連載「その常識、研究では?」全10回の第6回です。

「走ると筋肉が落ちる」「筋トレの日に有酸素運動を入れると効果が消える」。ジムでよく聞く話で、専門用語では干渉効果(interference effect)と呼ばれます。筋力トレーニングと持久性トレーニングを同時に行うと、筋力トレーニング単独よりも適応が小さくなる、という現象です。

この話には、はっきりした出発点があります。1980年に発表された一本の論文です。ところが、そこから40年以上の研究を追いかけると、干渉効果は「ある」とも「ない」とも言い切れない、条件に強く依存する現象であることが見えてきます。

結論を先に書きます。筋肥大への干渉はほとんど検出されない。最大筋力への干渉も統合すると有意ではない。明確に干渉が出るのは爆発的な筋力(素早く大きな力を出す能力)で、しかも同じセッション内で両方を行った場合に限られる——これが現時点での要約です。健康のために週に数回歩いたり自転車を漕いだりする程度の運動量が、筋トレの成果を打ち消すことはありません。

その常識研究では 第6回 有酸素運動は筋肉を減らすのか干渉効果の実際|オンザショア立川店 立川駅徒歩1分年中無休の溶岩ホットヨガスタジオ

出自——1980年の一本の論文

Hickson RC. Interference of strength development by simultaneously training for strength and endurance. European Journal of Applied Physiology and Occupational Physiology. 1980;45(2-3):255-263.

ロバート・ヒクソンは、自身が研究のかたわら自転車のトレーニングを始めたところ脚の筋力が落ちたと感じ、これを実験で確かめようとしました。参加者を3群に分けます。筋力群(S)は1日30〜40分を週5日、持久群(E)は1日40分を週6日、そして両方群(S+E)はSとEの日課を両方こなす、という設計です。期間は10週間でした。

結果、最大酸素摂取量は自転車で約25%、トレッドミルで約20%増加し、これはE群とS+E群で同等でした。S群では増えていません。脚の筋力はS群で一貫して伸び続け、E群ではほとんど伸びませんでした。問題はS+E群です。最初の7週間はS群と同じ速度で伸びていたのに、その後頭打ちになり、9週目と10週目には低下しました。

この結果は強い印象を残しました。ただし設計を見れば分かるとおり、S+E群の運動量は他の2群の合計です。両群の日課をそのまま足し合わせた負荷を10週間続けた末の低下が、「干渉」なのか「単なる過負荷」なのかを、この設計では分離できません。また参加者は少数で、現代の基準から見れば予備的な研究です。それでも「有酸素運動は筋力を邪魔する」という命題は、この一本から広まりました。

もうひとつ見落とされがちな点があります。この試験で低下したのは筋力であって、筋肉の大きさではありません。当時は筋の断面積を測る手段が限られており、筋肥大への影響は主要な論点ではありませんでした。にもかかわらず、この論文はしばしば「有酸素運動をすると筋肉が落ちる」という主張の根拠として引かれます。元の所見にない結論が、引用の過程で付け足された——連載でこれまで何度か見てきた構図が、ここでも繰り返されています。

なぜ起きるのか——提案されたモデル

2000年、Docherty と Sporer は、この現象を体系的に調べるための枠組みを提案しました。筋力側の目標(筋肥大なのか神経系の適応なのか)と持久側の目標(最大酸素摂取量なのか乳酸性作業閾値なのか)を明確に区別し、群間で運動量を可能な限り揃え、回復期間を確保したうえで検証すべきだ、という主張です。裏を返せば、当時までの研究はそれができていなかったということでもあります。

分子レベルの説明もよく引かれます。持久運動で活性化される経路が、筋タンパク質合成を促す経路を抑制する、という筋道です。ただしこの説明は培養細胞や急性の実験に基づくもので、実際にヒトが数か月トレーニングしたときの筋肥大の差を説明できているわけではありません。

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最初の大きな統合

Wilson JM, Marin PJ, Rhea MR, et al. Concurrent training: a meta-analysis examining interference of aerobic and resistance exercises. Journal of Strength and Conditioning Research. 2012;26(8):2293-2307.

