格闘技の競技力を高めるサプリメントについて、2025年にベイズ流ネットワークメタ解析が発表されました。67本のRCT・エリート格闘技選手1,026人が、26種類のサプリメントまたはプラセボに割り付けられたデータの統合です。

結論は「カフェイン、重炭酸ナトリウム、その併用、クレアチン、クレアチン+重炭酸ナトリウム、β-アラニンが競技力を改善しうる」というものでした。

ところが、55本を組み入れた別の系統的レビュー・メタ解析は、こう結論しています——「カフェインは、格闘技における競技力向上について強い証拠を示した唯一の栄養エルゴジェニックエイドである」。

同じ領域、同じ時期、同じ対象。この記事は、そのあいだに何があるのかを見ます。

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ネットワークメタ解析が並べた効果量

まず、最も網羅的な統合から。50本の試験をネットワークメタ解析に組み入れた結果です。

アウトカムプラセボより有意に優った介入(SMD)
血中乳酸濃度重曹+カフェイン 2.3/カフェイン 0.72/β-アラニン 0.58/重曹 0.54
最終心拍数カフェイン 0.27
平均パワークレアチン+重曹 2.2/クレアチン 1.0/重曹 0.42
ピークパワークレアチン+重曹 1.6/クレアチン 1.1/重曹 0.35
蹴りの回数カフェイン 1.4(95%CrI 0.19〜2.7)
投げの回数カフェイン 0.35(0.081〜0.61)

出典: Luo ら (2025) より作成。CrI = 信用区間。

効果量だけを見れば圧倒的です(Luo, 2025, Scientific Reports)。

「乳酸が上がる」は良いことなのか
この解析で最も大きな効果量が出ているのは血中乳酸濃度の上昇と最終心拍数の上昇です。しかしこれらは競技成績そのものではありません。
乳酸濃度の上昇は「解糖系をより強く動員できた」ことの代理指標として解釈されます。裏を返せば、同じ運動をより苦しくこなしたという解釈も成り立ちます。実際に増えたのは蹴りの回数と投げの回数——これらが競技に直接つながる指標です。
サプリメントのメタ解析を読むときは、アウトカムのリストのうちどれが「勝敗に近い」ものかを最初に選り分ける必要があります。

2022年に677本から55本のRCTを組み入れたレビューは、より保守的な評価を下しています。カフェイン(5〜10 mg/kg)は、高強度動作時にエネルギー産生を解糖経路に頼る能力を高める強い証拠を示した——血中乳酸の産生と耐性の向上によって。その結果、攻撃回数、反応時間、握力、パワー、疲労困憊までの時間などが改善した。

一方、緩衝系のサプリメント(重炭酸ナトリウム、クエン酸ナトリウム、β-アラニン)は「戦闘中の高強度・間欠的な発揮において有望な役割を持ちうるが、持続的な等尺性発揮についてはグラップリング系競技でさらなる研究が必要」。クレアチン、ビーツジュース、グリセロールは「格闘技における競技力向上の証拠を強めるにはさらなる調査が必要」とされました(Vicente-Salar, 2022, Nutrients)。

同じ年の2つのメタ解析が、正反対の結論

カフェインに絞ると、さらに明確な食い違いが見えます。

2022年4月までの26研究(PEDroスケールで良好・優良と評価)を統合したメタ解析の結果です。

アウトカム効果量(95%CI)
握力0.28(0.04〜0.52)、p = 0.02
特殊柔道フィットネステスト(SJFT)の総投げ数0.42(0.06〜0.78)、p = 0.02
血中乳酸(無酸素運動)1.23(0.29〜2.18)
血中乳酸(模擬戦)0.91(0.34〜1.47)
影響がなかった指標
カウンタームーブメントジャンプ高、SJFT指数、柔道着把持持久力テスト、攻撃動作の回数と持続時間、試合終了時の心拍数、主観的運動強度

出典: Delleli ら (2022) より作成。

著者らの結び——「補給の効果は特定の状況下では無効でありうる。したがって用量プロトコルを作る前に、問題としている成績指標を考慮に入れる必要がある」(Delleli, 2022, Nutrients)。

ところが、同じ年に25研究を統合した別のメタ解析は、逆の結果を報告しています。

アウトカム効果量(95%CI)
垂直跳び高0.38(0.04〜0.71)
反応時間−0.98(−1.46〜−0.50)
SJFTの投げ数0.62(0.14〜1.09)
戦闘中の攻撃動作の回数0.40(0.06〜0.74)
戦闘中の攻撃動作の持続時間0.58(0.21〜0.96)
血中乳酸(第1/第2/第3ラウンド後)1.35/1.43/1.98

