HIITは後ろ向きに走っても同じ強度?前進との速さと脚の負担を研究で読む

HIITの走る区間を後ろ向きに替えると、同じ速さでも同じ強度になるのか。後ろ向き走と前向き走の研究から、代謝コスト、加速、膝と足裏の負荷を読み分ける。競技者の比較試験と継続したトレーニングの結果を区別し、速度の数字だけで運動のきつさを決めないための見方を示す。

トラックで走者が向きを変え、同じ距離を後ろ向きに走り出す。前進の区間をこれに替えれば、同じタイマーで同じ運動になるのだろうか。答えは、速さだけをそろえても同じ強度とは扱えない、である。後ろ向き走は前進より代謝コストが高くなる条件があり、脚の仕事の分担も変わる。[6][10]

しかも、全力で走ったときの速さは後ろ向きの方が低い。大学サッカー選手の加速を比べた研究では、後ろ向き走の速度は前進より29%低かった。遅いから軽い運動、と見切ると話がずれる。競技者での比較であり、18〜39歳の女性の日常の運動に同じ速度差を当てはめる根拠にはならない。[1]

ここではHIITの走る種目を選ぶ際に必要な、前進と後退の比較を読む。高強度の区間を繰り返すメニューの秒数を決める記事ではない。走る方向を替えたとき、何を同じにして、どこを別々に記録するべきか。その手掛かりは、息の負担と脚の負担を別の指標として扱うことにある。[6][10][19]

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同じ強度という前に、そろえた条件を確かめる

運動の強度という言葉には、移動速度、本人にとっての頑張り、体内で使うエネルギー、関節に生じる力が入り込む。後ろ向き走の研究を読むなら、この言葉をいったんほどきたい。レビューでは、後ろ向き走は歩調が増し、歩幅が小さくなり、筋活動や筋肉の働き方も変わると整理されている。前進の映像を逆再生しただけの運動ではない。[6]

たとえば、同じ距離を全力で走る比較は、同じ速度で走る比較とは違う。前者では方向ごとの到達速度も結果に含まれる。後者では、指定された速さを実現するための体の仕事を比べることになる。全力走の速度が低いという結果と、走行時の代謝コストが高いという結果は、比べている条件を確かめれば両立する。[1][10]

もう一つ、本人が「速く」と感じる程度をそろえる方法もある。男子の若年競技者を調べた研究では、自己選択したゆっくり・中程度・速い走りのいずれでも、前進の方が後退より速かった。主観的に選んだ強さと時計に出る速さは、別々に記録する必要がある。18〜39歳の女性にも同じ差が生じるかは、この男子競技者の比較では判断できない。[16]

夜のスマホで見つけたメニューに「走る」とだけ書いてあると、前後の向きを替える程度なら小さな変更に見える。しかし研究で変わるのは、進む向きだけでなく歩幅、歩調、力の出し方である。実践への読み替えとしては、方向を種目名の一部として残す方が比較しやすい。前進の記録に後退の記録を混ぜると、何が変わったかを追いにくくなる。[6][16]

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代謝コストが高いことと、消費量の保証は違う

代謝コストとは、移動のために体が使うエネルギーの負担を表す指標である。後ろ向き走と前向き走を平地と上り勾配で比べた実験では、8人がランニングマシン上で走った。勾配は0から25%まで変えられ、後ろ向き走の代謝コストは各条件で前進より高く、平均では35%高かった。[10]

この数字は、運動全体の消費カロリーが誰でも35%増える、という意味ではない。対象者が実験条件で走ったときの比較である。自分のHIITに入れる場合には、走れる速度や継続時間まで変わりうる。方向の違いによる代謝コストの差を、そのまま夕方の運動全体の消費量に貼り付けることはできない。[1][10]

この実験が調べたのは、体を動かす機械的な仕事と、代謝に必要なエネルギーの関係でもある。効率は、その仕事をどれだけのエネルギーで行ったかを示す。後ろ向き走ではどの勾配でも効率が低かった。研究者は、筋肉と腱に蓄えた弾性エネルギーの利用が小さく、筋肉が仕事の多くを担う走りだと解釈している。[10]

ばねを使うような助けが少なければ、見た目の速度が控えめでも代謝の負担が高い場合がある。ただし、効率が低いことを運動として優秀だと呼ぶ必要もない。競技で速く移動したいのか、体を動かす機会を作りたいのかで、欲しい結果は違う。実験の効率は体のエネルギー利用の性質であり、種目の総合点ではない。[6][10]