21件の研究・422の効果量を統合したこの解析は、持久トレーニングのどの要素が筋力トレーニングの成果を損なうのかを調べました。

適応筋力のみ持久のみ併用
筋肥大の効果量1.230.270.85
筋力の効果量1.760.781.44
パワーの効果量0.910.110.55

併用は筋力・筋肥大とも持久のみを有意に上回りました。注目すべきは調整因子です。筋力トレーニングと併せて行うのが走行の場合には筋肥大と筋力の有意な低下が見られましたが、自転車の場合には見られませんでした。また持久トレーニングの頻度(相関-0.26〜-0.35)と1回の時間(-0.29〜-0.75)はいずれも負の相関を示しています。つまり干渉の大きさは、種目と量で決まるということです。

より新しい統合が示したこと

Schumann M, Feuerbacher JF, Sünkeler M, et al. Compatibility of Concurrent Aerobic and Strength Training for Skeletal Muscle Size and Function: An Updated Systematic Review and Meta-Analysis. Sports Medicine. 2022;52(3):601-612.

4週間以上の監督下トレーニングを対象に、43件の研究を統合したものです。結果は、最大筋力(標準化平均差-0.06、95%CI -0.20〜0.09、p=0.446)にも筋肥大(-0.01、95%CI -0.16〜0.18、p=0.919)にも干渉は検出されませんでした。有意に低下したのは爆発的筋力だけです(-0.28、95%CI -0.48〜-0.08、p=0.007)。

そして爆発的筋力の低下は、同じセッション内で両方を行った場合に顕著で(p=0.043)、3時間以上あけた場合には有意ではありませんでした。持久運動の様式(自転車か走行か)、頻度(週5回を境に分けた比較)、訓練状態、年齢(40歳を境に分けた比較)のいずれも、結果を変えませんでした。

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筋線維のレベルで見ると

Lundberg TR, Feuerbacher JF, Sünkeler M, Schumann M. The Effects of Concurrent Aerobic and Strength Training on Muscle Fiber Hypertrophy: A Systematic Review and Meta-Analysis. Sports Medicine. 2022;52(10):2391-2403.

同じ研究陣が、生検で測った筋線維の大きさだけを対象に15件を統合しました。すると、全体で標準化平均差-0.23(95%CI -0.46〜-0.00、p=0.050)という、ぎりぎり有意な小さい負の効果が出ています。線維型別ではタイプI線維で-0.34(95%CI -0.72〜0.04、p=0.078)、タイプII線維で-0.13(95%CI -0.39〜0.12、p=0.315)と、いずれも有意ではありません。

ここで様式の違いが再び顔を出します。タイプI線維については、持久運動が走行の場合に負の効果が見られ(-0.81、95%CI -1.26〜-0.36)、自転車の場合には見られませんでした。走行には着地の衝撃とエキセントリックな負荷が伴い、自転車にはそれがありません。この差が原因として有力ですが、実施順序・頻度・訓練状態・様式による他のサブグループ解析では差が出ておらず、確定的とは言えません。筋全体の大きさでは干渉が出ず、筋線維のレベルではわずかに出る——この食い違いは、測定法の感度の違いによる可能性もあります。

誰に起きるのか——性差と訓練状態

Huiberts RO, Wüst RCI, van der Zwaard S. Concurrent Strength and Endurance Training: A Systematic Review and Meta-Analysis on the Impact of Sex and Training Status. Sports Medicine. 2024;54(2):485-503.

59件の研究・1346名を統合したこの解析は、干渉の現れ方に性差があることを示しました。下肢筋力の適応は男性では鈍り(-0.43、95%CI -0.64〜-0.22)、女性では鈍りませんでした(0.08、95%CI -0.34〜0.49)。群間差はP=0.03です。上肢筋力(P=0.67)、パワー(P=0.37)、最大酸素摂取量(P=0.13)には性差が見られませんでした。

ただし著者らは、筋肥大については結論を出すにはデータが不足していると明記しています。また訓練状態については、持久トレーニングの経験がない人でのみ最大酸素摂取量の伸びが鈍り(P=0.04)、他の指標では差がありませんでした。女性を対象にした研究と、高度に鍛えられた人を対象にした研究が足りない、というのが著者らの総括です。

順序と間隔で変わる

Robineau J, Babault N, Piscione J, et al. Specific Training Effects of Concurrent Aerobic and Strength Exercises Depend on Recovery Duration. Journal of Strength and Conditioning Research. 2016;30(3):672-683.

