友人との会食で食事量が増える傾向がある一方、知らない人や知人との食事では増加を支持する証拠は得られず、同席者が少なく食べると自分の量も減る傾向がある。社会的促進と量の同調をメタ分析と比較実験から読み、注文前の取り分けや会話中の追加、翌日以降の摂取量を通して、自分の量を考える。
友人と立川で夕食を取り、話が弾んでいるうちに追加の皿が届く。家なら食器を下げていたころだが、誰かが箸を伸ばすと自分も伸ばす。帰り道で振り返ると、お腹がすいていた時間より、食べていた時間のほうが長かった気がする。
こうした場面を、単に意志が弱かった夜として片づける必要はない。友人と食べると、ひとりで食べる場合より選ぶ量や摂取量が増える傾向は、実験をまとめた研究でも確認されている。ただし、知らない人や知人との食事では、増えるという証拠は得られなかった。食卓に人がいるかだけでなく、その人との関係が関わる。[1]
ダイエット中の会食を考えるには、食事の誘いを断る前に、量が動く場面を分けて見るのがよい。注文する前、取り分けるとき、会話が続くとき、そして次の食事である。食事量の研究から言えることと、体重についてまだ言えないことを区別していこう。[2][18]

友人と食べると増えるが、誰とでも同じではない
社会的促進とは、ほかの人と食べると、ひとりのときより多く食べる現象を指す。食事を扱った系統的レビューとメタ分析は、関連する研究を整理し、実験の結果を統計的にまとめたものである。2019年のレビューは42研究を検討し、友人と食べる場合には、ひとりの場合より選択量と摂取量が多いという強い証拠を報告した。[1]
友人との比較の標準化平均差は0.76、95%信頼区間は0.48〜1.03だった。標準化平均差とは、単位やばらつきが違う研究の差を比較できるように表す指標である。これは食事量が76%増えたという意味ではない。信頼区間は、統合した差の推定に伴う不確かさを示す。[1]
対照的に、知らない人や知人と食べた研究の統合値は0.21、95%信頼区間は−0.10〜0.51だった。差がないことを示す値をまたいでおり、この比較では社会的促進を支持する証拠は得られなかった。「友人と増えた」を「人がいれば増える」に広げると、研究の条件を取り違える。[1]
日常の食卓にも、親しい友人との夕食、仕事で初めて会う人との昼食、家族とのいつもの食事がある。どれも共食ではあるが、同じ条件ではない。たとえば会食の記録を残すなら、「外食した」だけでなく、誰と食べたかも書くという見方ができる。これは減量効果が確認された記録法ではなく、研究で違いが出た条件を自分の生活でも区別するための工夫である。[1]
性別、体重の状態、食品の種類によって違いがある可能性もレビューは挙げている。ただし、友人との食事でこれらの要因を実験的に調べた研究は不足していた。女性だから必ず増える、体重が多い人ほど影響される、といった個人の判定に使えるほどの結論ではない。[1]
この研究が測っているのは、主としてその食事で選んだ量と食べた量である。長期の体重変化は、今後の研究課題として残っている。[1][2]
初日の汗は、予約した人だけが持ち帰れる。
長く座っていることと、気が散ることを分ける
会話をしていると食事が長引く。そこで、同席者の効果は、単に食べ物が目の前にある時間が長くなるからではないかという説明が生まれる。515人の成人に7日間、飲食、時刻、空腹感、同席者との関係などを記録してもらった観察研究では、ほかの人と食べた食事は、ひとりの食事より量が多く、時間も長かった。[3]
さらに、家族や配偶者との食事は、ほかの同席者との食事に比べて量が多く、食べる速度も速かった。友人との食事では量が多く、時間が長かった。朝、昼、夕でも同様の傾向が見られたという。家族も友人も親しい相手だが、量が増えた食事の姿まで同じだったわけではない。[3]
ただし、これは生活を観察した研究である。メニューや食事の目的なども同時に違い得るため、同席と摂取量の関連として読む必要がある。著者は交流による時間の延長や、親しい相手とのくつろぎを説明として提案している。[3]
注意が食べ物からそれることも候補になる。37人が条件を変えて実験室で自由に昼食を取った比較実験では、ひとり、テレビを見ながらひとり、同性の知らない人と一緒、同性の友人と一緒、という食事を比較した。友人との食事では、ひとりに比べてエネルギー摂取量が18%多く、テレビを見た条件では14%多かった。[7]
