ピラティスで背筋が伸びた感覚と、体脂肪が減ることは同じなのか。過体重・肥満の成人や女性を対象にしたメタ分析と比較試験を読み、体重、体脂肪率、体幹の持久力、姿勢の結果を分けて確かめる。マットと器具の違い、研究が食い違う理由、数字の受け止め方から、立川で続けるための考え方までを紹介する。
ピラティスで「姿勢が変わる」と聞くと、お腹周りも細くなるように感じるかもしれない。だが、立ち姿を評価する点数と、体脂肪率の数字は何を測っているのだろう。胴体を使う運動への期待を、まず姿勢と脂肪の2つに分けて考えたい。
女性を対象とした比較試験では、姿勢の評価が改善しても、体組成の変化は肥満の有無で異なった。また、高齢女性の試験では筋力と身体機能の改善が見られた一方、体組成の改善は確認されなかった。動作の改善を確かめる検査と、脂肪量を確かめる測定は、それぞれの目的に合わせて選ぶ必要がある。[14][18]
ピラティスを減量の万能な近道にする必要はない。同時に、体重だけで運動の価値を決める必要もない。ここでは体幹、姿勢、体脂肪という似て見える成果をほどき、研究が実際に測ったものへ視線を戻す。有酸素運動と筋トレの比較は有酸素運動と筋トレの記事、ヨガ全般の体重への影響はヨガの記事に譲る。

体幹が働くことと脂肪が減ることは別の問いだ
ピラティスの研究では、全身の運動を通じた体幹の筋力や持久力、安定性、関節の柔軟性が目的として挙げられている。体幹とはここでは胴体を指し、持久力とは筋肉を働かせ続ける能力のことである。器具を使った試験では、胴体の筋持久力を評価するテストと、前屈の柔軟性を評価するテストを、体重や体組成の測定とは別に行っている。[7]
この区別は日常の期待を整理する助けになる。「お腹に力を入れやすくなりたい」と「体脂肪を減らしたい」は、同じ場所に関心があっても違う目標だ。前者を確かめるには動作や持久力の評価が必要になる。後者を確かめるには体脂肪の評価が必要になる。筋持久力が改善した結果だけを根拠に、腹部の脂肪が減ったと結論することはできない。[7]
肥満のある女性とない女性を含む試験では、両方で姿勢の点数が改善したが、肥満のない女性では体格や体脂肪率への影響は確認されなかった。姿勢は点数、体組成は体格指数と体脂肪率で評価され、運動の前後にそれぞれを測定している。[14]
研究の「体組成」という言葉も、ひとまとめにしすぎないほうがよい。研究では、体重、体脂肪率、除脂肪量、腹囲などをそれぞれ調べている。除脂肪量は脂肪以外の部分の量であり、器具を使った試験では水分の量も別に評価している。この試験の除脂肪量の評価には、水分量の変化も伴っていた。[1][7]
初日の汗は、予約した人だけが持ち帰れる。
減量を支持するメタ分析には、動かなかった指標もある
複数の試験結果をまとめて効果を推定する方法がメタ分析である。過体重または肥満の成人を対象にした分析は、無作為に群を分ける比較試験を11件、合計393人分まとめた。無作為に分けるのは、運動をする人ともともとしない人の違いが、結果に混じるのを抑えるためだ。[1]
この分析では、ピラティスを行った群と比較対象との差として、体重は平均−2.40 kg、体脂肪率は平均−4.22ポイントだった。体脂肪率の差をポイントと書くのは、脂肪の重さが何%減ったかとは別の数字だからである。体重の95%信頼区間は−4.04〜−0.77 kg、体脂肪率では−6.44〜−2.01ポイントであった。[1]
信頼区間は、推定値の不確かさを読むための幅だ。比較対象との平均的な差を推定したもので、参加者の体格、運動内容、介入期間が異なる試験をまとめている。この分析には、別の運動を行う群との比較と、介入を行わない群との比較が含まれていた。[1]
腹囲の平均差は−2.65 cmだったが、信頼区間は−6.84〜1.55 cmで、有意な差は確認されていない。除脂肪量も平均差はほぼ0 kg、信頼区間は−1.40〜1.40 kgで、有意な変化はなかった。体重と体脂肪率に対する結果に加え、腹囲と除脂肪量についても別々に推定値を出した分析である。[1]
ここでいう有意差なしは、「絶対に何も起きない」という意味ではない。得られたデータでは、比較対象との差を明確に示せなかったということだ。お腹周りを変えたい読者にとっては、体脂肪率の平均値を腹囲の約束に置き換えないことが大切になる。この分析そのものが、腹囲と体脂肪率で違う結果を報告している。[1]
研究間のばらつきを示す指標は、体脂肪率で88%と大きかった。体重では51%、体格指数では61%で、指標によってばらつきの程度も異なる。著者らは、肥満の人だけを含む研究で体重と体脂肪率の減少がより目立ち、介入期間が長い研究で体重などの変化がより明確になる傾向を挙げている。大規模で方法の整った試験による確認も求めている。[1]
