筋肉痛の痛み止めは体の中にもある?別の痛みで変わる感じ方と抑制の研究を読む

筋肉痛を強く押すと気持ちいいのは、体の痛み止めが働くからなのか。別の場所への刺激で痛みの感じ方が変わる実験と、筋肉痛でも抑制反応が変わらなかった研究を読む。徹夜を伴う場合や運動直後の反応との違いから、痛みの軽さを回復や薬の効果と混同せず、翌日の体を見直す視点を探る。

スクワットをした翌朝、椅子から立つと太ももが痛い。腰を下ろして脚を押すと、痛さの中に少し快さもある。この違いを考える鍵は、動作や圧迫で感じる痛みと、別の刺激を加えた際の抑制反応を分けることだ。健康な成人の腰に軽い筋肉痛を起こした実験では、痛む腰でも離れた前腕でも、抑制反応は変わらなかった。[10]

別の場所に痛い刺激を加えると、測っている痛みが軽くなる現象はある。健康な男女を対象に、すねの筋肉へ電気で痛みを起こし、反対側の前腕に痛い熱刺激を加えた実験では、筋肉の痛みの評価が下がった。ただし、これは翌日の筋肉痛を強く揉む方法や、鎮痛薬の効き目を調べた試験ではない。[19]

今回の問いは、筋肉痛のときにも体の「痛みを抑える働き」は残るのか、である。痛さが増しても、抑制反応は変わらない結果がある。[6][10] 離れた場所の痛覚を扱う既存記事「筋肉痛は鍛えていない場所にも響く?離れた部位の痛覚と局所の損傷を読み解く」から問いを絞り、別の刺激を加えたときの変化を読んでいく。

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別の痛みで軽くなる反応は、どう測るのか

条件刺激性疼痛調節とは、ある痛みを測る際に、別の痛い刺激を加え、その前後や刺激中で感じ方がどう変わるかを調べる方法である。研究では英字でCPMと呼ぶ。脳から下る方向の痛み調節を評価するために使われるが、日常の「気がまぎれた」という感想をそのまま点数にしたものではない。刺激を決め、同じ測定を条件を変えて比べる検査である。[2][10]

たとえば、熱による痛みを測りながら、手を冷たい水に入れる条件を加える。最初の刺激が「測る対象」、後から加える刺激が「反応を引き出す条件」に当たる。痛い刺激が増えたのに、測る対象の痛みは小さくなることがある。足し算のつもりで見ていると、体の返答は少し意外である。健康な男性25人を対象にした無作為化された反復測定の試験では、冷水による痛みでも、血流を制限して起こす筋肉の痛みでも抑制反応が見られた。男性だけの結果なので、18〜39歳の女性に同じ大きさの抑制が生じるかは、この試験からは判断できない。[2]

この試験で、測る側の熱刺激と条件となる刺激は、それぞれ120秒だった。条件となる痛さをそろえても、冷水の方が筋肉の痛みより大きな抑制を引き出した。大きな抑制が大きな血圧反応と結びつくという結果ではなかった。条件刺激の痛さをそろえても、抑制の大きさは刺激の種類で異なった。[2]

測定の基準は、熱刺激だけを加えたときの痛さである。次に、同じ熱刺激と冷水への刺激を同時に与えた条件、熱刺激と血流制限による筋肉の痛みを同時に与えた条件を比べる。いずれも基準より痛みが抑えられ、冷水の条件で抑制が大きかった。基準を置いて比較することで、条件刺激を加えた際の変化を切り分けている。[2]

前腕への熱刺激で実験的な筋肉の痛みを抑えた試験にも、測定の工夫がある。健康な40人が、痛い熱刺激を加える回と、痛くない熱刺激を加える回の両方に参加する交差比較だった。男性20人、女性20人で、女性は月経開始から12〜14日の時期に測定された。筋肉への電気刺激も強さを変えて調べている。[19]

痛い熱刺激の最中には、筋肉への電気刺激の痛みが小さく評価され、刺激後3分にも低下が残った。この条件では男女の抑制反応に差がなかった。一方、痛くない熱刺激でも、弱い方の電気刺激への評価は下がった。痛くない熱刺激による低下は、弱い電気刺激の条件で見られた。[19]

この男女差の結果は、測定時期をそろえた実験で得られたものだ。女性なら抑制が弱いと決めることも、どの時期でも男女差がないと広げることもできない。研究の対象と条件を残して読む方が、自分の体を性別だけで説明するより正確である。[19]

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筋肉痛が出ても、抑制の働きは変わらないことがある

筋肉痛が痛いと、「痛みを抑える機能まで弱っているのでは」と不安になるかもしれない。しかし、健康な成人42人を休息群と運動群に無作為に分けた試験では、翌日に軽い筋肉痛が生じても、痛みの抑制を調べる反応に有意な変化がなかった。運動群は腰の集中的な運動を行い、痛む腰と、離れた前腕の両方で測定された。[10]