出典: Díaz-Lara ら (2022) より作成。すべての組み入れ研究が盲検・クロスオーバーデザイン。

一方は「攻撃動作の回数と持続時間に影響なし」、他方は「有意に増加」。同じ年、同じテーマ、ほぼ同じ規模(26本と25本)の二つのメタ解析が、競技に最も近い指標について正反対の結論を出しています(Díaz-Lara, 2022, Critical Reviews in Food Science and Nutrition)。

より小さな系統的レビュー(9本)も、内訳を明かしています——3研究がカフェイン補給のエルゴジェニック効果を検出せず、6研究が有意な正の効果を観察。3〜6 mg/kgの補給が実戦・模擬戦中の解糖系寄与を高め、筋力・パワー・上腕の筋持久力を改善した一方、これらの効果は主観的運動強度の上昇を伴わなかった(López-González, 2018, Journal of the International Society of Sports Nutrition)。

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クレアチンの、階級制競技における逆説

クレアチンには別種の問題があります。

2025年3月までの19研究を検討したナラティブ系統的レビューは、次の結果を報告しました。

アウトカム結果
体重増加。とくに6週間以上の介入、または構造化されたレジスタンストレーニングとの併用時
除脂肪量増加
筋パワー・最大筋力有意に改善(とくに短時間・高強度プロトコル)
競技特異的持久力、回復、疲労影響なし
重篤な有害事象報告なし

出典: Ashtary-Larky ら (2025) より作成。

著者らが冒頭で提起した問いは、まさにこの点でした——「特定の階級に合わせるためにしばしば体重を減らそうとする格闘技選手にとって、クレアチンの影響あるいは有用性は依然として不明である」(Ashtary-Larky, 2025, Journal of Dietary Supplements)。

筋力とパワーは上がるが、体重も上がる。階級制競技では、この二つが直接対立します。

併用は効くのか、効かないのか

クレアチンとβ-アラニンの併用について、3つの解析が異なる答えを出しています。

研究規模併用についての結論
Bai ら (2026)52 RCT相乗効果なし。クレアチン単独が最も一貫。β-アラニンは非有意または文脈依存的
Ashtary-Larky ら (2025)7 RCT・263人併用が高強度運動、とくに無酸素性パワーと反復発揮を、単独より改善。ただし最大筋力はクレアチン単独と差なし
Lopes-Silva ら (2020)10本(格闘技限定)β-アラニンと重炭酸ナトリウムの併用で追加的な改善

52本のRCTを統合したネットワークメタ解析の結論——「クレアチン単独の補給が、ホスホクレアチン回復と神経筋出力の増強によって、高強度・無酸素性パフォーマンスに最も一貫した改善をもたらす。β-アラニンの緩衝上の利点は課題特異的であり、クレアチンのエルゴジェニック効果を増強するには不十分である。クレアチンとβ-アラニンの併用は、クレアチン単独を超える追加的な優位性を提供しない」(Bai, 2026, Journal of the International Society of Sports Nutrition)。

一方、7本のRCT・263人(男性231人・女性32人)を検討した系統的レビューは、併用が高強度運動パフォーマンス、とくに無酸素性パワーと反復発揮を単独より改善したとしています。ただし最大筋力、体組成、有酸素能力には追加的な利益がありませんでした(Ashtary-Larky, 2025, Nutrients)。

β-アラニン単独については、格闘技に絞った7本のレビューが、筋力・パワー・総運動作業能力・格闘技特異的パラメータの有意な改善(p < 0.05)と、カルノシンの有意な増加を報告しています。一方、知覚パラメータの向上は非有意、pHの低下も非有意、血中重炭酸と乳酸の結果は不均一、除脂肪量・脂肪量の改善も非有意でした(Fernández-Lázaro, 2023, Nutrients)。

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女性のデータが、ほとんどない

この領域で最も大きな欠落です。

β-アラニン、カフェイン、硝酸塩という「証拠に基づくエルゴジェニックエイド」について、女性を対象とした研究を数えたナラティブレビューがあります。40歳未満の健常女性を常酸素条件で調べた研究として特定されたのは——β-アラニン9本、カフェイン15本、硝酸塩10本だけでした。

著者らの評価——「これら3つのサプリメントそれぞれについて、限られた文献から要約された結果は、女性における用量、タイミング、有効性についていかなる合意も提供しない。さらに文献は、ホルモン状態とその代謝における役割の考慮を欠いている」(Murphy, 2022, International Journal of Sport Nutrition and Exercise Metabolism)。