分析では体格指数も平均−1.17、95%信頼区間−1.85〜−0.50と、有意な低下を示した。腹囲のばらつきの指標は0%、除脂肪量は23%だった。体脂肪率に比べると、これらの項目の研究間のばらつきは小さかった。対象の肥満度や実施期間を見るとともに、どの項目の推定が揺れやすいかも確認できる。[1]
「効果がある」と「ほかの運動より優れる」は違う
健康な成人のマットピラティスについて、10件の研究をまとめた別のメタ分析は、体格指数、除脂肪量、体脂肪率、腹囲のいずれでも、従来の運動や対照条件より優れているとは示さなかった。体格指数は身長と体重から求める体格の指標で、論文ではBMIと表記される。高齢者、成人、過体重・肥満の人に分けた探索的な分析でも、優位性は確認されなかった。[3]
こちらの結論は、先ほどの減量を支持する分析と食い違って見える。だが、まず対象と比較条件をそろえる必要がある。先ほどは過体重・肥満の成人を対象とし、こちらは健康な成人のマットピラティスを扱う。運動の内容も、相手が別の運動なのか運動をしない条件なのかも、結果を読むうえで外せない。[1][3]
たとえば、運動前より値が下がったという結果があっても、比較する群で同じように下がっていれば、その変化をピラティス特有の成果とは言いにくい。「変化したか」と「比較対象より変化したか」は、文章では近くても研究では異なる問いである。マットピラティスの分析が答えたのは、主に比較対象に対する優位性の問いだ。[3]
成人女性を対象にした新しい系統的レビューとメタ分析も、一律に脂肪減少を支持してはいない。12件、約540人をまとめ、体重の平均差は−3.99 kg、95%信頼区間は−6.30〜−1.67 kgだった。一方で、体脂肪率、腹囲、除脂肪量には、まとめた結果として有意な効果が見られなかった。体重と体脂肪率について、統合した結果の方向が分かれた。[2]
この女性の分析では、前屈の柔軟性には有意な改善が見られた。異なる尺度の結果を比較できる形にそろえた標準化平均差は0.69、95%信頼区間は0.43〜0.94だった。これは体重の単位ではなく、柔軟性という別の評価の数字である。柔らかく動けることを目標にする人と、脂肪を減らすことを目標にする人では、同じ分析の注目する場所が変わる。[2]
過体重・肥満の成人の分析では、体重と体脂肪率の低下が示された。[1] 健康な成人のマットピラティスでは、他の運動などに対する体組成の優位性は確認されなかった。[3] 成人女性の新しい分析でも、研究の設計、運動内容、方法の質の違いを理由に慎重な解釈を求めている。[2]
成人女性の分析では、体格指数の平均差も−1.22、95%信頼区間は−1.83〜−0.61と、有意な低下があった。体重と身長から求めるこの指標の低下と、体脂肪率の変化は一致していない。体組成だけでなく、筋力、バランス、身体機能、呼吸機能も対象とした。握力と垂直跳び、腹囲と腰・臀囲の比については、統合した結果に有意な効果がなかった。柔軟性に良い結果が出た一方、力を出す能力の評価は測定項目によって異なった。[2]
同じ女性のレビューでは、数値を統合する分析とは別に、各研究の結果を文章で整理した部分もある。そこでは筋力や持久力、バランス、身体機能、呼吸に関する追加の利点が示唆された。統合した握力の結果と、文章で整理された筋力の結果には違いがある。どの検査を使い、どの結果を一緒に計算したかによって、レビューの結論の細部が変わる。[2]
女性58人を対象にした無作為化比較試験は、肥満のある30人と、ない28人をそれぞれピラティス群と対照群に分けた。週2回の運動を8週間行い、体格指数、体脂肪率、姿勢の点数に加え、感情に関連した食行動や自分の身体に対する不安などを評価した。[14]
数字で読むピラティスと体組成
過体重・肥満の成人393人、11件の無作為化比較試験をまとめた分析で、体重の平均差は−2.40 kg。95%信頼区間は−4.04〜−0.77 kgである。[1]
同じ分析の体脂肪率の平均差は−4.22ポイント。ただし研究間のばらつきの指標は88%と大きい。[1]
成人女性約540人、12件の分析では体重の平均差は−3.99 kg。一方、体脂肪率には有意な効果が確認されなかった。[2]
女性58人の比較試験は週2回、8週間。肥満の有無にかかわらず姿勢の評価は改善したが、体組成の結果は同じではなかった。[14]
ピラティス経験のある女性19人の器具を使った試験は10週間。体幹の持久力は改善したが、追加のたんぱく質による上乗せは確認されなかった。[7]
初日の汗は、予約した人だけが持ち帰れる。
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