連載「その常識、研究では?」全10回の第9回です。
サプリメントの話は難しくなりがちです。「効く」「効かない」の二択で語られることが多い一方、実際の研究は「どの集団に、どの条件で、どれくらいの大きさの変化が、どれくらい確からしく示されたか」という形をしています。二択に押し込めた瞬間に、情報のほとんどが失われます。
そこでこの回は、効能を断定する書き方をしません。代わりに証拠水準——ある主張がどの種類の研究にどこまで支えられているか——で並べます。取り上げるのはクレアチン、HMB、BCAAの3つです。
結論を先に書きます。クレアチンは筋力トレーニングと組み合わせた場合の除脂肪量と筋力について、複数の統合研究が一貫した小さい効果を報告している。HMBは訓練経験のある人では効果が乏しく、系統的レビューの多くが「効果なし」か「判定不能」に落ち着く。BCAAは、タンパク質摂取が足りている人への上乗せ効果が示されていない——これが現時点での要約です。そして製品の汚染という、効能とは別の実務的な問題があります。

証拠水準という物差し
並べる前に物差しを用意します。ここでは次の3点で整理します。第一に、研究の種類(個別の試験か、複数を統合したものか、統合をさらに束ねたものか)。第二に、効果の大きさ(小さいのか、実感できる水準なのか)。第三に、一貫性(複数の統合が同じ方向を示すのか、割れているのか)です。
| 成分 | 証拠の種類 | 効果の方向と大きさ | 一貫性 |
|---|---|---|---|
| クレアチン | 複数の系統的レビューとメタ解析 | 筋力トレーニング併用時に除脂肪量と筋力が小さく増加 | 高い(複数の独立した統合が同方向) |
| HMB | 系統的レビューを束ねたアンブレラレビュー | 訓練経験者では乏しい。身体機能への効果は報告なし | 低い(多くが効果なしか判定不能) |
| BCAA | 系統的レビュー | 体組成・成績への恩恵はごくわずか。筋肉痛は軽減の報告 | 低い(総タンパク質摂取量が報告されていない研究が多い) |
クレアチン——最も証拠の厚い成分
Desai I, Wewege MA, Jones MD, et al. The Effect of Creatine Supplementation on Resistance Training-Based Changes to Body Composition: A Systematic Review and Meta-analysis. Journal of Strength and Conditioning Research. 2024;38(10):1813-1821.
50歳未満の成人を対象に12件を統合したこの解析は、筋力トレーニングのみと比べて、クレアチンの併用で除脂肪量が1.14kg増加(95%CI 0.69〜1.59)、体脂肪率が0.88%減少(95%CI -1.66〜-0.11)、体脂肪量が0.73kg減少(95%CI -1.34〜-0.11)したと報告しました。訓練経験の有無でも、糖質を一緒に摂るかどうかでも、結果は変わっていません。
Chilibeck PD, Kaviani M, Candow DG, Zello GA. Effect of creatine supplementation during resistance training on lean tissue mass and muscular strength in older adults: a meta-analysis. Open Access Journal of Sports Medicine. 2017;8:213-226.
高齢者についても22件・721名(平均年齢57〜70歳)の統合があります。週2〜3回のトレーニングを7〜52週間行った試験をまとめると、除脂肪組織量の平均差が1.37kg(95%CI 0.97〜1.76)、チェストプレス筋力の標準化平均差が0.35(0.16〜0.53)、レッグプレス筋力が0.24(0.05〜0.43)でした。
ここで注意が必要です。体重や除脂肪量の増加の一部は、水分の増加による可能性があります。クレアチンは筋内に水を伴って蓄えられるため、二重エネルギーX線吸収測定法のような体組成の測定では、筋タンパク質の増加と区別がつきません。この懸念に応えるため、画像で直接筋の大きさを測った研究だけを集めた統合もあります。
Burke R, Piñero A, Coleman M, et al. The Effects of Creatine Supplementation Combined with Resistance Training on Regional Measures of Muscle Hypertrophy: A Systematic Review with Meta-Analysis. Nutrients. 2023;15(9):2116.
