へ送り出されることだ。たんぱく質をめぐる研究では、この胃の働きと、食後に血液中のアミノ酸がどう変わるかを分けて調べる。アミノ酸はたんぱく質を構成する成分であり、食後の血中反応は、胃の中身をそのまま見ている数字ではない。人を対象にした比較試験でも、血中アミノ酸と胃排出の指標は別々に測定されている。[4]
この違いは、日常の「消化がよい」という言葉をほどく手掛かりになる。食後にアミノ酸が早く増えること、胃から食事が早く出ること、本人が満腹に感じないことは、それぞれ別の問いである。同じ試験で前者に差があり、ほかの指標に差がなければ、「すべての意味で消化が速い」とひとまとめにはできない。[4]
健康な人に加え、肥満や2型糖尿病のある人を扱ったレビューでは、胃腸のホルモンの放出や胃排出の遅れに関わる仕組みと、血中アミノ酸を通じた吸収後の仕組みが整理されている。つまり、食べてから感じる満足感を、胃に残る時間だけで説明するのも単純すぎる。胃側の働きと、吸収後の反応が重なる問題なのだ。疾患のある人も含む整理なので、18〜39歳の女性の食後の感覚にそのまま当てはめるには対象の違いを考える必要がある。[14]
運動前に知りたいのは、横文字の評価が高い食品より、実際の予定に合わせて食べられるか、ということだろう。そこで論文の見出しに「吸収が速い」とあっても、まず何を測ったのかを確かめたい。採血の結果を、胃が空になるまでの時計として使わない。この区別が、食べる順番を考える出発点になる。[4][14]
初日の汗は、予約した人だけが持ち帰れる。
若い男女の試験では、豆と乳で何が違ったか
中心になるのは、健康な男女20人を対象としたランダム化クロスオーバー試験だ。平均年齢は24歳で、同じ参加者が異なる試験食を順に摂った。比較したのは、えんどう豆の濃縮たんぱく、分離たんぱく、押出加工したたんぱく、そして乳由来のホエイたんぱくである。試験食に含まれるたんぱく質量は、いずれも25gにそろえていた。[4]
濃縮、分離、押出加工という名前は、植物性の内側にも加工の異なる材料があることを示している。ここで大切なのは、肉の定食と豆の煮物をそのまま食べ比べた研究ではない点だ。調べた材料の範囲を保ったまま読む必要がある。スーパーのおかず全体に、同じ数値関係があると置き換えることはできない。[4]
試験では、空腹時と食後に採血し、血中の必須アミノ酸などを追跡した。すべての試験食で必須アミノ酸の濃度は増えたが、えんどう豆由来の試験食はホエイより低い食後反応を示した。また、えんどう豆由来の加工法同士を比べると、押出加工した材料では必須アミノ酸の反応が遅れることが示された。[4]
一方、胃排出を調べるために一緒に投与したアセトアミノフェンの血中濃度には、食事による差が認められなかった。満腹感の評価にも差はなかった。血中アミノ酸の結果だけを取り出せば違いが目に入るが、胃排出の指標と主観的な満腹感まで並べると、違い方は一様ではない。[4]
ここで「差がなかった」を、「誰が食べても必ず同じ」と読んではいけない。健康な若い男女の、この条件での比較結果である。18〜39歳の女性だけの結果として、そのまま当てはめることはできない。また、差がなかった結果を無視して「豆は胃に長く残る」とするのも逆方向の飛躍だ。差が出た項目と出なかった項目を、同じ重さで扱いたい。[4]
たんぱく質量をそろえた試験には、由来や加工を比較しやすい利点がある。ただし、運動前の食事選びに持ち帰る際には、25gという条件を推奨量に変えないことも必要だ。これは試験を組み立てるための量であり、日常のレッスン前に同じ量を食べるべきだという結果ではない。[4]
採血では、必須アミノ酸だけでなく、血糖、インスリン、尿素なども調べていた。そのうち食後の血糖、インスリン、尿素には、食事による差が認められなかった。たんぱく源が違えば、調べた代謝の指標がすべて同じ方向へ動くものではない。ひとつの食品に「速い」「遅い」と大きく書くと、この結果の凹凸が消えてしまう。[4]
