生理中のダイエットは同じ食事でも腹持ちが違う?周期と胃の排出を読み解く

生理前後にいつもの朝食で満腹になる日と、早く空腹になる日は何が違うのか。胃から食べ物が出ていく速さを測った研究を、健康な女性の固形食と飲料の実測を中心に、測定方法の違いを分けて読む。結果の食い違いを踏まえ、食べやすかった献立や空腹を感じた時刻を、次の食事選びに生かす方法を考える。

朝食の茶碗もおかずもいつもと同じなのに、今日は片づけが終わるころからお腹がすく。別の日には、同じ量で昼まで重たい。「生理のせいか、それとも食べ方が悪かったのか」と考える朝である。

月経周期によって胃から食べ物が出ていく速さが変わる可能性はある。ただし、固形食では黄体期に遅かった研究と、差がなかった研究があり、糖の飲料では卵胞期に遅かった試験もある。「生理前は必ず腹持ちがよくなる」とは決められない。[5][9][14]

さらに、胃の中に残る量と、自分が感じる満腹感は同じ測定ではない。胃の電気活動に周期差があっても、症状には差がなかった研究もある。[10] 食欲や体重全般は既存記事「月経周期とダイエットの科学 食欲が増える日と体重が動く朝をどう読めばよいか」に譲り、ここでは食後の胃と腹持ちの間を見ていく。

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胃に残る時間と、腹持ちのよさを分ける

胃排出とは、胃の内容物が先へ送り出されることを指す。本記事で扱う研究では、胃に残った食事を画像で追う方法や、呼気から排出時間を調べる方法が使われている。[2][12] これは「食べてから次にお腹がすくまで」を時計で測ることとは違う。日常語の腹持ちには便利な曖昧さがあるが、論文を読むときには、そのまま使うと測った対象を取り違えやすい。

例えば「半分が出るまでの時間」は、食事のすべてが胃からなくなる時間ではない。米と卵を用いた多施設研究では、この半排出時間のほか、排出が本格的に始まるまでの時間、食後に残る割合も別々に求めている。[12] 同じ胃の働きでも、どこを切り取った数字かによって意味が変わる。半分が出た時刻を、そのまま間食が必要になる時刻に置き換えることはできない。

食卓でまず区別したいのは、食べている途中に満腹になったのか、食後に重く感じたのか、それとも空腹が早く来たのかである。これは食べ方を振り返るための言葉の整理だ。空腹感を時間ごとに測る実験と比べる際にも、食後のどの時点の感覚なのかが分かると対応を考えやすい。同じ朝食の後に空腹感を追った研究も、食事と感覚を別に測定している。[2]

月経周期の呼び方にも注意が要る。研究では卵胞期と黄体期を分けて比較しており、月経が始まった日を起点として測定日を決めたものもある。[17] 出血している最中の体調を知りたいのに、黄体期の結果だけを持ち出すと、知りたい場面からずれる。「生理中」という検索語と、研究の比較期間が一致しているかを確かめたい。

同じ朝食を使って、月経期、卵胞期、黄体期を調べた研究もある。自然な月経周期のある女性9人が各時期に実験室で朝食を食べ、食後4時間の呼気、血液、空腹感を調べた。その後、自由に食べる昼食の摂取量も測定している。[2] 食事をそろえてから胃の排出と感覚を別々に追う設計は、朝食の量だけでは食後の状態を説明しきれないという問いに近い。

この研究では、食欲の調節に関わるペプチドであるPYYと胃排出時間が周期によって変化し、胃排出時間と卵巣ホルモンの値に関連が認められた。[2] ただし、ホルモンとの関連を見つけたことは、食欲を自由に操作できる方法を得たことではない。研究が測った関係と、食卓で実行する方法を同じ段階の話にしないことが大切である。

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固形食が遅かった研究を、数字の中身から読む

米を使った食事なら、自分の朝ごはんに近いと感じるかもしれない。タイの多施設研究では、健康な参加者に米と卵の食事を食べてもらい、放射性の目印を画像で追うシンチグラフィという方法で胃排出を調べた。研究を完了したのは189人で、うち女性は99人、全体の年齢は43±14歳だった。[12] 健康な男女と中年層も含む集団で検査の基準値を調べた研究であり、18〜39歳の女性にその数値をそのまま当てはめるには対象の幅に注意が要る。

食事は267 kcalの米と卵に水100 mLを添えたものだった。女性のうち黄体期にあたる群では、胃の内容が半分になる時間の中央値が85分で、卵胞期の群は69分だった。5〜95パーセンタイルの範囲はそれぞれ66〜102分、50〜120分であり、周期の群間差は統計的に有意だった。[12] 平均的な方向だけでなく、値の範囲が重なっている点も読んでおきたい。