6週間以上の10件・44の結果を統合したところ、標準化された効果は0.11(95%信用区間 -0.02〜0.25)——方向は併用に有利だが、非常に小さいという結果でした。上半身・下半身の筋厚の変化は0.10〜0.16cmです。若年者のほうが高齢者よりわずかに大きいという傾向もありましたが、こちらも信用区間は0をまたいでいます。
誰に効くかについても分解が進んでいます。Delpino らは35件・1192名を統合し、筋力トレーニングと併用した場合には除脂肪量が1.10kg増加(95%CI 0.56〜1.65)する一方、運動なしでは0.03kg(95%CI -0.65〜0.70)で有意でないことを示しました。性別では男性で1.46kg(95%CI 0.47〜2.46)、女性で0.29kg(95%CI -0.43〜1.01、有意でない)と差が出ています。つまりクレアチンは単独で筋肉を増やす成分ではなく、トレーニングの効果を少し底上げする成分だということです。運動全般との組み合わせについてはカフェインとクレアチンの研究を扱った記事もあります。

HMB——訓練経験者では像が結ばない
Phillips SM, Lau KJ, D’Souza AC, Nunes EA. An umbrella review of systematic reviews of β-hydroxy-β-methyl butyrate supplementation in ageing and clinical practice. Journal of Cachexia, Sarcopenia and Muscle. 2022;13(5):2265-2275.
HMBはロイシンという必須アミノ酸の代謝産物で、筋の分解を抑えるとされてきました。このアンブレラレビュー(系統的レビューを束ねて評価する方法)は、15件の系統的レビューを検討しています。結果、除脂肪軟組織量の増加を支持する所見が得られたのは15件のうち5件でした。残る10件のうち6件は「差がない」ほうを支持し、4件は「効果を判定するには証拠が不十分」としています。
筋力についても像は結びませんでした。そして身体機能について、正の効果を報告した系統的レビューは一件もありません。著者らの総括は、HMBが除脂肪軟組織量を増やす、あるいは筋力を改善するという支持は小さく一貫性を欠き、身体機能の改善についてはまったく証拠がない、というものです。
一方で、国際スポーツ栄養学会は2025年にHMBについての見解書を出しています。Rathmacher らがまとめたこの文書では、1日あたり体重1kgあたり38mgの摂取が運動と組み合わせて体組成を改善しうること、少なくとも1年までの摂取について安全性の懸念が報告されていないことが挙げられています。ただし同じ文書に、「未訓練者では筋力とパワーを改善しうるが、鍛えられた選手での成績への恩恵は一貫しない」と明記されています。この記述と上のアンブレラレビューは、実は矛盾していません。効果が見えるのは、負荷が大きく変化したときや栄養が不足したときであり、十分に食べて鍛え慣れている人ではない——という整理になります。
BCAA——上乗せ効果が示されていない
Martinho DV, Nobari H, Faria A, et al. Oral Branched-Chain Amino Acids Supplementation in Athletes: A Systematic Review. Nutrients. 2022;14(19):4002.
分岐鎖アミノ酸(BCAA)はロイシン・イソロイシン・バリンの総称で、筋タンパク質合成を促す信号として働きます。2298件の記録から条件を満たした24件を検討したこの系統的レビューは、BCAAが同化の信号を活性化する傾向はあるものの、成績と体組成への恩恵はごくわずかだったと報告しました。筋力トレーニングを行う参加者では運動後の筋肉痛が軽減される一方、持久系では結果が一致しませんでした。
著者らが挙げる最大の限界が重要です。ほとんどの研究が、参加者の1日の総タンパク質摂取量を報告していませんでした。BCAAはタンパク質に含まれる成分ですから、すでに十分なタンパク質を摂っている人に追加しても、新しいものは何も加わりません。総摂取量が分からなければ、「BCAAの効果」と「タンパク質が足りていなかったのを補った効果」を区別できません。第3回で見たとおり、結果を左右しているのは総量のほうです。タンパク質そのものについてはタンパク質はなぜ有効かを扱った記事があります。

効能とは別の問題——汚染
Duiven E, van Loon LJC, Spruijt L, Koert W, de Hon OM. Undeclared Doping Substances are Highly Prevalent in Commercial Sports Nutrition Supplements. Journal of Sports Science and Medicine. 2021;20(2):328-338.
