食事を我慢する人ほど太る、という話はどこまで本当か。抑制的な食べ方を調べた長期追跡、食事実験、体重管理のレビューを照らし合わせる。体重が増えたために抑え始める可能性、短期の食べ過ぎと長期の体重の違いを知り、厳しさだけで自分の食べ方を採点しないための視点を示す。
7年間追っても、食事を抑える意識の強さは、その後のBMI変化と関連しなかった。フィンランドの成人研究が示したのは、むしろ開始時のBMIが高いほど、後から抑制が強まるという順番だった。食事に気をつける人の体重が高くても、我慢が体重を増やしたと即断はできない。[11]
一方、若い女性50人を1年間追った研究では、抑制の強さが後の体重増加を予測した。成人を長く追った結果と、特定の若い女性を調べた結果は一致していない。「我慢は全部逆効果」と決める前に、誰のどんな食べ方を測ったのかを見ておきたい。[11][12][13]

抑える意識と、実際に減った食事量を分ける
抑制的な食べ方とは、体重を調整するために食事摂取を意識的に制御しようとする傾向である。日常語の「我慢」には、量を考えて選ぶことも、食べるたびに失敗を恐れることも混ざっている。研究上の食事抑制も、減量のための食事療法そのものとは区別して考えられている。[3][14]
たとえば、菓子を食べる前に量を考える人と、食べた後でいつも後悔する人は、どちらも「食事を気にする」と答えるかもしれない。これは生活を整理するための例であり、質問票の正式な採点例とは異なる。押さえたいのは、意識を尋ねた回答だけから、実際の摂取量や継続の状態まで決めつけないことである。食事抑制の概念を整理したレビューも、抑制と食事パターンの関係を細かく検討する重要性を指摘している。[3]
研究で使われる質問票にも違いがある。女子大学生の食事実験では、食事への懸念と体重変動という、異なる側面を表す尺度が使われた。どちらの側面で分類するかによって、体重や食事摂取との関係の現れ方が違っていた。抑制の得点が高いという言葉だけでは、何に困っている集団を見ているのかが十分に伝わらない。[15]
その点で、「厳格な管理より柔軟な管理がよい」という分かりやすい説明にも注意したい。ここで扱う研究からは、厳格さと柔軟さを比べた減量幅を示すことはできない。まず確かめられるのは、食事を制御する行為を一括して有害とする見方には限界がある、という点である。検証された体重管理プログラムの一部として行う抑制について、摂食上の問題の増加と結びつかないとしたレビューがある。[3]
これは「もっと我慢すればよい」という結論とも違う。買う量を考える、食べる場面を選ぶ、食べ過ぎやすい状況を知るといった生活の調整と、どれほどつらさに耐えたかという採点を分けたい。食事の自己調整を検討したレビューでは、長期の体重維持に成功する人に、食事を継続的に把握し制御する努力がみられると述べられている。努力があることと、苦痛が大きいほど成果がよいことは別の主張である。[14]
初日の汗は、予約した人だけが持ち帰れる。
体重が増えたから、抑え始めた可能性
フィンランドの前向き研究では、開始時に25〜74歳の5,024人を調べ、その後の追跡には3,735人が参加した。前向き研究とは、最初の状態を調べてから時間を追って変化を確かめる方法である。ここでは食事抑制と、体格指数であるBMIや腹囲の変化を検討した。[11]
開始時の食事抑制は、その後7年間のBMI変化と関連しなかった。解析の係数は0.00、95%信頼区間は−0.01〜0.02である。信頼区間は、推定の不確かさを表す範囲であり、この数字を減った体重のkgに読み替えることはできない。一方、開始時のBMIが高いほど、その後に食事抑制が強くなる関係がみられた。こちらの係数は0.08、95%信頼区間は0.05〜0.11だった。[11]
著者らは、成人の食事抑制が将来の体重増加を引き起こす要因というより、過去の体重増加の目印になっている可能性を示している。腹囲でも似た結果が得られた。追跡時の体格情報には実測と自己申告が含まれるため、全員を同じ方法で測った試験と同じ確かさで扱うことはできない。それでも、抑制と体重の関係を時間の順に調べた点に価値がある。[11]
別の縦断研究でも、成人466人と青少年271人を募り、2年間の食行動と体格の変化を調べた。最初の認知的抑制、つまり意識して摂取を制御する傾向は、その後の体脂肪関連指標の変化を予測しなかった。BMI変化との関係の検定では、成人でP=0.79、青少年と若年成人でP=0.57だった。反対に、最初のBMIが高い人ほど、後の抑制が強くなる関係があった。[13]
