糖質制限か脂質制限か、長期比較試験で読む体重差と続けられる食事の選び方

糖質制限と脂質制限は、長く続けたときにどちらが痩せるのか。長期比較試験とメタ分析から、体重差の大きさ、血液指標の違い、食事の質と継続の意味を読む。短期の成功談だけでは見えない研究条件を確かめ、主食や油を減らす前に、自分の暮らしで続けられる食事を選ぶ視点を整理する。

609人が12か月取り組んだ試験で、低脂肪食は平均5.3kg、低炭水化物食は平均6.0kgの減量だった。数字だけなら糖質制限の勝ちに見えるが、統計学的には明確な差がなかった。[1] 小数点まで並ぶと決着がついた気になる。食事選びは、その一桁ほど単純ではない。

研究の答えは、どちらかの全面勝利ではない。糖質制限のほうが平均で少し多く減量した解析もあれば、長期の比較で明確な体重差が見つからなかった試験もある。[1][12][18] その違いを読み解く鍵は、食事の名前より、比べた期間と実際の食べ方にある。

ここでは糖質制限と脂質制限を、体重を減らす食事として比較する。たんぱく質の働きはたんぱく質の特集記事、食物繊維の詳しい話は食物繊維の特集記事に譲る。どの栄養素を悪者にするかではなく、長期試験で何が起き、それを自分の食卓にどう持ち帰れるかが主題だ。

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糖質制限と脂質制限は、名前だけでは比べられない

研究でいう低炭水化物食は、日常で糖質制限と呼ばれる食事と重なるが、すべて同じ内容ではない。論文は炭水化物の量やエネルギーに占める割合で食事を区別している。低脂肪食も脂質を完全に抜く食事ではない。比較するには、何をどれだけ減らす設定だったかを先に見る必要がある。[1][20]

たとえば、心血管疾患と糖尿病のない男女148人を対象とした無作為化比較試験では、低炭水化物食は炭水化物を1日40g未満、低脂肪食は脂質を摂取エネルギーの30%未満とする設計だった。どちらの群にも定期的な食事相談が提供された。[20] 無作為化比較試験とは、参加者を偶然に基づいて群に分け、異なる方法を比べる研究である。もともとの好みだけで食事を選んだ人同士の比較とは区別する。

一方、DIETFITSと呼ばれる別の試験は、健康的な低脂肪食と健康的な低炭水化物食を比較した。長期に維持できる範囲で脂質または炭水化物を少なくする方法を探し、食事の質も重視した。参加者には12か月間に22回の食事別の少人数セッションがあった。[1] 名前は同じ糖質制限でも、指示した制限の厳しさや支援の形は違う。

この試験の12か月時点の平均では、炭水化物のエネルギー比率は低脂肪群で48%、低炭水化物群で30%だった。脂質はそれぞれ29%と45%、たんぱく質は21%と23%である。[1] 低炭水化物群でも炭水化物はゼロではなく、低脂肪群でも脂質は残っている。これは12か月時点で実際に食べていた平均の比率である。

「主食を食べたから失敗」「油を使ったから失敗」という判定は、少なくともこの試験の食事像とは合わない。[1] 惣菜売り場で考えるなら、ご飯の量に加えて、おかずの内容も選ぶことになる。減らしたものの代わりに何を選び、夕食全体をどう組み立てたかまでが、比較する食事の内容になる。

DIETFITSの割り当ては低脂肪群305人、低炭水化物群304人だった。食事の質を重視しながら、長く続けられる最も低い脂質量または炭水化物量を探す支援を受けた。[1] 一方、148人の試験では低脂肪群60人、低炭水化物群59人が介入を完了した。[20] 食事の設定と、最後まで参加した人の数の両方が、その成績を理解する手がかりになる。

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大きな長期試験では、平均の体重差は明確でなかった

DIETFITSは、糖尿病のない18〜50歳の成人609人を対象とした12か月の無作為化比較試験である。参加者は過体重または肥満で、体格の指標であるBMIは28〜40、平均年齢は40歳、女性は57%だった。試験を完了したのは481人、全体の79%である。[1] 糖尿病のある人を対象にした試験ではなく、治療中の食事の選択へそのまま当てはめることはできない。

平均体重の変化は、低脂肪群で−5.3kg、低炭水化物群で−6.0kgだった。群間差は0.7kgで、95%信頼区間は−0.2〜1.6kgだった。[1] 信頼区間は差の推定に伴う不確かさを表す範囲である。この範囲が差のない状態を含むため、研究は両群の体重変化に統計学的な有意差を認めなかった。[1]

平均値だけを見れば低炭水化物群の減少が大きい。しかし、小数点の大小と、方法の優劣を確かめたという判断は別だ。この試験からは「誰でも糖質制限のほうが痩せる」と結論できない。同時に、両方の群で平均体重が減っているので、「差がないから両方とも無意味」と読むのも誤りである。[1]

