朝の体脂肪率が上がっただけで、脂肪が増えたと判断してよいのか。体組成計とDXAを比較した論文から、繰り返し測る安定性と正確さの違い、対象者や機器による誤差、部位別表示の限界を読む。家庭で記録を続ける際にそろえたい条件と、数字だけで食事や運動を変える前の確認点も整理する。
昨日と同じ体組成計に乗ったのに、体脂肪率の表示が違う。昨夜の夕食が頭をよぎり、今日はご飯を減らそうかと考える。だが、その表示から脂肪の増減を読む前に、測る道具が何を得意としているかを知っておきたい。
成人を対象にした比較研究では、体組成計の測定が繰り返し安定していても、比較先の検査より体脂肪率を低く示すことがあった。安定性と正確さは、同じ成績表の別の欄なのである。[1][15] 小数点まで表示されることと、小数点まで正しいことも別だ。
ここで読むのは、食事や運動でどれだけ痩せるかの試験ではない。体の中身を測る方法の比較研究である。記録する頻度やアプリの活用は特集の別記事に譲り、この記事では、手元の数字をどこまで判断に使えるのかに焦点を当てる。

体組成計の表示は、脂肪そのものを量った値か
家庭で使う体組成計に関わる測定法が、生体電気インピーダンス法、略してBIAである。電気的な抵抗などを利用して体組成を推定する方法で、ここで扱う論文には、抵抗、身長、体重、年齢などから除脂肪量を予測する式を検討した研究もある。除脂肪量とは、体のうち脂肪を除いた部分の量である。[4] 表示された数値は、体から取り出した脂肪を秤に載せた結果ではない。
比較先としてよく登場するDXAは、二重エネルギーX線吸収法という検査である。論文では体脂肪率や脂肪量の参照方法として使われる。ただし、DXAがあらゆる条件で唯一の真値を出すという読み方も強すぎる。成人166人を対象にした研究では、BIA、DXA、空気置換法という別の体組成測定法を比較し、DXAにも体脂肪率が高い側と低い側で異なる方向のずれが認められた。[1]
その研究は、体格指数であるBMIが19〜38 kg/m2の成人を、5日間のうちに繰り返し測ったものである。BIAはDXAとの関連が強く、決定係数は0.92だった。一方で、比較した検査より体脂肪率を平均で約2ポイント低く見積もり、一致限界は−4.25〜8.37ポイントと広かった。[1] 一致限界とは、方法間の差がどの程度の範囲に散らばるかを見る指標である。平均のずれだけでは見えない、個人ごとの差を示している。
この研究では、いずれの方法も繰り返し測定の差が0.2ポイント未満とされ、信頼性は高かった。[1] つまり、同じ方法で再び測れば近い値が出るのに、別の方法とは値が離れることがあり得る。体組成計が気まぐれだから誤差が生じる、とだけ考えていると、この組み合わせを見落とす。いつも落ち着いている数字にも、一定のずれは残る。
ここで「約2ポイント低い」は、脂肪量が約2%少ないという意味ではない。体脂肪率という割合の目盛りで、値の差を述べている。[1] 論文の割合の差を読むときは、割合そのものと、割合の差を区別したい。体脂肪率の差、脂肪量のkg、除脂肪量のkgは、画面では並んでいても別の指標である。
また、多周波数BIAを検証した研究では、特定の機器を使い、研究参加者の測定値を評価している。[6][7][15] 多周波数とは、複数の周波数を用いる方式を指す。精度の評価は、その機器と対象者の組み合わせに対応する。
初日の汗は、予約した人だけが持ち帰れる。
高い相関でも、あなたの値が正しいとは限らない
「DXAと高い相関がある」と聞くと、体組成計の値をそのまま信じたくなる。相関は、両方の方法で値の高い人と低い人が似た並びになるかを見るものだ。両方で高い人が高くても、片方が全体として低く表示する可能性は残る。実際、研究では強い相関と平均のずれが同時に報告されている。[4][6]
ブラジルの成人・高齢者945人をまとめた横断的な比較では、BIAとDXAの脂肪量、除脂肪量の相関係数はいずれも0.97と高かった。それでもBIAは、DXAに比べて除脂肪量を平均3.1 kg多く、脂肪量を平均2.9 kg少なく推定した。差の標準偏差はそれぞれ2.4 kg、2.3 kgだった。[4] 標準偏差は、差が平均の周りにどれほど散らばるかを表す。相対的な差は、除脂肪量で+7.2%、脂肪量で−13.0%と報告され、いずれの平均差も統計的に有意だった。[4] 同じkg単位でも、除脂肪量と脂肪量では元の量が異なるため、割合で表した差も違う。研究では性別、年齢、BMIによる栄養状態別の比較も行い、単純な相関だけでなく、一致を評価する係数も使っていた。その係数は脂肪量と除脂肪量で0.93以上だった。[4] 相関係数が示す関連の強さに加えて、平均差のkg、相対差の%、対象者別の比較を組み合わせた検証である。