ところが、知らない人と食べる場合も食べ物への注意はそれたのに、摂取量は増えなかった。ここが大事である。注意がそれるだけで十分なら、知らない人との食事でも同じように増えるはずだった。実験は、気の散り方に加えて、相手との関係を考える必要を示している。[7]
画面と食事量の関係は、「スマホと食事量の関係は食後まで続く」の記事に譲る。ここで焦点を当てるのは、目が皿から離れた理由だけでなく、同じテーブルの相手が誰かという点だ。画面を消せば友人との食事の影響も消える、とこの実験から言うことはできない。[7]
実際の夕食を振り返るなら、会話の途中で追加したのか、食事を終えてから話し続けたのかを分けると状況が見えやすい。食べる時間と一緒に過ごす時間を同じにしなくてもよい、という工夫につながる。ただし、会話の時間を何分に縮めれば食事量が減るかという基準は、これらの研究にはない。[1][3][7]
同席者の皿が、自分の量の目安になる
社会的促進と似ていて、区別したい現象がある。モデリング、すなわち相手が食べる量を目安に、自分の食べる量を合わせることである。人がいると一方向に増えるという話ではない。相手が多く食べれば多くなり、少なく食べれば少なくなるという、方向を持つ影響だ。[5]
38論文をまとめた2015年のメタ分析では、食事量のモデリングの効果は相関係数で表した指標で0.39だった。参加者は、同席者が多く食べると多く、少なく食べると少なく食べる傾向を示した。著者は全体として大きな影響と評価し、増やす方向より抑える方向の効果が強いと報告している。[5]
ここでも、0.39は食事量が39%変わるという意味ではない。複数の研究にまたがる影響の大きさを表す指標であり、友人との食事の標準化平均差0.76とは尺度が異なる。指標が違う数字を、そのまま食事の増減率に置き換えないことが必要だ。[1][5]
このメタ分析は、相手役がその場にいる研究と、離れた場所から食べ方の情報が伝わる研究も比較した。両者で効果の大きさに差はなく、適切に食べることへの関心が高い参加者と低い参加者でも差は見られなかった。食事量の同調は、相手が目の前にいる場面だけに限定されていなかったのである。[5]
このメタ分析では、実験研究より相関を調べた研究、男性より女性を対象とした研究で効果が大きかった。生活で似た量を食べる人たちがいたとしても、片方がもう片方の量を変えたと即断はできない。一方、実験も含めて影響が見られるため、同席者の量が無関係だとするのも適切ではない。[5]
食べる量をめぐるレビューは、社会的促進、モデリング、印象をよく見せようとする行動を別々に整理した。集団では増えることがある一方で、他者の量に合わせて増減する場合や、他者の前で少なく食べる場合もある。著者らは、食べ終える目安として周囲の手がかりを使うという説明で、この違いをつなごうとしている。[10]
大皿を囲む場面なら、料理そのものだけでなく、「みんながまだ取っている」という情報も目に入る。相手の皿が空になると自分も追加する、相手が箸を置くと自分も置く、といった場面を思い浮かべると理解しやすい。これらは、相手の摂取量に合わせる行動を生活の場面で考える例である。[5][10]
少食の人を席に呼べば解決する、という話でもない。自分に必要な量が相手と同じだとは限らないからだ。同席者が量の目安になることと、本人に必要な量の判断は分けて考えたい。量を判断する権利を、自分の皿に戻すという考え方で使いたい。[5][10]
数字で読む会食と食事量
42研究:社会的促進を検討した系統的レビューの対象数。全研究を同じ方法で統合したわけではない。[1]
0.76:友人との食事とひとりの食事の標準化平均差。95%信頼区間は0.48〜1.03。[1]
0.21:知らない人・知人との比較の標準化平均差。95%信頼区間は−0.10〜0.51で、増加を支持する証拠はなかった。[1]
18%:37人の比較実験で、友人との昼食時に見られた、ひとりの条件に対する摂取エネルギーの増加。[7]
0.39:38論文をまとめた食事量のモデリングの効果指標。食べた量の増加率ではない。[5]
初日の汗は、予約した人だけが持ち帰れる。
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