ここからは効くかどうかとは別の話です。オランダの研究陣が、ホルモン調節・筋量増加・脂肪減少・エネルギー増強を謳う「高リスク」の製品66点を、21ブランド・17のオンライン店舗から購入し、認定検査機関で分析しました。結果、66点のうち25点(38%)から、表示されていないドーピング禁止物質が検出されました。興奮剤(オキシロフリン、BMPEA、メチルヘキサンアミンなど)、たんぱく同化ステロイド、ベータ2作用薬、さらにベータ遮断薬まで含まれていました。
著者らは、推奨量で摂取した場合にドーピング違反を招きうる製品があること、3点(4.5%)については一般的な健康リスクもありうることを指摘しています。これは競技者だけの問題ではありません。表示にない興奮剤や遮断薬を知らずに摂ることは、誰にとっても危険です。
この問題は新しいものではありません。Geyer らは2001年から2002年にかけて、13か国で購入した634点の栄養補助食品を分析し、ホルモン成分を謳っていない製品のおよそ15%から、表示のないたんぱく同化男性化ステロイド(主にプロホルモン)が検出されたと報告しています。20年を隔てた二つの調査が、同じ問題を指しています。
現在どこまで言えるか
- クレアチンは、筋力トレーニングと併用した場合に除脂肪量と筋力の小さい増加が、複数の独立した統合で一貫して報告されている。運動なしでは有意な効果が示されていない。
- 画像で筋の大きさを直接測ると、効果は非常に小さい(標準化効果0.11)。体組成測定での増加の一部は水分の可能性がある。
- HMBについては、15件の系統的レビューのうち除脂肪軟組織量の増加を支持したのは5件にとどまる。身体機能への正の効果を報告したレビューはない。
- BCAAは、1日の総タンパク質摂取量を報告した研究が乏しく、上乗せ効果を評価できる状態にない。
- 高リスクとされる製品群では、表示のない禁止物質が38%から検出された調査がある。20年前の調査でも約15%だった。
限界も明記します。ここで挙げた統合には、盲検化が不十分な試験や、資金提供の情報が明記されていない試験が含まれます。サプリメントの研究は製造側が資金を出していることが少なくなく、出版バイアスも働きやすい領域です。参加者は若い男性に偏り、女性や高齢者のデータは不足しています。介入期間も6週間から数か月と短く、年単位の安全性と有効性はほとんど検証されていません。汚染の調査は「高リスク」と判断された製品を意図的に選んでいるため、この38%という数字を市場全体に当てはめることはできません。
実務的な読み替えはこうなります。サプリメントは医薬品ではなく、トレーニングと食事の代わりにはなりません。順番としては、まず1日のタンパク質と総エネルギーを確保し、トレーニングを続けられる形にすることが先です。そのうえで何か足すなら、証拠が最も厚いのはクレアチンですが、期待できる大きさは小さい。製品を選ぶなら、第三者機関による検査を受けたものを選ぶ、という選び方が、汚染のリスクに対する現実的な対処になります。持病のある方、薬を服用している方、妊娠中の方は、摂取を始める前に必ず医療機関にご相談ください。
最後に、この回で身につけてほしいのは個々の成分の判定ではなく物差しのほうです。ある成分について「効果が報告されている」と言われたら、次の三つを確かめる。誰を対象にした研究か(未訓練者か、鍛え慣れた人か、高齢者か)。何と比べた効果か(何もしない対照か、トレーニングのみか)。どれくらいの大きさか(除脂肪量で1kgなのか、0.1kgなのか)。この三つを外して語られる「効く」は、ほとんど情報を持っていません。次に新しい成分が話題になったときも、同じ物差しを当てれば判断できます。そして、三つのどれかに答えられない売り文句に出会ったら、それは研究の結論ではなく宣伝の言葉だと考えて差し支えありません。
次回予告
最終回となる第10回は「『効かせる』とは何か——意識の向け方と総括」を扱います。狙った筋に意識を向けることの筋電図所見と、力を出す場面では外に注意を向けたほうがよいという所見を並べ、連載全体の仕分けを行います。
この連載の全10回
- 第1回|「超回復」は本当にあるのか
- 第2回|筋肉痛は効いた証拠か——遅発性筋痛と筋肥大
- 第3回|プロテインは運動後30分以内か
- 第4回|重い重量でなければ筋肥大しないのか
- 第5回|限界まで追い込む必要はあるか
- 第6回|有酸素運動は筋肉を減らすのか——干渉効果
- 第7回|フルレンジでなければ効かないのか——可動域と部分反復
- 第8回|マシンとフリーウエイト、どちらが優れているのか
- 第9回|サプリメントは必要か——証拠水準を並べる(この記事)
- 第10回|「効かせる」とは何か——意識の向け方と総括
出典
