スクワットは後ろ足を台に置くと違う?股関節の抵抗と筋肉の働きを読む

スクワットで後ろ足を台に置くと、前脚の股関節にはどんな負担がかかるのか。後ろ脚が生む抵抗、上体の傾き、足場の安定性を調べた研究から読み解く。床に置く構えとの比較で言える範囲を整理し、筋肉が働いたこととヒップアップの変化を分け、練習で何を確かめるかを考える。

後ろ足を台に載せると、前脚の股関節にかかる抵抗はどこから生まれるのか。動画では軽やかに見えた動きが、自分の番になると足の置き場から難しい。前脚だけを見ていると、台に残した後ろ脚の役割を見落としやすい。

答えの芯は、台の上の後ろ脚も、前脚の股関節にかかる抵抗に関わるということだ。筋トレ経験のある男性9人が自重で行った力学研究では、後ろ脚由来のモーメントが、前脚の股関節を伸ばす働きに対する外部抵抗の大きな部分を占めた。後ろ足は、単なる飾りではなかった。18〜39歳の女性にも同じ抵抗の内訳が当てはまるかは、この男性の実験だけでは判断できない。[17]

ただし、この結果は「床に置くより必ずお尻が大きくなる」という答えではない。股関節にかかる力、動作中の筋活動、続けたあとの筋肉や見た目の変化は、別々に確かめたいものだ。上体や足場を変えた研究も、この区別をすると練習の選択に役立つ。[2][4][13][17]

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後ろ足を上げる問いを、床でずらす問いと分ける

ここで扱うのは、足を前後に開き、後ろ足を台などに支持させてしゃがむブルガリアンスクワットである。研究ではブルガリアン・スプリットスクワットとも呼ばれる。前脚の股関節や膝がどう働くかを、後ろ脚の支持や上体の条件と合わせて調べる対象になっている。[1][2][17]

すでに公開している「スクワットは片足を少し後ろへ置くと違う?前後にずらした構えと脚の分担を読む」には、足をずらす構えそのものの話を譲る。この記事の中心は、後ろ足を高い支持面に置いたとき、後ろ脚が前脚の股関節にどう関わるかである。重りの載せ場所や反復回数の工夫とも、分けて考える。

比較相手にも注意が要る。筋トレ経験のある男性を対象にした力学研究は、ブルガリアンスクワットと、両足を床につけるバックスクワットを比べている。足を前後に開いたまま、後ろ足を床に置くか台に置くかだけを入れ替えた比較ではない。そこで生じた差は、種目全体の条件の違いとして読む。18〜39歳の女性で同じ関節の分担になるかは、男性の結果から確定できない。[4]

たとえば上体を起こしたまま行う場面と、少し前へ傾けて行う場面でも、筋活動や後ろ脚由来の抵抗は変わる。台の有無を見たいのに、同時に姿勢まで変えてしまえば、何が違いを生んだのかが曖昧になる。研究を読む際も、自分の練習を振り返る際も、変えた条件を言葉にしておきたい。[2][17]

「床でできたから、次は台」という順番を、自動的な昇級試験にする必要はない。まず知りたいのは、どちらが上級かではなく、何を比較しているかである。今回の研究からは、台を使った種目の中にも複数の条件があり、それぞれの筋肉や関節の働きが一様ではないことが分かる。[1][2][17]

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後ろ脚は、前脚を助けるだけの脚ではない

筋トレ経験のある男性9人を対象にした研究では、自重のブルガリアンスクワットを、広い構えと狭い構え、前傾の異なる条件で実施した。動作を記録する装置と、足が支持面に加える力を測る装置を使い、前脚の股関節を伸ばすために必要な力学的な働きを分析している。18〜39歳の女性への適用には、性別に加え筋トレ経験や構えの違いを考える必要がある。[17]

ここでいうモーメントとは、関節を回そうとする力の働きである。研究は、頭・腕・胴体の重さが生むモーメントと、後ろ脚由来のモーメントを分けた。後ろ脚由来の成分は、前脚の股関節を伸ばす働きに逆らう外部抵抗として扱われている。「支えに載せた脚だから前脚の負担を軽くするだけ」という見方では、この構造を捉えにくい。[17]

広い構えでは後ろ脚由来の抵抗が76〜86 Nm、狭い構えでは49〜71 Nmだった。Nmは、力と回転の中心からの距離を合わせて表す単位だ。頭・腕・胴体と後ろ脚から生じる外部抵抗の合計に対して、後ろ脚由来の成分は、広い構えで70〜97%、狭い構えで62〜98%を占めた。[17]

この割合を「体重のほとんどを後ろ脚に預けている」と読み替えてはいけない。測っているのは、前脚の股関節に対してどんな回転方向の抵抗が生じるかであり、左右の足に何割ずつ体重が載るかという数字ではない。割合の大きさだけを取り出すと、練習のイメージが逆になってしまう。[17]

