ウォーキングしながら仕事はできる?歩く机での入力速度と正確さを研究で読む

ウォーキングしながら入力すると仕事の正確さは変わるのか。歩く机の実験と長期の職場研究を比べ、入力成績、学習や注意、気分の変化を分けて読む。仕事全体の評価が変わらないことと、目の前の文字を同じ速さで打てることの違いから、作業を選んで取り入れる考え方を紹介する。

在宅勤務の机の下で足を動かし、画面では請求書の金額を打つ。運動と仕事を同時に済ませられたら助かるが、歩数が増えた横で訂正も増えるなら、少し考えたい。歩きながらでも、請求書の桁は正しく打てるだろうか。健康な成人を歩行群と座位群に分けた実験では、歩行群のタイピング成績が低かった。[6]

一方、職場に歩く机を導入した長期研究では、仕事の成績に変化がなかったと報告されている。[1] この違いを「研究はどちらかが間違い」と片づける必要はない。実験で測る入力と、職場で評価する仕事全体は、分けて読める。

答えの芯は、すべての仕事を歩きながら行う前提にしないことだ。入力の正確さ、考える課題、仕事中の気分、実際に使い続けられるかを、それぞれ別の問いにする。歩く机は、机と運動器具が合体したものでも、作業の割り当ては使う人が決める。

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歩く机の研究は、立つ机と同じではない

トレッドミルデスクは、立って使う机と歩行用の機器を組み合わせ、低速で歩きながら働けるようにした設備である。[1] 足を止めて立つ条件と、足を運び続ける条件を同じものとして扱わないことが、入力の研究を読む出発点になる。

机の前で姿勢を変える工夫なら、「立てる机を買ったのに、結局座っている人へ|スタンディングデスクは『立つ机』ではなく『姿勢を変える机』」が出発点になる。その先で足も動かしたくなったら、姿勢を変える話に入力中の歩行という条件が加わる。本記事で確かめるのは、そのとき文字を打ち、課題に答える成績だ。

活動しながら使う机を扱った系統的レビュー、つまり複数の研究を一定の方法で集めて検討した研究では、32件が採用された。立つ机を調べたものが16件、歩く机が15件、自転車型が1件である。仕事の成績全般には悪影響がみられないという整理だったが、コンピューター課題の成績については結果が一方向にそろわなかった。対象には学齢期の子どもと成人が含まれ、18〜39歳の女性に同じ結果が当てはまるかは、この全体像だけでは判断できない。[2]

この区別は大きい。「仕事の邪魔にならない」という紹介だけを読んでも、それが入力課題を指すのか、職場の仕事全般を指すのかは別途確かめたい。資料を読む、数値を転記する、文章を作るという日常の作業も、利用者にとってはすべて仕事である。しかし、ある指標の結果を、そのまま別の作業に広げることはできない。

立つ机と歩く机を検討した別の系統的レビューでも、仕事の成績への影響は小さいと整理された一方、健康上の有用性を包括的に評価するには研究上の隔たりがあるとされた。[4] 「良さそうな設備」と「どの作業にも同じように使える設備」は同義ではない。導入の話と入力の話を分けるだけで、期待を具体的にできる。

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ゆっくり歩く条件でも、入力成績は低下した

入力への直接的な答えになるのが、健康な成人75人を無作為に分けた比較実験だ。歩行群37人は時速1.5マイルで歩き、座位群38人は通常の机に座って、同じ認知課題とタイピングの評価を受けた。歩行群の女性は23人、座位群の女性は17人で、男女を含む健康な成人の比較である。18〜39歳の女性にそのまま当てはめるには、対象の違いを考慮する必要がある。[6]無作為に分けるのは、比較する群の条件の偏りを抑えるための方法である。[6]

歩行群はタイピングのすべての測定項目で座位群より成績が低く、差は統計的に有意だった。[6] 少なくとも、この条件で「低速なら入力への影響はない」という予想は支持されなかった。ゆっくりした足取りでも、指先の成績には差が出た。

ただし、この結果から、自分の入力速度が決まった割合だけ落ちるとは計算できない。統計的な有意差とは、比較した条件の差を偶然のばらつきだけでは説明しにくいという判断であり、すべての人が同じ程度に困るという意味ではない。研究者は、学習や入力の差を控えめなものと位置づけている。[6]

実生活に置くなら、短い返事を打つ場面と、訂正しにくい情報を入力する場面を分けて考えたい。後者を歩きながら済ませる必要があるかは、歩行の達成感とは別に判断する問題だ。これは特定の作業を試験した結果ではなく、入力成績が低下した研究から作業を選ぶための考え方である。[6]