- Geyer H, Parr MK, Koehler K, Mareck U, Schänzer W, Thevis M. Nutritional supplements cross-contaminated and faked with doping substances. Journal of Mass Spectrometry. 2008;43(7):892-902.
- Chilibeck PD, Kaviani M, Candow DG, Zello GA. Effect of creatine supplementation during resistance training on lean tissue mass and muscular strength in older adults: a meta-analysis. Open Access Journal of Sports Medicine. 2017;8:213-226.
- Duiven E, van Loon LJC, Spruijt L, Koert W, de Hon OM. Undeclared Doping Substances are Highly Prevalent in Commercial Sports Nutrition Supplements. Journal of Sports Science and Medicine. 2021;20(2):328-338.
- Delpino FM, Figueiredo LM, Forbes SC, Candow DG, Santos HO. Influence of age, sex, and type of exercise on the efficacy of creatine supplementation on lean body mass: A systematic review and meta-analysis of randomized clinical trials. Nutrition. 2022;103-104:111791.
- Phillips SM, Lau KJ, D’Souza AC, Nunes EA. An umbrella review of systematic reviews of β-hydroxy-β-methyl butyrate supplementation in ageing and clinical practice. Journal of Cachexia, Sarcopenia and Muscle. 2022;13(5):2265-2275.
- Martinho DV, Nobari H, Faria A, et al. Oral Branched-Chain Amino Acids Supplementation in Athletes: A Systematic Review. Nutrients. 2022;14(19):4002.
- Burke R, Piñero A, Coleman M, et al. The Effects of Creatine Supplementation Combined with Resistance Training on Regional Measures of Muscle Hypertrophy: A Systematic Review with Meta-Analysis. Nutrients. 2023;15(9):2116.
- Desai I, Wewege MA, Jones MD, et al. The Effect of Creatine Supplementation on Resistance Training-Based Changes to Body Composition: A Systematic Review and Meta-analysis. Journal of Strength and Conditioning Research. 2024;38(10):1813-1821.
- Rathmacher JA, Pitchford LM, Stout JR, et al. International society of sports nutrition position stand: β-hydroxy-β-methylbutyrate (HMB). Journal of the International Society of Sports Nutrition. 2025;22(1):2434734.
この記事は公表された研究の要約であり、診断や治療の助言ではありません。特定の製品の使用を勧めるものでもありません。腎疾患・肝疾患を指摘されている方、薬を服用している方、妊娠中・授乳中の方、未成年の方は、サプリメントの摂取を始める前に必ず医療機関にご相談ください。