もっと長い比較もある。平均年齢45.5歳の307人を対象に、生活習慣を変える包括的な行動支援と低炭水化物食または低脂肪食を組み合わせた試験では、減量は1年で約11kg、2年で約7kgだった。どの測定時点でも体重、体組成、骨密度に群間差はなかった。[12] 体組成とは、体重を脂肪などの構成要素に分けて見る考え方である。

この結果には、時間の読み方というもうひとつの意味がある。1年の減少量を2年後もそのまま保ったわけではない。[12] 食事を始めてから減り続ける一直線のグラフを期待すると、実際の長期成績から離れてしまう。どちらの方法を選ぶにしても、始めた時点の献立だけでなく、その後の続け方や見直し方まで考える必要がある。

ただし、この試験は強い行動支援を伴い、糖尿病や脂質異常のある人を除外し、2年時点の脱落も多かった。[12] 低炭水化物群では最初の3か月に炭水化物を1日20gに制限し、その後は週ごとに1日量を5gずつ増やした。低脂肪群は脂質のエネルギー比率を30%以下とし、摂取エネルギーも制限した。[12] 開始時の設定を固定するのではなく、その後に食事を調整する段階も含めた比較だった。

糖質制限が有利という研究も、きちんと読む

DIETFITSだけで結論を閉じることはできない。先ほどの148人の比較試験では、12か月後の体重変化の群間差は低炭水化物群に有利な−3.5kgで、95%信頼区間は−5.6〜−1.4kgだった。体脂肪についても低炭水化物群の改善が大きかった。[20] 同じ長期比較でも、有意差のある試験は存在する。

では、多くの試験を統合するとどうなるか。メタ分析とは、複数の研究結果を統計的に統合する方法である。成人6,499人を含む38試験の系統的レビューとメタ分析では、6〜12か月の平均体重変化は低炭水化物食に有利で、群間差は−1.30kg、95%信頼区間は−2.02〜−0.57kgだった。[18] 系統的レビューは、あらかじめ決めた方法で研究を集めて評価する取り組みを指す。

低脂肪食より平均1.30kg多く減った、という差である。[18] この解析は体重だけでなく、血液中の脂質も比較し、追跡期間を分けて結果を統合した。成人の無作為化比較試験を集めているため、6〜12か月という同じ時間枠で体重と血液指標を併せて検討できる。[18]

通常の食事を比較相手にした解析も参考になる。過体重または肥満の成人を扱う121試験、21,942人のネットワークメタ分析では、6か月の減量効果は低炭水化物食で4.63kg、低脂肪食で4.37kgと近かった。両方とも通常の食事との比較で、根拠の確実性は中等度と評価された。[9] ネットワークメタ分析は、複数の食事法の比較をつなげて評価する手法である。

その解析では12か月になると、食事法全体で減量効果が弱まった。[9] これは、低炭水化物食と低脂肪食の直接の群間差を示す数字とは違う。普段の食事から変える効果と、変更した方法同士の差は、違う問いへの答えだ。数字の大きいほうだけを抜き出すと、比較相手がすり替わってしまう。

時間による変化は、別の統合結果にも表れている。エネルギーを制限しない低炭水化物食と、エネルギーを制限する低脂肪食を比べた5試験447人の解析でも、低炭水化物食に有利な差は6か月では−3.3kg、12か月では−1.0kgで、後者の95%信頼区間は−3.5〜1.5kgだった。[11]

38試験の統合の信頼区間は差のない状態を含まない。[18] 一方、DIETFITSの信頼区間はそれを含む。[1] この違いは、片方が正しく片方が間違いという判定ではない。統合した対象と単独の試験の対象は違い、確かめている食事の幅も同じではない。読み手が必要なのは、差が認められるかという判断と、その差がどれくらいかという判断を分けることだ。38試験をまとめた解析は2019年9月までの研究を対象とし、結果を取り出す作業は3人の評価者が独立して行った。研究の偏りも評価したうえで統合している。[18]

短期に大きな差があった話と、長期には差が小さいという話は、必ずしも矛盾しない。[11] 研究の年、参加者、食事の設定、比較期間が違うからだ。自分が続けたい食事を選ぶなら、始めてすぐの写真だけでなく、生活の季節が変わった後の成績にも目を向けたい。

数字で読む糖質制限と脂質制限

609人の12か月試験:低脂肪食−5.3kg、低炭水化物食−6.0kg。有意な群間差なし。[1]

38試験の統合:6〜12か月の群間差−1.30kg。低炭水化物食に有利、95%信頼区間−2.02〜−0.57kg。[18]

148人の12か月試験:群間差−3.5kg。低炭水化物食に有利、95%信頼区間−5.6〜−1.4kg。[20]

307人の2年試験:減量は約7kg。体重の群間差なし、行動支援を併用。[12]

121試験の統合:6か月の通常食との差は4.63kgと4.37kg。食事法同士の直接比較とは別の数字。[9]

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