ヨーグルトを冷凍すると乳酸菌は全部死ぬのか。発酵乳やヨーグルトアイスの保存試験から、菌が残る条件と減る条件、食感の変化を読み解く。研究用の製品と家庭で凍らせる食品の違いを押さえ、菌の生存と解凍後の硬さや滑らかさ、水分の分離を分けて考え、間食として選ぶときに確かめたい点を示す。
凍らせたヨーグルトにスプーンを入れると、いつもの柔らかさが消えている。硬くなった中身で、乳酸菌はどうなったのだろう。答えの芯は、冷凍しても生きた菌が残る場合がある、ただし凍らせる前と同じ数とは限らない、である。ヨーグルトアイスを使った食品実験では、冷凍保存後にも生きた菌が測定される一方、保存中の減少も確認されている。[19]
残るか、残らないかだけでは少し粗い。菌の種類、菌を包む材料、食品の配合によって結果は変わる。ヨーグルトの製造に使う菌の保存実験でも、温度と保護成分の組み合わせで生存や乳酸を作る能力が異なった。[4] 冷凍庫の扉は、菌の運命を一律に決めるスイッチではない。
凍らせたあとに食べる場面では、菌の生存に加え、スプーンが入る硬さや舌に残るざらつきも気になる。冷凍ヨーグルトの技術レビューは、菌の選択や発酵とともに、配合や凍結などの製造工程を扱っている。[8] 菌数と食感を分けて読むと、冷凍という操作で保てる性質と変わる性質が見えてくる。

冷凍後にも残るが、菌数は減りうる
直接の手掛かりになるのが、乳酸菌の一種であるラクトバチルス・アシドフィルスを加えたヨーグルトアイスの実験だ。菌をそのまま加えた製品と、小さな粒に包んで加えた製品を比較している。前者では、冷凍保存の開始時に約9.55だった菌数の対数値が、60日後に約7.3へ低下した。減少したあとも、生きた菌が測定されている。[19]
この結果は「冷凍すれば全滅する」という一律の見方と合わない。同時に、「冷凍しても菌は全く減らない」という見方とも合わない。生き残ることと、数を維持することは別の条件である。朝、凍った食品が同じ姿で取り出せても、その中の菌数まで保存開始時のままだと考える根拠にはならない。[19]
別の食品実験では、発酵乳のケフィアを凍らせ、解凍後に乳酸桿菌、乳酸球菌、酵母を調べている。保存中には、それぞれの数が有意に減った。伝統的な種から作ったケフィアは、市販の種を使って作ったものより、各測定時点で菌と酵母の数が多かった。同じ発酵乳の仲間であっても、出発点となる作り方を揃えずには比較できない。[5]
ケフィアの実験に使われたのは、ヤギの全乳から作った発酵乳である。一般的なヨーグルトを家庭で凍らせた試験と読み替えないことが大切だ。[5] ヨーグルトアイスの実験も、特定の菌を加え、配合を調整して作った食品が対象である。[19] どちらも冷凍中の生存を考える材料にはなるが、目の前のカップに同じ割合の菌が残るという保証ではない。
食品の研究では、結果に添えられた食品名までが条件に含まれる。「乳製品だから同じ」と一括りにすると、比較したかった違いが先に消えてしまう。冷凍後の菌を知りたいときは、まず何を凍らせた研究なのかを読む。そのひと手間が、過度な心配と過度な期待の両方を減らす。
初日の汗は、予約した人だけが持ち帰れる。
菌を包むと違う、という実験が教えること
ヨーグルトアイスの実験で注目したいのは、菌を包んだ条件である。研究者はアルギン酸の微小な粒を使い、菌を保護する形で食品へ加えた。この方法はカプセル化と呼ばれる。菌をそのまま加えた条件では保存後に菌数が大きく低下したのに対し、包んだ条件での低下は対数値で1未満だった。論文は、凍結の段階と冷凍保存中の傷害から菌を保護したと報告している。[19]
ここで読めるのは、冷たさだけで結果が決まっていないということだ。同じヨーグルトアイスという枠の中でも、菌の置かれ方を変えると、減り方が違った。保護のための材料や加工は、食品実験の付属情報ではなく、生存結果を理解するための中心的な条件になる。[19]
菌を守る工夫については、乳製品中のカプセル化を扱った構造化ナラティブレビューもある。これは複数の研究を、技術的な観点から整理した読み物である。レビューが紹介したアイスクリームの例では、50日の冷凍保存中の低下が、包んだ菌で0.61、包まない菌で0.97 log CFU/gだった。保護は認められたが、両条件で減少している。[9]
