ダイエットの献立は毎日同じ方がよいのか。味の種類が増えると食べる量が増えやすい仕組みを、女性の食事実験や間食の試験から読む。食べ飽きと満腹感、盛り付け量と摂取量、短期の変化と長期の体重を分け、食卓全体を単調にせず、運動する日のメニューを考える視点を示す。
夕食の主菜はもう十分なのに、違う味の小皿が出てくると箸が動く。同じ料理のおかわりには気が進まないのに、食後の甘いものには手が伸びる。お腹の空き具合だけでは説明しにくい場面だ。
ダイエットの献立で同じものを繰り返すと、特定の食品へのおいしさの評価が下がり、食べる量が減る場合はある。ただし、飽きたことと摂取量が減ったことは同じではない。複数日にわたる間食のランダム化試験では、同じ食品への好ましさは下がったが、摂取量への効果は認められなかった。[3][15]
答えの芯は、食卓を丸ごと固定することではなく、どの食品の種類を、どの時間幅で変えるかを見ることにある。その場の味の変化、日をまたぐ繰り返し、食事全体の量を分ければ、「毎日同じなら痩せる」という近道とは違う献立の読み方になる。[1][2][14][15]

同じ味に満足しても、別の味はまだ魅力的である
感覚特異的満腹とは、食べた食品の好ましさが、食べていない食品に比べて相対的に下がる現象だ。ここで測っているのは、胃がどれほど満ちたかだけではなく、その食品をどれほどおいしく感じるかである。食べ始めには魅力的だった味が、食べ続けるうちに同じ強さでは魅力を保たなくなる。[1][4]
人の研究を整理したレビューは、味、におい、食感、見た目に特有の満腹が確認されていると述べている。一方、主要な栄養素やエネルギー量がこの現象にどう関わるかについては、結果が一致していない。甘いから必ず別腹になる、たんぱく質なら必ず飽きにくい、といった食品分類だけの説明に置き換えるのは早い。[4]
このレビューでは、おいしさが高まると摂取量が増えるという方向は取り上げた研究で共通していたが、本人が答える空腹感や満腹感は一様ではなかった。おいしい食事のあとにより空腹だと答える場合も、その逆も、差がない場合もあった。食べた量と本人の感覚は、別々に測る必要がある。[4]
だから、夕食を振り返るときは「満腹だったか」と「その料理をまだ食べたかったか」を別の問いにしてみるとよい。主菜には満足したのに、違う香りの副菜に気持ちが向いた、という言葉なら場面を具体的に捉えられる。これは自分を採点するためではなく、研究が区別している感覚を日常でも見分けるための観察である。[4]
種類は料理の名前の数だけでは決まらない。同じ名前の料理でも、添えるものによって味や食感が変わる。逆に、名前の違う食品を並べたからといって、感覚の違いを一定の幅で数えられるわけでもない。食物の性質を扱うレビューでは、食品の感覚的な性質が異なるとき、とくに多様性によって摂取量が増えると整理されている。[11]
食べ飽きは、食べ物を嫌いになることとも区別したい。実験で好ましさの評価が下がったという結果を、「その食品を二度と食べたくなくなる」と読む必要はない。献立を考える際の焦点は、好物を嫌いにすることではなく、食事中の評価が変わりうるという事実だ。[3][15]
初日の汗は、予約した人だけが持ち帰れる。
女性の昼食実験では、種類と盛り付け量が別々に効いた
女性を対象にしたランダム化クロスオーバー実験では、同じ参加者が異なる条件の昼食を経験した。好きな料理を入れた器を並べる条件と、それぞれ異なる主菜を入れた器を並べる条件を比べ、さらに用意する食事の重さも変えた。種類の違いだけでなく、盛り付け量の違いを一緒に確かめた設計である。[1]
料理を同時に出した実験の参加者は42人で、器は3つ、食事の提供量は450gか600gだった。種類が多い条件では少ない条件より15±7g多く食べ、大きい提供量では小さい提供量より57±7g多く食べた。種類と提供量の相互作用は認められず、それぞれが独立して摂取量を増やした。[1]
ここで15gという差と57gという差は、食べた食品の重さの差である。体重の増減でも、摂取エネルギーの差でもない。同じ数字をそのまま体脂肪に換算したり、家庭の夕食に当てはめたりすることはできない。研究が比べたのは、この昼食、この提供条件での摂取量である。[1]