ここから「黄体期の自分は必ずこの時間だけ長持ちする」とは考えられない。これは周期の異なる群を比べた数字で、個人の次の食事を予測する時刻表ではない。[12] 米を使っていることは身近さにつながるが、駅で買ったおにぎりと、自宅の夕食と、検査用に整えられた食事を同じ条件として扱う理由にはならない。

別の前向き観察研究では、健康な女性24人について、卵胞期と黄体期に胃の超音波検査を行った。固形食から6時間後、胃が満たされていると判定されたのは黄体期で6人、卵胞期ではいなかった。この差は統計的に有意だった。一方、液体摂取から2時間後の比較では有意差がなかった。[9] 固形食と液体を一括して扱うと、肝心の違いが消えてしまう。

この研究が問題にしたのは、麻酔に伴う胃内容物の誤嚥に関係する胃の状態である。[9] したがって、検査で「胃に残っている」と判定されたことを、「心地よく満足していて、おやつが欲しくない」と翻訳してはいけない。画像は胃の中を見ているが、その人の昼休みの気持ちまで撮影しているとは決まらない。

固形食で遅かった結果は、同じ量でも胃の中の経過が異なる可能性を示す。しかし、だから食事を減らすべきだ、あるいは満腹感が長ければダイエットに有利だ、という結論を加えるのは飛躍である。[9][12] 胃の排出を調べる研究の問いは、食後に内容物がどう移動したかである。食事の良し悪しを採点した研究として読む必要はない。

糖の飲料では逆方向、差がない研究もある

糖を含む飲料を使った試験では、固形食の研究と違う方向が見えた。健康でやせ型の女性9人が、卵胞期に2回、黄体期に1回検査を受けた。300 mLの糖の飲料を飲み、90分間、胃排出、血糖、ホルモン、空腹感を測った後、自由に食べられる食事の摂取量を調べている。[5] 食事の形も、観察時間も、米と卵の研究とは異なる。

結果は卵胞期のほうが胃排出が遅く、空腹感とその後のエネルギー摂取量も低かった。血糖、GLP-1、インスリンの値も卵胞期で低く、卵胞期に繰り返した検査の間には差がなかった。[5] GLP-1はこの試験で調べたホルモンのひとつである。特定のホルモンの名だけから満腹感を予想するより、胃に残る量と複数の測定値を合わせて読む必要がある。

胃に残っている糖の飲料が多いほど、後の摂取量や血糖などが低いという逆方向の関連も認められた。[5] ただし、関連があることと、胃の排出を遅らせれば誰でも望む食べ方になることは別である。この少人数試験から、普段の食事を飲料に置き換える方法や、周期別の献立を導くことはできない。

周期差が認められなかった研究も、無視できない。卵胞期の女性50人、黄体期の女性50人と男性100人を比較した研究では、消化できる固形物、液体、消化できない固形物を調べた。女性の周期の群間では、いずれの胃排出にも有意差がなかった。[14] 男性も含む研究だが、18〜39歳の女性について考える際は、女性の周期群同士を比べた結果を区別して読む。 「何を測ったかが違うから」で、差のない研究をすべて片づけることも適切ではない。

同じ女性を時期を変えて測定した研究でも、閉経前の15人では固形食の半排出時間が卵胞期78±5分、黄体期75±7分で、有意差はなかった。[16] 女性10人の固形物と液体を調べた別の研究も、周期間の有意差を認めていない。[17] 少人数だから差がある結果だけが正しい、古いから差がない結果は不要、という選び方では全体像を失う。

また、標準化したオムレツと飲料を用いる多施設研究でも、健康な男女を対象に、月経周期による胃排出の有意差は認められなかった。[19] 閉経後の女性も含むため、18〜39歳の女性には全体の基準値をそのまま当てはめず、周期の比較結果を読む。 固形食の研究の中にも結果の不一致がある。現時点の読み方は、周期の影響はあり得るが、食事の形や検査法を越えて同じ方向にそろった結果ではない、というものになる。[5][9][14][19]

数字で読む周期と胃排出

189人:米と卵の多施設研究を完了した健康な参加者数であり、全員が月経のある女性ではない。[12]

85分と69分:同研究の黄体期と卵胞期の半排出時間の中央値。食事全部が消える時間ではない。[12]

24人:超音波による前向き観察研究の参加者数。固形食後には周期差があった。[9]

9人:糖の飲料を使った試験の女性参加者数。卵胞期に排出が遅かった。[5]

78±5分と75±7分:別の固形食研究の卵胞期と黄体期の半排出時間で、有意差はなかった。[16]

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