そして重要な指摘——「男女の生理学的差異、とくに性ホルモンと月経周期の変動は、男性のデータを女性アスリートに一般化することを不適切にし、女性にとって有害でありうる」。

先に見た併用の系統的レビューでも、263人の内訳は男性231人・女性32人(12%)でした。

証拠の確実性と、規制

もう一つ、見落とされやすい層があります。

35本のRCT・991人のアスリートを統合したネットワークメタ解析は、指標ごとの最良を特定しつつ、証拠の確実性も併記しています。

アウトカム最良の介入(SMD、SUCRA)証拠の確実性
筋力タンパク質(0.64、99.6%)非常に低い
ジャンプβ-アラニン(0.41、89.0%)中等度
ジャンプクレアチン(0.30、76.06%)中等度
スプリント時間クレアチン(−0.42、94.57%)中等度
除脂肪体重いずれのサプリメントも有意に増加させず—

出典: Deng ら (2025) より作成。バイアスリスクは低8.57%、懸念あり88.57%、高2.86%。

SUCRA 99.6% で1位のタンパク質が、証拠の確実性では「非常に低い」——順位と確実性が一致しないことを、この表は端的に示しています(Deng, 2025, Frontiers in Nutrition)。

規制面についても指摘があります。オーストラリアスポーツ研究所(AIS)のカテゴリーAサプリメントを検討した観察研究は、「カフェインとクレアチンは、健康強調表示が認可されている唯一のサプリメントである」とし、β-アラニン、硝酸塩/ビーツジュース、重炭酸ナトリウム、グリセロールは強い証拠に支持された正のエルゴジェニック効果を示すものの規制上の承認を欠いており、市販製品のうち現行法規を遵守しているのはごく一部にすぎないと述べています(Navarro, 2025, Nutrients)。汚染や乱用のリスクゆえに慎重で十分に文書化されたアプローチが必要だ、という指摘は他のレビューにも共通します(Păunescu, 2025, Farmacia)。

ISSNの立場表明——主戦場は減量のほう

最後に、国際スポーツ栄養学会(ISSN)が2025年に公表したMMAおよび他の格闘技のための栄養・減量戦略の公式見解から、数値の核を引きます。

項目推奨
オフキャンプ期の体重階級要件より12〜15%上を維持
三大栄養素の下限糖質 3.0〜4.0 g/kg、タンパク質 1.2〜2.0 g/kg、脂質 0.5〜1.0 g/kg/日
適切な体重減少計量72時間前で6.7%、48時間前で5.7%、24時間前で4.4%
急性の水分喪失計量24時間以内に体重の約2〜4%(適切な監督下で)
計量後の経口補水1〜1.5 L/時、ナトリウム 50〜90 mmol/dL
計量後の糖質速効性は≤60 g/時。総量 8〜12 g/kg(大幅なグリコーゲン枯渇時)または4〜7 g/kg
計量後の回復目標体重の10%以上を回復
サプリメントクレアチン、β-アラニン、HMB、カフェイン

出典: Ricci ら (2025) より作成。

そして16項目の最後は、次の一文です——「頻回の減量が健康とパフォーマンスに与える長期的な影響は不明であり、さらなる研究を要する」(Ricci, 2025, Journal of the International Society of Sports Nutrition)。

読むときの手がかり

論点いま言えることまだ言えないこと
カフェイン格闘技で「強い証拠」を認められた唯一のサプリメント攻撃動作の回数への効果は2つのメタ解析で正反対
クレアチンパワーと最大筋力を改善体重も増える。競技特異的持久力・回復・疲労には影響なし
β-アラニンカルノシンは確実に増える52本のNMAでは「非有意または文脈依存的」
併用—3つの解析が相乗効果について異なる結論
除脂肪体重—35本のNMAで、いずれのサプリも有意に増加させず
女性—β-アラニン9本、カフェイン15本、硝酸塩10本。用量の合意なし
規制健康強調表示が認可されているのはカフェインとクレアチンのみ市販製品の法令遵守率
減量ISSNが具体的な数値を提示頻回の減量の長期的影響は不明

実務的な読み方を三つ。

アウトカムのリストから、勝敗に近いものを選り分ける。サプリメントのメタ解析は、血中乳酸、心拍数、pH、カルノシン濃度といった代理指標を大量に含みます。それらが動いたことと、試合で技が1本多く出たことは別です。この領域で「蹴りの回数」「投げの回数」「攻撃動作の回数」といった競技に直接つながる指標が報告されているのは、カフェインについてだけです——そしてその一つは、二つのメタ解析で結論が割れています。