アマチュアのラグビー選手58名を、対照群・併用群(間隔0時間、6時間、24時間)・筋力のみ群に割り付け、7週間、それぞれの質のセッションを週2回ずつ行った試験です。結果、ベンチプレスとハーフスクワットの最大筋力の伸びは、間隔0時間の群が他のどの群よりも小さくなりました。毎秒60度の等速性最大随意収縮は24時間あけた群のほうが高くなる可能性が高く、最大酸素摂取量の伸びも24時間あけた群で大きくなっています。

順序についても統合があります。Eddens らは10件を統合し、筋力トレーニングを先、持久トレーニングを後にする順序が、下肢の動的筋力に有利だと報告しました(加重平均差6.91%、95%CI 1.96〜11.87、p=0.006)。一方、下肢の筋肥大(1.15%、95%CI -1.56〜3.87、p=0.40)と等尺性筋力(-0.04%、95%CI -3.19〜3.11、p=0.98)には順序の影響がありませんでした。有酸素運動の効果そのものについては筋トレと有酸素運動の比較や高強度インターバルトレーニングを扱った記事があります。

そもそも干渉は起きているのか

反対側からの整理も紹介しておきます。Murach と Bagley は、ヒトの筋肥大に対する干渉効果の証拠は従来考えられてきたほど説得力がないと論じ、条件によっては併用のほうが筋肥大を増強しうるとまで述べています。30年以上「自明」とされてきた命題が、文献を丁寧に見直すと自明でなくなる、という指摘です。

この見方は、上で見た統合の結果と整合します。筋肥大については干渉が検出されず、最大筋力についても統合すると有意でない。干渉が確実に残るのは爆発的筋力で、それも同一セッションという条件つきです。競技として跳躍や短距離を行う人には意味のある話ですが、筋肉を大きくしたい、あるいは健康のために鍛えたいという目的の人にとっては、優先度の低い心配だということになります。

現在どこまで言えるか

  1. 筋肥大への干渉は検出されていない。43件を統合した効果量は-0.01で、信頼区間は0をまたぐ。
  2. 最大筋力への干渉も、統合すると有意ではない(-0.06)。
  3. 明確に干渉が出るのは爆発的筋力(-0.28)で、同一セッションで行った場合に限られる。3時間以上あければ有意ではなくなる。
  4. 持久運動の様式が効く可能性がある。走行では筋線維レベルの負の効果が見られ、自転車では見られない。
  5. 干渉は男性の下肢筋力で見られ、女性では見られなかった。ただし筋肥大についてはデータ不足で結論が出せない。

限界も明記します。これらの統合に含まれる研究は、期間が4週間から数か月と短く、参加者は未訓練者か中程度の活動量の人に偏っています。競技レベルの選手のデータは乏しく、女性を対象にした研究も不足しています。「干渉が検出されなかった」は「干渉が存在しない」と同じではありません——検出に必要な期間・強度・標本数が足りていない可能性は残ります。持久トレーニングの量も、多くの研究では競技者の実際の量よりかなり少なめです。

測定法の問題も残ります。上で見たとおり、筋全体の大きさを超音波や画像で測ると干渉は出ず、生検で筋線維の断面積を測るとわずかに出ます。どちらが正しいのかは決まっていません。筋線維の断面積は数十本の線維を数えて代表させる値であり、標本の取り方でぶれます。一方、筋全体の厚みは水分量や測定者の手技に影響されます。異なる測定法が異なる答えを返すとき、統合の平均値だけを見て結論を出すのは危険です。

実務的な読み替えはこうなります。健康のための有酸素運動を、筋トレを理由にやめる必要はありません。気をつけるとすれば順序と間隔で、同じ日に行うなら筋力トレーニングを先にし、可能なら数時間あける。跳躍力や瞬発力を鍛えている人は、長時間の持久走を筋力トレーニングの直前に入れないほうがよい。それ以上の心配は、現在の証拠からは正当化されません。