脂肪量の平均差2.9 kgは、研究対象全体をまとめた値である。個人の値を調整するには、対象集団に合わせた予測式を作り、その式を別の参加者で検証する工程が必要だった。[4]
同じ研究では、参加者の70%に当たる659人で予測式を作り、残る30%の286人で検証した。対象945人は18歳以上で、うち611人が女性だった。新しい予測式には、電気的な抵抗から得る指標だけでなく、性別、身長、体重、年齢も使われている。[4]補正後の除脂肪量の平均は、DXAの測定値と有意に違わなかった。[4] これは、その集団に合わせた調整が役立つ可能性を示す結果である。検証されたのは、ブラジルの参加者から作った式を、同じ研究の別の参加者に適用したときの平均の一致である。
健康な成人1,000人を対象にした、食事、水分状態、直前の運動、時刻を統制しない実生活に近い比較もある。男性667人、女性333人の結果では、BIAによる体脂肪率はDXAより平均で男性4.2ポイント、女性2.8ポイント低かった。差の標準偏差は男性3.0ポイント、女性2.6ポイントである。[6] 平均差の大きさも、男女で同じではなかった。
体脂肪率だけでなく、脂肪量と除脂肪量にも別々のずれがあった。男性では脂肪量を平均3.7 kg少なく、除脂肪量を3.4 kg多く推定し、女性ではそれぞれ1.9 kg少なく、2.0 kg多く推定した。差の標準偏差は男性で2.6 kgと2.8 kg、女性で1.8 kgと2.2 kgである。[6] 除脂肪量は脂肪を除いた部分の総量であり、筋肉だけを示す項目と区別する必要がある。[4][6]
著者らは、内臓脂肪を除けば、統制されない条件下で体組成を中程度の正確さで測れる方法と評価した。[6] 使えるか使えないかの二択ではない。集団の傾向を調べる用途と、自分の小さな変化を確定する用途では、必要な精度が違う。この比較では、全身と部位別の項目をそれぞれ評価していた。
誤差の方向は、体格や対象者で変わる
BIAは常に体脂肪率を低く出す、と覚えてしまうのも早計である。健康な成人132人を体格別に比較した研究では、DXAに対してBMIが正常域の群では平均1.56ポイント低かった一方、肥満の群では平均3.4ポイント高かった。過体重の群では、両方法の体脂肪率に有意差がなかった。[19] 同じ研究の中でも、ずれの方向が反対になっている。
この研究は、体脂肪率が高いほど方法間の誤差が大きくなる関連も報告し、ウエスト周囲長が系統的な誤差の有意な予測因子だったとしている。[19] 腹囲と誤差の関係は相関として示されており、体格や脂肪分布に応じた検証の必要性を著者らは指摘している。[19]
結果が良好な研究もある。韓国の成人109人を対象にした高周波数BIAとDXAの比較では、体脂肪率の決定係数は0.89以上で、著者らは体組成測定が良好に一致すると評価した。[7] 参加者のうち男性は55人で、平均年齢は男性43.4歳、女性44.9歳、平均BMIは男性25.5、女性24.0だった。[7] 測定したのは体脂肪率に加えて、腕と脚の除脂肪量、全身の除脂肪量である。後者の決定係数も0.95以上と報告されている。[7]
高齢女性の比較では、身長という条件も関わった。地域で暮らすメキシコの高齢女性121人、平均年齢73.7歳の研究で、全体ではBIAとDXAの平均に有意差があった。ところが身長145 cmを超える女性の部分集団では平均に有意差がなく、DXAの平均体脂肪率40.3%に対してBIAは40.7%、一致を評価する係数は0.814だった。[8]
この研究のもう一つの目的は、身長の低い女性を除いたときに測定法の一致が改善するかを調べることだった。BIAのほか、体の寸法から体脂肪率を予測する5つの式も比較している。[8] 身長145 cm超の群で、腹囲と身長の比を使う式はDXAとの平均差が有意ではなかったが、一致の係数は0.693、推定の標準誤差は3.37だった。BIAの推定の標準誤差は2.62で、著者らはこの群でBIAの結果を良好と評価した。[8] 同じ対象の中でも、使う方法によって評価は変わる。
数字で読む体脂肪率測定
成人166人の比較:BIAは平均約2ポイント低い一方、繰り返し測定の差は0.2ポイント未満だった。[1]
成人・高齢者945人の比較:脂肪量はDXAより平均2.9 kg少なく推定された。[4]
健康な成人1,000人の比較:体脂肪率の平均差は男性−4.2ポイント、女性−2.8ポイントだった。[6]
健康な成人132人の比較:肥満の群では体脂肪率が平均3.4ポイント高く推定された。[19]
健康な成人14人の反復測定:同日内の体水分量の差は0.0〜0.2 L、日をまたぐ差は0.0〜0.5 Lだった。[15]
初日の汗は、予約した人だけが持ち帰れる。
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