階級制競技では、体重への影響を最初に確認する。クレアチンは筋力とパワーを確実に上げますが、体重も上げます。6週間以上の摂取やレジスタンストレーニングとの併用でとくに顕著です。減量幅がすでに限界に近い選手にとって、これは効果ではなくコストとして計算に入れるべき項目です。

女性選手は、男性のデータを自分に当てはめない。この領域の主要3成分について、40歳未満の健常女性を対象とした研究は合計34本しかなく、用量・タイミング・有効性のいずれについても合意がありません。月経周期のホルモン変動が代謝に与える影響も考慮されていません。総説の表現を借りれば、男性のデータの一般化は「不適切であり、女性にとって有害でありうる」ものです。

出典

  1. Luo H, et al. Advantages of different dietary supplements for elite combat sports athletes: a systematic review and Bayesian network meta-analysis. Scientific Reports. 2025. DOI: 10.1038/s41598-024-84359-3
  2. Vicente-Salar N, et al. Nutritional Ergogenic Aids in Combat Sports: A Systematic Review and Meta-Analysis. Nutrients. 2022. DOI: 10.3390/nu14132588
  3. Delleli S, et al. Acute Effects of Caffeine Supplementation on Physical Performance, Physiological Responses, Perceived Exertion, and Technical-Tactical Skills in Combat Sports: A Systematic Review and Meta-Analysis. Nutrients. 2022. DOI: 10.3390/nu14142996
  4. Díaz-Lara J, et al. Effects of acute caffeine intake on combat sports performance: A systematic review and meta-analysis. Critical Reviews in Food Science and Nutrition. 2022. DOI: 10.1080/10408398.2022.2068499
  5. López-González L, et al. Acute caffeine supplementation in combat sports: a systematic review. Journal of the International Society of Sports Nutrition. 2018. DOI: 10.1186/s12970-018-0267-2
  6. Ashtary-Larky D, et al. Creatine Supplementation in Combat Sport Athletes: A Narrative Systematic Review. Journal of Dietary Supplements. 2025. DOI: 10.1080/19390211.2025.2539880
  7. Bai X, et al. Effects of combined versus single supplementation of creatine and beta-alanine on aerobic and anaerobic performance: a systematic review and network meta-analysis. Journal of the International Society of Sports Nutrition. 2026. DOI: 10.1080/15502783.2026.2695133
  8. Ashtary-Larky D, et al. Effects of Creatine and β-Alanine Co-Supplementation on Exercise Performance and Body Composition: A Systematic Review. Nutrients. 2025. DOI: 10.3390/nu17132074
  9. Lopes-Silva J, et al. Effects of Isolated and Combined Ingestion of Sodium Bicarbonate and β-Alanine on Combat Sports Athletes’ Performance: A Systematic Review. Strength and Conditioning Journal. 2020. DOI: 10.1519/ssc.0000000000000603
  10. Fernández-Lázaro D, et al. β-Alanine Supplementation in Combat Sports: Evaluation of Sports Performance, Perception, and Anthropometric Parameters and Biochemical Markers—A Systematic Review of Clinical Trials. Nutrients. 2023. DOI: 10.3390/nu15173755
  11. Murphy MJ, et al. Dietary Supplements for Athletic Performance in Women: Beta-Alanine, Caffeine, and Nitrate. International Journal of Sport Nutrition and Exercise Metabolism. 2022. DOI: 10.1123/ijsnem.2021-0176
  12. Deng B, et al. Effects of different dietary supplements combined with conditioning training on muscle strength, jump performance, sprint speed, and muscle mass in athletes: a systematic review and network meta-analysis. Frontiers in Nutrition. 2025. DOI: 10.3389/fnut.2025.1636970
  13. Navarro PE, et al. Ergogenic and Physiological Effects of Sports Supplements: Implications for Advertising and Consumer Information. Nutrients. 2025. DOI: 10.3390/nu17162706
  14. Păunescu C. The Use of Nutrition Supplements in Combat Sport: A Systematic Review. Farmacia. 2025. DOI: 10.31925/farmacia.2025.2.4
  15. Ricci A, et al. International Society of Sports Nutrition position stand: nutrition and weight cut strategies for mixed martial arts and other combat sports. Journal of the International Society of Sports Nutrition. 2025. DOI: 10.1080/15502783.2025.2467909

本記事は研究論文の要約であり、医学的・栄養学的助言ではありません。サプリメントには禁止物質の混入リスクがあり、競技者は所属団体の定める手続きに従って製品を選択してください。持病がある方、服薬中の方、妊娠中・授乳中の方は使用前に医師にご相談ください。急速減量は健康を損なう危険があり、とくに未成年者では推奨されません。減量は必ず指導者と医療者の監督のもとで行ってください。

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