逆に、何が変わらないのかも書いておきます。総量が増えれば疲労は増えます。干渉効果が検出されないことと、両方をいくらでも足してよいことは別です。ヒクソンの試験でS+E群が失速したのは、干渉という特殊な機序ではなく、単純に回復が追いつかなかっただけかもしれません——そしてその可能性は、いまも否定されていません。持久トレーニングを足すなら、筋力トレーニングの量を据え置いたまま上乗せするのではなく、週全体の負荷として見直すほうが理にかなっています。心疾患や呼吸器疾患がある方は、運動量を増やす前に医療機関で相談してください。

次回予告

第7回は「フルレンジでなければ効かないのか——可動域と部分反復」を扱います。可動域は大きいほどよいという定石が、筋が引き伸ばされる位置での部分反復と比べたときにどうなるのかを見ていきます。

この連載の全10回

  1. 第1回|「超回復」は本当にあるのか
  2. 第2回|筋肉痛は効いた証拠か——遅発性筋痛と筋肥大
  3. 第3回|プロテインは運動後30分以内か
  4. 第4回|重い重量でなければ筋肥大しないのか
  5. 第5回|限界まで追い込む必要はあるか
  6. 第6回|有酸素運動は筋肉を減らすのか——干渉効果(この記事)
  7. 第7回|フルレンジでなければ効かないのか——可動域と部分反復
  8. 第8回|マシンとフリーウエイト、どちらが優れているのか
  9. 第9回|サプリメントは必要か——証拠水準を並べる
  10. 第10回|「効かせる」とは何か——意識の向け方と総括

出典

  1. Hickson RC. Interference of strength development by simultaneously training for strength and endurance. European Journal of Applied Physiology and Occupational Physiology. 1980;45(2-3):255-263.
  2. Docherty D, Sporer B. A proposed model for examining the interference phenomenon between concurrent aerobic and strength training. Sports Medicine. 2000;30(6):385-394.
  3. Wilson JM, Marin PJ, Rhea MR, et al. Concurrent training: a meta-analysis examining interference of aerobic and resistance exercises. Journal of Strength and Conditioning Research. 2012;26(8):2293-2307.
  4. Murach KA, Bagley JR. Skeletal Muscle Hypertrophy with Concurrent Exercise Training: Contrary Evidence for an Interference Effect. Sports Medicine. 2016;46(8):1029-1039.
  5. Robineau J, Babault N, Piscione J, Lacome M, Bigard AX. Specific Training Effects of Concurrent Aerobic and Strength Exercises Depend on Recovery Duration. Journal of Strength and Conditioning Research. 2016;30(3):672-683.
  6. Eddens L, van Someren K, Howatson G. The Role of Intra-Session Exercise Sequence in the Interference Effect: A Systematic Review with Meta-Analysis. Sports Medicine. 2018;48(1):177-188.
  7. Schumann M, Feuerbacher JF, Sünkeler M, et al. Compatibility of Concurrent Aerobic and Strength Training for Skeletal Muscle Size and Function: An Updated Systematic Review and Meta-Analysis. Sports Medicine. 2022;52(3):601-612.
  8. Lundberg TR, Feuerbacher JF, Sünkeler M, Schumann M. The Effects of Concurrent Aerobic and Strength Training on Muscle Fiber Hypertrophy: A Systematic Review and Meta-Analysis. Sports Medicine. 2022;52(10):2391-2403.
  9. Huiberts RO, Wüst RCI, van der Zwaard S. Concurrent Strength and Endurance Training: A Systematic Review and Meta-Analysis on the Impact of Sex and Training Status. Sports Medicine. 2024;54(2):485-503.

この記事は公表された研究の要約であり、診断や治療の助言ではありません。心疾患・呼吸器疾患・整形外科的な障害を指摘されている方、運動中に胸の痛みや強い息切れを感じる方は、運動の量や種類を変える前に医療機関にご相談ください。

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