筋トレの回数を増やせば、その分だけ体脂肪も減るのか。週のセット数と頻度を比較した研究から、筋肉の大きさ、筋力、体脂肪で答えが違う理由を読む。若い男性と閉経後女性の研究を分け、週の総量が同じ場合の頻度の選び方や、忙しい生活で量を見直す際の考え方まで整理する。
仕事帰りに筋トレを入れたい。でも、予定表を開くと、残業と買い物と家の用事が先に席を取っている。「週に何回できれば意味があるのか」と考え始めると、通える日を探す前に、足りない日を数えてしまう。
そこで気になるのが、少ない回数でもまとめて行えばよいのか、短く分けた方がよいのかという問題だ。筋肉の大きさを比べたメタ分析では、週の運動量をそろえると、高頻度と低頻度の間に有意な差はなかった。一方、週のセット数を連続的に扱った分析では、量と筋肉の成長に有意な量反応関係が認められた。回数と量は、似ていて別のつまみなのである。[1][14]
さらに、筋肉が増える量を、そのまま脂肪が減る量と呼ぶこともできない。未経験の男性を対象にした比較試験では、セット数によって腕の筋肉の厚さに差があっても、体脂肪率と除脂肪量の変化には群間差がなかった。予定表に書くべき答えを探すには、何を変えたいのかを先に分ける必要がある。[18]

週の回数とセット数は何を数えているのか
筋トレの研究でいう頻度は、週の実施回数に関わる指標である。ただし、筋肉の成長を扱うときには「その筋肉を週にどれだけの頻度で鍛えるか」が問題になる。週の量も、単に施設へ行った回数ではなく、対象の筋肉に行ったセット数として扱われる。頻度のメタ分析と量のメタ分析を読むときは、この数え方をそろえたい。[1][14]
セットとは、同じ動作を続けて行うひとまとまりのことである。筋トレの量を扱ったレビューは、週に実施したセット数と筋肉の増加の関係を検討している。したがって、運動する日が増えたとしても、それぞれの日に行う内容が少なくなれば、週のセット数が増えるとは限らない。頻度が高いという情報だけでは、量まで分からないのだ。[13][14]
予定表には「筋トレ」とだけ書いてあり、記録には運動した種目もセットも残っていない。この場合、翌月に通う日を増やしても、変えたのが頻度なのか量なのか判断しにくい。研究の比較を暮らしに移すなら、通った日と、その日に行った内容を別に残すところから始められる。研究で分けている変数を、自分の計画でも区別するための工夫だ。[2][14]
もう少し複雑なのが、狙った筋肉以外も関与するセットの扱いである。新しいメタ回帰分析では、直接的なセットと間接的なセットを分け、間接的なセットを全部数える方法、半分として数える方法、数えない方法を比較した。最も支持されたのは、間接的なセットを0.5として扱う方法だった。同じ記録でも、集計の仕方で量の数字が変わりうる。[2]
この0.5は、研究者が測定する筋肉や筋力との関係に応じてセットを分類した、分析上の係数である。自分で正確に分類できない場合は、種目名と実施内容を残して指導者と確認する方が、見かけだけ精密な合計を作るより役に立つ。セットの足し算にも、何を足したかという説明が要る。[2]
そして、成果の物差しもそろえる必要がある。筋肉の局所的な厚さ、全身の除脂肪量、持ち上げられる重さ、体脂肪率は、各研究で別々に測定されている。除脂肪量は脂肪以外の身体の量を指し、全身の量として評価される。ある物差しで差が出たからといって、別の物差しまで同じ差が出たとは読まない。[6][15][18]
初日の汗は、予約した人だけが持ち帰れる。
筋肉は量に反応するが、増やした分だけ伸びるのか
週のセット数と筋肉の大きさを調べた系統的レビュー・メタ分析は、15研究、34の介入群を統合している。週の量を連続的な変数として扱った解析では、量が多いほど筋肉の増加が大きい関係が認められた。高い量と低い量を研究内で比較すると、増加率の差に換算して3.9%だった。週の量を考える根拠に、こうした研究の統合がある。[1]
その解析で追加のセットに対応した増加率の推定は0.37%だった。これは研究をまとめた関係の推定値である。この論文の要約には、この数値の信頼区間が示されていない。連続変数の解析の有意確率は0.002、研究内で高い量と低い量を比較した解析では0.03であり、いずれも有意な量の効果を示した。[1]
