女性が植物性プロテインを選ぶとき、えんどう豆はホエイの代わりになるのか。筋トレを続けた試験と、飲んだ直後の血中アミノ酸、筋肉の合成、運動後の回復を分けて比較する。有意差なしの読み方や男性中心の研究の限界も確かめ、原料名だけで決めず、日々の食事と運動に合わせて選ぶ視点を示す。
シェイカーに粉を入れる前に、袋の「えんどう豆」という原材料表示で手が止まる。乳由来のホエイにするか、えんどう豆由来の植物性にするか。「植物性を選ぶと、筋トレが無駄になるのか」が気になるなら、その心配を支持しない比較試験がある。運動習慣の少ない健康な成人が筋トレと併用した試験では、筋力や筋肉量の変化に両者の有意な差はなかった。[3]
比較する項目によって、結果は異なる。飲んだあとの血中アミノ酸ではホエイが高くなる試験があり、長く筋トレを続けた成果とは結論の見え方が違う。血液のグラフと、重りを動かす力は別の測定である。[5][19]
えんどう豆は代替候補になり得るが、「女性なら植物性が優れる」「ホエイとあらゆる点で同じ」とまでは言えない。[3][5] 大豆との比較は既存記事「女性の筋トレにソイプロテインは向いている?乳由来との比較で選ぶ前に読む」に譲り、ここではえんどう豆とホエイを、測った成果ごとに見比べる。

筋トレを続けた試験では、えんどう豆も候補になる
まず見るのは、飲んだ直後の反応より生活の目的に近い試験だ。運動習慣の少ない成人をえんどう豆群とホエイ群に無作為に分け、筋トレと組み合わせて84日間比較した研究がある。無作為化比較試験とは、参加者を偶然の割り当てで分け、条件の違いを比べる研究である。この試験では、握力、上半身、下半身を含む全身の筋力と、体組成などを調べた。[3]
全身の筋力の改善はえんどう豆群で16.1%、ホエイ群で11.1%だった。ただし、筋力の変化にも筋肉量にも群間の有意差はない。えんどう豆群の改善は統計的に有意で、ホエイ群は有意ではなかったが、この違いだけを使って「えんどう豆が勝った」と読んではいけない。群内で開始前と比べることと、群どうしの変化を比べることは別の問いだからだ。[3]
この試験が支えるのは、筋トレを行う健康な成人にとって、えんどう豆がホエイの現実的な代替候補になるという判断である。飲むだけで同じ変化が起きるという話にはならない。比べたのは、運動と補給を組み合わせた生活である。[3] 通勤帰りに筋トレを再開し、食事に何を足すか迷っている人には、原料の順位よりこの条件が参考になる。
もう少し細かく見ると、若い男性161人が上半身の筋トレを12週間行った試験もある。えんどう豆、ホエイ、プラセボに分け、たんぱく質またはプラセボを1回25g、1日2回摂った。男性対象の結果なので、18〜39歳の女性に同じ筋肉の変化が起こるかは、この試験だけでは判断できない。プラセボは比較のための対照であり、ここでは飲料を使う条件をそろえる役割を持つ。[5]
測ったのは上腕二頭筋、いわゆる力こぶの筋肉の厚さと筋力だ。筋肉の厚さは時間とともに増えたが、全体の群間差は有意ではなかった。開始時の筋力が低い参加者に絞った解析では、厚さの増加はえんどう豆20.2%、ホエイ15.6%、プラセボ8.6%で、えんどう豆とプラセボの間に有意差があった。一方、えんどう豆とホエイの差は認められていない。[5]
この部分集団の数字を、女性全体の筋肉の増え方として使うことはできない。対象は18〜35歳の男性で、上半身の筋トレを行った集団である。また、筋力そのものは時間とともに伸びても、群間の有意差はなかった。[5] 商品の比較表に載せるなら、伸び率の大きな数字だけでなく、誰の、どの筋肉を、どの条件で測ったかまで同じ欄に置きたい。
ここでの「差が見つからなかった」は、どんな人にも完全に等しいことの証明ではない。それでも、えんどう豆を選べば必ず成果が劣るという主張には、この直接比較の結果は合わない。[3][5] 買い物の選択肢を狭めない根拠にはなるが、原料を変えれば今の筋トレが急に伸びると期待する根拠にはならない。
初日の汗は、予約した人だけが持ち帰れる。
血中アミノ酸の高さと筋肉の成果を分ける
なぜ、ホエイのほうが優れているという説明も見かけるのか。測る時点と項目が違うからである。若い男性50人を対象に、片脚の筋トレ後、えんどう豆、ホエイ、昆虫由来のたんぱく質を比べた無作為化試験では、飲んだあとの血中アミノ酸濃度はホエイのほうが高かった。若い男性の反応であり、18〜39歳の女性でも同じ差が出るかは別に検証する必要がある。[19]