速度だけを自己評価の物差しにしない工夫もできる。文章が早く埋まっても、読み返して修正する手間まで含めた感触はどうか。変換候補を選び直したか、打ち直しが気になったかを振り返る。研究の点数を自分で再現する必要はないが、歩けたという満足だけで入力の仕上がりまで良かったことにはしない。

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注意の正答数は減ったが、後で思い出す成績には差がなかった

同じ75人の実験では、言葉を学ぶ課題と、注意を向けて答え続ける課題も行われた。歩行群は言語課題の総学習成績が低く、注意課題でも正答数が少なかった。どちらの比較にも統計的な差が認められた。[6] この条件では、歩行による学習成績の向上は支持されなかった。

一方で、短い遅延後と長い遅延後に思い出す成績には、群間の有意差がなかった。また、課題を繰り返す中で成績が伸びる傾きにも、群による違いはなかった。[6] 学習した総量、後で思い出すこと、試行を重ねたときの伸びは、別々の結果だったのである。

仕事で「集中できた」と感じるときも、その言葉の中身を分けると役立つ。退屈せず取りかかれたのか、説明を覚えられたのか、答えを正しく出せたのか。気分の手応えだけで、すべての処理が同じように進んだとは判断しない。この研究が教えるのは、頭の働きをまとめて良い・悪いと呼ぶ粗さである。[6]

たとえば、初めて読む業務説明を頭に入れる時間と、すでに理解した文書を眺め直す時間では、自分が重視するものも違うだろう。どちらを歩行に割り当てるかは個人の試行になる。歩きながらでも覚えられるはずだと押し切るより、理解を確認する余地を残したい。

系統的レビューでも、認知機能への急性の効果は認められないという全体像と、実際のコンピューター課題では結論が定まらないという整理が並んでいる。[2] 急性とは、その場の短い時間で起きる変化のことだ。一般的な認知課題の結果を、普段の入力や長文作成に無条件で当てはめない読み方が必要になる。

長期の仕事成績と、その場の入力を読み分ける

座って働く従業員36人が通常の机を歩く机に置き換え、1年間追跡された前向き研究では、日常の身体活動量が増え、仕事の成績に変化はなかった。身体活動量は機器で測られ、導入前に比べて半年後と1年後に増えていた。[1] 女性25人と男性11人を含む職場の研究であり、18〜39歳の女性だけの結果としてそのまま当てはめることはできない。[1] 入力実験とは異なり、実際の職場で長く使う条件を見た研究である。

ただし、これは歩く机を希望した従業員を追った研究だ。[1] 無作為に分けた短時間の実験と同じ種類の証拠として扱うべきではない。職場に導入したときの成績が保たれたという観察と、その瞬間のタイピング成績が低かったという実験は、互いの結果を消し合わない。

仕事全体の評価を知りたい人と、入力を正確に済ませたい人では、知りたい答えが違う。「職場研究で成績が落ちなかったから、重要な入力も座位と同じ」と進めるのは飛躍だ。反対に、入力実験で差があったことだけで、歩く机を置く意味がないと切り捨てるのも早い。[1][6]

この職場研究での活動量は、歩数や入力文字数ではなく、加速度計による活動の単位で評価されている。導入前の1日3,353±1,802単位から、半年後は4,460±2,376単位、1年後は4,205±2,238単位になった。[1] これをキーボード作業の効率に換算することはできない。体の活動と仕事の成績は、それぞれの物差しで測られた結果なのだ。

参加者は女性25人、男性11人で、座位中心の仕事をする人たちだった。[1] 自分と似た職業という点は参考になるが、人数の内訳が似ていることだけで、自分の担当業務まで同じにはならない。毎日入力する内容や確認に使える時間を思い浮かべながら読むと、研究との距離が分かりやすい。

また、歩行実験では群を分けて同じ課題を行わせているのに対し、職場研究では机の導入後を追っている。[1][6] 比較の枠組みそのものが違うため、長期研究のほうが期間が長いという理由だけで、入力の実験結果を上書きすることはできない。知りたいのが短い入力中の変化なのか、職場に導入した後の様子なのかで、読むべき結果も変わる。

数字で読む歩く机と作業成績

75人:健康な成人を歩行群と座位群に無作為に分けた入力・認知課題の実験。[6]

時速1.5マイル:同実験での歩行条件。万人向けの推奨速度ではない。[6]

36人・1年間:仕事成績に変化がなかった職場の前向き研究の規模と期間。[1]

32件:活動しながら使う机を検討した系統的レビューの採用研究数。[2]

180人:歩行などの作業条件を無作為に割り当て、気分や成績を調べた実験の人数。[17]

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