もうひとつ注目したいのは、同じ参加者が異なる試験食を経験した設計だ。別々の人の普段の食生活を眺める観察研究とは、比較の組み立て方が違う。それでも、この試験の比較相手はホエイとえんどう豆材料であり、あらゆる肉料理と豆料理ではない。人で確かめた結果であることと、広く一般化できることを分けて評価する必要がある。[4]

同じ豆でも、加工で血中の反応は変わりうる
「植物性」という表示は原料の由来を示すが、食品の構造まで同じにする言葉ではない。植物性の肉様食品の加工を扱うレビューでは、水分を多く含む押出加工によって、植物たんぱく質を繊維状の肉に似た食感へ変える技術が整理されている。同時に、加工による構造の変化と、消化の際に生じる小さな断片との関係が研究対象になっている。[11]
押出加工したえんどう豆たんぱくで血中反応が遅れた人の試験と、この食品加工の視点はつながる。ただし、「加工すると必ず消化が悪くなる」という意味ではない。人の試験が示すのは、比較したえんどう豆材料の間で反応の時間経過が異なったことだ。加工一般を善悪で並べる結論ではない。[4][11]
豆類の発芽を扱ったレビューでは、発芽の過程で酵素が働き、たんぱく質自体や、消化に影響するほかの成分が変化することで、消化性が改善する仕組みが整理されている。植物由来という出発点が同じでも、加工や処理の方向によって、消化に関わる性質は変わりうる。[16]
発芽で消化性が改善する話と、押出加工品の食後反応が遅れる話は、どちらかが間違いという関係ではない。処理が違い、材料が違い、評価の対象も違う。だから「豆は遅い」「加工品は速い」という短い札を貼るより、どの食品をどう処理し、何が変わったのかを読む方が役に立つ。[4][16]
運動へ出かける前の買い物でも、この見方は使える。以前食べた豆料理と、初めて選ぶ植物性の肉様食品を、同じものとして扱わない。原料名が似ているからといって食後の感じ方まで同じと予想せず、まず食品の形や加工の違いを確認する、という選び方である。これは加工で性質が変わりうる研究を、生活の確認項目へ落とした考え方だ。[11][16]
数字を読むときは、実験の時計も確かめる
食品の消化の研究には、人が食べて採血する試験だけでなく、実験室で口、胃、腸の条件を模倣する研究もある。消化のモデルを整理した系統的レビューは、1,985件から20件の実験室研究を選び、使われた条件を比較している。植物由来を扱ったものは7件、動物由来は12件、両方を扱ったものは1件だった。[10]
このレビューでは、研究の60%が120分のたんぱく質消化の時間設定を採用していた。これは実験の条件を示す数字であり、人が肉や豆を食べたあと、120分待てば胃が空になるという数字ではない。運動開始までの待ち時間に、そのまま移してはいけない。[10]
また、65%の研究は、消化条件をそろえるための共通の静的モデルを採用していた。共通の方法で比べることは、食品間の違いを考える助けになる。一方、その実験が測ったものが分解の様子なら、それを本人の胃もたれやレッスン中の動きやすさと同じ尺度にしないことが大切だ。[10]
数字で読むたんぱく源の比較
20人:健康な若い男女が参加した、人でのランダム化クロスオーバー試験である。[4]
25g:各試験食のたんぱく質量であり、運動前の摂取目標ではない。[4]
15〜300分:試験で食後の採血を行った時間帯であり、運動開始の推奨時刻ではない。[4]
20件:消化の実験モデルを整理した系統的レビューの採用研究数である。[10]
120分:実験室研究の60%で使われた消化時間の設定であり、人の胃の待ち時間ではない。[10]
初日の汗は、予約した人だけが持ち帰れる。
1
2