もう一方の実験では49人の女性に料理を順番に出した。研究全体の結論は、同時に出す場合でも順番に出す場合でも、多様性と大きな提供量が組み合わさって摂取量を増やした、というものだった。ただし、順番に出した場合の差の大きさを、先ほどの同時提供の数字で代用してはいけない。[1]
おいしさの評価の変化にも違いがあった。同時提供の実験では、種類による感覚特異的満腹の差は認められなかった一方、順番に出す実験では、種類の多い食事でその低下が小さかった。多様性が食事中の魅力の低下を遅らせるという説明は成り立つが、どんな食卓でも同じ測定結果になるという話ではない。[1]
たとえば家で複数の主菜を用意した日、食べる量が増えた理由を「味を変えたから」だけで決めると、同時に大皿も大きくなっていた可能性を見落とす。献立の種類を変えて確かめたいなら、まず出した量も一緒に見る。研究が別々に操作したものを、日常の振り返りでも分けるという発想だ。[1]
食物の性質を整理したレビューは、提供量、エネルギー密度、多様性を摂取量に関わる主要な性質として挙げている。エネルギー密度とは、食品の重さに対してどれほどのエネルギーを含むかという見方である。献立名が同じでも、量と中身が変われば食事の条件は同じではない。[11]
料理を替えなくても、ソースで食べる量は変わる
味の種類は、同じ主菜に添えるものでも増やせる。21人を調べた臨床試験では、フライドポテトとブラウニーを好きなだけ食べる場面で、添える調味料やクリームの出し方を変えた。そのまま食べる条件、最初から添える条件、食べたあとに順番に添える条件の比較である。[7]
そのままの条件では1195±552kcal、同時に添えた条件では1485±582kcal、順番に添えた条件では1682±777kcalだった。添えるものがある条件の摂取エネルギーは、そのままの条件より多かった。ただし、添える食品自体も食事に加わる設計であり、この差を味の変化だけのエネルギーとして扱うことはできない。[7]
順番に添える条件では、ポテトへの好ましさはいったん下がったあと、ケチャップの登場で上がり、追加の摂取につながった。ブラウニーではバニラクリームを加えたときに同じ方向の変化があった。一方、マヨネーズとホイップクリームでは有意な効果がなかった。調味料を足せば何でも同じ反応になる、という結果ではない。[7]
ポテトは席を立っていないのに、食卓には新顔が来たことになる。料理数を変えずに味を更新しても、短期の摂取量が増える場合がある。味変という日常の小さな操作にも、献立の多様性とつながる面があるという実験だ。[7]
食べる場所を変えた実験もある。128人を対象に、最初の食品を満足するまで食べたあと、同じ食品か別の食品を、同じ環境か別の環境で出した。別の食品を出すと次の摂取量は増えたが、環境の変更による増加は認められなかった。違う味を出すことと場所を替えることは、この実験では同じ働きをしなかった。[5]
食卓の配置や家に置く食品の話は、既存記事「食環境とダイエットの科学 家に置くものと配置で食べ方はどこまで変わるか」に譲る。ここで扱うのは、目の前の食品を食べ続けたとき、その魅力がどう変わり、次の味が出たときに何が起きるかである。[4][5]
家庭でこの結果を見るときは、食べ始めから添えてあったものと、食べ終わりかけに登場したものを分けてみたい。追加の味が出た直前には、その料理をまだ食べたかったのか。追加してから気持ちは変わったのか。食事の総量だけでは見えない順序を言葉にすると、実験で測られた好ましさの変化に沿って場面を振り返れる。これはソースを禁止する規則ではなく、食べる途中の変化を捉える問いだ。[7]
数字で読む献立の種類と食べ飽き
42人:料理を同時に出した女性のクロスオーバー実験の参加者数だ。[1]
450gと600g:実験で用意した食事の重さであり、推奨する食事量ではない。[1]
15±7g:同時提供で、種類の多い食事によって増えた摂取量だ。[1]
57±7g:同じ実験で、大きい提供量によって増えた摂取量だ。[1]
21人:調味料やクリームを添える条件を比較した臨床試験の参加者数だ。[7]
128人:食品と食べる環境の変更を分けて比べた実験の参加者数だ。[5]
初日の汗は、予約した人だけが持ち帰れる。
1
2