同じ試験で、筋肉内の合成に関わる情報伝達経路であるmTORC1の活性化には、たんぱく源による差がなかった。運動した脚でも、運動していない脚でも同様だった。[19] 血中に材料が多く現れたことと、筋肉の中の合図に差が出ることは同義ではない。さらに、その合図を測った結果だけで、将来増える筋肉の量まで決めることもできない。[5][19]
筋たんぱく質合成とは、筋肉のたんぱく質が新しく作られる過程である。健康な成人が筋トレ後にたんぱく質を摂った51試験を扱う系統的レビューとネットワークメタ分析は、この短時間の合成を比較した。ネットワークメタ分析は、複数の比較をつないでたんぱく源どうしを検討する方法である。[1]
この解析では、えんどう豆と乳由来のたんぱく質は、推定される急性の筋たんぱく質合成の順位が近かった。ただし、統計的に有意な効果が認められたのはホエイだけで、根拠の確実性は低〜中程度とされた。研究数の少ないたんぱく源には慎重な解釈が求められている。[1] 順位表の上にあることと、効果が確かだということも別である。
この整理なら、直接比較の筋トレ試験と短時間の解析を無理なく並べられる。えんどう豆の長期的な代替可能性を示す結果がある一方、急性の合成反応ではホエイを支持する統計的な結果もある。[1][3][5] どちらかを消して単純な勝敗にするより、自分の目的に近い測定を先に読むほうが役立つ。
この解析の推定値に添えられた区間にも注目したい。えんどう豆の平均差は0.05%で区間は−0.02〜0.11%、ホエイは0.02%で0.01〜0.04%だった。これは筋トレ後の時間あたりの合成率を扱う値で、筋肉量がその割合だけ増えるという意味ではない。えんどう豆の区間はゼロをまたいでおり、推定値の大きさだけでは効果の確かさを判断できない。[1] 店頭でよく見る大きな数字と同じ感覚で読まず、測定の単位と不確実性を一緒に受け取ることが必要だ。
たとえば「今日の補給で血液中にどう現れるか」を知りたいなら急性試験、「筋トレを続けて力がつくか」を知りたいなら継続試験を見る。同じプロテインの比較でも、質問を変えると必要な研究が変わる。[1][3][19] シェイカーの中身に迷っているときほど、先に自分が何を比べたいのかを言葉にしておきたい。
女性の選び方では、対象と食事の条件も読む
女性向けの記事として見落とせないのが研究対象だ。上半身を鍛えた12週間の試験と、筋トレ後の情報伝達を測った試験はいずれも男性が対象である。[5][19] その結果を、運動習慣も食事も異なる女性の結果としてそのまま紹介することはできない。「女性に関係する選択の参考」と「女性で確定した効果」を区別して読む必要がある。
食事全体に近い条件を調べた研究もある。50〜70歳の27人を対象とした無作為化試験では、ホエイを加えた動物性中心の食事と、えんどう豆を加えた植物性中心の食事を10日間比べた。たんぱく質はどちらも1日あたり体重1kgにつき1.0gとし、片脚の膝を伸ばす筋トレを隔日で行った。中高年対象の結果なので、18〜39歳の女性の合成反応にそのまま当てはめるには年齢の違いを考慮する必要がある。[4]
運動した脚では、していない脚より日々の筋たんぱく質合成が高かったが、たんぱく源による群間差はなかった。筋力や筋肉の構造にも、この期間で変化は認められていない。[4] これは原料を交換した食事での短期の反応を示す結果であり、若い女性の長期的な筋肉量の予測とは分けて受け取るべきである。
この研究の摂取量は、比較条件を理解するための数字だ。読者全員に同じ量を勧めるための基準ではない。[4] 今日の夕食、普段の運動、選んだ製品をいったん横に並べ、粉末の原料だけを独立した問題にしない。昼食が変わった週に商品も変えれば、あとで何が自分に合ったか振り返りにくくなる。
数字で読むえんどう豆とホエイ
84日間:運動習慣の少ない成人の比較で、筋力・筋肉量の変化に群間の有意差はなかった。[3]
161人:上半身の筋トレを12週間行った比較試験の参加者数で、全員が男性だった。[5]
25gを1日2回:同試験の補給条件であり、女性全員への推奨量ではない。[5]
51試験:筋トレ後の急性の筋たんぱく質合成を扱ったネットワークメタ分析の対象数である。[1]
27人・10日間:食事の主なたんぱく源と片脚の筋トレを比べた中高年の試験の規模と期間である。[4]
初日の汗は、予約した人だけが持ち帰れる。
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