狭い構えでは、上体がより起きるほど後ろ脚由来の抵抗が有意に増えた。また、後ろ脚由来の成分と頭・腕・胴体由来の成分を合わせた値は、前脚の股関節を伸ばす正味のモーメントとよく一致した。研究者は、この一致を、提案した力学モデルを支持する結果としている。[17]

つまり、「お尻を使いたいなら、とにかく深く前傾する」という一本道ではない。少なくとも、この自重での実験では、上体を起こすことと、股関節の抵抗をなくすことは同じではなかった。ただし、経験のある男性の限られた条件で得られた結果であり、誰にでも同じ足位置を指定するための寸法表ではない。[17]

夕方の立川駅北口で見た動画を思い出し、家の椅子に足を載せる。そのとき「前へ倒れないとお尻は働かない」と急いで姿勢を作るより、後ろ脚と胴体の両方が前脚の股関節に関わると理解しておくほうが、観察する場所が増える。見た目の角度だけでは、抵抗の内訳までは分からないのである。[17]

股関節中心でも、膝が休んでいるわけではない

筋トレ経験のある男性20人、平均年齢24.20歳を対象にした研究では、ブルガリアンスクワットとバックスクワットの足首・膝・股関節の力学を比べた。負荷条件は、バックスクワットが最大挙上重量の70%、ブルガリアンスクワットが35%である。最大挙上重量とは、1回持ち上げられる最大の重さを指す。18〜39歳の女性に同じ分担や負荷設定が適するかは、この男性の比較からは決められない。[4]

調べたのは、関節の正味のモーメント、動作中に行った仕事、関節の動きの大きさなどだ。どちらの種目でも、股関節のモーメントに関する指標や仕事は、足首や膝より大きかった。研究者は両方を、股関節の働きが中心となる運動として位置づけた。「両脚なら膝、台を使えば股関節」ときれいに二分される結果ではない。[4]

一方、関節どうしの分担は同じではなかった。ブルガリアンスクワットでは、膝のモーメントの時間的な積み重ねと最大値は、足首より小さかった。バックスクワットでは、膝のモーメントの時間的な積み重ねが足首より大きい。足首と膝が行う仕事についても、ブルガリアンスクワットでは統計的に同程度だったが、バックスクワットでは膝のほうが大きかった。[4]

種目間で比較すると、膝関節の最大の動きはブルガリアンスクワットで小さく、その標準化した差は0.82だった。これは膝が曲がる角度の差を度数で表したものではなく、差を共通の物差しに直した効果量である。足首と股関節の最大の動きには、有意な種目間差がなかった。[4]

この研究が支えるのは、使った負荷と動作条件で関節の分担が異なった、という理解だ。膝の関与が比較的小さい結果を、膝に痛みがあっても自分の判断で行えるという許可にはできない。痛みや治療中の問題があるなら、運動の選択は医師に相談する必要がある。

「股関節に効く」という言葉は便利だが、股関節だけを使うという意味にすると乱暴になる。しゃがんで立つ動作の中で、足首・膝・股関節がそれぞれ役割を持ち、その比重が変わる。この分担として読むと、太ももにも負担を感じたことを、ただちに失敗と決めなくて済む。[4]

負荷の数字も、そのまま日常の処方にはならない。この比較で使われた70%と35%を見て、台を使えば誰でも重さを半分にすべきだと決めるのは早い。研究では練習と最大挙上重量の測定を経て条件を設定している。自宅で持つ荷物の重さに、その割合だけを移すと、測定の前提が抜け落ちる。[4]

さらに、関節の仕事が大きいことと、翌日に強い筋肉痛を感じることを同じ採点表にはできない。ここで比較されたのは、動作中の関節の力学である。練習後の感覚を記録するのはよいが、その感覚から研究のモーメントや仕事の値を逆算することはできない。自分の感想と、装置で測った指標を別々に置く読み方が必要だ。[4]

後ろ脚由来の割合にも同じ注意が当てはまる。70〜97%という幅は、広い構えの実験条件で得られた範囲であり、自分が目指す達成率ではない。高い割合になるほどよいフォームだと競う数字でもない。何に対する割合かを押さえると、大きな数字を見ても動作を急いで変えずに済む。[17]

数字で読む後ろ脚と股関節

9人:後ろ脚由来の抵抗を検証した、筋トレ経験のある男性の人数である。[17]

76〜86 Nm:広い構えで測られた、後ろ脚由来のモーメントの範囲である。[17]

70〜97%:広い構えで、調べた外部抵抗の合計に占めた後ろ脚由来の割合である。体重配分ではない。[17]

20人:両脚のバックスクワットと関節の分担を比較した男性の人数である。[4]

21人:上体と支持条件による筋活動の違いを調べた女性競技者の人数である。[2]

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