このレビューでは、結果が菌株、包む材料、加工法、食品の組み合わせに左右され、全ての評価項目で優れた方法はなかったと整理されている。また、菌と一緒に利用する素材を加えることが、追加の利点を生まなかった例もある。[9] 「何かを足すほど菌に良い」という単純な足し算は成立しない。
家庭で甘味や別の食材を加えれば、同じ保護が再現できる、と受け取るのも早い。実験では菌の包み方まで管理している。[19] 家庭で食べやすい味にする工夫と、食品工学として菌を保護する加工は、目的も確認の方法も違う。小さな容器に分けたという外側の操作だけで、菌自体を微小な粒に包んだ実験と同じにはならない。
ヨーグルトアイスの研究では、菌を包む条件だけでなく、フラクトオリゴ糖を加える割合も変えている。加えた割合は0、4、8%で、食品の酸性の程度、固形分、空気の含まれ方、固さが評価された。[19] 菌に関する数字の周りには、製品として成立させるための設計がある。店頭のヨーグルトを容器ごと凍らせる場合、この設計まで同じとは限らない。
この点は、研究を役に立たないものとして退ける理由ではない。むしろ「どうすれば菌を保ちやすいか」という問いに、保護の方法を変えて答えた実験として価値がある。[19] 読者が持ち帰るのは実験製品の再現レシピではなく、菌の生存は食品の中の環境によって変わるという理解だ。違う食品に答えを移すには、その食品でも確かめる段階が要る。
保存温度の数字は、対象と一緒に読む
ヨーグルトの製造に使われるストレプトコッカス・サーモフィルスという菌を対象に、保護成分と保存条件を比べた実験がある。エクトイン、トレハロース、スクロースを使い、凍結した場合、または凍結乾燥してから保存した場合の菌の生存、胆汁酸塩への耐性、乳酸を作る能力を調べている。[4]
この実験では、エクトインを使い、−80℃で凍結保存した条件で、菌の生存などが最もよく保たれた。凍結乾燥後の保存を比べると、−80℃、−20℃、+4℃の順で良好だった。[4] ただし、ここで比べたのはヨーグルト用の菌を保存する方法であり、完成した食品をそのまま家庭の冷凍庫へ入れる作業とは条件が異なる。
温度だけを抜き出すと、「より低温なら家庭でも必ずよい」と読めてしまう。実際には、菌の保護成分や、凍結と凍結乾燥の違いが組み込まれた比較である。[4] 数字は強そうに見えるが、対象の名札を外した瞬間に、別の話になりやすい。家庭で同じ低温を目指すための推奨値として使うべき結果ではない。
凍結乾燥は、ただ凍らせることの別名でもない。乳酸菌の保存法を扱う方法論の論文では、保護した菌液を凍結し、氷を昇華させる乾燥、残った水を取り除く乾燥へ進む工程が説明されている。生存と機能の回復を保つために、工程の条件を管理する方法である。[6] 家庭の冷凍ヨーグルトに、この保存技術の長期保存の話を重ねない。
一方、ケフィアの実験で使われた凍結温度は−8〜−14℃で、保存後の菌数を追っていた。[5] 低温の菌保存実験とケフィアの実験を並べても、温度の優劣を直接比較したことにはならない。食品も菌の集まり方も違うからだ。異なる研究の温度を順位表に並べるより、同じ研究の中で何を揃え、何を変えたのかを追う方が役に立つ。
保存法の実験では、菌が生きているかに加え、乳酸を作れるかも調べている。[4] 食品を発酵させるために使う菌なら、その働きを保つことも実用上の問いになるためだ。「生存」と「機能」という言葉を見掛けた際には、何の機能を測ったかまで読む。ここでの乳酸生成を、人の腸や運動後の回復に対する効果へ広げないことが、言葉の取り違えを防ぐ。
数字で読む冷凍中の菌
60日:ヨーグルトアイスで、添加した菌の生存を追った冷凍保存期間。[19]
約9.55から約7.3 log cfu/g:同じ実験で、包まない菌の数が変化した範囲。[19]
1未満:微小な粒に包んだ菌の、同期間の対数値の低下幅。[19]
−8〜−14℃:ケフィアの凍結試験で使われた温度の範囲。[5]
50日:レビューが紹介した、包んだ菌と包まない菌の減少を比べたアイスクリームの保存期間。[9]
初日の汗は、予約した人だけが持ち帰れる。
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