この試験では、運動前、直後、翌日、さらに7日後という時間の流れの中で、CPMと、刺激がわずかに弱まったときの痛みの低下を調べる別の検査を使った。どちらも腰と前腕で有意な変化は認められなかった。局所が痛むことと、調節の検査結果が変わることを分けて観察できる設計である。[10]

ただし、ここで生じた翌日の筋肉痛は軽いものだった。この結果の適用範囲は、軽い筋肉痛が生じた条件である。著者らも、調節反応が変わるには、より強い、異なる種類の、あるいは長く続く痛みが必要かもしれないと考察している。軽い筋肉痛の結果を、寝返りもつらい状態へそのまま移さないことが大切だ。[10]

肩を使う実験にも似た結果がある。健康な56人と肩の痛みがある58人を比較し、健康な参加者には運動による肩の筋肉痛を起こした研究である。患者群を含む比較であり、18〜39歳の健康な女性の日常的な筋肉痛へ、そのまま当てはめるには対象の違いがある。健康な人は運動前と48時間後、96時間後に調べられた。肩の痛みの強さは増したが、CPMと、痛い熱刺激への反応には変化がなかった。[17]

この研究では、臨床的な肩の痛みがある人の熱刺激への反応は健康な人より高く、手術後には低下した一方、CPMは変わらなかった。熱刺激への反応とCPMでは、手術後の変化が異なった。肩の痛みが減ることと、CPMの値が変わることが必ずしも組にならない点も示されている。[17]

太ももの筋肉を対象にした反復測定研究では、女性9人を含む18人が、膝を伸ばす際に筋肉へ負荷をかける運動を行い、運動前と48時間後に測定された。平均年齢は24.6歳だった。結果は機械的な刺激への感受性の変化が中心で、熱への感受性や痛み調節機能が一様に変わるものではなかった。[6]

この研究が教えるのは、痛みをひとまとめの感度として扱わない読み方だ。この実験では、機械的な刺激への感受性の変化に、熱への感受性の変化は伴わなかった。筋肉痛を起こした部位の変化と、体全体に共通する変化を区別する必要がある。急性の筋肉痛を、慢性的な痛みの仕組みと同一視しないためにも役立つ視点である。[6]

太ももの研究では、運動の影響を痛み以外の指標でも調べている。力の低下、膝の動く範囲、遅れて生じる筋肉痛も運動による筋肉への影響を捉えるために使われた。これらと、圧や熱への反応、痛み調節の検査を並べることで、体に生じた変化のどこを測っているかが明確になる。日常の「脚がつらい」という一言の中には、研究が分けて測る複数の項目が入っている。[6]

たとえば、会社の椅子から立つときの太ももの痛さと、手で触れたときの痛さを同じ記録欄へ入れると、後で何が変わったのか読み取りにくい。研究で使う閾値は、どの程度の刺激から痛いと感じるかという境目であり、普段の動作で感じた痛みの強さそのものとは異なる。痛みへの反応を比べる前に、同じ問いを測っているかをそろえる必要がある。[6][19]

腰の試験に休息群が置かれた点にも意味がある。運動した人だけの前後を眺める場合と違い、運動しなかった人の時間経過も比較に含められるからだ。さらに評価者には群の情報を伏せ、痛む場所と離れた場所の両方を測っている。その条件で有意差がなかったことは、単に本人が「変わらない気がした」という報告より、問いが絞られた結果として読める。[10]

一方、有意差がないという結果を、全員の値が完全に同じだったという意味で受け取る必要はない。この試験が扱うのは、健康な成人が腰の運動後に軽い筋肉痛を経験した条件での比較である。手元の痛みを研究に重ねるときは、部位だけでなく、痛みの強さや測定のタイミングも一緒に見る。研究が答えた範囲を保つことで、必要以上の不安も、過剰な安心も避けやすくなる。[10]

数字で読む筋肉痛と痛みの抑制

25人:健康な男性で、冷水と血流制限による筋肉痛を条件刺激として比較した試験の対象数だった。[2]

42人:腰の運動群と休息群に分け、筋肉痛の前後で抑制反応を調べた健康な成人が参加した。[10]

48時間:太ももの運動後に、機械的な刺激と熱刺激への反応を再測定した時点を示す。[6]

30人:筋肉痛に24時間の徹夜を組み合わせ、抑制反応の低下を認めた研究には、この人数が参加した。[4]

16人:痛い運動と痛くない運動、静かな休息を比べた女性の数で、運動中の痛覚低下は両方の運動条件に見られた。[14]

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