同じ分析は、筋肉ごとの週のセット数を5未満、5〜9、10以上に分けた比較も行った。ここでは量による差は傾向にとどまり、有意確率は0.074だった。連続的に見ると関係があっても、区切った群の比較では明確な差が確認できないことがある。「10に届かなければ効果がない」という境界を、この結果から引くことはできない。[1]
より新しい分析は、67研究、2,058人のデータから量と頻度を検討した。量が増えると筋肉の大きさと筋力の伸びが大きくなる関係を支持した一方、最も適合するモデルは、追加の量から得られる上積みが小さくなる形だった。このように、量を増やしたときの見返りが次第に小さくなることを、収穫逓減と呼ぶ。筋力ではその傾向がさらに強かった。[2]
ここに、予定を立てるうえでの現実的な問いがある。現在の内容を維持する時間と、さらに量を足す時間を、同じ価値として扱ってよいだろうか。分析は量を増やす方向を支持する一方、追加分から得られる成果が次第に小さくなる形を示している。忙しい週に、上積みのための内容を落としたことと、実施をすべてやめたことは、計画上区別して考えられる。[2]
若く、筋トレ経験のある人を対象にした別の系統的レビューも、単純な多ければ多いほどという読み方を難しくする。対象は18〜35歳で、少なくとも1年の経験を持つ人である。定性的な検討に7研究、量的な分析に6研究を用い、筋肉ごとの週12〜20セットと20セット超を比較したところ、太もも前面と上腕二頭筋では有意差がなかった。[4]
一方、上腕三頭筋では高い量が有利だった。著者らは若い筋トレ経験のある男性について週12〜20セットを標準的な目安として提案しているが、部位によって答えが違う。しかも、この対象条件は、運動を再開したばかりの中高年女性とは異なる。検索で見つけた大きなセット数を、そのまま自分の開始条件にする必要はない。[4]
全身の筋肉量を扱った健康な男性のメタ分析では、111研究、1,927人を統合し、関連する身体組成指標の増加は平均1.53kg、95%信頼区間は1.30〜1.76kgだった。ただし、筋トレの特徴を調べたメタ回帰では、セッション当たりのセット数と増加量に負の関係が認められた。週の総量とセッション当たりの量を分けて見る理由が、ここにもある。[6]
セッション当たりのセット数との関係は、複数研究の条件の違いを解析した所見である。その回帰係数は−0.03、95%信頼区間は−0.05〜−0.001で、有意確率は0.04だった。週の量についての肯定的な結果と、セッション当たりの量についての負の関係は、異なる集計単位で得られた結果として読む必要がある。[1][6]
頻度を上げる利点は、筋肉と筋力で異なる
頻度の系統的レビュー・メタ分析は、25研究をまとめている。週の量をそろえた比較では、頻度の高い群と低い群で筋肉の成長に有意差はなかった。筋肉の成長を直接測った研究、筋トレ経験者、上半身と下半身に分けた解析でも、明確な頻度差は認められなかった。著者らは、一定の量なら個人の好みに応じて頻度を選べると結論している。[14]
ところが、量をそろえなかった研究を統合すると、高い頻度が有利だった。ただし、週1日と3日以上の効果の大きさの差は控えめだった。高頻度の群が多くのセットを行っているなら、回数の効果と量の効果が混ざる。見出しに「多く通った人の方が増えた」とあっても、本文で週の量が等しいかを確認する理由はここにある。[14]
新しい分析でも、頻度と筋肥大の関係は、ほとんど影響しない可能性と両立していた。一方、筋力には頻度を増やす方向の関係が認められ、こちらも上積みは次第に小さくなるとされた。筋肥大とは筋肉が大きくなること、筋力とは力を出す能力に関わる成果であり、分析の答えは一致しない。目的が違えば、頻度を選ぶ理由も変わる。[2]
数字で読む筋トレの量と頻度
15研究・34介入群:週のセット数と筋肉の増加を調べたメタ分析の規模を示す。[1]
3.9%:高い量と低い量の筋肉増加率の差に換算された値であり、体脂肪の減少率ではない。[1]
25研究:週の量をそろえると、筋肥大に明確な頻度差がなかったメタ分析に含まれた研究数を示す。[14]
平均1.53kg、95%信頼区間1.30〜1.76kg:健康な男性の全身の筋肉量関連指標をまとめた増加量である。[6]
34人・8週間:経験のある男性で、セット数と筋力・筋肥大の違いを調べた無作為化試験である。[15]
初日の汗は、予約した人だけが持ち帰れる。
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