勾配にも目を向けたい。この研究では上りが急になるにつれ、どちらの方向でも効率が低下した。後ろ向きという条件と上りという条件を同時に替えれば、負担の変化を方向だけの効果とは読めない。動画の坂道走を平地走の代わりに選ぶときも、向きと地形は別の変更として考えるのが研究に沿う読み方である。[10]

全力の加速では、遅さの理由も変わる

大学サッカー選手21人を対象にした比較研究では、床に埋め込まれた力の測定装置の上を、前後それぞれの方向へ20 m全力で走った。後ろ向きの速度は前進より29%低く、加速中の水平方向への地面反力が小さいことが、短い歩幅や短い滞空時間と関係すると解釈された。地面反力とは、足が地面を押したときに地面から受ける力である。競技者の加速動作を調べた結果なので、18〜39歳の女性の運動強度をこの速度差から決めることはできない。[1]

これは、その場で頑張っていないから遅かった、という結果ではない。どちらも全力で走る課題だった。前進の全力と後退の全力は、同じ速度を指さないのである。前進のタイムを達成できないからといって、後退の区間が失敗したとは決められない。[1]

ここで大切なのは、加速の測定だという点である。止まった状態から速度を上げる局面の力を調べており、その結果を長く一定速度で走る区間にそのまま広げるべきではない。代謝コストの実験と並べるときも、加速中の速さを見た研究と、平地や勾配でのエネルギー利用を見た研究を分けておく。[1][10]

立川駅北口の夕方に人の流れを見ても、移動の速さだけで、その人の体の負担までは分からない。後ろ向き走でも同じで、映像の進み方だけでは代謝や関節の仕事を読み切れない。タイムを測るなら方向と加速の条件を添える。速さの記録は有用だが、別の走りの物差しとして無条件に共用するものではない。[1][10]

後ろ向き走の速度を考えるうえでは、慣れも無視できない。男子若年競技者34人が、ゆっくり、中程度、速いという指示に合わせて20 mを走った研究では、測定を繰り返す初期の段階に後退の成績の変化が見られた。その後の比較では、どの速さと方向でも変動係数は4.3%以下、級内相関係数は0.87以上だった。変動係数は記録のばらつき、級内相関係数は測定の一貫性を見る指標である。18〜39歳の女性でも同じ再現性が得られるかは、男子若年競技者の結果だけでは判断できない。[16]

つまり、自己選択する速さにも、動作に慣れた後には一定の再現性が得られる可能性がある。一方で、初めての後退走のタイムを完成した能力の記録として固定すると、練習への慣れと体力の変化を混ぜてしまう。動画をまねた初日の遅さを、運動能力の不足として評価しない方がよい。これは若年競技者の研究から記録の読み方へ引き出せる示唆である。[16]

同じ研究では、前進は後退より、ゆっくりの指示で26%、中程度で28%、速い指示で26%速かった。指示を強くしても前後差が消えるわけではなかったのである。ただし、この割合を誰にでも使える速度換算表にすることはできない。対象は男子の競技者であり、異なる年齢や経験の人が同じ比率を示すとする結果ではない。18〜39歳の女性への速度換算には使わず、対象内での前後差として読む。[16]

記録を比べる場面を具体的に考えよう。前向き走を測った日と、後ろ向き走を測った日で、距離だけを共通にしても、方向による速度差と慣れの差が残る。自己調整した強さの一貫性を知りたいなら、方向と指示をそろえた記録同士を見る。違う走りを混ぜた平均タイムより、何を繰り返して測ったのかが分かる記録の方が、研究結果の使い方に近い。[16]

さらに、代謝コストの実験は傾斜を変え、加速の研究は全力で地面を押す局面を調べている。実験の問いが違う以上、そこから自宅での最適な本数や休憩時間は決められない。研究の数字をメニューの命令にする前に、それが速度の数字なのか、エネルギー利用の数字なのかを言葉に戻す。この作業だけでも、遅いのにきついという感覚を矛盾として片づけずに済む。[1][10]

数字で読む後ろ向き走の比較

8人の平地・上り走の実験では、後ろ向きの代謝コストが前進より平均35%高かった。[10]

大学サッカー選手21人の20 m加速走では、後ろ向きの速度が前進より29%低かった。[1]

19人のランナーの足裏測定では、後ろ向きの速度を本人が選んだ前進速度の70%に設定した。[19]

男子若年競技者34人の自己調整走では、慣れた後の比較で変動係数が4.3%以下だった。[16]

若い女子ハンドボール選手29人の試験では、8週間の前進・後退トレーニング間で変化量の有意差はなかった。[9]

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