この2年間の研究では、体格をBMIだけで評価せず、腹囲、4か所の皮下脂肪の厚さの合計、体脂肪率も測定した。食行動の質問も、認知的抑制に加えて、制御できない食べ方と感情に伴う食べ方を含んでいた。解析では成人と青少年を分け、年齢と性別、青少年では思春期の発達段階も考慮した。食事への意識と複数の体格指標を、開始時と2年後の両方で照合した結果なのである。[13]
同時点で比べると、標準体重の人では抑制が強いほどBMIが高い関係もみられた。ところが、それを時間を追って見た答えは「抑制が強いから後で体重が増えた」とはならなかった。同じ研究の中でも、今の並び方と、その後の動き方は違うのである。写真で隣に写ったことと、相手をそこへ連れてきたことは区別したい。[13]
フィンランドの研究は、肥満に関わる遺伝的な傾向も検討した。遺伝的リスクの高い人ほど、若い頃から研究開始時までに体重が増える傾向があり、その関係は抑制の弱い人でより強かった。ただし、著者らはこの結果の再現を求めている。遺伝的リスクの指標も、その後のBMIや腹囲の変化を予測しなかった。抑制を悪者にする材料だけでなく、ある条件では適応的な対応かもしれないと考える材料も、同じ研究に含まれている。[11]
ただし、反対の結果もある。減量に取り組む若い女性50人を対象に、空腹条件で脳活動を調べてから1年後を追った研究では、開始時の抑制得点が高いほど、その後の体重増加が大きかった。食物への報酬や抑制制御に関わる領域の活動との関連も検討された。食物の報酬とは、食べ物に感じる魅力や価値に関わる働きである。[12]
この結果は、若い女性の特定の状況では抑制が将来の増加と結びつく可能性を示す。ただし、脳活動の関連を見つけたことだけで、我慢が脳を変え、体重を増やす経路まで証明したことにはならない。広い年齢層の成人を含む研究との違いを残したまま読むべき結果である。自分に当てはめるときは、「抑制は善か悪か」より、どんな対象をどんな条件で追ったかを先に見る。[11][12]
食事実験では、反動が出る条件も出ない条件もある
「控えていた人は、きっかけがあると食べ過ぎる」という考えを支える実験はある。女子大学生102人を調べた研究では、半数に高エネルギーのミルクシェイクを与えた。食事への懸念を表す尺度で分類すると、事前に飲んだ抑制的な人は、抑制的でない人より昼食の摂取量を多く報告した。一方、飲まなかった条件では、抑制的な人の昼食は少なかった。[15]
同じ「食事を抑える人」でも、事前に何を摂取したかで昼食の結果が違う。この実験は、抑制の強い人がいつでも多く食べるという話には収まらない。さらに、昼食やその日の自己申告摂取量の違いを、長期の体重増加そのものと同一視することもできない。食卓で起きた反応を捉える実験と、暮らし全体の体重変化を捉える追跡には、それぞれ別の役割がある。[15]
逆に、反動的な食べ方が確認されなかった実験を紹介するレビューもある。高エネルギーの事前摂取から60分後にビュッフェを出した条件や、3時間後にパスタの食事を出した条件では、抑制的な人の反動的な摂食はみられなかった。食欲への抑制の影響は複雑だというのが、そのレビューの結論である。反動が出る実験だけを抜き出すと、この違いが消えてしまう。[17]
日常に置き換えるなら、会食の前に何を食べたか、どんな選択肢があったか、昼食だけの話かその日の話かを分けて振り返る方法が考えられる。ただし、これは研究の読み方を暮らしの観察に移した例であり、会食前の特定の食品や待ち時間を勧める根拠にはならない。研究の条件は、反応が違った理由を考える手掛かりである。[15][17]
数字で読む食事抑制と体重
5,024人:フィンランドの成人追跡研究の開始時人数。追跡参加者は3,735人だった。[11]
7年間:開始時の抑制がBMI変化と関連しなかった追跡期間。係数0.00の95%信頼区間は−0.01〜0.02だった。[11]
50人:若い女性の脳活動と体重を調べた研究の対象。抑制得点は1年後の体重増加を予測した。[12]
102人:女子大学生の食事実験の対象。事前摂取の有無で、抑制的な人の昼食の結果が違った。[15]
23研究:小児の体重管理を検討した系統的レビューの研究数。長期データの少なさも指摘された。[9]
初日の汗は、予約した人だけが持ち帰れる。
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